Archive for category 平面バッフル

Date: 11月 19th, 2019
Cate: アンチテーゼ, 平面バッフル

アンチテーゼとしての「音」(平面バッフル・その4)

平面バッフルの構造は、特に複雑ではない。
バッフル板と支える脚部があれば、平面バッフルとして機能する。

とはいえ脚部をどうするのかは、意外と難しい。
脚部というよりも、平面バッフル全体を、どう支えるかの問題である。

さらに平面バッフルの材質には、響きのよいものを、と昔からいわれている。
だから上質の木材が、平面バッフルにはよく使われる。

平面バッフルにおいて、バッフル板の響きは確かに重要であるが、
その響きを疎外する要因となっているのが、
スピーカーユニットのバッフル板への取り付けである。

重力のない世界ならば影響は抑えられるが、
地球上にはそういう場所はない。
バッフル板には、ユニットの重量が荷重となる。

2m×2mといった大きな平面バッフルに、10cm口径のユニットならば、
ユニットの荷重による影響は小さくなっても、
2m×2mの平面バッフルに、小口径のユニットを取り付ける人はまれだろう。

やはりこれだけの規模となれば、38cm口径のユニットを、私だったら迷わず選ぶ。
となるとユニットによくる荷重は、10cm口径のユニットとは比較にならないほど大きくなる。

そうするとバッフル板へのテンションが強くかかることになる。
このテンションの強さは、本来材質が持っている響きのよさを損ねる方向に働きがちだ。

ダンボールの平面バッフルは、不思議といい音だった。
ダンボールだから、叩いてみても、良質の木材のようないい感じの音がしてくるわけではない。

ダンボールの平面バッフルの音の良さは、
ユニットを人が手で支えていたから、ダンボールのバッフル板には、
ユニットによる荷重はまったくない。

Date: 10月 28th, 2019
Cate: アンチテーゼ, 平面バッフル

アンチテーゼとしての「音」(平面バッフル・その3)

強化ダンボールとはいえ、スピーカーユニットを支えるだけの強度はない。
10cm口径程度のフルレンジユニットであれば、支えられるだろうが、
38cm口径の同軸型ユニットを想定しているだけに、
それだけの重量をバッフル板で支えようとは、最初から考えていない。

アルテックの755E+ダンボール平面バッフルの時もそうだったが、
ユニットはダンボール・バッフルには取り付けていない。

ユニットの後を友人に支えてもらって、
さらにダンボール・バッフル板も持ってもらっての音出しだった。

つまり左右スピーカーに一人ずつ、
聴く人一人、最低でも三人は必要となる音出しである。

そこでは精緻な音場感とは期待しないでほしい。
けれど気持のいい音がした。
鳴りっぷりのいい音、響きであった。

楽しい音がしていた。
だからこそ、いまでもたまには聴きたい、と思うことがある。

強化ダンボールを複数枚使っての大型平面バッフルは、
だからユニットは角材三本を使っての支持方法をとる。

あくまでもダンボール・バッフルは、
ユニットの前後の音を遮るための役割だけで、
ユニットフレームとは接触するかしないかぐらいにする。

同軸型ユニットは、通常のユニットよりも、奥行きがあるし、
その分後方に重心が移動することにある。

そういうユニットを、これまではフロントバッフルだけで支えていたわけだ。
自作マニアの中には、ユニットの磁気回路を何かで支えていたりするだろうが、
多くは、あれだけの重量をもつ構造体が、いわば片持ち状態となっている。

Date: 10月 27th, 2019
Cate: アンチテーゼ, 平面バッフル

アンチテーゼとしての「音」(平面バッフル・その2)

本格的な平面バッフルの実現には、それだけの広さのリスニングルームが必要となる。
なので実用的なサイズの平面バッフルというのを、
以前から考えてきているのだが、
それでも一度は2m×2mの平面バッフルの音を聴いてみたい。

きいたことがないわけではない。
聴いている。
いい音だった。

だから、なんとか実現したい、という気持はずっと持っている。
audio wednesdayで、平面バッフルをやりたい、と考えているのもそういうことからである。

喫茶茶会記のスペースがあれば、2m×2mの平面バッフルを、
なんとかすれば設置できなくもない。

バッフルを分割式にして、部屋で組み立てる。
そうすればなんとか実現できる(金銭的なことは抜きにして)。

問題は、その後である。
2m×2mの平面バッフルを、どうするか。

そのまま喫茶茶会記に置いておけるのならば、
やる気は急に出てくるものだが、そういうわけにはいかない。

結局処分するしかない。
処分するのにも費用は発生する。

このあたりが、平面バッフルをaudio wednesdayでやる上でのいちばんのネックとなる。

先日、東急ハンズに行ったら、強化ダンボールが売っていた。
いままでなかった商品である。

これを見て触っていて、
これで平面バッフルを作ろうかな、と思いはじめている。

別項「素朴な音、素朴な組合せ(その8)」で書いているように、
ずっと以前にアルテックの755Eをダンボール製平面バッフルで鳴らしたことがある。

気持ちのいい、その時の音はいまも、機会があればまた聴きたい、と思うほどだ。
この経験があるから、強化ダンボールによる平面バッフルを考えている。

Date: 10月 20th, 2019
Cate: イコライザー, 平面バッフル

メリディアン 218のトーンコントロールと平面バッフル

audio wednesdayで、一度はやってみたいことがある。
平面バッフルを持ち込んでの音出しである。

といっても、2m×2mという大きな平面バッフルではなく、
1m×1m程度の平面バッフルに、15インチ口径の同軸型ユニットを取り付けて──、
それを、以前からやりたいと思っていた。

1m×1m程度の平面バッフルでは、どうしても低音は不足がちになる。
トーンコントロールである程度は補える。

マッキントッシュのMA7900には5バンドのトーンコントロールがついている。
ある程度の補整はできるだろう──、
と思ってはいたが、もうひとつ本気になって考えるほどにはなれなかった。

でもメリディアンの218のトーンコントロールの実力を聴いて、
これならば、と考え直している。

218のトーンコントロールは、低音域に関しては+5dBまでのブーストである(高音域は+10dB)。
それでどこまでやれるのか、やってみないとわからないところもあるが、
なんとかやりそうな感じがするからこそ、
ここにきて、やりたい気持が強まっている。

もうひとつ試してみたいのは、
セレッションがSL600用に開発したSystem 6000である。
このウーファー部を、218のトーンコントロールで補整する。

いい結果が得られそうな予感は、しっかりとある。

Date: 7月 3rd, 2018
Cate: アンチテーゼ, 平面バッフル

アンチテーゼとしての「音」(平面バッフル・その1)

この二、三年、聴きたいのは平面バッフルの音だ。
理想をいえば2m×2mの大きさの平面バッフルを鳴らしたい、ところだが、
実際にそれだけの大型のバッフルをおさめられるだけの空間を持っていないし、
これだけの大型となると視覚的な問題も生じよう。

自分の身長よりも高い平面バッフル(に限らず通常のスピーカーであってもそうだ)は、
威圧感を無視できなくなる。
このへんの感じ方は人によって違ってくるだろうから、
どんなに高くても平気という人もいれば、
1.9m×1mの平面バッフルを使っていた経験からいえば、
実用的なサイズとしては1.2m×1.2mくらいだと感じている。

現実的にサブロク板を半分に切っての0.9m×0.9mが経済的ともいえよう。
けれど、このくらいのサイズとなると、低音のレスポンスの問題がある。
そこをどうするかも、あれこれ考えている。

そんなふうに考えているのは、
つねに心のどこかに平面バッフルの音を聴きたい気持があるからなのだが、
最近は少し違ってきている。

平面バッフルの音を聴かせたい、に変ってきている。

Date: 9月 29th, 2017
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(Kii THREE・その2)

ハイエンドのブースで鳴っているスピーカーといえば、
プラズマ(イオン)トゥイーターを搭載したランシェオーディオである。

ブースに入って時も、ランシェオーディオのスピーカーが鳴っている、と思ってしまった。
そして、いままでのランシェオーディオとは少し違って、いい感じだな、と思って聴いていたら、
完全に私の勘違いで、鳴っていたのは隣に置いてあった小型スピーカーだった。

ドイツのKii AudioのKii THREEというアクティヴ型スピーカーが鳴っていた。

少し驚いていたら、Kii Aiduoの人による解説がはじまった。
小型2ウェイのように一見思えるが、
6ウェイということだった。

フロントバッフルにメインといえるウーファーとトゥイーターがあり、
両サイドにウーファーが一発ずつ、リアバッフルにウーファーが二発あり、
それぞれのユニットに専用アンプをもち、DSPによる信号処理を行っている、とのこと。

つまりウーファーユニットは計五発ついているわけだが、
いわゆるダブルウーファー的発想の延長でのウーファーの数ではなく、
ウーファーの指向特性をコントロールするためのユニットの数であり、
DSPによる信号処理であり、200Hz以下の周波数では単一指向性を実現している、という。

それによるメリットは、部屋の影響を受けない、ということだった。
そして見た目はこんなに小型であっても、2m×2mの大きさのスピーカーに匹敵する、とも話していた。

Kii Audioの人が話していたは英語であり、ハイエンドのスタッフの人による翻訳だった。
私の勝手な解釈なのだが、この2m×2mというのは、平面バッフルのサイズのことではないか、と思っている。

Kii THREEの搭載されている技術が具体的にはどういうものなのか、詳細はわからないが、
平面バッフルのコンパクト化のヒントが、ここにある、そう確信できた日だった。

Date: 9月 29th, 2017
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(Kii THREE・その1)

20代のはじめのころ、
シーメンスのコアキシャルユニットを1.9m×1mの平面バッフルに取り付け、
5.5畳ほどのスペースに押し込んで聴いていた。

そのころから2m×2mの平面バッフルは、憧れであり、目標であった。
いやもう少し前から、そうだった。
ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIESのフルレンジユニットの号で、
2m×2mの平面バッフルでの試聴記事を読んでからだった。

2m×2mの平面バッフルを、ステレオだから二枚というのは、
私のいまの住環境では到底無理である。
昔もそうだった。

だから2m×2mの平面バッフルを、いかにコンパクトにするかを考えてきた。
ただ小型にするだけでは、低音再生能力を考えると、ほとんど意味がない。

2m×2mのサイズと同じだけの能力を維持したまま、
いかに小さくできるか、という意味でのコンパクト化である。

平面バッフルの働きを少し違う視点から捉えれば、
スピーカーユニットの指向特性を単一指向性にするというふうにも考えられる。
そうスピーカーユニットの背面からの音を、なんらかの方法で打ち消せば、
平面バッフルのコンパクトは可能である。

ここまでは考えていた。
けれど実際にどうやって、背面の音だけを打ち消すのかは考えつかなかった。

今日からインターナショナルオーディオショウである。
夕方二時間ちょっとだけ会場にいた。

できるだけ多くのブースを、と思って駆け足でまわっていたら、
あるブースで足が止ってしまった。
ハイエンドのブースだった。

Date: 5月 10th, 2017
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その22)

サンスイのLMシリーズを聴く機会はなかった。
LMシリーズのスピーカーは1975年に出ている。

まだ私はオーディオに興味をもっていなかった。
私がLMシリーズのスピーカーを知ったのは、1977年6月。
ステレオサウンド 43号特集ベストバイにおいてである。

でも、そこではLMシリーズの技術的特徴であるLMトゥイーターについて、
深く知ることはできなかった。
トゥイーター周りのバッフルが、
ウーファーよりも前面にあるという形だけが印象に残っていたくらいである。

LMトゥイーターについて知るのは、ステレオサウンドで働くようになり、
別冊「世界のオーディオ」のサンスイ号を読んでからである。

三井啓氏が、「サンスイに見るオリジナリティ」というタイトルの記事で、
LMスピーカーシステムの開発について9ページに渡って書かれている。

サンスイが全面的に協力しているムックだけに、開発の背景から測定データまで掲載されている。
LMシリーズのトゥイーター周りのバッフルは、前に突き出ているのか。

1977年には、すでにテクニクスからリニアフェイズのスピーカーシステムが登場していた。
コーン型ウーファーで、中高域がホーン型でなく、ドーム型、コーン型であれば、
ボイスコイルの位置はウーファーが奥まってしまうだけに、
テクニクスはスコーカー、トゥイーターの取り付けを階段状にしている。
フランスのキャバスのブリガンタンもそうである。

なのにサンスイのLMシリーズはウーファー、トゥイーター、
どちらもコーン型なのに、トゥイーターがさらに前に位置しているということは、
リニアフェイズということを無視してまで、ということになる。

音を聴く機会があれば、
もっと早くにLMトゥイーターの技術的特徴(マルチラジエーションバッフル)に興味をもっただろうが、
なにしろ聴く機会もなく、LMシリーズが普及価格帯のスピーカーということもあって、
サンスイ号を手にするまで、関心の対象外だった。

LMトゥイーター(マルチラジエーションバッフル)の考え方は、
立体バッフルともいえるし、ある種のホーンバッフルともいえるし、
振動板の前面と後面が逆相の一般的なユニットだけでなく、
同相のハイルドライバーにおいて、マルチラジエーションバッフルはうまく作用するかもしれない。

Date: 12月 11th, 2016
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その21)

平面バッフル(私にとっては立体バッフル)について考えていっていると、
ピストニックモーションのスピーカーユニットの効率の悪さを改めて実感することになる。

93dB/W/mで、入力された信号の1%が音になる。
いまでは93dBを切るスピーカーが当り前になっているわけだから、
スピーカーに入力された信号の99%以上は音になっていないわけである。

スピーカーの変換効率は、昔から決して高いものではなかった。
ここでいいたい効率の悪さとは、単に数値上の変換効率だけではなく、
バッフル、エンクロージュアなどで、スピーカーユニットの前後を遮らないと、
低音に関しては、スピーカーユニットの前後の音が打ち消し合ってさらに音圧は低下することだ。

ピストニックモーションのスピーカーユニットは、前後の音の位相が180度異るため、
打ち消し合うことになる。
低い変換効率が、打ち消しが生じればさらに低くなる。

実際にはスピーカーユニットのサイズがあるため、
すべての周波数において打ち消しが生じるわけではないが、
波長が長くなるに従って、そのままでは打ち消しは無視できなくなる。

だからこそ平面バッフルに取りつけ、そのサイズが低域再生に直接関係してくるし、
エンクロージュアでユニット背面の音を囲ってしまうわけだ。

この点、ハイルドライバーは前後で同位相の音なので、打ち消し合うことは生じない。
つまりスピーカーユニット(特にウーファー、フルレンジ)が、
ピストニックモーションではなく、前後で同位相の動作方式であれば、
平面バッフル(立体バッフル)ということについて考える必要はなくなる。

けれど実際にはハイルドライバーでも、
ジャーマンフィジックスのDDDユニットであっても、
現在のコーン型ウーファーと同等の低域再生能力はもっていない。

だから、こうやってあれこれ考えている。

Date: 12月 4th, 2016
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その20)

平面バッフルから立体バッフル、
立体バッフルからホーンバッフルと書いてきて、
もう一度立体バッフルに戻っていこうとしている。

何をもってして立体バッフルとするのか。
その場合、平面バッフルとの違いはどういうことなのか。
そんなことを考えていた。

別項でも書いているが、世の中には同じことを考える人が三人はいるそうだ。
同時代に三人いるということは、時代を遡ればもっといるといえる。

立体バッフルということを考えた人も、おそらくいることだろう。
そう思い直して、過去のスピーカーシステムの技術を振り返って見ると、
サンスイのLMシリーズというブックシェルフ型スピーカーシステムのことが浮んできた。

1975年に登場したLMシリーズは、コーン型のウーファーとトゥイーターの2ウェイ仕様である。
LMという型番は、リニア・モーション(Linear Motion)から来ていて、
このシリーズ共通のトゥイーターの構造に由来している。

コーン型ウーファーとコーン型トゥイーターのシステムの場合、
ウーファーの振幅の煽りの影響からのがれるために、
トゥイーターにはバックキャビティが設けられる。

トゥイーター(スコーカーもふくめて)は、振動板の振幅がウーファーよりも小さいため、
バックキャビティの影響は、コーンの振動に対してはほとんどないものと考えられがちだが、
バッフルに取りつけただけのコーン型トゥイーターとバックキャビティのもつ場合とでは、
測定してみると、はっきりと差違が生じる。

サンスイはそのことに注目して、コーン型トゥイーターのバックキャビティにメスを入れた。
それがLMシリーズのトゥイーターのバッフル構造であり、
サンスイはマルチラジエーションバッフルと呼んでいた。

Date: 7月 27th, 2015
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その19)

ヤマハのAST方式が実現した低音は、なかなかのものだった。
AST方式はその後YST方式と改称され、
現在ではA-YST(Advanced Yamaha Active Servo Technology)方式というようだ。

ヤマハは、GTラックをエンクロージュアにしたYST-SW1000を1990年に出した。
優れたサブウーファーだった。

現在ヤマハのサブウーファーにはNS-SW1000がトップモデルとしてラインナップされている。
YST-SW1000と同じ30cm口径のウーファーを採用し、立方体に近いエンクロージュアとなっている。
これが現在の、YST-SW1000に代るモデルといえる。

聴けば、印象は変るのかもしれないが、
YST-SW1000の後継機とはどうにも思えないところを感じてしまう。

YST-SW1000に代る製品を開発してほしいと思う。
つまり、オーディオ専用サブウーファーということである。
NS-SW1000には、ホームシアターと兼用のサブウーファーとしてのイメージがはっきりと出ている。

もし叶うのならば、ヤマハが1991年に発表した大型モデルGF1のウーファーセクションを、
アンプ部、フィルター部をリファインしたかたちで出してほしい。

GF1は4ウェイのシステムで、
ミッドバスより上の帯域を受け持つ三つのユニットをおさめたエンクロージュアと、
ウーファー(サブウーファーといったほうがいいかもしれない)のエンクロージュアは独立している。

YST-SW1000はGTラックをそのまま採用しているため重量は48kgあった。
GF1のウーファー部は、ユニット口径はYST-SW1000と同じ30cmだが、重量は80kg。
GF1のウーファー部のエンクロージュアの内容積は145ℓ。

ヤマハがAST1でAST方式を発表したためか、
AST方式は小型であっても低音を出せる技術のように受けとめられているところもある。

しかもヤマハAST方式を採用したスピーカー・デザインを公募したこともあった。
大々的に広告を出していたので記憶されている方も多いだろう。
プロ、アマ問わずで、優秀作は製品化されたこともあって、
本格的な低音再生のための技術であるにも関わらず、少しそれてしまった。

もちろんAST方式が小型であっても低音が出せるのは事実であり、
そのことを活かした製品開発を行うのはメーカーとして間違っているわけではないのだが、
それだけではないのに……、と思ってしまう。

結局YST-SW1000、GF1のウーファーをピークに、
AST(YST)方式のウーファーは、オーディオマニアがほんとうに望んでいるカタチからそれていった。
少なくとも私が望むカタチからはそれてしまった。

それでもまだわずかの期待を込めながらAST(YST)方式のウーファーについて書くのは、
平面バッフルのシステムにもってこれるウーファーは、
家庭におさまる現実的なサイズとしてはAST(YST)方式が最良であると思っているからだ。

AST(YST)方式のウーファーが受け持つ低音域は、
どんなにサイズを大きくしても平面バッフルでの再生は無理なのだから。

Date: 1月 8th, 2013
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その18)

話は変わりますが、皆さんは、本物の低音というものを聴いたことがあるでしょうか。僕はないんじゃないかと思うんです。本物の低音というのは、フーっという風みたいなもので、そういうものはもう音じゃないんですよね。耳で音として感じるんじゃないし、何か雰囲気で感じるというものでもない。振動にすらならないようなフーっとした、空気の動きというような低音を、そういう低音を出すユニットというのは、今なくなって来ています。
     *
音楽之友社発行の「ステレオのすべて ’77」において、
岩崎先生が「海外スピーカーユニット紳士録」で述べられていることである。

これは1976年終りごろの発言であり、
このときまでに岩崎先生はエレクトロボイスのパトリシアン、
JBLのパラゴンにハーツフィールドといった、
1950年代から60年代にかけてのアメリカの大型スピーカーシステムを相次いで導入されたあとの発言でもある。

これらはスピーカーシステムと呼ぶよりも、ラッパといったほうがより的確な表現である構造のものばかりで、
どれもウーファーを直接見ることができない。
中高域のみだけでなく低域までホーンを採用したシステムである。
しかもパトリシアン、ハーツフィールド、パラゴン、いずれもホーンもストレートではなく折曲げ型である。

これらのラッパ以前に岩崎先生のメインであったのはD130をおさめたハークネス。
これもまたバックロードホーンであり、いうまでも折曲げ型である。

こういうラッパをいくつも鳴らされていた岩崎先生が、
「本物の低音というのは、フーっという風みたいなもの」といわれている。

岩崎先生がヤマハのAST1を聴かれたら、長島先生、原田編集長と同じように喜ばれたように思う。

Date: 12月 18th, 2012
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その17)

ヤマハのAST1の試聴のときの、
長島先生と原田編集長の、あれほどの興奮は、いまごろになって実感でき理解できるようになった。

つまり、いまになって非ピストニックモーションの低音と
ヤマハのAST1の低音に共通するところがあることに気がついた、ともいいかえられる。

あのとき原田編集長は長島先生に、
「これ(AST方式)、真空管アンプでできませんか」と訊かれていた。

真空管アンプ、それも出力トランスをしょっているアンプで、
ヤマハのAST方式を実現するのは、不可能ではないもののけっこう難しい。
低域の時定数が、出力トランスを含め多すぎるため、安定度が確保できない。

このときの試聴には、ヤマハからはエンジニアの方もこられていたので、
長島先生とエンジニアの方から、ダブルでダメ出しをされて、
本気で残念そうにされていた原田編集長の表情が、いまも思い出される。

AST1が可能にした低音を、ほんとうに手に入れたがっているのが伝わってきた。

AST1の低音は、コーン型ユニットのウーファーがメインではなく、
バスレフポートからの放出がメインである。そのための専用アンプ込みのAST1である。

理想のバスレフ動作を目ざして開発されたAST1のバスレフポートの開口部から放出される低音は、
ピストニックモーションによる疎密波ではない。風に近い、といったほうがいいだろう。

そういう低音だから、ウーファーのコーン紙が前後にピストニックモーションして生み出される疎密波とは、
聴いた印象、それに体感する印象がずいぶん異る。

そして同じようなサイズの小型スピーカーシステムで、バスレフポートをフロントバッフルにもつモノ、
たとえばアコースティックエナジーのAE1、AE2の低音の出方とは、また大きく異る。

Date: 11月 10th, 2012
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その16)

JBLのハーツフィールド、エレクトロボイスのパトリシアン、
タンノイのオートグラフといったスピーカーシステムが登場していた時代には、
まだエドガー・M・ヴィルチュアによるアクースティックサスペンション方式のスピーカーは生れてなかった。

低音再生のために必要なユニットは大口径のウーファーが必然という時代だった。
いまのように小口径ウーファーで、モノーラル時代では考えられなかったストロークを実現し、
振動板の小ささをそのストロークで補う(大出力パワーをそれだけ必要とする)ということはできなかった。

もしかするとそんなことを考えていた人はいたのかもしれない。
けれど、それだけのパワーをもつアンプが一般用としては存在していなかった。

低音再生は、難しい。
そのアプローチにしても、大口径ウーファーを使うのか、小口径のウーファーにするのか。
大口径派の言い分、小口径派の言い分、どちらにも一理あって、
どちらが完全に正しくて、他方が完全に間違っているわけではない。

どちらにも良さと悪さがあり、どちらも長所を認め、どちらの欠点をうまく使いこなしで補えるかによっても、
大口径なのか小口径なのか、その選択は変ってくる。

私は、というと、基本的には大口径派である。
それでも良質な低音再生ということでいえば、
20cm口径くらいまでの良質なウーファーが出す低音は魅力的であり、
こういう質感は大口径ウーファーでは正直難しいところがいまでもあるようには感じている。

大口径ウーファーには、大口径ウーファー特有の質感が、どこかの帯域に残っているようにも感じる。
f0を低くとったウーファーとf0は高めのウーファーとでは、
同じ38cm口径のウーファーであっても、特有の質感を感じさせる帯域に違いが出てくる。

この特有の質感は、いわゆるオーディオ的低音の質感、スピーカー的低音の質感ともいっていいだろう。
大口径否定派の人はおそらくひどく嫌うのであろう。
わからなくはない。けれど、この特有の質感を完全に消し去ることはできないまでも、
うまく鳴らすことで、そのスピーカーならではの演出にも変えていくことはできる。

私は思うのだ。
モノーラル時代の大型スピーカーシステムが、いわゆる折曲げホーンを好んで採用した理由のひとつには、
大口径ウーファーの、この特有の質感をそのまま出すことを避けたかったためではないだろうか、と。

Date: 11月 10th, 2012
Cate: 平面バッフル

「言葉」にとらわれて(その15)

ホーン型と呼ばれていても低音ホーンに関しては、いくつかの種類がある。
フロントロードホーン、バックロードホーン、クリプシュホーンなど、といったように。

これらのホーンも大きくふたつに分けられる。
ひとつはフロントロードホーンであり、
もうひとつはバックロードホーン、クリップシュホーンなどの折曲げ型、とにである。

このふたつのウーファーから放射された音がフロントロードホーンではそのまま聴き手を目指して直進してくる。
折曲げホーンの場合には、ホーン内部での折返しが生じる。

このふたつのホーンの違いは、
エレクトロボイスの30Wを、正面を向けて鳴らすのと、
壁に向けて(後向きにして)鳴らすのと、共通する違いかある。

フロントロードホーンではウーファーがピストニックモーションによってつくり出した疎密波は、
いわばそのまま出てくる。ピストニックモーションのままである。

一方クリプシュホーン、バックロードホーンでは、そうはいかない。
ホーンの構造からして、ウーファーがどれだけ正確にピストニックモーションをしていようと、
ホーンの開口部から放射される音はピストニックモーションとは呼べない状態になっているはずだ。

低音ホーンの採用は、低音の能率をすこしでも向上させるためである、というふうにいわれてきた。
たしかにモノーラル時代の、これらの大型スピーカーシステムが生れてきたときのアンプの出力は少なかった。
それでも十分な低音での音響出力を得るにはホーンの力を借りる必要があった。

それは理解できた。でもその理解だけに、そのときはとどまってしまった。
それ以上の理由を考えることはしなかった。

でもいま改めて考えてみると、あえて非ピストニックモーションの低音を得るためではなかったのか、
そんな気がしてならない。