Archive for 8月, 2021

Date: 8月 31st, 2021
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(ダイヤトーンの終焉か)

今月上旬に、ダイヤトーンのスピーカーが製造中止になっていることを知った。
ダイヤトーンのサイトに行くと、
小さく「2021年3月 生産終了」とある。

スピーカーシステムのDS4NB70が、ひっそりと製造中止になっていたわけだ。
オーディオ店へは、それとなく伝えてあったらしい。

後継機種のことは、なんら情報はない。
はっきりとしたことはいえないが、
このままダイヤトーン・ブランドのスピーカーシステムは消えてしまうのか。
そんな感じである。

DS4NB70は2017年のOTOTENで聴いている。
DS4NB70の音よりも、
楽しそうにレコードをかけていくダイヤトーンのスタッフの印象が強く残っている。

別項でも書いているが、昭和のオジサンという感じで、キャラが濃い人だった。
私がステレオサウンドで働いていたころは、
濃いキャラの人が、各社に一人はいた。

ダイヤトーンは、こういう人が仕事をやれているのか、と思いながら、
その人の話を楽しんで聞いていた。

でもDS4NB70は製造中止になっている。
売れなかったのが理由なのか。
そうであろうけれど、振動板の製造枚数が決っていたのかもしれない。

静かな消え方だ、とおもう。

Date: 8月 31st, 2021
Cate: 世代

世代とオーディオ(gaussのこと・余談)

六年ほど前に、
「世代とオーディオ(ガウスのこと)」というタイトルでガウスのことを書いていた。

今日、ガウスをgaussとしたのに、少しだけ理由がある。
数日前、AEAを検索してみた。

AEAといっても、若い世代の人たちは知らなくて当り前だし、
私と同世代であっても「AEAって、あったっけ、そんなブランド?」である。

1970年代後半、マークレビンソン、AGI、DBシステムズなどが登場した時期に、
やはりアメリカからAEAというブランドのコントロールアンプが輸入された。

シュリロ貿易が輸入元だった。
Analogue 520という型番で、298,000円だった。
トーンコントロールも備えていた。

どんな音なのかはわからない。
でも、シュリロ貿易が輸入しているのだから、
変なモノではないはず、と信用していた。

「AEA audio」で検索したら、すぐに見つかった。
まさかいまも会社があるとは思っていなかった。

いまはアンプは作っていない。
AEAのウェブサイトを見れば、どういう活動をしているのかすぐにわかる。

それでガウスである。
ガウスは活動していない。

それでもガウス(gauss)の名前は、復活している。
AVANTONE(アヴァントーン)というブランドのスピーカーの型番で復活している。

アヴァントーンの輸入元は宮地商会。

宮地商会のサイトには、AURATONEの再来、とある。
なので小型モニタースピーカーを手がけている会社のようだ。

アヴァントーンの新製品が、Gauss 7である。

“Gauss: the legend is back.”とある。

さらに《Gauss Speaker Companyの失踪から数十年・・・昔ながらのビンテージニアフィールドモニターのスナップとニュースクールモニターの帯域幅と周波数応答を持ち合わせたGauss 7(ガウスセブン)として帰ってきました。》
と書いてある。

フロントバッフルのgaussの文字は、ガウスのロゴそっくりである。
ガウスの元関係者が、携わっていたりするのか、そのへんのところは不明。

Date: 8月 30th, 2021
Cate: 新製品

JBL SA750(その11)

そろそろステレオサウンド秋号の発売時期。
おそらくJBLのSA750の試聴記事が載っているはずだ。

カラーページで取り上げられるのではないだろうか。
モノクロ1ページということはないはずだ。

カラー見開き2ページでの紹介。
書いているのは、おそらく小野寺弘滋氏と思う。

誰だろう? と考えてすぐに浮びもするし、
消去法でいっても小野寺弘滋氏が残る。

カラーかモノクロなのかは断言できないけれど、
小野寺弘滋氏が書いているのは、断言できる。
他にいないからだ。

SA600とのデザインの比較について書いてあるのだろうか、
アーカムのSA30のことはどうなのだろうか。

SA750の内部写真は載っているのか。
載っているならば、アーカムのSA30がベースモデルかどうかは一目瞭然である。
Googleで画像検索すれば、SA30の内部写真はすぐに表示される。

SA750の内部写真を載せているのか載せていないのか。
その説明をどう書いているのか。
このあたりも興味がある。

といっても、いちばん興味があるのは、その音である。

瀬川先生は、SA600のことを、こう書かれていた。
     *
 そこに思い当ったとき、記憶は一度に遡って、私の耳には突然、JBL・SA600の初めて鳴ったあの音が聴こえてくる。それまでにも決して短いとはいえなかったオーディオ遍歴の中でも、真の意味で自分の探し求めていた音の方向に、はっきりした針路を発見させてくれた、あの記念すべきアンプの音が──。
     *
瀬川先生は、ステレオサウンド 52号の特集の巻頭で、
《SA600を借りてきて最初の三日間というものは、誇張でなしに寝食を惜しみ、仕事を放り出して、朝から晩までその音に聴き耽った》
とも書かれている。

1981年、ステレオサウンド別冊の巻頭では、
《およそあれほど無我の境地でレコードを続けざまに聴かせてくれたオーディオ機器は、ほかに思い浮かばない》
と書かれている。

SA600とSA750は違うことは承知している。
時代も違う。
それでも、どこか期待してしまう。

期待するだけ、無駄と半分わかっていても、そうしてしまう。
そういう音は、おそらくSA750からは鳴ってこない(はずだ)。
聴いてもいないのに、そう書いてしまっている。

私がオーディオ評論家だったとして、
SA750の新製品紹介の依頼があったとしたら、即答でことわる。

SA600への思い入れを無視して、なにかを書けるわけではないからだ。

Date: 8月 30th, 2021
Cate: ディスク/ブック

1992 New Year’s Concert in the 150th Jubilee Year of the Wiener Philharmoniker

TIDALで聴けるようになったソニー・クラシカルのMQA。
いったいどれだけのアルバムがMQAで聴けるようになったのかは、数え切れない。

クラシックだけでも、SACDのタイトル数を超えているような感じすら受ける。

MQAの恩恵をもっとも受けるのは、44.1kHz、16ビットのデジタル録音かもしれない。
優れたアナログ録音も、MQAでなら、さらに驚くことが多い。

それでも44.1KHz、16ビットのデジタル録音のなかには、
MQAになったことで、こんなにも音が良かったのか、と、もっと驚くことがある。

デジタル録音におけるフォーマットは器そのものであり、
フォーマットの制約を受けるわけだが、
同じフォーマットであっても、優れた録音とそうでない録音とがあるように、
フォーマットだけで音の良し悪しが決定するわけではない。

そんな当り前のことを、カルロス・クライバーの1992年のニューイヤーコンサートを、
MQA Studioで聴くと、こんなにも凄かったのか、とあらためて驚き直している。

カルロス・クライバーのブラームスの四番は、当時よく聴いていた。
でもカルロ・マリア・ジュリーニの四番を聴いたあとでは、
クライバーの(音楽の)呼吸は、どこか浅いように感じてしまった。

オーケストラはどちらも同じだけに、よけいにそんなことを感じていた。
それも1989年のニューイヤーコンサートを聴いて、消えてしまった。

カルロス・クライバーにこんなことを書くのは失礼なのは承知で、
クライバーも一皮剥けた、とそう感じた。

ブラームスの四番に感じた、呼吸の浅さのようなものは、もうなくなっていた。

クライバーの1992年のニューイヤーコンサートも、
少し前にMQAになった。
今日、MQAで聴いた。

もう驚くしかなかった。
それに、音が素晴らしい。

聴いていて、音楽好きの友人たちに、
クライバーの1992年のニューイヤーコンサート、MQAで聴いてみてよ、
そんなメールを送りたくなるほどだった。

ソニー・クラシカルは、44.1kHz、16ビットのデジタル録音も、MQAにしている。
けれどほかのレーベルは、そうではない。
ドイツ・グラモフォンも、やっていない。

ドイツ・グラモフォンには、
ブラームスの四番、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」がある。

「トリスタンとイゾルデ」だけでもいい。
カルロス・クライバーの「トリスタンとイゾルデ」を、MQAにしてほしい。

TIDALではMQAのマークが、クライバーの「トリスタンとイゾルデ」についているが、
MQAではなく、ついているだけである。

でも、これがいつか本当になってほしい。

Date: 8月 29th, 2021
Cate: 新製品

JBL SA750(その10)

9月発売のステレオサウンド 220号の表紙になっているかもしれないSA750。

SA750がアーカムのSA30をベースにしていることは、
両機のリアパネルを見較べればすぐにわかることだ。

音はどうなのかは、いまのところわからない。
JBLのプリメインアンプとしてチューニングしてくるのか。

SA750の発売が延び延びになっているのは、
このチューニングに手間取っている──からではなく、
おそらく部品調達が大変なためなのだろう。

半導体詐欺が起っている、ともきく。
それほど半導体不足は深刻な状況らしい。

そうなるとSA750の生産台数も影響を受けるのだろうか。
SA750はJBLの75周年記念モデルで、最初から生産台数限定である。

何台製造されるのかは発表されていない。
当初の予定ではけっこうな台数を製造するつもりだったのかもしれない。
それが半導体不足の影響で、減ることだって考えられる。

限定生産ということは、
今年のステレオサウンドの年末の号(221号)では、どう取り扱われるのだろうか。

優れた製品であるならば、ステレオサウンド・グランプリに選ばれるだろう。
ではベストバイは、どうなるのか。

221号が発売にある時点で、SA750は予約で生産台数がうまり、
もう買えなくなっている可能性もある。

ステレオサウンド・グランプリは、
その一年に発売になった優れたオーディオ機器に贈られる賞だから、
221号発売時点でSA750が買えなくなっていても、問題はない。

けれどベストバイは、そうではない。
買える製品でなければ、「ベストバイ」とは呼べないからだ。

Date: 8月 28th, 2021
Cate: 夢物語

真夏の夜の戯言(その3)

twitterをみていたら、
QUJILA(くじら)、エピック・ソニー時代の全アルバム配信が今日から開始、
というツイートがあった。

QUJILAというグループを知らない。
ただエピック・ソニーのところにだけ反応しただけであって、
ならばTIDALにもあるのかな、と思ったところ、MQA Studioで配信されていた。

早い。
この早さは、どういうことなのだろうか。

近いうちに、なにか発表があるのだろうか。

Date: 8月 28th, 2021
Cate: 世代

世代とオーディオ(実際の購入・ヤフオク!)

数日前に、ケンウッドのプリメインアンプL02Aが落札されていた。

L02Aは電源が別筐体のアンプである。
なのに、そのヤフオク!には、アンプ本体のみがジャンク扱いで出品されていた。

電源のないL02Aは、それこそジャンクに近いわけで、それほど高値になるわけはない。
L02Aは優秀なアンプである。

パワーアンプとしてみても、別項で書いているように非常に優秀である。
ステレオサウンドでのインピーダンスの瞬時切り替えでの測定で、
きわめて優れた特性をみせてくれた。

L02Aの何倍もする価格のセパレートアンプ、
物量が投入されたパワーアンプよりも優れていた。

その優秀さは感心するしかないほどだったわけで、
手頃な値段で落札できるのであれば、いま聴いてみると、
どんな印象を受けるのだろうか、という興味はある。

でも電源なしのL02Aには興味はない。
電源を自作することもできないわけではないが、
考える以上にたいへんな手間がかかる。

出品者のほかの出品のところをクリックしてみたら、
L02Aの電源を、別に出品している。
なぜ、いっしょに出品しないのか、不思議である。

どちらも落札されていた。
私は、てっきり同じ人がアンプ本体も外部電源も落札したのかと思っていたら、
別の人がそれぞれを落札していた。

アンプ本体のみの人、外部電源のみの人。
L02Aをすでに所有していて、補修パーツの予備として落札したのだろうか。

出品者の意図も私には理解できない。
なぜ別個に出品したのか。

落札者の意図も理解できない。
しかもL02Aの出品(こちらはアンプと電源混み)は他にもあったからだ。

こういうもの、誰が買うんだろう、と思うのが売れたりするのは、
ヤフオク!に限ったことではない。

それぞれを落札した人は、それを出品するのか。
それともなんとかして使っていくのだろうか。

Date: 8月 28th, 2021
Cate: 情景

情報・情景・情操(音場→おんじょう→音情・その6)

その5)から約一ヵ月。

「エマニエル夫人」のポスターは手に入れられるのか、とふと思った。
検索してみると、ヤフオク!が表示される。

ヤフオク!をのぞいてみると、ある。
1974年当時のポスターもある。

五十年近く前のポスターだから新品というわけではない。
それにサイズがA0だから、大きい。

ヤフオク!にはA3サイズの復刻ものも出ている。
私としては、こちらのほうがいい。

アクリルのフレームに入れて、飾っている。
こうやってブログを書いていると、視界に入ってくるところに置いている。

毎日眺めているわけだが、いやらしいポスターとは感じていない。
いま見ると、煽情的とも感じない。

そもそも、このポスターは煽情的だったのか──、
そんなことも思うようになっている。

それで、ふと、なぜ、このポスターを買おう(欲しい)と思ったのかについて、
あれこれ考えてみた。

ただ欲しかったから、それで十分ではないか、といわればそうなのだし、
買った時はそうだったといえる。

でも毎日眺めていると、そんなことを考えてしまう。
何を求めてなのだろうか、と。

官能性なのだろう、きっと。

Date: 8月 27th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その14)

いま、目の前にハルアンプのIndependence TypeIIの、
ひじょうに程度のいい中古が出てきたとしよう。
価格も手頃だとして、買うのか、と問われると、欲しいけれど……、となるかもしれない。

Independence TypeIIの回路構成は、はっきりとフォノイコライザーアンプである。
二段差動回路のユニットアンプの二段構成、ラインアンプにカソードフォロワーをもってきて、
入力セレクターとレベルコントロール機能を備えたのがIndependence TypeIIだ。

いまもアナログディスク再生がメインであれば、
SAEのMark 2500と組み合わせるコントロールアンプとしてIndependence TypeIIは、
第一候補といえるけれど、私はそうではない。

再生の軸足はデジタルである。もっといえばMQAである。
そうなるとIndependence TypeIIをラインアンプとしてみた場合、
入力セレクターとレベルコントロール(東京光音製だったはず)、
それにカソードフォロワーだけとなる。

それで音が好ましければ、それでもいい──、
そう言い切れないところが、わたしのどこかにある。

Independence TypeIIのラインアンプだけしか使わないのはもったいない、
そんな気持とともに、メリディアンの218とMark 2500のあいだに、
あえてコントロールアンプを介在させるのだから、
もっと積極的な理由(おもしろさ)が欲しい、というのが本音でもある。

とはいえ実際にIndependence TypeIIと出逢えたならば、買ってしまうだろう。

Date: 8月 26th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その13)

ステレオサウンド 50号の、新製品紹介の記事で、
マッキントッシュのC29とハルアンプのIndependence TypeIIが並んでの掲載は、
当時は感じなかったことだが、いま見るとなかなかに対照的なアンプを、
二台並べたものだな、と感心する。

それが当時のステレオサウンド編集部の意図だったのかどうかはなんともいえない。
注目度のかなり高い機種は2ページで、そこまでではないけれど高い機種は1ページ。
注目度がそれほどでもない機種は1ページに数機種という扱いだったから、
自然とそうなっただけのことだろう。

それでも偶然とはおもしろい。

C29はC28の後継機といわれていた。
C29の少し前に登場したC27はC26の後継機であった。

型番、フロントパネルからいえば、C29はC28の後継機といえる。
けれど回路構成に目を向ければ、C29はC32の機能簡略機である。

C26とC28は、いわゆるディスクリート構成だった。
C27もそうである。

C27の使用トランジスター数はかなり少ない。
この時代、すでに一般的になった差動回路を採用していない。
物理投入を得意とするアメリカとはおもえない最小限度の構成が特徴といえる。

C29はOPアンプによる構成だ。
C32もそうである。

価格的にはC27の上級機にあたるC29がOPアンプ構成である。
あのことは、マッキントッシュのアンプ設計のポリシーを考えていく上で、
見逃せないポイントである。

アメリカの、伝統あるマッキントッシュが、OPアンプを積極的に採用している。
一方の日本の歴史の浅い、規模も小さいハルアンプが、
意欲的な管球式アンプを世に問うている。

Date: 8月 26th, 2021
Cate: ディスク/ブック

Bach: 6 Sonaten und Partiten für Violine solo(その9)

いままで、そうおもったことは一度もなかったのが、
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集を聴いてからというもの、
アンネ=ゾフィー・ムターのバッハの無伴奏が聴きたくなった。

ムターはバッハをまったく録音していないわけではないが、
無伴奏は録音していない。
理由はわからない。

ムターほどのキャリアならばとっくに録音していてもおかしくない。
レコード会社からもオファーがあるはずだ。

バッハの無伴奏を、いまどれだけの人が録音しているのか検索してみると、
かなりの数が表示される。

まったく知らない人もけっこういる。
TIDALでも、けっこうな数のバッハの無伴奏が聴ける。

第一番のソナタの冒頭だけを、いろんな人の演奏で聴いた。
聴いていて、なぜ、この程度の腕で、バッハの無伴奏を録音するのか?
そう思う演奏が少なくなかった。

そういう人(ヴァイオリニストとは呼びたくない)が少なくないのに、
ムターは録音していない。

ムターも内田光子と同じで、ある年齢に達するまで録音しないつもりなのか。
1963年生れのムターは、2023年に60になる。
このあたりで、バッハの無伴奏を録音するのか。

そうしてほしい。

Date: 8月 26th, 2021
Cate: ディスク/ブック
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アレクシス・ワイセンベルク(その3)

その1)で書いているように、
私はアレクシス・ワイセンベルクを好きでもないし、嫌いでもなかった。
TIDALで集中的に聴くまでは、関心がほとんどなかったのだから。

私の周りのクラシック好きの人で、
ワイセンベルクが好きという人はいない。

私の周りだけなのかもしれないが、
積極的にワイセンベルクが好きという人は、あまりいないように感じている。
実際のところ、どうなんだろうか。

好きという人がいないように、
嫌いという人も、少なくとも私の周りにはいない。

だからといって、注目に価しないピアニストなわけではない。

TIDALで聴けるワイセンベルクの録音は、
ソニー・クラシカルの分(もちろんMQA Studio)も加わって、少し増えた。

といってもそれほどの数ではないが、すべてを聴いているわけではないが、
そのなかで、驚いたのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲(EMI録音)だった。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲を、熱心に聴いてきたわけではない。
これまでに何枚か聴いてきているものの、いま手元に残っているのは、
アルゲリッチとコンドラシンのSACDのみである。

そのアルゲリッチとコンドラシンのレコード(録音)が出たころ、
レコード芸術の名曲名盤では、やはりアルゲリッチが一位になっていた。
つづいてリヒテル、ホロヴィッツの順だったと記憶している。

そして、そこにワイセンベルクの名前はなかった(はずだ)。
カラヤン/パリ管弦楽団とのチャイコフスキーは、どうだったのだろうか。

1970年の録音である。
このレコードが出たころ、私はまだ小学生でクラシックを聴いていなかった。
当時の評価は知らないが、いま聴くと(というよりもいま聴いても)驚く。

この演奏は、いまどんな評価なのだろうか。
レコード芸術の「新時代の名曲名盤500」は今月号でシューベルトまで。
チャイコフスキーはまだである。

ワイセンベルクとカラヤン/パリ管弦楽団による、この演奏(録音)に、
点を入れる人はいまいるのだろうか、と野次馬根性で興味がある。

Date: 8月 25th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その12)

ハルアンプのIndependence TypeIIは、
ステレオサウンド 50号の新製品紹介の記事に登場している。
     *
井上 ノスタルジックな音は一切なく、強烈なパルス成分をしっかりと再現して、最新のプログラムソースにも十分対応できるだけの能力をもっていますし、また音像が立体的に立ち並んで自然な音情感を聞かせてくれるといった点が、最新の真空管アンプならではのところです。
山中 音と音の切れ目が完全にあるので、おそらく立体感を感じさせるのでしょうね。
井上 楽器の演奏にともなうノイズも、演奏音のなかに埋ずもらずにしっかりと出ますし、妙に人工的に音の輪郭や細部をきわだたせたりしませんね。再生音楽といってもこの製品は、実際の音楽のもつニュアンスを聴かせる性格をもっています。従来の国内の管球式アンプの枠を破って、前向きに真空管をとらえて開発された、その姿勢に魅力を感じる製品です。
     *
Independence TypeIIは51号の439ページに載っている。
となりの438ページには、マッキントッシュのC29が載っている。

Independence TypeIIが376,000円、C29が438,000円。
ほぼ同価格帯のコントロールアンプがとなり同士で掲載されていて、
高校生だった私は、Independence TypeIIのほうに強く惹かれていた。

井上先生が語られている《従来の国内の管球式アンプの枠を破って》、
これはラックスのアンプのことだな、と思いながら読んでいた。

その意味でも、コンラッド・ジョンソン、
プレシジョン・フィデリティと同じ新しい世代の管球式アンプ、
それも国内から登場した初の、そういうアンプが、
私にとってはIndependence TypeIIだった。

コントロールアンプとしての機能は、C29が上だし、
コントロールアンプとしての完成度もC29のほうと、当時も思っていたけれど、
どちらの製品に惹かれるかは、そういうこととはほとんど関係なく、
まずは第一印象こそである。

つまりはパネルデザイン、その製品が醸し出す雰囲気である。
Independence TypeIIは、SAEのMark 2500と組み合わせてもよく似合う。

並べてみたことはないが、想像するに、なかなかいい感じである。
ただし、くり返すが音は聴いたことがないので、なんともいえないが……。

Date: 8月 24th, 2021
Cate: ショウ雑感

2021年ショウ雑感(その22)

ダイナミックオーディオ主催のマラソン試聴会も、去年に続き中止とのこと。
ダイナミックオーディオも、二年続けての中止は避けたかったのだろうが、
いまの状況下では、中止という判断なのだろう。

あと一週間で8月も終る。
二ヵ月ほどでインターナショナルオーディオショウなのだが、
ほんとうに来場者を入れての開催なのだろうか。

二ヵ月での変化が、どうなるのか。
私にはわからない。
よくなるのかもしれない、いまのままかもしれない、
もっとひどくなるかもしれない。

それでも急激に状況がよくなるとは、とうてい思えない。

Date: 8月 24th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その11)

この時代の日本の管球式アンプで忘れてはならないのが、ハルアンプだと思っている。
Independenceというコントロールアンプと、
Battlerというパワーアンプを出していた。

南荻窪に会社があった。
1995年から数年、南荻窪に住んでいたことがある。
たまたまなのだが、ハルアンプがあった住所は、私が住んでいたところの斜め向いだった。

住宅街である。
そこには、おそらく当時からあったと思われる建物があった。
いわゆる日本のガレージメーカーだったのだろう。

最初の頃は製造も販売も行っていたが、途中からバブコが販売するようになった。
そのころIndependenceが、II型になって、
外観は変更なしだったが、内部構造(造り)は大きく変っていた。

Independence TypeIIは、プリント基板を使っていなかった。
昔ながらも配線方法かというと、そうてはなく、
プリント基板のかわりに銅板を採用していた。

そこにバインディング端子を立てて、部品、配線をハンダ付けしていた。
ユニークなやり方だった。

回路的にも、管球式コントロールアンプにめずらしく差動回路採用。
差動回路二段増幅ユニットアンプのあとにCR型イコライザーがあり、
それによるゲインロスをおぎなうため、さらに差動二段のユニットアンプがある。

これがIndependence TypeIIのイコライザー回路だ。
ラインアンプは、というと、カソードフォロワーだけで構成されている。
つまり増幅はしていない。

すべて管球式コントロールアンプの回路を把握しているわけではないが、
Independence TypeIIのような回路構成のアンプは、そうはないはずだ。

Independence TypeIIも、聴きたくても聴けなかったアンプの一つだ。