Archive for category James Bongiorno

Date: 5月 7th, 2022
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(THAEDRAとJC-2・その4)

THAEDRAと組み合わせた時の音について別項でも触れているから、
ここでは省くけれど、THAEDRAも、どうしても欲しい、という人がいて、
結局、その人に譲ってしまった。

JC2とTHAEDRA。
これら以外のコントロールアンプも使ってきたけれど、
ふり返って思い出すのは、この二機種である。

使ったことがない、
つまり自分のシステムに組み込んだことがないモデルのなかでは、
マークレビンソンのLNP2は、いまでもいつかは──、というおもいがあるけれど、
使ったモデルに限定すれば、JC2とTHAEDRAということになる。

いま目の前に、この二つのコントロールアンプがあって、
どちら片方だけ選べといわれたら(もちろんどちらも同じ価格だとして)、
やはりTHAEDRAを選ぶ(資産価値で選ぶ人はJC2のはず)。

実際のところ、中古市場ではJC2のほうが高価である。
それでも、私がとるのはTHAEDRAであり、ここにおける選択は、
音があってのことであっても、別の理由もある。

別項で「オーディオ・システムのデザインの中心」を書いてる。
結論までにはもう少し書いていく予定なのだが、
私は、オーディオ・システムのデザインの中心はコントロールアンプだ、と考えている。

つまりJC2よりもTHAEDRAということは、
コーネッタをスピーカーに据えるシステムにおいて、
THAEDRAを、システムのデザインの中心に置く(選んだ)ことである。

Date: 5月 4th, 2022
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(THAEDRAとJC-2・その3)

水を得た魚のように、という表現がある。
GASのTHAEDRAと接いだSUMOのThe Goldはまさにそうだった。

SUMOのThe Powerがステレオサウンドの新製品紹介の記事に登場したとき、
コントロールアンプをTHAEDRAにしたら、鳴り方が大きく変った──、
そんなことが書かれていたことは、常に頭のなかにあった。

とはいうものの、ここまで変るのか、と驚いてしまった。

JC2を友人に譲ってからは、
エッグミラーのW85(H型アッテネーター)を使っていた。

アナログプレーヤーはトーレンスの101 Limited、
CDプレーヤーはスチューダーのA727を使っていたので、
どちらのモデルも出力にライントランスを介している。
バランス出力である。

だからW85を介してThe Goldのバランス入力に接続していた。

JC2、THAEDRAにはバランス出力はない。
アンバランス出力のみだから、The Goldのアンバランス入力に接ぐことになる。

The Goldの場合、アンバランス入力だと、
アンバランス/バランスの変換回路を通ることになる。
信号経路が長くなり、信号が通過する素子数も多くなる。

そのことがあったから、THAEDRAの音にそれほど期待していたわけではなかった。
理屈の上では、THAEDRAを介すことで音が良くなることはない。

でも、そんな理屈は実際に鳴ってきた音を、
ほんのわずかな時間聴いただけで消し飛んでしまう。

Date: 5月 3rd, 2022
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(THAEDRAとJC-2・その2)

ジョン・カール・モディファイJC2以前に、
JC2の音は聴いたことがなかった。

私がオーディオに興味を持ちはじめて数ヵ月後には、
LNP2、JC2の入出力端子がLEMO端子に変更され、
その他、内部も変更されたことで、型番の末尾にLがつくようになった。

もっともLがつくのは日本だけの型番であって、
並行輸入対策であった。

JC2Lは、すぐさまML1(L)となった。

ML1の音は聴いていた。
でもJC2、それも初期の、ツマミが細長いタイプの音は、
「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年版を読んでは、
それまで聴いたマークレビンソンの音から想像するしかなかった。

そうやって頭のなかに描いてきたJC2の音と、
実際に自分のシステムに組み込んで鳴ってきたJC2(モディファイ版)の音は、
大きく違うことはなかった。

なので満足していたといえばそうだった。
けれど、その音に衝撃を、もしくはそれに近いものを受けたわけではなかった。

JC2は使い続けてもよかったのだが、友人がどうしても欲しい、ということで、
譲ってしまった。

それからしばらくしてGASのTHAEDRAを手にいれた。
THAEDRAには、さほど期待していなかった。
ただSUMOのthe Goldを使っていたから、
それに別項で書いているように、The Goldを手にいれた時、
THAEDRAもそこにあったけれど、予算が足りずに諦めたことも重なって、
一度はボンジョルノの意図した音を確認しておきたかった──、
そのぐらいの気持であった。

なのに鳴ってきた音は、衝撃といえるレベルだった。

Date: 5月 2nd, 2022
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(THAEDRAとJC-2・その1)

THAEDRAはGASのコントロールアンプとしてフラッグシップモデルだった。
JC2(ML1)は、上級機としてLNP2があったことから、フラッグシップモデルとはいえなかった。

けれどマーク・レヴィンソン自身は、自家用として使っていたのはJC2だった、
と当時のオーディオ雑誌には書いてあった。

THAEDRAもJC2も同時代のコントロールアンプである。
価格もほど近い。同価格といってもいい。

それだけに、この二つのコントロールアンプは、
ジェームズ・ボンジョルノとマーク・レヴィンソンと同じくらいに実に対照的存在である。

JC2は一時期使っていた。
1980年代なかばごろ、ジョン・カールがJC2をモディファイしている──、
そういう情報が入ってきた。

なので、とある輸入元の社長にお願いして、JC2のモディファイ版を輸入してもらった。
JC1SMが搭載されていて、ツマミが細長い初期型のJC2であった。

初期のJC2ということもあって外部電源は型番なしのタイプ。
なのでハーマンインターナショナルからPLSを購入。
そうやって聴いていた時期があった。

THAEDRAを手に入れたのはJC2の後である。

Date: 4月 15th, 2022
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その11)

黒田先生は、「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年版、
GASのTHAEDRAとAMPZiLLAのところでも、
その10)で引用したことと関係する発言をされている。
     *
黒田 ぼくは非常にほしくなったアンプです。まず、瀬川さんはこのアンプの音を男性的とおっしゃったけれども、それに関連したことから申し上げます。これはぼくだけの偏見かもしれないけれど、音楽というのは男のものだという感じがするんです。少しでもナヨッとされることをぼくは許せない。そういう意味では、このシャキッとした、確かに立派な音といわれた表現がピッタリの音で、音楽を聴かせてもらったことにぼくは満足しました。
     *
今の時代、誤解される発言となるかもしれない。
今の時代の風潮に敏感であろうとすることだけに汲々としている編集者ならば、
24号に書かれたこと、
「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年版での発言、
どちらにも訂正をいれてくるだろう。

「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年版での発言だけでは、
そうなるかもしれないが、24号での文章もあわせて読んでほしい。

そこには、こう書いてある。
《もし音楽においても男の感性の支配ということがあるとしたら、これはその裸形の提示といえよう》
ここはほんとうに大事なことである。

そして《その裸形の提示》においての鮮度ということが、再生音にはある。

Date: 3月 28th, 2022
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その14)

GASのデビュー作は、パワーアンプのAMPZiLLAである。
ステレオサウンド 36号(1975年9月発売)の新製品紹介の記事に登場している。
51号(1979年6月発売)に新製品としてGODZiLLAが取り上げられている。

なので、これまでAMPZiLLAが出て、
その上級機としてGODZiLLAが出てきたものだと思ってしまっていた。

けれど、AMPZiLLAの前に、GODZiLLAがあった、という話も耳にしていた。
それでもステレオサウンドのどこを見ても、そんなアンプは登場していないのだから、
AMPZiLLA、 GODZiLLAの順だと信じていた。

GASのTHAEDRAを昨晩落札したことを別項で書いている。
それでGASの情報を、改めて蒐集しようと検索してみた。
画像検索のみをしていたら、
いままで目にしたことのない、それでもAMPZiLLAによく似たアンプの写真がヒットした。

GODZiLLAとある。
AMPZiLLAをモノーラル仕様にしたアンプである。
なのでパワーメーターは一つだけ。

出力は8Ω負荷で250W、4Ω負荷で500W、2Ω負荷で1000Wとなっている。
まさにGODZiLLAだ。

このオリジナルGODZiLLAが世に出たのかどうかは、はっきりしない。
プロトタイプだけなのかもしれない。

まだまだ知らないことがある。
ソーシャルメディアが、その知らないことに出会わせてくれる。

Date: 4月 21st, 2021
Cate: High Resolution, James Bongiorno

MQAのこと、James Bongiornoのこと(その2)

TIDALで、“Mark Levinson”を検索したならば、
この人も忘れてはならない。

ジェームズ・ボンジョルノ(James Bongiorno)である。
ボンジョルノのアコーディオンとピアノの腕前は、
《アマチュアの域を超えている》と菅野先生が、
ステレオサウンド 53号に書かれているほどだから、そうとうなものなのだろう。

そのボンジョルノのCDが出ていることは知っていた。
Ampzilla 2000で復活をしてしばらくしたころに出したようである。

いつか買おう、と思いながらも、アメリカに注文してというのを億劫がって、
今日まできていた。

Mark Levinonがあるくらいだから、James Bongiornoもあるはず、と検索したら、
二枚とも表示された。

“Alone Again”と“This is The Moment”である。
残念なことにMQAではない。

Mark LevinonもMQAではないのだけれど、
こちらはMQAでないことをそれほど残念とは思わなかった。

James BongiornoがMQAでなかったのは、ちょっと残念に感じている。

Date: 11月 16th, 2019
Cate: High Resolution, James Bongiorno

MQAのこと、James Bongiornoのこと(その1)

ジェームズ・ボンジョルノは2013年に亡くなっているから、
MQAの音は聴いていない。

昨年秋からMQAの音をいろんな機会で聴くたびに、
いい方式が登場してくれた、と思う。

それだけに、ここでMQAやメリディアンのことについて書くことが多くなっている。

書いていて、ふと思った。
ボンジョルノはMQAをどう評価するのだろうか、と。

Date: 3月 26th, 2017
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その13)

アンプ(amplifier)は増幅器。
入力された信号を増幅して出力する電子機器である。

ふだん何気なく増幅という言葉を使っているけれど、
増幅とは、幅を増す、と書く。

何の幅なのか、といえば周波数レンジ、ダイナミックレンジ、
このふたつの幅ということになろう。

けれどどんな高性能なアンプであっても、
入力された信号の周波数レンジを拡大するようなことはしない。
ダイナミックレンジに関しても同じだ。

ダイナミックレンジが60dBの信号が入力されたとして、
出力には70dB、もしくは80dBのダイナミックレンジの信号が現れるわけではない。

60dBのダイナミックレンジの信号は、そのままダイナミックレンジ60dBのまま、
電圧、もしくは電力が増えて出力される。

その意味で考えれば、増幅という言葉は、
正確にアンプの動作を言い表しているとはいえないところがある。

だがこれは理屈であって、アンプの中には、
特にパワーアンプにおいては、明らかにダイナミックレンジが増したように、
スピーカーを鳴らしてくれるモノがある。

これも正確にいえば、
他の多くのアンプがダイナミックレンジを狭めたようにスピーカーを鳴らすから、
対比として、いくつかのアンプはダイナミックレンジがそのまま再現されているであろうに、
ダイナミックレンジが増したように、
つまり幅が増した(増す)、という意味での増幅器がある。

なにもダイナミックレンジだけではない。
周波数レンジをも狭めたように聴かせるアンプがある。
そういうアンプからすれば、そのままの周波数レンジで鳴らすアンプは、
周波数レンジも幅を増したかのように思えないわけではない。

私がジェームズ・ボンジョルノのアンプに惚れている理由のひとつである。

Date: 12月 12th, 2016
Cate: James Bongiorno

THE MOATのこと

ボンジョルノがGASを離れてSUMOを設立して発表したモデルは、
パワーアンプのThe Power、The Goldのほかに、THE MOATがあった。

THE MOATはパワーアンプではない。
ブリッジ接続アダプターである。
つまり入力はアンバランスで出力はバランスになっている。
ゲイン0dBのユニティアンプで構成されている。

THE MOATのmoatは、堀、環濠という意味である。
ブリッジ接続アダプターの名称としてぴったりだとは思わない。

おそらくmoatは、日本語の「もっと」だと思っている。
会社名を相撲が好きだからという理由で、SUMOとするくらいのボンジョルノだから、
パワーアンプをブリッジ接続することでパワーアップできるのだから、
もっとパワーを、という意味を込めての「THE MOAT」のはずだ。

そう確信するのにはひとつ理由がある。
THE MOATは左右のバランス出力のほかに、センター出力も持つ。
センターチャンネル用のレベルコントロール(±6dB)がついている。

パワーを「もっと」だけでなく、再生チャンネル数も「もっと」のはずだ。

1979年ごろのボンジョルノは、センターチャンネルを加えた再生を試していたのだろう。

Date: 10月 17th, 2016
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その12)

マークレビンソンのML2は初段は差動回路だが、二段目は差動回路ではない。
そのためドライバー段と出力段をもう一組用意すれば、
バランス出力が得られる──、というわけにはいかない。

差動回路のふたつの出力をどう扱うか。
バランス出力であればそのままでよくても、
アンバランス出力であれば、プラス側の出力を使っても、
マイナス側の出力は無駄にするのか、それともカレントミラーなどの回路を使い、
有効利用するのかは、設計者によって違ってくる。

ML2、原型となっているJC3の回路図はインターネットで検索すれば、すぐに見つかる。
初段と二段目の接続がどうなっているのか興味がある人は、回路図を見ていただきたい。

ブリッジ接続はバランス出力をもつコントロールアンプがあれば、
どのパワーアンプも原則として可能である。
アンバランス出力しか持たないコントロールアンプでも、入力がバランスであるパワーアンプであれば、
ブリッジ接続は特別なアダプターを必要とせず可能になる。

2チャンネル分のパワーアンプをブリッジ接続すれば、それはバランス増幅といえるのか、といえば、
そうとはいえない。
その違いについて言葉だけで詳しく述べるのはやや面倒なのでばっさり省略するが、
SUMOのTHE POWER、THE GOLDのバランス増幅と、
2チャンネル分のアンプを使いブリッジ接続した場合と同じに考えるわけにはいかない。

GASのGODZiLLAは、ここのところがどうなっているのかがはっきりとしない。
2チャンネル分のAMPZiLLAをブリッジ接続した回路構成なのか、
それともSUMOのアンプと同じバランス増幅といえる回路になっているのか。

外形寸法と重量、それに内部コンストラクションの写真をみていると、
GASのGODZiLLAはAMPZiLLAのブリッジ接続版という可能性が捨てきれない。

仮にそうだとしたら、AMPZiLLAの進化形といえるのはGASのGODZiLLAではなく、
SUMOのTHE POWERとなるし、現在のAMPZiLLA 2000ははっきりとTHE POWERの流れを汲むアンプである。

Date: 10月 17th, 2016
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その11)

GASのGODZiLLAが、ボンジョルノ設計ではないことは、保護回路からも推測できる。
SUMOのパワーアンプは、基本的に保護回路はない。
GODZiLLAはしっかりした保護回路を搭載している。

この違いは、ボンジョルノのアンプ(設計)かどうかの判断基準といえる。

GODZiLLAもSUMOのアンプもバランス入力を持ち、バランス出力となっている。
ただ回路構成が基本的に同じかどうかはなんともいえない。

JBLのパワーアンプSE408S(SE400S)において差動回路が採用されて以来、
今日のアンプの大半は差動回路を採用しているといえる。

差動回路はふたつの入力を持つ。
出力もふたつある回路である。
つまり差動回路そのものがバランス回路といえるところがあるわけで、
それでも従来のアンプがアンバランス入力だったのは、
差動回路の片側の入力だけを信号用として使い、
もう片方の入力はNFB用に使われていた。

出力に関しては、ドライバー段、出力段をもう一組用意すればバランス出力を得られるわけだが、
少なくともコンシューマー用アンプではSUMOのTHE POWERの登場までなかった。
THE POWERは入力から出力まで差動回路によるバランス構成となっている。

バランス入力に関しては、マークレビンソンのML2が先に出ていた。
ML2の電圧増幅段も差動回路で、ふたつの入力をもち、
だからこそリアパネルにはLEMO(CAMAC規格)端子の他にXLR端子もついている。

通常の使用では反転入力をアースに落すことでアンバランス入力としている。
なので非反転入力をアースに落せば、ML2は反転アンプとなる。

ステレオサウンド 53号が面白いと思うのは、
特集でGASのGODZiLLA AとSUMOのTHE POWERが取り上げられていて、
さらに瀬川先生による4343のML2のブリッジ接続ドライヴの記事も載っていることである。

Date: 10月 16th, 2016
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その10)

広告は、時として記事よりも、知りたい情報を与えてくれる。
ステレオサウンド 53号のバブコの広告。

ここにはスレッショルド、シンメトリー、GAS、SUMOといったブランドが紹介されている。
それぞれのブランドのロゴの下には、エンジニアの名前が表記してある。

スレッショルドはNelson Pass、
シンメトリーはDesigned by John Curl、
SUMOはDesigned by James Bongiorno、
GASはDesigned by Andrew Hefleyとなっている。

GASのところにある写真は、
コントロールアンプのThaedra IIとGODZiLLAである。

これではっきりした。
GODZiLLAの設計はボンジョルノではないことが。
ただThaedraはボンジョルノの設計だから、
Thaedra IIの基本設計はボンジョルノで、Andrew HefleyによってII型になったということのはずだ。

つまりGASのアンプでThaedra II(1978年)以降、
Thaedra IIB、GAS500 Ampzillaも含めて、ボンジョルノからAndrew Hefleyの設計に変っている。

GODZiLLAはSUMOのパワーアンプの仕様に近い。
AB級とA級、ふたつのラインナップを持ち、出力も近い。
けれどコンストラクションは大きく違う。

GODZiLLAの音を聴く機会はなかったため、
これまで断言できなかったけれど、ボンジョルノの手を離れたモノとは判断できていた。

ただ想うのは、ボンジョルノ自身は、
GASで、GODZiLLAという型番で、SUMOのTHE POWERとTHE GOLDを出したかったのではないだろうか。

AMPZiLLAの登場のころから、上級機としてGODZiLLAが出る、というウワサはあった。
たしかに出るには出た……。
けれどボンジョルノの手による「GODZiLLA」は、
GASのGODZiLLAではなく、SUMOのTHE POWERとTHE GOLDといえる。

Date: 10月 30th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その10)

1970年代後半、ボンジョルノのGASのアンプの音は男性的といわれた。
レヴィンソンのLNP2は、女性的なところがあるともいわれていた。

黒田先生がステレオサウンド 24号、「カザルス音楽祭の記録」についての文章がある。
     *
 端折ったいい方になるが、音楽にきくのは、結局のところ「人間」でしかないということを、こんなになまなましく感じさせるレコードもめずらしいのではないか。それはむろん、カザルスのひいているのがチェロという弦楽器だということもあるだろうが、スターンにしても、シゲティにしても、ヘスにしても、カザルスと演奏できるということに無類のよろこびを感じているにちがいなく、それはきいていてわかる、というよりそこで光るものに、ぼくは心をうばわれてしまった。
 集中度なんていういい方でいったら申しわけない、なんともいえぬほてりが、室内楽でもコンチェルトでも感じられて、それはカザルスの血の濃さを思わせる。どれもこれもアクセントが強く、くせがある演奏といえばいえなくもないだろうが、ぼくには不自然に感じられないし、音楽の流れはいささかもそこなわれていない。不注意にきいたらどうか知らないが、ここにおいては、耳をすますということがつまり、ブツブツとふっとうしながら流れる音楽の奔流に身をおどらせることであり、演奏技術に思いいたる前に、音楽をにぎりしめた実感をもてる。しかし、ひどく独善的ないい方をすれば、この演奏のすごさ、女の人にはわかりにくいんじゃないかと思ったりした。もし音楽においても男の感性の支配ということがあるとしたら、これはその裸形の提示といえよう。
     *
ここで語られていることがそっくりそのままボンジョルノのアンプにあてはまるとまでは言わないが、
大筋においてはそういえる。
GASのAMPZiLLA、THAEDRA、SUMOのTHE POWER、THE GOLDの音は、まさしくそうである。
だから、ボンジョルノのアンプの音は男性的といえる。

そして、「鮮度」に関してもそうだといえる。

Date: 10月 24th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その9)

SUMOの輸入元であるバブコの広告には、
THE POWER、THE GOLDのコンストラクションのことをモノコック構造と記していた。

モノコック(monocoque)とは車における車体とフレームが一体構造であることをさす。
単体構造ともいう。
自転車のフレームでモノコックといえば、フレームを形成する前三角、後三角が一体成型したものをいう。

THE POWER、THE GOLDのコンストラクションをモノコック構造といっているのは、
ジェームズ・ボンジョルノだったのか、それとも輸入元なのかははっきりしない。
ただ、当時SUMOの広告を見ながら、これがモノコック構造なのか……、と少し疑問に感じていた。

バブコの広告ではTHE POWERの外装が取り外された写真が中央に大きくあった。
この写真をみると、THE POWERの中心部にはシールドされた電源トランスがある。
その両脇にヒートシンクがあり、ヒートシンクの下側に平滑コンデンサーがある。

ヒートシンクの上には電圧増幅部の基板、電源トランスの上にもプリント基板があった。
この基板がアンバランス/バランス変換回路でもる。
すぐ目につくプリント基板は三枚だが、ヒートシンクにはパワートランジスターの配線をかねた基板が、
ヒートシンクの両脇に一枚ずつある。つまり計七枚のプリント基板がある。

AMPZiLLAがヒートシンクの下側に空冷ファンを配置していたのに対して、
THE POWER、THE GOLDではヒートシンクを水平に設置。
空冷ファンはフロントパネル側に取りつけられ、リアパネル側に排気する。

バブコの広告写真をみたときには、どんなにじっくりみても気づかなかったことがあった。
THE GOLDを手に入れて、一度分解して各部のクリーニングを徹底して行ってから組み立て直して、
確かにこれはモノコック構造といえるな、と思っていた。