セッティングとチューニングの境界(その29)
セッティングと精度について考えていたら、五味先生のことを想い出していた。
「想い出の作家たち」のなかで、五味千鶴子氏が語られている。
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亡くなる前にベッドに寝ていても、毛布をシュッとかけなおして、「折り目正しくなってるか」とたずねるのです。
「ええ、きちんとなってますよ」と言うと安心しました。何かお見舞いの品をいただいても「真心こもってるか」と言います。「とても真心のこもったものをいただきましたよ」と言うと、「そうか、人間は折り目正しく、真心こめていかなきゃいけないよ」と言っていたのをよく覚えております。
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「折り目正しく、真心こめて」が、
五味先生がオーディオ愛好家の五条件のひとつにあげられている、
「ヒゲのこわさを知ること」につながっているのは明らかだろう。
それだけでなく、セッティングにおける精度も、「折り目正しく、真心こめて」なのだ、とおもうわけだ。