Archive for category カタログ

Date: 5月 16th, 2017
Cate: カタログ, ジャーナリズム

カタログ誌(その3)

カタログとカタログ誌は、同じとはいえない。
カタログ誌ときいて、どういうものを思い浮べるかによって、
同じではないか、という人もいようが、私はカタログとカタログ誌ははっきりと分けている。

HI-FI STEREO GUIDEは、まずジャンルごとに分けられている。
スピーカーシステム、フルレンジユニット、トゥイーター、スコーカー、ドライバー、ホーン、
ウーファー、エンクロージュア/ネットワーク、
アンプもプリメインアンプ、コントロールアンプ、パワーアンプ、レシーバー、チューナー、
グラフィックイコライザー、エレクトリッククロスオーバーなど、といったようにである。
さらにブランド別、価格順で掲載されている。

途中から新製品には☆、製造中止の製品には★がつくようになった。

カタログではなくカタログ誌に近い存在といえるのが、
ディスコグラフィ(discography)であるが、
ディスコグラフィとカタログ誌も違う面がある。

私はクラシックを主に聴くために、
ここでのディスコグラフィとは、あくまでもクラシックにおけるディスコグラフィのことである。

ステレオサウンドでは、30号から「ディスコグラフィへの招待」という記事が始まった。
30号ではモーツァルトの三大オペラ(フィガロの結婚、ドン・ジョヴァンニ、魔笛)、
31号ではマーラーの交響曲、32号ではブラームスの交響曲、33号ではカール・ベーム、
35号は小沢征爾、36号はウラディミール・ホロヴィッツ、38号はゲオルグ・ショルティと続いた。

すべてのディスコグラフィは浅里公三氏による。

黒田先生は、31号で、
《もしディスコロジストという言葉がありうるなら、ぼくの知るかぎり日本におけるもっともすぐれたディスコロジストである浅里公三氏によってつくられた》
と書かれている。

Date: 5月 16th, 2017
Cate: カタログ, ジャーナリズム

カタログ誌(その2)

カタログ誌。
オーディオの世界では、
ステレオサウンドが半年ごとに発行していたHI-FI STEREO GUIDEがよく知られている。

ステレオサウンド本誌よりも高くて、
中学生のころは、その数百円の差がけっこう大きくて毎号は買えなかった。

いつのころからか、
ステレオサウンドをカタログ誌になってしまった……という批判を耳にするようになった。
そういいたくなる気持はわかっても、
カタログ誌には、そういった悪い意味もあるけれど、
HI-FI STEREO GUIDEはきちんとしたカタログ誌であり、いいかげんな編集ではなかった。

とにかくすべてを網羅する。
それがカタログ誌でもっとも重要とされることである。
カタログ誌が、これは載せないなどをやっていてはカタログ誌たりえない。

網羅されることで気づくことは、意外にある。
私が買ったHI-FI STEREO GUIDEは、’76-’77年度だった。
ステレオサウンドで働くようになって、それ以前のHI-FI STEREO GUIDEを見ていた。

’74-’75年度版、これが最初の号である。
’74-’75年度版を眺めていると、
この製品とあの製品は、同じ時代に現行製品だったのか、と驚く。

マークレビンソンのLNP2はもう登場していた。
LNP2が載っているページの隣には、
アルファベット順だからマッキントッシュが掲載されている。

当時のマッキントッシュのラインナップは、
C26、C28の他にチューナー付きのMX115があり、
管球式のC22も、まだ現行製品として残っている。

パワーアンプのMC275も、チューナーのMR71も、この時はまだ現行製品だった。

スピーカーでも、ジェンセンのG610B。
私は、この同軸型3ウェイユニットの存在を、ステレオサウンド 50号(1979年春号)で知った。
その時はずっと以前に製造中止になっていたユニットだと思っていた。

でも’74-’75年度版では、まだ現行製品である。
JBLからは4350、4341といった4ウェイのスタジオモニターが発売されていた。

オーディオ機器にも、世代といえるものがある。
その世代が切り替るのを認識するうえでも、カタログ誌は重宝するし必要である。

Date: 10月 2nd, 2008
Cate: カタログ, ジャーナリズム

カタログ誌(その1)

1970年代は、年に2回発行されていたハイファイ・ステレオガイド。
年1回になり、名称もオーディオガイド・イヤーブックにかわり、
1999年末の号で休刊になった、いわゆるカタログ誌。

オーディオがブームのころは、販売店もカタログ誌を発行していたし、
サウンドステージを発行していた音楽出版社も一時期発行していたのに、
いまオーディオのカタログ誌はない。

カタログ誌なんて、まったく役に立たないから不要だ、と思われている方もいるだろう。
それほど鮮明ではない、モノクロの写真1枚とある程度のスペックと簡単なコメントだけでは、
なんにもわからないから、というのも理解できなくはない。

でも、意外にカタログ誌は楽しめる。

趣味にしている自転車の世界では、カタログ誌がけっこう発行されている。
フレーム本体、完成車のカタログに、周辺パーツのカタログといったぐあいに、
複数の出版社から出ていて、写真がカラーで大きく掲載されていることもあって、
手にとって見ているだけで、すなおに楽しい。

カタログ誌は、年月とともに資料的価値が高くなってくる。

カタログ誌が一冊あれば、瀬川先生のように電卓片手に、あれこれ組合せを空想しては楽しめる。
カタログ誌は、手元に一冊あると重宝する。

カラー写真で、しかも1枚ではなく数枚の写真を大きく、
スペックも発表されている項目はすべて書き写し、
どういう製品なのかについて、コメントも掲載するとなると、
ネットで公開するのが最善なのかもしれない。

ネットの最大の特長と私が考えているのは、即時性ではなく、アーカイヴ性である。

ネットでのカタログ誌はページ数の制限を受けない。
現行製品ばかりでなく、製造中止になった製品も資料として残していける。