Archive for 11月, 2009

Date: 11月 30th, 2009
Cate: 理由

「理由」(その5)

まわりには、だれもいなかった。
けれど、ずっと過去には、ひとりいた。

母方の祖父と私はそっくりらしい。
子供のころ、祖父を知る親戚の人からは、
会うたびに、「ほんと生き写しね、ますますそっくりになってきた」といわれていた。

私が中学二年のころから、クラシックとオーディオに関心をもち始めたら、
「不思議ね、クラシック好きなところまでそっくり」といわれるようになった。

祖父は母が幼いころに、趣味であったスキーでの事故のせいで早くに亡くなっている。
だから、母も祖父がクラシックを聴いていたことは、ほとんど記憶にないらしい。

かなりのクラシック好きで、蓄音器にも凝っていたときいている。

ふと想うのは、オーディオを選んだのは、自然なことであり、必然だったのかもしれない、ということ。

Date: 11月 29th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その59)

出力を2系統もつコントロールアンプはいくつかあるが、その大半は2組の出力端子を単に並列接続しているだけで、
2系統のオーディオ機器が並列に接続される場合のループについて配慮されているわけではない。

出力端子ごとにラインアンプを専用にそなえている、
つまり2組(4チャンネル分)のラインアンプをもつコントロールアンプがあったとしても、
コントロールアンプ、パワーアンプ間の信号ループの重なりがすこし減りはするものの、
電源部まで含めたループは、いまだ複雑なままである。

それにモジュール形式のコントロールアンプで、ライン入力の音を聴くさいに、
フォノイコライザーモジュールを取り外すと、それだけで音は改善される。

私が実際に試した例ではマークレビンソンのJC2、GASのテァドラだが、
どちらもフォノイコライザーがなくなりラインアンプモジュールのみとなると、
あきらかな聴感上のSN比の向上だけでなく、
音場感の広がり、余韻の消えていくさまの表情が際立ってくる。

それに力強さも増す。

不要なモジュールがなくなったことによる電源部の余裕が増したこと、
フォノイコライザーモジュールが発するノイズがなくなったこと、などによる音の変化である。

Date: 11月 29th, 2009
Cate: ジャーナリズム

あったもの、なくなったもの(補足)

リーダーとヒーローについて考える。

ヒーローとは、「希望」をあたえてくれる人のことだ。

Date: 11月 28th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その58)

通常、サブウーファーを加える際には、チャンネルデバイダーを用意し、
メインスピーカーのローカットと、サブウーファーのハイカットを行うとともに、信号を分岐する。

サーロジックのサブウーファーはエンクロージュア内部に、
チャンネルデバイダーとパワーアンプをおさめているおかげで、コントロールアンプの出力を分岐し、
メインスピーカー用のパワーアンプとサーロジックの入力端子に接ぐだけですむ。

使いやすい仕様であることは認めるが、信号のループについて考えると、この接続方法で万全とは、やはりいえない。

Date: 11月 27th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その57)

1989年に思いついたトランスの負性インピーダンス駆動の実験は、まだだ。

このころは、まだ信号系のループについての明確な考えを確立しておらず、
トランスの附加を、トランスという「音味」を、
うまみだけを抽出してシステムにとり入れたいという観点からの発想から捉えていて、
技術的な必要性をつよく感じていたわけではなかったことも、
実験をここまでやらずにほったらかしにしていた。

けれど10年ほど前から信号のループにどう対処するか、そしてサーロジックサブウーファーの導入によって、
コントロールアンプの出力にトランスを附加することを真剣に考えている。

Date: 11月 26th, 2009
Cate: 黒田恭一

黒田恭一氏のこと(その16)

サウンドコニサーの取材でアクースタットのスピーカーを聴かれる2年前のステレオサウンド 54号は、
スピーカーの試聴テストが特集記事で、菅野沖彦、瀬川冬樹、黒田恭一の3氏が参加され、
巻頭座談会として「スピーカーテストを振り返って」が掲載されている。

そこで、次のことを語られている。
     *
結局、時代の感覚への対応のしかただという気がするのです。たとえば、ぼくは♯4343の旧タイプを持っていますが、新旧で、これはちょっと考え直さなければいけないかなというくらい違っていると思うのです。かつての♯4343の音というのはかなり煮詰まった音だとしますと、Bタイプはもう少し開放された音の方向に向かっている。
     *
新タイプの4343、つまり4343BWXの黒田先生の試聴記はこちらをご覧いただくとして、
このスピーカー試聴テストで、黒田先生が惚れ込まれたのは、ソニー/エスプリのAPM8だ。
APM8について、座談会の中で、シカゴ交響楽団に例えられている。
     *
エスプリというのはとてもまじめに音楽を聴く気持にさせる音ですね。
たとえて言いますと、ぼくが指揮者で、メイジャー・オーケストラのどこでも指揮させてくれる、というのと似ていると思うのです。すると、エスプリはシカゴ交響楽団ですね。非常に技量が高くて、しかしウィーン・フィルでもベルリン・フィルでもない、シカゴ交響楽団だと思うのです。
聴いている人をウキウキさせるとか、そういう言葉ではちょっと言いにくいスピーカーなのですが、音場感の広がりとかノイズと楽音の分離などのクォリティ面で、やはり素晴らしいスピーカーだと思いました。
     *
ひじょうに興味深い例えだと思う。

Date: 11月 25th, 2009
Cate: ジャーナリズム

「言いたいこと」を書く

昨年の9月3日から書きはじめた、このブログも、ひとつ前の記事が1000本目。
気持の上では、1クールが終って、この記事から2クールがはじまるといったところ。

ブログをはじめた理由は、ひとつだけ言いたいことがあったからで、それが最初の記事「言いたいこと」だ。

この1本だけを書きたいがために始めて、この1本だけでは誰も見にこないだろうから、
この1本をできるだけ多くの人によんでもらいたいから、
ブログの性質上、できるだけ毎日1本、なにかを書き続けるのが、多くの人の目にとまるのだから、
できるだけ毎日書くようにしよう、というぐらいの心構えだった。

それから日記的な内容は、できるだけ書かないようには決めていた。
これに関連することとしては、どんなシステムを使って、なにを調整して、今日は何を聴いた、
といったことがらも極力書かないようにしている。

他の人はともかくとして、すくなくとも編集経験ありの私が、
自分の生活をネタにしなければ書き続けることができない、というのでは恥ずかしいことであり、
己の無能さをさらけ出すものだと考えているからだ。

書くことに無能であれば、書かなければいいのだから。私はそう考える人間だ。

これまでの1000本は、すこし遠慮して書いてきたところもある。
これからの1000本は、「言いたいこと」をはっきりと書いていく。

Date: 11月 24th, 2009
Cate: Noise Control/Noise Design
2 msgs

Noise Control/Noise Designという手法(その1)

2006年10月から、ぼんやりとではあるが考えてきていることがある。
ノイズコントロールということだ。

ノイズ(Noise)は、一般的には、日本語訳では「雑音」になってしまう。
だが雑音と言ってしまうのと、ノイズという言葉のあいだには隔たりがあるように感じてきた。

雑音と言ってしまえば、不要な存在と捉えてしまいがちだが、はたしてノイズは害だけではないはず。
ノイズの存在が、音を良くしていくこともあり得るし、
録音系・再生系で欠落してしまった信号を補えるのも、またノイズの存在である、と直感的に確信している。

Date: 11月 24th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その56)

トランスの巻線に、超電導ワイヤーが使われるようになったら、
トランスの性能、音も、大きく変化していくことだろうが、それがいつの日なのかはまったく想像できない。

まだ世の中に現れていないトランスよりも、目の前にあるトランスのよさをできるだけ活かし、
悪さをいかに抑えるか、であるが、コントロールアンプの出力に使うのであれば、
トランスを負性インピーダンス駆動するという手がある。

負性インピーダンス駆動といえば、1988年に、ヤマハがAST(のちにYSTに改称)方式で、
バスレフ型スピーカーと負性インピーダンス出力のパワーアンプを組み合わせることで、
コンパクトなサイズで、驚くほどの低音再生を可能したことを覚えておられるだろう。

AST方式は、ウーファーのボイスコイルの直流抵抗を、負性インピーダンスで打ち消すことで、
バスレフの動作を、より理想的に環境に近づけることに目指したものである。

じつはトランスの巻線の直流抵抗を打ち消すということは、このAST方式からヒントを得た。
AST方式は、なにか新しい技術を開発したというよりも、
以前からあったふたつの技術を組み合わせることによる相乗効果によるものといえよう。

組合せが生みだす面白さが、AST方式にはある。
そして、この発想は大いに真似したいものだ。
だから、トランスと負性インピーダンス駆動の組合せを思いついた。

Date: 11月 24th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その55)

トランス固有の音を嫌う人がいるのはわかっているし、
私自身も、トランスであれば全てのものがいいと思っているわけではない。
すぐれたトランスを適切に使えば、という前提で書いているし、
けれど、残念なことにすぐれたトランスは、そう多くはない。

いわゆるトランス臭い音は、トランス本体がすぐれたものであっても、
シールドケースの処理が不適切であれば、そのよさが失われるだけでなく、
むしろトランスの悪さを目立たせてしまうことにもなる。

使っていないトランスが手元にあって、それがシールドケースが被さっているものであれば、
面倒な作業ではあるが、そのシールドケースを取りさって音を聴いてみればわかる。

シールドの難しさ、シールドがどれだけ音を変えていくのか、がはっきりと聴きとれる。

なにもトランスにシールドケースは不要といいたいわけではない。
ただすぐれたトランスが少ない以上に、すぐれたシールドを施したモノは、さらに少ないのではなかろうか。

あくまでもウワサではあるが、1980年代に作られていたアメリカのTRIADのHSシリーズの中身は、
日本のタムラ製だった、ときいている。
ただシールド(ケーシング)だけはTRIAD社で行なっていたらしい。

そして、トランス臭い音を生みだすもうひとつの原因は、巻線の直流抵抗にあるように思う。

Date: 11月 24th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その54)

トランスの巻線は、意外と長い。だから、トランスを挿入したからといって、
コントロールアンプとパワーアンプ間のループは、かえって長くなるのでは? という反論もあろう。

たしかに長さということでは、そうだろう。だがトランスはコアに密に巻いてある。
だからループの長さではなく、ループのサイズ(大きさ)ということでは、小さくなるといえるだろう。

そしてくり返しになるが、適切に挿入されたトランスであれば、ループに電源部が絡んでこないことが、
最大のメリットである。

そして、このメリットをより活かすには、単に挿入するだけでなく、
コントロールアンプであるならば、トランス出力を前提とした回路構成、
パワーアンプならばトランスの2次側、つまり受けをどうするかが、重要になってくる。

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その53)

コントロールアンプとパワーアンプを、仮に長さ2mのケーブルで接続したとものとして、
回路図を見てほしい。
そしてコントロールアンプの出力とパワーアンプの入力間に形成されるループの大きさを想像してみてほしい。
しかもこのループには、電源部も絡んでくる。
複雑で、大きいループになっている。

コントロールアンプの出力にトランスを挿入してみる。
そうすれば、トランスの2次側の巻線とパワーアンプの入力間のループとなり、
コントロールアンプの電源部は、このループに絡んでこない。
ループそのものがシンプルになり、ループもすこし小さくなる。

さらにパワーアンプの入力にトランスをいれると、コントロールアンプ・パワーアンプ間のループは、
コントロールアンプ側のトランスの2次側巻線と、接続ケーブル、
パワーアンプ側のトランスの1次側巻線だけという、さらにシンプルなループになっていく。

信号系のループをよりシンプルにし、よりサイズを小さくしていくのに、いかにトランスが有効であるか、
そしてそのためには、どうトランスを使えばいいのか、
つまりトランスの接続はどうすればいいのかは、おのずとはっきりとしてくる。

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その6)

渡辺氏は、EMT・930stについて、音が鮮明でクリアーであること、そして全体に音がしっかりしていて、
ことに低音が、ブラインドフォールドテストした7機種のなかで、いちばんしっかりしていて、
大太鼓の音がいかにも大太鼓らしく鳴っていた、と語られている。

他の6機種については、音がうすい、弦楽器がやや安手の音になる鮮明度に欠ける、
といった言葉が、共通して並んでいた。

この記事の2年前に、五味先生の「五味オーディオ教室」をくり返し読んでいた私にとって、
ここでの結果は、やっぱりそうなんだな、ということを確認することになった。

ステレオサウンド 48号には、
「プレーヤーシステムにおけるメカニズムとコンストラクションの重要性について」という、
井上先生と長島先生の対談記事も載っている。
この対談を読むと、ダイレクトドライブ型に対する不信感は、確実に増す。

48号を読んで、少なくともダイレクトドライブ型に関しては、これから先よくなっていくのであろうが、
この時点ではダイレクトドライブ型以外のプレーヤーに、
いわゆる音がよいとされるモノが集中している、そう受けとっていた。

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その15)

少なくとも国産アンプからは、磁性体は排除される方向で進んでいくと思われたが、
1991年、ビクターのモノーラルパワーアンプ、ME1000は、鋳鉄製のベース(重量33kg)に、
電源トランス、電解コンデンサー、ヒートシンクといった、
パワーアンプ内で振動源となりやすい部品をしっかり固定することで、
いわゆるメカニカルアース化(振動モードの一元化)をはかっていた。

ME1000、1台の重量は83kgである。

今年、今度はTADから、鋳鉄製ベースを採用したパワーアンプが登場した。M600だ。
M600の鋳鉄ベースも重量はほぼ30kgで、トータル重量は90kgと、ME1000と、ほぼ同じ規模である。
M600も、鋳鉄ベースに、電源トランス、電解コンデンサー、ヒートシンクをしっかりと固定している。

ME1000もM600も、一台のアンプに使われる鉄の量としては、過去最大ではなかろうか。
なぜ、あえて鉄を選んだのだろうか。

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その14)

たとえば上杉アンプのコントロールアンプ、U・BROS1は、信号系の配線材の一部に鉄線が使われていることは、
設計者の上杉先生がなんどか記事に書かれているから、ご存じの方も多いだろう。

上杉先生は、鉄線を使ったことについて、スイカにかける塩を例えに出される。
スイカの甘味をきわだたせるために、ほんのすこし塩をふりかけるのと同じことで、
ある箇所にほんのわずか鉄線を用いることで、音がきわだってくる、とのことだ。

刺激的な音が出てくることを、もっともきらわれる上杉先生だけに、
確信犯的な、鉄線の使い方だ。

むやみやたらに鉄線を使ったら、音が濁って、がさつくだけだろう。
どこにどれだけ使うかは、
それまでアンプを数多く造ってこられた経験則によるものであることは、容易に想像できる。

アンプに関しては、1980年ごろ登場したサンスイのプリメインアンプ、AU-D907Limitedが、
銅メッキをシャーシーだけでなくネジ一本一本にまで施すことで、
磁性体に起因する歪を排除すのを目指したころから、磁性体の排除が活発になってきた。

たしかに磁性体の排除は効果があった。