Archive for category テーマ

Date: 4月 9th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その3)

1970年代のオーディオブームからの十数年。この間にオーディオに取り組んでいた人にとっては、
カセットデッキといえばナカミチ!、なのだろう。

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年ごろに、ナカミチのフラッグシップモデルの1000はII型になっている。
この時、それほど話題にはなっていなかったと記憶している。

ナカミチの1000が、そしてナカミチという会社が、やっぱりすごいといわれたのは、
1980年に登場した1000ZXLである。

カセットデッキ(テープ)にあまり関心を持たない私でも、すごい製品を出してきたな、と思ったほどだった。

井上先生がステレオサウンド 57号の新製品紹介で1000ZXLについて書かれている。
     *
 このカセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして、あれほどの小型なカセットハーフと低速度ながら素晴らしい将来性を持つことを最初に印象づけたのは、昭和48年に発売されたナカミチ1000が登場したときであった。
 カセットデッキとしては異例に巨大な業務用ラックマウントサイズのパネルを採用した1000は、たしかに価格的にも異例なほど高価格な製品ではあったが、ダブルキャプスタン・スタガ一方式の走行系メカニズムとパーマロイ系のスーパーアロイを採用した独立3ヘッド構成をベースに、独自のヘッドアジマス調整機構、ユニークな3チャンネルマイクアンプ、リミッター機構などを備え、驚異的な性能と音質により聴く人を唖然とさせたことは、現在でも鮮烈な印象として残っている。
 当時、オープンリールを超した性能と音質といわれたが、確かに、3モーター・3ヘッド構成の2トラック19cm/secのデッキとの比較試聴でも、誰にも明瞭に聴き取れる優れた音質を1000は聴かせてくれた。
 それから4年後に発展、改良して登場した1000IIは、テープの多様化に対応してバイアスとイコライザー単独切替、アタックタイムを早くし、従来の−20〜+3dBから−40〜+10dBにレンジを拡大したピークレベルメーター、走行系の操作ボタンが機械的な押ボタン型から電気的なタッチセンサーに改良されるなどをはじめ、巻本的な走行系の中間プーリーの改良、耐久性を向上したスーパーアロイヘッド改良のステイブルレスポンスヘッド採用などかなり大幅な変更を受けた結果、聴感上でもよりナチュラルに伸びたワイドレンジ感と分解能の向上として聴きとれ、その内容が一段とリファインされた。
 しかし、時代背景として各社の開発競争の激化、とくに中級機から普及機ランクでの性能、音質が急激に発展し、高性能テープの登場とあいまって、1000が登場した当時ほどの格差は実感的に感じられなかった。世界最高のカセットデッキとしての座は不動のものではあったが、この第2世代の王者は完成度が高まった内容を持ちながら、印象度としてはさほど強烈なものではなく、いわば、安定政権とでもいった存在であったと思う。
 昭和53年になるとメタルテープの実用化が発表され、カセットデッキは激しい動乱の時代に突入し再スタートを強いられることになった。メタルテープの実用化に先だち、海外テープメーカーとも密接な関係をもつナカミチでは、早くからメタル対応モデルの開発が行なわれており、メタル対応デッキの技術開発は発表されていた。しかし、製品化はメーカーとしては比較的遅く、かつての1000の登場当時に似た、いかにもナカミチらしい凄さを感じさせた製品の登場は、1000IIのメタル対応機ではなくそれまでの500シリーズと700の中間を埋める位置づけにある680であった。
 この680の優れた性能とクリアーで抜けきった鮮明な音質は、またもやメタルテープ時代での新しいナカミチの独自の魅力を聴く人に印象づけた。680は、短期間のうちに自動アジマス調整機構を新採用した680ZXに発展し、670ZX、660ZXとでシリーズ製品を形成する。
 この時点から1000IIのメタル対応機の登場は時間の問題として噂され、すでに限界とも感じられる680ZXに、どれだけの格差をつけて登場するかが話題であった。
 今回、ベールを脱いで登場した1000ZXLは、第3世代のカセットデッキの王者の座に相応しい見事な製品である。
     *
私にとって、この頃のナカミチのカセットデッキといえば、1000IIではなく、井上先生の文章にも登場している680ZXだった。

1000登場時にカセットデッキ(テープ)に強い関心を持っていた人には、すごい衝撃だったのだろうが、1000IIは、どうだったのか。

1000IIが登場してすぐのステレオサウンドのベストバイ(43号)では、1000IIは選ばれていない。700IIは選ばれているのだが。

このことはナカミチも感じていたのではないだろうか。だからこその1000ZXLであり、一年後の1000ZXL Limitedなのだろう。

Date: 4月 8th, 2026
Cate: 真空管アンプ

やって来たのはOTL2だった(その2)

フッターマンのOTL2のリアパネルのシールには、型番の他にシリアルナンバーも表記してある。
私のところのOTL2には、84060231とある。

シリアルナンバーのつけ方は各社まちまち。共通の法則などない。

OTL2のシリアルナンバーは長い。
おそらくだが、1984年6月2日に製造されているのでは、と思っている。
時期的にもOTL2は、その頃のアンプである。

とすれば下二桁の31は、何を示すのか。OTL2のようなアンプが、一日に30台以上製造されているとは考えにくい。
リアパネルには、“Hand Crafted By New York Audio Laboratories”ともある。
手作りを謳っている、これだけの大型アンプが日産30台以上はないだろう。
となると、このOTL2は、31台目となるのか。

Date: 4月 8th, 2026
Cate: 真空管アンプ

やって来たのはOTL2だった(その1)

昨日やって来たフッターマンのパワーアンプは、OTL4だとばかり思い込んでいた。

1980年代に、NewYork Audio Laboratoriesによって復活したフッターマンのOTLアンプは、どのモデルも同じフロントパネルを持つ。

19インチのフロントパネルのフッターマンのアンプは、真空管が表からは見えない。レトロ感のあるメーターとスイッチが、最新のトランジスターアンプではないことを漂わせているともいえる。

フロントパネルは徹底して各モデルで共通していて、モデル名の表記はない。
なのでステレオ機だからOTL4だとばかり思い込んでいた。

私だけがそうだったのではなく、持ち主もそうだった。
持ち帰って、昨晩のブログを書いてしばらくして、ふとリアパネルに貼られているシールを見たら、
そこにはOTL-2Cとあった。

OTL4ではなく、OTL4の出力管6LF6を三極管接続したOTL2だったことに気づいた。

三極管接続にすることで出力は、8Ω負荷で10Wと、奥行き50cm超のアンプとしては、相当に小さい。
出力インピーダンスは公表されていないが、OTL4よりもOTL2の方が低いはずだ。

といってもトランジスターアンプと比較すれば、たいして変らない数値ではあるが、OTL4ではなくOTL2だったことは、私にとっては、より嬉しいにつながる誤解である。

Date: 4月 7th, 2026
Cate: 真空管アンプ

フッターマン OTL4がやって来た

タイトルそのままである。
先ほどフッターマンのOTL4とともに帰宅。

ステレオサウンドの試聴室で、フッターマンの一連のOTLアンプを聴いてから、ずいぶん経つ。
カウンターポイントのSA4も聴いている。

どちらも出力管は6LF6。
どちらがアンプとしての実力は上かというと、SA4かな、と思う。

フッターマンのOTLアンプは、フラッグシップのOTL1(モノーラル構成で、しかも電源部独立の4シャーシー)、
OTL3がモノーラル仕様(2シャーシー)、
OTL4がステレオ仕様で、メインモデルはOTL3となる。

もちろん全て聴いている。SA4を含めての私個人の好き嫌いでいえば、OTL4をとる。

スケール感を含めて、OTL4はその規模通りで、上級機には及ばないものの、音の清楚ということで、私の心を捉えた。

OTL4も十分でかい。OTL1、OTL3、SA4と比較すれば小さいといえなくもないが、
いま私のところにあるアンプの中では一番大きい。

音はきちんと出るとのこと。それでもしばらく使っていなかったということで、まずは清掃から始めることになる。

これからあたたかくなり暑くなる。その間にチェックなどをやっていき、涼しくなってきた頃から鳴らしていこう。
ゆっくりとつきあっていく。

Date: 4月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その2)

私にとって、チューナーにおけるマランツのModel 10B、セクエラのModel 1的位置にいるのは、スチューダーのA710である。

型番とルボックスとスチューダーの関係からわかるように、A710は、1981年に登場したルボックスのカセットデッキ、B710のスチューダー版だ。

ルボックスのB710は、ステレオサウンド 59号の新製品紹介で、瀬川先生が担当されている。
     *
 たとえば、カートリッジを比較の例にあげてみると、一方にオルトフォンMC30又はMC20MKII、他方にデンオンDL303又はテクニクス100CMK3を対比させてみると、オルトフォンをしばらく聴いたあとで国産に切換えると、肉食が菜食になったような、油絵が水彩になったような、そういう何か根元的な違いを誰もが感じる。もう少し具体的にいえば、同じ一枚のレコードの音が、オルトフォンではこってりと肉付きあるいは厚みを感じさせる。色彩があざやかになる。音が立体的になる。あるいは西欧人の身体つきのように、起伏がはっきりしていて、一見やせているようにみえても厚みがある、というような。
 反面、西欧人の肌が日本人のキメ細かい肌にかなわないように、滑らかな肌ざわり、キメの細かさ、という点では絶対に国産が強い。日本人の細やかな神経を反映して、音がどこまでも細かく分解されてゆく。歪が少ない。一旦それを聴くと、オルトフォンはいかにも大掴みに聴こえる。しかし大掴みに全体のバランスを整える。国産品は、概して部分の細やかさに気をとられて、全体としてみると、どうも細い。弱々しい。本当のエネルギーが弱い。
 B710とナカミチ1000ZXLとの比較で、まさにそういう差を感じた。そしてここでテープまで変えると、その差はいっそう大きく開き、ナカミチにはTDKのSA又はマクセルのXLIIを、そしてB710には、今回小西六がアンペックスと提携して新発売するマグナックスのGMIIを、それぞれ組み合わせると、国産はハイ上がりのロー抑え、いわゆる右上り特性の、ややキャンつきぎみの細身の音に聴こえるし、ルボックスはその正反対に、中〜低域に厚みのたっぷりある、土台のしっかりした、ボディの豊かな音に仕上る。そしてとうぜんのことに、こういう音はクラシックの音楽を極上のバランスで楽しませる。総体に、派手さをおさえて音を渋く、落ち着きのある色合いを聴かせるのだが、こういう音は、残念ながらこれまで国産のどのデッキからも聴くことができなかった。
 試聴はほとんどドルビーONの状態。そしてメカニズムその他の詳細については、残念ながら紙数の制約のため割愛せざるを得なかった。
     *
これを読んだ時から、カセットデッキはB710だ、と決めていた。
といっても、まだ学生だったし、ステレオサウンドで働く前のこと。40万円を超えるカセットデッキは、すぐにどうにかなるものではなかった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その1)

私が中学生、高校生だったころ、生録もブームになっていた。
音楽だけがその対象ではなく、その頃まだ走っていた蒸気機関車の音なども、生録の対象となっていた。

電源が確保できるところならば据置き型のテープデッキを担いで行く人もいたようだが、
蒸気機関車の音を録るのであれば、電池駆動のポータブル型デッキとなる。

ブームなのは知っていても、近くでそういう機会はなかったし、マイクロフォンも用意しなければならないし、
ポータブル型デッキを持っていたわけでもない。

そうなると録音の対象は、エアチェックしかない。
テープデッキは録音済みのミュージックテープを購入して聴くためか、
FM放送を録音(エアチェック)してのモノ。自然とそうなっていた。

当時はオープンリールのミュージックテープはいくつか出ていたが、10代の学生が買える価格ではなかったし、
2トラ38のオープンリールデッキを持っているわけでもない。
いつかは──、と思うだけだった。

カセットテープのミュージックテープは何本か持っていたが、同じ内容のLPと比べると、音質面で満足できるとはいえなかったし、
それにLPよりも高かった。

プレスで大量生産可能なLPと、高速ダビングとはいえ、プレスよりもずっと時間がかかるコピー工程ゆえ、多少高価になるのは理解できても、
そう多くはない小遣いをやりくりしてとなると、ミュージックテープに手は伸びない。

そうだったのだ、あのころのカセットデッキは私にとってエアチェックのためのオーディオ機器だった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その22)

アンプとのペア性を考えてしまうのは、国産プリメインアンプのほとんどがペアとなるチューナーを用意していたことを、
当たり前のこととして受け止めていたからなのかもしれない。

普及クラスのプリメインアンプにはもちろんペアとなるチューナーがあった。
あのころ20万円を超えるプリメインアンプの高級機にも、ペアとなるチューナーが、すべてではなかったが、やはりあった。

このクラスのチューナーとなると、ペアとなるプリメインアンプを持っていなくても、チューナー単体で購入する人もいただろう。

もちろんペアとなるプリメインアンプを持たないチューナーもあったことはわかっていても、こうやってチューナーのことを振り返って書いていると、
アンプとのペア性のことが、私の中では浮上してくるだけでなく、
チューナーにとってのペア性は、アンプとの関係だけでなく、テープデッキとの関係においてもあるような感じがしてくる。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第二十六夜

audio wednesday 第二十六夜は、4月15日。
少し前に書いているように、メリディアンの218を新たに手を加え、持参する予定でいる。

必要な材料は揃った。あとは218に手を加えるだけ。

会場のぴあ分室にも、218はある。私が手を加えたモノだから、一つ前の段階の218と比較試聴できる。

今回、加える手法は初めてやる。悪くはならないと思っているものの、音だけは実際に鳴らしてみないことには、何も言えない。

どういう結果になるのか。私自身も楽しみなので、15日のaudio wednesdayまで聴かずにいよう。

Date: 4月 3rd, 2026
Cate: 複雑な幼稚性

ゲスの壁(その5)

ソーシャルメディアを眺めていると、やたらと絡む人がいる。
ウザ絡みとでも言いたくなる絡み方をするオーディオマニアが目に入ってくる。

こういう人は、ある特定のアカウントに対して、やたらと絡む。何がしたいのか、何を主張したいのかが、わからなくなるほどに絡む。

絡むことそのものが、その人の楽しみ、さらには快楽になっているのか。
誰かに絡まないと生きていけないのか──、そう思える人が、残念なことに一人ではなく、何人もいる。

絡む人は、ある特定のオーディオブランドの信者的でもある。
オーディオに限らない。ある政党、政治家の信者的人は、絡む傾向が強いと感じている。
聞くところによるとある有名人の信者的人もそうらしい。

これは日本人特有の傾向なのだろうか。

Date: 4月 3rd, 2026
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –6月までの予定

6月までのaudio wednesdayの予定です。
4月15日、5月13日、6月3日です。

参加希望の方は、私までご連絡ください。

Date: 4月 2nd, 2026
Cate: アクセサリー
1 msg

仮想アース(こういう方法も……・その15)

四谷三丁目にあった喫茶茶会記でaudio wednesdayをやっていた時、
セッティングを終え、音出しの準備をあれこれやっていた時、
マッキントッシュのプリメインアンプのアース端子にアース線(2m弱)をつけたままだったことがある。

マッキントッシュのアンプの方だけが接続されている状態だから、よく言われるアース線がアンテナになる状態である。

私も基本的にはそう捉えていたのだが、この時の音は違っていた。
アース線を外し忘れていたことに気づき外した音を聴いて、おやっ、と感じた。

片方が浮いているケーブルはアンテナになると考えられる。なのに聴感上のS/N比がよく感じられる。細部の明瞭度がいい。

片方が浮いているアース線はアンテナなのに、どうして──となる。
考えられるのは、アンテナには受信用と送信用とがあること。
アンテナ・イコール・受信用とすぐに考えがちだが、場合によっては送信用アンテナとして働いてくれれば、
音が悪くなるどころか良くなる可能性も出てくる。

Date: 4月 1st, 2026
Cate: アナログディスク再生, 老い
1 msg

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その20)

アナログディスクのレーベルにヒゲをつけてもなんとも思わない、感じない人は、
どんなに高価なアナログプレーヤーを使っていても、初期盤を持っていたとしても、恥を知らない人なのだろう。

ヒゲに無頓着な人だけではない、最近のオーディオマニアにも恥を知らない人が増えてきているように感じる時がある。

Date: 3月 31st, 2026
Cate: 真空管アンプ

直熱三極管(その6)

時代が違うと、誌面に登場する真空管も違ってくる。
私が中学生、高校生の時は、ウェスターン・エレクトリックの300BよりもSTCの4300Bが登場していた。

その記事を読んで、ウェスターン・エレクトリックの300Bという真空管があるんだなぁ、ぐらいの知識だったし、
しばらくしてザイカの300Bの存在も知って、少しずつ300Bへの関心が増していったものの、
肝心のウェスターン・エレクトリックの300Bについて、それ以上のことを知る機会は、すぐにはなかった。

STCの4300Bの前に4300Aがあって、300Bの互換球である。この4300Aが製造中止になって、日本の会社が注文して製造させたのが4300Bだったはず。
ザイカの300Bは、日本製。

このころ、そういう状況だったのは本家の300Bの入手が困難だったからだろう。

300Bアンプは、時代が変ったきたこと、ステレオサウンドで働くようになったこともあって、
ごく当たり前に聴く機会はあったのに、
STCの4300Bやザイカの300Bの音は、いまも聴けずだ。

Date: 3月 30th, 2026
Cate: 真空管アンプ

直熱三極管(その5)

以前、別項でも書いているように、初歩のラジオ、無線と実験、ラジオ技術に発表されている真空管アンプの自作記事。

パッと見て、他のアンプとは佇まいがまるで違うと感じたのは、伊藤先生のシーメンスのEdプッシュプルアンプだった。

それまで見てきた(読んできた)真空管アンプとは違いすぎていた。それだけにEdという、初めて知る直熱三極管にも一目惚れしてしまった。

UV211、UV845はそれ単体で見れば、凄い真空管だと思わせる迫力みたいなものはある。
なのに、これらの大型直熱三極管を使った自作アンプのシャーシーは、薄かった。

薄いベースに、巨大な真空管が刺さっているみたいな感じで、アンバランスでもあった。
ようするにカッコよくはなかった。

当時市販されていたシャーシーを使う限り、このアンバランスな面は拭いきれない。

書いておくが、ここで取り上げている直熱三極管を使ったアンプの音を聴くようになったのは、もう少し後のことだ。

中学生、高校生のころは、雑誌に載っている写真こそが判断材料であった。

音を聴く機会があったならば、関心の持ち方も変っていたかもしれないが、いま思うのは音が聴けなかったことが、私にとっては、プラスに働いているということだ。

Date: 3月 29th, 2026
Cate: 真空管アンプ

直熱三極管(その4)

中学生のころは初歩のラジオも読んでいた。
真空管アンプの自作記事も載っていたと記憶している。

2A3の次に知った直熱三極管は300Bではなく、UV211とUV845だった。
初歩のラジオの記事で初めて知った。

こんなに大きな真空管があるのか、とまず思ったし、
大きいだけでなく、プレート電圧が2A3のアンプよりもずっと高いこと。

記事には初心者は手を出してはいけない的なことが書かれていた(はず)。

それからしばらくしてウエスギから、UV845のシングルアンプ、UTY1が出ていることを知る。

すごい真空管なんだなぁ、という印象を持ちながらも、これらの真空管にも、それ以上の興味を持つことはなかった。

どうしてだったのか、と今にして思う。
買えるとか買えないとか、作れるとか作れないとか、
そういうことで関心を持つ持たないを分けていたわけではない。

JBLやマークレビンソン、その他のオーディオ機器に対していつかは──、と思っていた十代を送っていたのだから、UV211やUV845にも、これでアンプを作ってやる、という気持が湧いてきてもおかしくなかったのに、そうはならなかった。

あえて理由を求めるならば、そのころのこれらの真空管を使った自作アンプがカッコよくなかったからだろう。

以前、別項で書いているが、私が初めて、このアンプをそのまま作ってみたいと思ったのは、
伊藤先生のシーメンスのEdのプッシュプルアンプだったことと関係しているはずだ。

その意味で、私が初めて惚れた直熱三極管はEdである。