昨年のインターナショナルオーディオショウで、いちばん聴いてみたかった製品が、
ほぼ1年経ち、ようやく登場した。
マッキントッシュの管球式のモノーラルパワーアンプ、MC2301だ。
出力は300Wだから、同社の往年の名器、MC3500の350Wにはすこし及ばなかったが、
ここでの、50Wの差は、ないに等しいだろう。
出力管はKT88で、片チャンネルあたり8本使用している。
MC3500は、6LQ6を、やはり8本使っている。
電圧増幅には、マッキントッシュ・ジャパンのサイトで公開されている資料によると、12AT7が2本とある。
MC3500では、初段から使用真空管をあげていくと、まず12AX7、さらに12AX7がつづき、
6DJ8、6CG7、6DJ8となっている。
出力段の前段には、双三極の出力管6BL7GTAのカソードフォロワーになっており、
電圧増幅部の6CG7も初段の12AX7もカソードフォロワーだ。
つまりカソードフォロワーが3段あるわけだ。
MC2301の回路構成がどうなっているか、詳細は不明だからこそ、
電圧増幅部の真空管の使用本数が半分以下になっているのは、興味深い点である。
電圧増幅段の、NFBをかける前のゲイン(オープンループゲイン)は、かなり違うのだろう。
ということは、NFB量も違う。
MC3500は、30dB程度のNFBをかけていたと記憶している。
それにコンストラクションも、どちらもモノーラル構成だが、大きく違う。
MC2301はシャーシーの中央に、電源トランスと出力トランスという、
アンプ内でもっとも重量のある部品を置くことで、重量バランスの片寄りをなくしている。
出力管は、両側に4本ずつ振り分けている。
MC3500は、電源トランス2個(高圧用と低圧用)はフロントパネル側に、右寄りに、
出力トランスはリアパネル側の左寄りに、配置している。
出力管は8本まとめて、リアパネル側、出力トランスのとなりに置かれ、ファンによる強制空冷となっている。
フロントパネルの色も違う。
MC3500はホワイトハウスに納入するために開発されたもので、だからパネルがシルバーだという、
どこまで本当のなのかわからない話を、昔きいたことがある。
MC2301は黒だ。メーターの大きさもずいぶん違う。MC2301のもののほうがかなり大きい。
これらの変化・違いは、時代の変化によるものも含まれよう。
MC2301は、とにかく、いまいちばん聴いてみたいパワーアンプのひとつである。