Archive for category 調整

Date: 9月 29th, 2015
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その13)

SMEのヘッドシェルのS2と3009/SeriesIIIのシェル部分を比較すると、
ずいぶんと大きさが違う。
3009/SeriesIIIのシェルは小さい。

S2にも3009/SeriesIIIのシェルにもSMEのロゴがあるが、
その位置はS2カートリッジ取りつけのためのビス穴よりも手前側なのに対して、
3009/SeriesIIIのシェル部分はビス穴よりも奥にある。

つまり3009/SeriesIIIのビス穴はシェル部分の先端に開けられている。
そのためカートリッジを取りつけると、カートリッジボディの半分ほどは露出するかっこうになる。
いいかえれば3009/SeriesIIIのシェルとカートリッジの接触面積は、
一般的なへどシェルよりも小さい。

この点において、3009/SeriesIIIはカートリッジを選り好みすることになる。
SMEの3009/SeriesIIはシュアーのV15のためにつくられたトーンアームであが、
3009/SeriesIIIはその点どうだろうか。

少なくとも3009/SeriesIIIに合うのは、V15 TypeIVだといえる。
V15 TypeIIIは取りつけることは3009/SeriesIIIは考慮していない、と思っている。

V15のTypeIIIとTypeIVはカートリッジの形状が違っているからだ。
TypeIVはヘッドシェルと接触する面の面積が狭い。
取りつけ部分から先端にかけてTypeIVのボディは傾斜している。
TypeIIIはそうなっていない。もう少し先端までフラットなっているため、
3009/SeriesIIIにとりつけると、その部分がシェルからはみ出して見えてしまう。

この部分は本来使い手目に触れることのないものである。
その部分が目についてしまう。

YpeIVはそうなっていない。
ヘッドシェルの先端からカートリッジがはみ出した状態でも様になるようにデザインがなされている。

3009/SeriesIIIにはV15 TypeIVと同じようなボディのカートリッジこそが映える。
3009/SeriesIIIと同時代のカートリッジでいえば、
エンパイアの4000D/III、スタントンの881S、ピカリングのXUV/4500Q、XSV/3000、
B&OのMMCシリーズ、ゴールドリングのG900SE、AKGのP8ES、デッカのMark V、
エラックのSTSシリーズなどが挙げられる。

オルトフォンのMC30、MC20KMIIも3009/SeriesIIIに取りつけてみると、
案外いい結果が得られるように思っているが、
これらのカートリッジを取りつけると、見映えの点で゛
V15 TypeIVを取りつけた姿と比較はできなくなる。

Date: 9月 24th, 2015
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その12)

3009/SeriesIIIは、いまでもいいトーンアームだと思う。

SMEのトーンアームで3012と3009とでは、ためらうことなくロングアームの3012を選ぶ。
Series Vの音を聴いて驚き、その音にまったく不満などありもしなかったのに、
つい「Series Vのロングアームは出ないんですか」と口にしてしまったこともある私でも、
3009/SeriesIIIに関しては、そのロングアーム版が欲しいとは、一度も思ったことがない。

3009/SeriesIIIは、ずっと以前に使っていた。
欠点がまったくないトーンアームではないものの、いまでも輝きを失っていないトーンアームである。
アナログディスクという塩化ビニールの黒い円盤を、ひとつのインターフェースとして捉えるのであれば、
トーンアームとは何なのかと考えた場合に、3009/SeriesIIIの形態は重要なヒントとなる予感がある。

その3009/SeriesIIIは、SME初のユニバーサル・トーンアームなのではないか、と思えてくる──、
以前そう書いた。いまもそう思っているけれど、それでもこのトーンアームはカートリッジを意外な面で選ぶ。

それはカートリッジの形状である。
もっといえばカートリッジのヘッドシェルとの接触面の形状(というより大きさ)で、
3009/SeriesIIIはカートリッジを選り好みする。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々続々・認識の違い)

オーディオマニアに「オーディオ機器の調整を行っていますか」ときけば、
ほとんど全員が「やっている」と答えることだろう。

でも実際にはカートリッジの例でもわかるように標準針圧に合せることを「調整」と思っている人もいるし、
4350(4355)といったスピーカーシステムに関しても、
同じパワーアンプを二台用意すればレベル調整は必要ない、と思い込んでしまった人もいる。
4350(4355)に関しては、それではレベルが合うことはまずありえないのだが、
そう思い込んでしまった人にとっては、それは動かしていけないことになってしまうのだろうか。

針圧に関しても同じだ。
標準針圧に合せたら、そこから動かしていけない、
そんなふうに思い込んでいる人は確実にいる。

何度もくり返す、
オーディオ機器の「調整」はしっかりした準備がなければ始まらない。

それにしても、なぜ動かさないのだろうか。
4350(4355)のレベル合せにしても、何もスピーカーを動かさなければできない作業ではない。
ツマミをほんの少し動かすだけの、労力としてはたいした作業ではない。
絶妙なバランスを実現するには時間とセンスが求められるが、
レベルを動かすことに必要なのは、本人のやる気だけ、ともいえるし、
思い込みをなくしてしまうことだともいえる。

この「調整」ということに関しては、まだまだ書いていきたいこと、
書かなければならないと感じていることが、書いていると次々と出てくる。
人と話すことによっても、そうなってくる。

「調整」については、この項のいわば本文にあたるところで書き続けていく。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々続・認識の違い)

いままでオーディオのなかった部屋にシステム一式を設置することになったとしよう。
スピーカーシステムを置き、ラックの設置、そのラックへのアンプやCDプレーヤー、アナログプレーヤーの設置、
そのあとにケーブルでそれぞれの機器を結線していく。
電源もとる。

ここまでのことはセッティングということになる。
ここをいいかげんにやっていては、次の段階がうまくいかなくなるし、
たまたま偶然が重なってうまくいったとしても、そんなことではオーディオ機器の調整は身につかない。

セッティングは調整をスタートするための、いわば準備である。
だからこそしっかりと準備することが大事であり、
このセッティングには、アナログプレーヤーにおけるカートリッジまわりの調整も含まれる。
バイアンプ(マルチアンプ)駆動のスピーカーシステムであれば、
各帯域のレベルの調整もセッティングの範疇である。

使用するカートリッジの標準針圧が2.5gであれば、まずは2.5gに合せる。
トーンアームの高さも調整する。
カートリッジの傾きもチェックして、傾きが視覚的に確認できれば水平とする。
(ただしこの部分に関しては、さらに次の段階がある)
インサイドフォースキャンセラーがあれば、まずは針圧と同じ値とする、など、
こういった調整をやるわけだが、これは厳密な意味でのオーディオ機器の「調整」とはいえない。
あくまでも「調整」という次の段階のための準備なのである。

4350(4355)を鳴らすとしても、とにかく音を出して帯域のバランスをおおまかに合せる。
これも厳密な意味でのオーディオ機器の「調整」ではなく、やはり準備である。

これらの準備がきちんとできないままに「調整」にうつってしまっては、
いわゆる泥沼に嵌ることになる可能性が高くなるし、
いつまでたっても準備のところにとどまっていることに気がつかないことにもなる。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々・認識の違い)

JBLの4350、4355を自分で一から調整したことがあれば、
こんなふうにユニットのデータをもってこなくても、確実なことがいえるのだが、
すでにレベル調整されていた4355のレベルをいじったことはある程度なので、
結局こんな言い方になってしまった。

なぜこんなことを書いているかというと、
ある人が4350を鳴らしていて、パワーアンプは二台とも同じモノを使っている。
つまりゲインもパワーも同じだから、レベル調整はしていない、ということを耳にしたからだ。

仮に4350の2231A二発からなる低域と、
250Hzより上を受け持つセクションとの出力音圧レベルがまったく同じであったとしても、
それでもレベル調整はするものだという私の考えからすると、
これには「調整」ということが何を意味してるのか、
その意味をどう捉えているのか、
調整という言葉をどう使っていったらいいのか、
そんなことを考えてしまった。

4350はJBLのプロフェッショナル用のスピーカーシステムである。
いいかえればプロフェッショナルが使うこと・鳴らすことを前提としている。
4350と同等のスピーカーシステムを、もしJBLが開発していたら、L500という型番で出していたかもしれない。

仮のモデルとしてL500を考えてみると、
バイアンプ駆動であっても、低域部と250Hz以上を気もつセクションとの出力音圧レベルは揃えるであろう。
せっかくの高能率ユニットからなる中低域以上のレベルを多少落すことになったとしても、
コンシューマー用スピーカーシステムとしての使い勝手を重視して、
同じパワーアンプを二台用意すれば、特にレベル調整の必要なく鳴るようにする。

だが4350はL500ではない。
あくまでもプロフェッショナルが使う(鳴らす)スピーカーシステムであるから、
そういった配慮は要らないのだから。

Date: 7月 5th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続・認識の違い)

4350の中低域より上の帯域を構成するユニットの中で、
出力音圧レベルの低いのは、ミッドバスの2202Aということになる。
だからこのセクションの出力音圧レベルは2202Aの出力音圧レベルの同じということになる。

その2202Aの出力音圧レベルだが、実のところはっきりしない。
最初の頃は96dB/W/mとなっていたのが、1978年ごろから99dB/W/mへと変更になっている。
3dBの違いがある。

96dBであれば、2231A二発によるウーファーとほぼ同じ出力音圧レベルということになるのが、
98dBであれば、2231A二発よりも3dB程度高いことになる。

どちらの値が正しいのか。

2202Aは30cmのコーン型ユニットだが、
磁気回路は38cmのウーファーと同等の設計と物量が投入されている。

JBLが発表している”THIELE SMALL LOW FREQUENCY DRIVER PARAMETERS AND DEFINITIONS”によれば、
2202AのMms(Effective moving mass)は50g、2231Aは151gである。
磁束密度はどちらも同じで1.2テスラ。
BL積は2202Aが22、2231Aが21と、わずかだが2202Aの方が高い。

これらのパラメーターで正確な出力音圧レベルがわかるわけではないものの、
2202Aが96dBということはないように、実際に4350Aを聴いた経験からも、
そして4350B、4355を聴いた経験からも99dBの方が鳥瞰的には納得できる値である。

4350B、4355には2202Aのフェライト仕様がついていて、
4355の出力音圧レベルは、290Hz以下が96dB/W/m、290Hz以上が99dB/W/mとなっていることからも、
4350A、4350Bの中低域より上(250Hz以上)は99dB/W/mと考えていい。

Date: 7月 5th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(認識の違い)

この項はオーディオの「調整」について書いていっている。

「調整」といっても、きちんと説明しようとすれば、
かなりの文字の量を必要となるし、それだけ時間もかかる。
それでも「調整」という、この短い言葉に対する認識は、
オーディオマニアであれば、すくなくともある程度のキャリアを積んだオーディオマニアであれば、
共通認識がある、と私はこれまで思ってきた。

音を表現する言葉とは、オーディオに関する言葉であっても、そこは違う──、
そう思ってきていた。

けれど話をしたり話を聞いたりしてきていると、
「調整」という言葉ですら、実のところ共通認識は非常に曖昧で脆さがあることに気づかされた。

それはこの項で、これから書いていくカートリッジの針圧の調整、
なにも針圧の調整だけにとどまらず、カートリッジに関係するすべての調整も含めて、ではあるが、
ここでは話を明確にするために、針圧の調整ということにだけにするが、
カタログに標準針圧:2.5gと書いてあれば、
2.5gぴったりに合せるのが、カートリッジの針圧の調整だと思っている人がいまもいる。

そればかりではなく、たとえばJBLの4350というスピーカーシステムのレベル調整。
4350はバイアンプ駆動を前提としたシステムで、
ウーファーは2231Aを二発並列に接続して、中高域とは独立したアンプで鳴らす。

2231Aの出力音圧レベルは93dB/W/m、
これがダブルで使用されているから、おそらく低域部の出力音圧レベルは96dB/W/mということになる。

4350の中低域より上の帯域に関してはどうだろうか。
4350Aの出力音圧レベルは95.5dB/W/mとカタログには表記されている。

この値は、間違いなく低域部(2231A二発分)の出力音圧レベルであり、
中低域より上の帯域、
ミッドバスの2202A、2440 + 2311 + 2308、
トゥイーターの2405から構成されるセクションの値もそうだということにはならない。

Date: 6月 19th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その11)

軽量・軽針圧用という思い込みを払拭して眺めてみれば、
3009/SeriesIIIこそが、SME初のユニバーサル・トーンアームなのではないか、と、そうも見えてくる。

カートリッジの交換は自分で使ってみるまでは、
ヘッドシェル交換型に較べると面倒なような気もするだろうが、
交換用パイプCA1を複数本(つまりカートリッジ本数分)持っていれば、
カートリッジの交換はむしろやりやすくなっている。

CA1は1977年当時、9500円していた。
3009/SeriesIIIの価格は65000円。
チタニウムを硬化処理したパイプということを考えれば、決して高価とはいえない。

当時の単売されていたヘッドシェルの一般的な価格からすれば、
数倍の値付けがされているのだから、高いと思う人もいたかもしれない。

このころは、もうヘッドシェルもけっこう高価なものが登場していた。
たとえばフィデリティ・リサーチのFR-S/4はアミルブロックからの削り出しということもあって7500円していたし、
ソニーのSH160はカーボンファイバーにアルミカバーを取り付けた仕様で、これも7500円だった。
サエクのULS3Xは、酸化アルミニウム結晶体で、11000円と飛び抜けて高価だった。

CA1はヘッドシェルとパイプが一体になっていての9500円である。

Date: 6月 16th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その10)

なぜSMEの3009/SeriesIIIは、軽量級のカートリッジ用トーンアームとして認識されるようになったのは、
3009/SeriesIIIの後に登場したシュアーやオルトフォンなどのカートリッジの影響が大きいのではないだろうか。

3009/SeriesIIIはヘッドシェルはパイプと固定されていて、
3012、3009のようにヘッドシェルごとの交換はできない。
かわりにアームパイプの根元(基部)にソケットを設け、パイプごと交換する方法がとられている。

オルトフォンは一時期Concordeとよばれるシリーズを出していた。
いまでもConcordeシリーズは残っているけれど、
当時は軽針圧・軽量カートリッジであったのに対し、いまのConcordeは重めの針圧のDJ用となっている。

シェル一体型のConcordeには、
カートリッジ本体をそのまま3009/SeriesIIIのアームパイプと一体化し、
可動部分の実効質量の低減化をより徹底化したモノがあった。
シュアーからも同様のカートリッジが出ていたと記憶している。

この手のカートリッジの存在が3009/SeriesIIIに、
軽針圧・軽量カートリッジ専用のトーンアームという、
決して間違ってはいないものの、ある種の誤解を生じさせていった、といえよう。

私も自分で3009/SeriesIIIを使ってみるまでは、
なんなとく軽量カートリッジ用のトーンアームだと思い込んでいた。
ステレオサウンド 45号の山中先生の発言を読んでいたにも関わらず。

Date: 6月 16th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その9)

SMEの3009/SeriesIIIがステレオサウンドに初めて登場したのは、45号の新製品紹介であった。
このころの新製品の紹介のページは、いまと違って、山中先生と井上先生のふたりだけで担当されていて、
スピーカー、アンプ、プレーヤー関係と、大きく3つにわけて、
その号での注目製品、および全体の傾向についての対談がまずあって、
書き原稿では山中先生が海外製品を、井上先生が国内製品を担当されていた。

3009/SeriesIIIが45号でとりあげられた新製品の中でも話題のモノであり、
対談の中でも取り上げられている。
そこには、こうある。
     *
山中 SMEの社長のエイクマンという人は、自身が大変なオーディオマニアということでも有名なんですが、それもあってSMEのアームはこの人のカートリッジに対する考え方の影響をかなり色濃く受けているわけです。最近エイクマン氏はMC型カートリッジを愛用し始めているということで、そうなると単なる軽量アームではいい結果が得られない。その結果このアームが生まれたということだと思うのです。
     *
1976年あたりから海外でもMC型カートリッジが見直されてきた、という話はきいている。
日本製のMC型カートリッジがその火付けとなっていた、ともきいている。
同時に半導体の進歩、アンプの回路技術の進歩もあって、
ヘッドアンプの性能、音質ともに優秀なモノも登場してきている。

3012がオルトフォンのSPU、3009/SeriesII ImprovedがシュアーのV15、
となると3009/SeriesIIIは、どのメーカーのどのカートリッジなのだろうか。

おそらくオルトフォンのMC20なのではないかと思う。
MC20は1976年に登場している。
3009/SeriesIIIの登場よりも1年以上前のことである。

MC20の自重は7.0g、適正針圧は1.7gで、針圧範囲は1.5〜2.0g、
3009/SeriesIIIで使うにはちょうどいい。

Date: 6月 15th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その8)

SMEの3009/SeriesII Improvedはスタティックバランス型だから、
ゼロバランスをくずせば1.5g以上の針圧をカートリッジにかけられるわけだが、
あくまでも3009/SeriesII Improvedはシュアーのカートリッジ(V15)に対して、
最良点をさぐり出す(合せこむ)ためのトーンアームとして設計されている。

日本には正規輸入されたのかは知らないが、
3009/SeriesII Improvedにはヘッドシェル一体型のタイプも存在する。
トーンアームの先端部に、交換用のコネクターがあればその分だけ重量が増し、
実効質量も増え、軽針圧カートリッジ用のトーンアームとしては感度の低下を生じさせることにつながる。

最大針圧を1.5gにするくらい思いきった3009/SeriesII Improvedだから、
交換用のコネクターを排するくらい当然のことといえよう。

ただ興味深いと思うのは、
3009/SeriesII Improvedのあとに登場した、
さらに軽針圧カートリッジへターゲットを絞ったトーンアームと思われる3009/SeriesIIIは、
最大針圧2.5gとなっていることである。

トーンアームパイプにチタニウムを採用し、
当然のヘッドシェルとパイプの一体化と、
3009/SeriesII Improved以上に徹底した軽針圧カートリッジ対応と思える設計──、
オーディオ雑誌にも軽針圧専用トーンアームといった紹介がなされていた。

けれど、実のところ、3009/SeriesIIIに導入された諸々のことは、
軽針圧カートリッジ専用ということよりも、
高感度トーンアームの実現のためなのではなかろうか。

このころのアイクマンがカートリッジに関して、
あいかわらずシュアーだったのか、それとも他のカートリッジへと移っていたのか、
もしくは他のカートリッジも使うようになっていたのか。
いまのところ、そのことに関する情報は何も持っていないけれど、
もしかすると2g前後の針圧のMC型カートリッジを使っていたのではないか、
3009/SeriesIIIは、
その種のカートリッジを含めて使えるように開発・設計されたトーンアームのような気がする。

Date: 6月 11th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その7)

SMEの最初のトーンアーム3012は、よく知られているように、
瀬川先生が何度か書かれているように、オルトフォンのSPU、
それもGシェル・タイプを活かすために、アイクマンが自らのためにつくったモノである。

だからSME(アイクマン)は、プラグイン・コネクターと呼ばれる、
カートリッジを含めたヘッドシェルの着脱を容易にする交換方式を採用している。

これこそはオルトフォンが最初に考案した規格であり、
SME(アイクマン)がそれに倣ったわけである。

そしてSMEのトーンアームの、こういうところを日本のメーカーがマネしてくれて、
日本ではカートリッジの交換が容易にできるトーンアームが主流となっていった。

実際、SMEの初期の3012には、オルトフォン製のヘッドシェルが付属していたらしい。

このカートリッジの交換のための規格を日本を広めたきっかけとなった存在が3012だけに、
日本では3012はユニバーサル・トーンアームのように受けとめられがちである。

けれど、くり返すが、3012はアイクマンにとってSPU専用のトーンアームなのである。

そのアイクマンはSPUばかりをずっと使い続けてきたわけではなく、
SPUからシュアーのカートリッジへと移行している。
そのころSMEはシュアーと提携もしていて、アメリカではShure = SMEのブランドで売られていたらしい。

そうなると3012ではシュアーのカートリッジには、もう不向きである。
だからアイクマンは1972年に3009/SeriesII Improvedを発表し、
シュアーのカートリッジにターゲットを絞っているかのように、
最大針圧を1.5gまで、と軽針圧用となっている。

Date: 5月 29th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その6)

SMEのトーンアームのラテラルバランスの調整がうまく行われていない例が、
意外にも多いことはずっと以前からいわれていたことである。

瀬川先生はSMEのラテラルバランスの調整について、何度か書かれている。
SMEにしても、1980年に復活させた3012-R Specialでラテラルバランスの調整機構を見直し、
オリジナルの3012のラテラルバランス調整とは異り、スムーズで精度の高い調整が行なえるようになっている。

私が最初に自分のモノとしたSMEのトーンアームは、その3012-R Specialだったから、
特にラテラルバランスの調整を面倒なものとは感じなかった。
その後、オリジナルの3012のラテラルバランスをみて、
これだと調整は面倒かも、と思ったものの、
型番の末尾にRが付くようになっからのモデルでは、
ラテラルバランスの調整は、一度身体感覚として身につけてしまえば、面倒なことではなくなっている。

3012-R Specialは復刻モデルではなく、はっきりとした改良モデルであり、
このラテラルバランスの調整機構の他にも、ゼロバランスをとるためのメインウェイとの移動も、
後端のノブを回すヘリコイド式にするなど、使い勝手がよくなっている(調整がやりやすくなっている)。

こういった改良点は、どういうい意味をもつのか、
そしてユニバーサル・トーンアームの代名詞のように語られるSMEのトーンアーム、
そしてオーディオ機器の「調整」のことについて、もう少し考えていきたい。

Date: 5月 29th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その5)

SMEのトーンアームのラテラルバランスの調整にしても、
プレーヤーの水平が出ていれば音にさほど影響はない、という人がいるわけだから、
マッキントッシュのMC275の出力管KT88の差し替えによる音の違いなんて、
KT88の製造メーカーが同じならば、そんなものは気のせい、と片づけてしまう人もいておかしくない。

結局、こういう「調整」は、音の違いがわからない人には、やる意味のないことになる。
けれど、そこには微妙な差異がある。
そこに気づくか気づかないのか、そこに違いがある。

気づいてしまうと、調整をすることになる。
最初は気がつきにくいことだってあるだろう。
それでも、多くの人が調整が必要といっていることには、それだけの意味がある。

気がつこうともせず、気がつかないままに、
ラテラルバランスをやる必要はない、と思い込んでしまうのも、その人次第であり、その人の自由でもある。

そういう人に対して、ラテラルバランスをとったほうがいいですよ、とはもういわないようにしている。
本人が気がつかないかぎり、すこしでも調整の必要性があるのか、と思わないかぎり、
他人の声は届かないのだから。

でも、そういう人にひとつだけいいたいのは、
だからといって、SMEのラテラルバランスはとる必要がない、などと、いわないでもらいたい。
それだけである。

Date: 5月 26th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(その4)

マランツの管球式パワーアンプで出力管(EL34)を交換したら、
ACバランス、DCバランスとともに出力管それぞれのバイアスの調整が必要となる。

マッキントッシュの管球式パワーアンプで出力管(MC275ならばKT88)を交換しても、
ACバランス、DCバランス、出力管のバイアスの調整は不必要である。
なのだが、私は五味先生の、この文章をおもいだす。
     *
 もちろん、真空管にも泣き所はある。寿命の短いことなどその筆頭だろうと思う。さらに悪いことに、一度、真空管を挿し替えればかならず音は変わるものだ。出力管の場合、とくにこの憾みは深い。どんなに、真空管を替えることで私は泣いてきたか。いま聴いているMC二七五にしても、茄子と私たちが呼んでいるあの真空管——KT88を新品と挿し替えるたびに音は変わっている。したがって、より満足な音を取戻すため——あるいは新しい魅力を引出すために——スペアの茄子を十六本、つぎつぎ挿し替えたことがあった。ヒアリング・テストの場合と同じで、ペアで挿し替えては数枚のレコードをかけなおし、試聴するわけになる。大変な手間である。愚妻など、しまいには呆れ果てて笑っているが、音の美はこういう手間と夥しい時間を私たちから奪うのだ。ついでに無駄も要求する。
 挿し替えてようやく気に入った四本を決定したとき、残る十二本の茄子は新品とはいえ、スペアとは名のみのもので二度と使う気にはならない。したがって納屋にほうり込んだままとなる。KT88、今一本、いくらするだろう。
 思えば、馬鹿にならない無駄遣いで、恐らくトランジスターならこういうことはない。挿し替えても別に音は変わらないじゃありませんか、などと愚妻はホザいていたが、変わらないのを誰よりも願っているのは当の私だ。
 だが違う。
 倍音のふくらみが違う。どうかすれば低音がまるで違う。少々神経過敏とは自分でも思いながら、そういう茄子をつぎつぎ挿し替えて耳を澄まし、オーディオの醍醐味とは、ついにこうした倍音の微妙な差異を聴き分ける瞬間にあるのではなかろうかと想い到った。数年前のことである。
     *
KT88を買ってきて差し替えれば、MC275は何の問題もなく動作する。
けれど音が、それまでとまったく同じかというと、そんなことはありえない。

音が変らなければ、五味先生だってKT88を必要な本数(四本)だけ購入すればすむ。
なのにその四倍の本数を買ってきて、差し替えては音を聴かれていたわけだ。

十六本のKT88の中から四本を選び音を聴くわけだが、
同じ四本でも、どのKT88をLチャンネルの上側にもってきて、どれをペアにするのか。
Rチャンネルの上側にはどれを選ぶのか。そしてペアにするのはどのKT88なのか。

十六本のKT88の組合せの数を計算してみたらいい。
その音を聴いて判断していく作業──、これも「調整」である。