Archive for category テーマ

Date: 9月 18th, 2025
Cate: オーディオ評論

ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(その25)

(その22)、それから別項でも触れているpost-truth。(その22)でも書いているが、
イギリスの英オックスフォード大学出版局が、
2016年、注目を集めた言葉として「post-truth」を選んだことはニュースにもなっている。

客観的な事実や真実が重視されない時代を意味する形容詞「ポスト真実」ということだが、
新しい誤解、誤記が、古くからの事実を書き換えていっているのも、post-truthといえる。

オーディオの世界でも、いくつもある。
増えることはあっても減ることは、もうないだろう。

こんなことを書くと、ソーシャルメディアのせいだ、と思う人がいるだろうが、
ソーシャルメディアばかりのせいではない。

post-truth = ミソモクソモイッショともいえる。

Date: 9月 17th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Hounds of Love

ケイト・ブッシュの五枚目のアルバム、“Hounds of Love”、今日(9月17日)で発売から四十年を迎える。

まずイギリス盤のLPを買った。それから12インチ・シングル盤も数枚出たから、もちろん買った。
CDも買った。

日本盤のタイトルは、「愛のかたち」だった。
歌詞の日本語訳も欲しかったので、日本盤も買った。

ひとつ前のアルバム、“The Dreaming”から一変したように感じたサウンド。
いろんなウワサが流れていたから、ジャケットのケイト・ブッシュ、
それからイギリス盤のLPの中に入っていた写真を見て、安心したものだった。

“Hounds of Love”は、“The Dreaming”とともに、私の青春の一枚である。

Date: 9月 17th, 2025
Cate: audio wednesday

Siemens Eurodyn + Decca DK30(その6)

タイトルにも本文でも、デッカのDK 30としているが、
これは読まれている方がどんなトゥイーターか、イメージしやすいようにであって、
野口晴哉氏が使われているのは、
正確にはRomagna ReproducersのMK11HFである。

トゥイーターの裏面に、手書きでそう記してあるわけだが、おそらくMK11は、MK IIかもしれない。
つまりはデッカ・ケリーとも呼ばれるリボン型トゥイーターの原型のはずだ。

このRomagna ReproducersのMK11HFが、
いつごろ、どういう経緯からデッカ・ケリー(Decca Kelly)となり、頭文字のDK30となっていたのか、
そのへんの詳細は知らないが、MK11HFの造りはDK30よりもしっかりしている。

それでもシーメンスのオイロダインが隣にある環境で比較してしまうと、コンシューマー用だと思うしかない。

Date: 9月 16th, 2025
Cate: 「かたち」

音の名前、音の命名

さっき思いついたこと。
名刀といわれる刀には、名前がある。

ならば音に名前があってもいいじゃないか。
命名することで、何か変化が生まれるのかもしれない。

Date: 9月 16th, 2025
Cate: 終のスピーカー

エラック 4PI PLUS.2のこと(その19)

8月のaudio wednesdayでのエラックの置き場所は限られていた。
ウェスターン・エレクトリックな594Aのホーンとして使われているJBLの2395、その音響レンズ中央の窪みのところに置いた。
594A+2395をどかしてしまえば、エラックの位置の自由度はぐんと増すけれど、それはやりたくない。
そうなると、そこしかない。
しかもエラックは、正面を向けたわけではなく、90度ずらしての配置。

水平方向無指向性だから、いいといえばいいけれど、こんないいかげんな置き方なのか、と思う人もいるだろうが、
この位置で、この向きでしか置けない。

肝心なのは音であって、どうにもうまく鳴らないなのであれば、なんとかするつもりはあったが、
鳴らしてみると、昨年4月の会でのアポジーの時のように、大きな問題は感じられない。

だからといってエラックの場所はどこでもいいわけではなく、置き場所を選ぶのも事実だ。
このことは菅野先生が導入された時のことを、ステレオサウンドに書かれている。

今回は2395がエラックの後ろにあるということは、エラックの後方の音は、
2395のスラントプレートの音響レンズによって拡散されているはず。
これによる影響、音の変化を確かめるにはホーンを移動するしかない。
このことはいつか検証してみたい。

Date: 9月 15th, 2025
Cate: audio wednesday

Siemens Eurodyn + Decca DK30(その5)

野口晴哉氏のオイロダインを鳴るようにしたのは、2024年5月。
オイロダインの裏側にはカバーがかけられていた。このカバーを外すと、少なくとも五十年以上、
野口晴哉氏が所有されてからだと、おそらく六十年くらいか、
それだけの月日が経っているとは思えぬほどのコンディションだということが、
見ただけで伝わってきた。

これは、今回、デッカのリボン型トゥイーターを鳴らすため、その結線のため、
オイロダインの裏側に回って、改めて実感していた。

オイロダインもデッカも、スピーカー端子はネジ式である。
このネジの状態が、まるで違う。

デッカの方は、長い年月が経っていていることを感じさせる。
そうだよなぁ、五十年以上経っているのだからと思いながら、
ネジを外して、端子まわりをきれいにしていった後で、オイロダインに目を向けると、
造りが違うとは、こういうことをいうのだな、と感心するほどに、輝きを失っていない。

ネジひとつとっても、メッキ処理が大きく違うのか、と思える。
劇場で、スクリーンの後ろという、決してスピーカーにとって、いい環境とはいえないところで、
連続して何時間も音を鳴らしていくスピーカーとしての造りが、そこにはある。

デッカは、そういう使われ方を想定したスピーカーユニットではない。
あくまで家庭用のスピーカーであって、お金を稼ぐためのスピーカーと同次元で比較するのが間違っているのはわかっている。

それでも野口晴哉氏のリスニングルームで、この二つのスピーカーが近接して取り付けられていて、それを間近で接すれば、どうしても比較してしまう。

オイロダインは、くたびれない。そう感じていた。

Date: 9月 14th, 2025
Cate: ステレオサウンド

管球王国の休刊(その3)

管球王国で、私が毎号楽しみにしていたのは、vol.8から始まった「管球アンプ変遷史」だ。
井上卓也、上杉佳郎、石井伸一郎、三氏による、この記事は面白かった。

幸いなことに、「管球アンプ変遷史」は別冊「往年の真空管アンプ大研究」に収められていて、いまも読むことができる。

この連載記事の良さは、マランツのModel 1を取り上げているvol.11の中で語られている。
     *
井上 機能も豊富に揃え、何にでも対応できるようになっていますしね。やはりマランツの一号機は凄いプリアンプだったんですね。
 実は、僕は当時のマランツのアンプの中で、#1だけはあまり面白味のないアンプだと思っていたんです。けれども、今回実際に#1のシャーシ内部を見、回路図を丹念に調べてみて、いろいろと細かいことをやっているのがわかって、ずいぶん印象が変わりましたよ。#1が、こんなに面白いプリアンプだとは思っていなかった。
石井 このあたりは、一人で見ていてもなかなか気づかないことが多いんですね。今回はこうして3人でチェックしたことで、いろいろと新しい発見がありました。
     *
この姿勢は、「管球アンプ変遷史」が終了しても継続されていれば、管球王国は充実した本であり続けたはず。
でも、実際はそうではなかった。

Date: 9月 13th, 2025
Cate: ステレオサウンド

管球王国の休刊(その2)

いまはどうなのかしらないが、私がいたころのステレオサウンドの封筒には、
下の方に青い文字でStereo Soundとあって、
その下には、発刊している雑誌名が並んでいた。
おそらく、いまもそうだろう思う。

こんなことを書いているのは、雑誌を休刊するということは、この封筒も作り直すことになる。
休刊した雑誌名が入っていても何とも思わないのであれば、そのまま使って無くなったら、休刊した雑誌名を省いた封筒を作ればいいとなるわけだが、
誌面づくりにこだわっていることを謳っている会社であれば、そのままというわけにはいかない。

かといって、休刊した雑誌名の上にシールを貼って隠すのも……、である。
社名、雑誌名入りの封筒を、各サイズ作り直すのにかかる費用はわからないけれど、
こういうところをケチるわけにはいかない、それぞれの出版社の顔でもあるだから。

Date: 9月 13th, 2025
Cate: ステレオサウンド

管球王国の休刊(その1)

管球王国が、10月発売のvol.118で休刊となる。
二年前のvol.110から、kindle unlimitedで管球王国が読めるようになった。
それから編集長も交代している。
てこ入れか、と思っていた。

管球王国の発売を楽しみにしていた人もいようが、私はよく続けているな、と感じるようになっていた。
創刊当時の管球王国は、面白かった。発売を楽しみにしていた。

それも数年で終ってしまった。あとは惰性で続いていると感じていたし、
取り扱っている書店は、ここ十年ほどで減ってきている。
いつ休刊となっても不思議ではないと思っていたので、上に書いたように、よく続けているな、と感じていた。

個人的に寂しさはないが、是枝重治氏のアンプ製作記事が読めなくなるのか、と残念に感じるところはある。
ラジオ技術も、実質休刊のようなもの。

真空管アンプの製作記事を載せるのは、無線と実験だけになってしまう。
是枝重治氏が無線と実験に書かれるとは思えない。

Date: 9月 12th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Charlin Disques(その4)

(その2)で触れている7月26日の、少人数での会で鳴らしたシャルラン レコードの響き方に、
聴いていた人たちの反応を感じて、一度、ワンポイント録音を集めてのaudio wednesdayをやりたい、と思っていた。

シャルラン レコード以外にも、ワンポイント録音はある。(その3)でテラークや「カンターテ・ドミノ」、それからエーリッヒ・クライバーの「フィガロの結婚」を挙げたが、他にもある。

モノーラル時代のワンポイント録音、
ステレオ時代になってからでは、アナログのワンポイント録音、デジタルのワンポイント録音がある。

これらを聴いていくだけでも楽しくなるだろうが、私がぜひ聴いてみたいのは、
BOSEの901は、ワンポイント録音をどう表現するかだ。

ステレオサウンドで働いていたおかげで901は、聴く機会が何度もあったが、
ワンポイント録音を聴いた記憶はない。
少なくともワンポイント録音を集めて聴いたことはない。

901でワンポイント録音を聴くという記事を、オーディオ雑誌で見た記憶もない。

昨年12月のaudio wednesdayで鳴らした901は、まだ野口晴哉氏のリスニングルームに置いてある。

Date: 9月 11th, 2025
Cate: ロマン
1 msg

好きという感情の表現(その13)

「私、音楽好きです」
誰かに、これを言うのは簡単だ。誰でもできる。

音楽が好きな人なんだなぁ、と誰かから思われることも、そう難しいことではない。

音楽好きだから、あんなに音楽に詳しいんだなぁ、と誰かから思われることも、
多少の努力はいるものの、ものすごく難しいことではない。

音楽を毎日聴く人は、音楽好きな人なのか。
音楽を毎日聴かない人は、音楽好きではない人なのか。

音楽が好きとは、どういうことなのか。なんなのか。
音楽好きと、自分で思い込むために、やっていないだろうか。

「好き」に些かの疑問も抱かずに、好きといえるのか。

オーディオをながいことやってきて、ここに来て感じているのが、このことだ。

Date: 9月 10th, 2025
Cate: ディスク/ブック

ヨッフム/シュナダーハンのベートーヴェン

一週間前のaudio wednesdayでは、アナログディスクのみをかけた。
リクエスト以外のディスクは、すべて野口晴哉氏のコレクションから選んでいる。
輸入盤を中心に選んだ。

その中の一枚が、ヨッフムとシュナイダーハンによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲だった。

野口晴哉氏のコレクションを眺めながら、この盤、聴いたことがないことに気づいて選んだ一枚。

協奏曲をそれほど好んで聴かない。
もちろんまったく聴かないわけではなくて、好きな演奏家の録音ならば聴くけれど、
積極的にいろんな演奏家の録音を聴いているわけではない。

そんな協奏曲への接し方をしているものだから、この盤(ヨッフムとシュナイダーハン)も聴いていなかった。
聴いていなかったから、その存在を知らなかったわけではない。
知っていたけれど、聴いていなかった。

初めて聴いて、ヨッフムはやはりいい指揮者だな、と感じていた。
ヨッフムは、昔から聴いている。

それでもヨッフムの良さがわかるようになったきたのは、ある程度、齢をとってからだった。

昔(21のころ)、伊藤先生の仕事場で、モーツァルトを聴きたいと言ったところ、
伊藤先生がかけてくれたのは、コリン・デイヴィスの盤だった。
伊藤先生の仕事場に、モーツァルトの交響曲のレコードがどれだけあったのか、
どういう盤があったのかは、これ以外まったく知らない。

正直、コリン・デイヴィス? と思っていた。
でも、いまならわかる。

同じように、いまヨッフムの良さを噛みしめている。

ステレオサウンド 236号(その1)

いま書店に並んでいるステレオサウンド 236号の特集は、
「オーディオの新時代の担い手たち」で、リスニングルーム訪問記事である。

ステレオサウンドの次の号の特集は──、という話は、時々耳に入ってくることがある。
今号の特集は、若いオーディオマニアを取り上げる、ぐらいの話は耳にしていた。

若いオーディオマニアのリスニングルームの訪問記事。
まず思ったのは、文字通りの若いオーディオマニアの登場だった。

オーディオ店から紹介してもらったり、個人でウェブサイト、ブログをやっている人に声をかけたりすれば、記事はできあがるが、
それでは広告に直接的に結びつかない、ともすぐに思った。

広告のことを考えて、このテーマでやるならば、
各メーカー、輸入元、オーディオ店で働いている若い人を取り上げるのだろうな──、と思った。

実際ほぼその通りで、輸入元の若い人がいないのは、
決していないわけではないだろうに、なぜだろう、と思うところはある。

今号の特集は、悪くないと思っている。こんな書き方をするのは、
今号だけで終ってしまうのであれば、悪くない特集止まりだが、
このテーマは拡げて連載にしていけると思うから、そうなってくれれば、いい企画となる。

Date: 9月 8th, 2025
Cate: audio wednesday

Siemens Eurodyn + Decca DK30(その4)

スピーカーシステムの最高域を補うトゥイーターのことを、一般的にスーパートゥイーターと呼ぶが、
野口晴哉氏のオイロダインにデッカのリボン型トゥイーターは、
その使い方(結線)からして、スーパーではなくサブトゥイーターという認識の方がいい。

そんなトゥイーターの使い方で、いったいどれだけ音が変るのか。

8月の会で、ウェストレックス・ロンドンのシステムに、
エラックのリボン型トゥイーターを足した時ほどの誰の耳にもわかりやすい変化ではないが、
明らかに音は変化している。

今回は、とにかくデッカを鳴らすことだけを優先して、
カットオフ周波数の細かな設定は一切やっていない。
なんとなく、このくらいの周波数でカットオフしよう、
コンデンサーの値は、このくらいになるから、近い値のコンデンサーを買ってきただけだ。

まず音を鳴らす。そしてしばらく聴く。調整はそれからでいい。鳴らさないことには、何も始まらない。

私の耳には、何が大きく違って聴こえたかというと、
音楽のタメ(演奏のタメ、歌い方のタメ)が、よく出るようになったと感じた。
その分、音楽がより濃厚に感じられる。

そしてこの「タメ」が、最新のオーディオが鳴らすのと、
往年の高能率スピーカーが鳴らすのとでは、大きく違っているところとも感じる。
それは何もオーディオの世界だけではなく、演奏家もそうだと思っているし、感じている。

Date: 9月 7th, 2025
Cate: audio wednesday

Siemens Eurodyn + Decca DK30(その3)

シーメンスのオイロダインの最低域と最高域を、
エレクトロボイスの30Wとデッカのリボン型トゥイーターで補う。

これを聞いて、マークレビンソンのHQDシステムを思い出す人もいれば、
ステレオサウンド 38号を読んだことのある人ならば、上杉先生のシステムを思い出すはずだ。

HQDシステムは、QUADのESLを中心に、最低域をハートレーの224HS、最高域をデッカのリボン型(ホーンは外されている)で補っている。
しかもESLはダブルスタックという、かなり大がかりな構成。

上杉先生のシステムはオイロダインを中心に、最低域はエレクトロボイスの30W(しかもダブルウーファー)、トゥイーターはテクニクスのホーン型。
こちらも相当に大がかりな構成である。

野口晴哉氏が、30Wをどう使おうとされていたのか。いまとなっても、誰も知らないしわからない。

オイロダインにデッカのリボン型トゥイーターだから、ここに30Wだろう、と私が勝手に推測したいるだけだ。

仮にそうだったとしよう。それでもHQDシステムや上杉先生のシステムとは、違うといえば違う。

オイロダインは出力音圧レベル104dBという高能率型。
デッカのリボン型トゥイーターは公表されていないが、なんとなくではあるが、90dB前後だろう。
10dBほどの違いがあり、こういう場合、本来ならばデッカに専用アンプを持ってきて、マルチアンプシステムになる。

けれど既に書いているようにJBLのN8000を介してデッカは接続されているから、
デッカの受持帯域の音圧レベルは、オイロダインよりも低い。