岩崎千明氏と瀬川冬樹氏のこと(その17)
ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’77」のなかで、
岩崎先生は、こんなことを語られている。
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じつは、ほんとうはL400にしたかったのです。ところがL400はまだ出てきていない。JBLでは出すといってますけれど。これは、新しいスタジオ・モニターの4343、このスピーカーのコンシュマー版ですね。
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マイルス・デイヴィスのエレクトリック・サウンドを聴くための組合せで、
岩崎先生はJBLのL300を選択されている。
L300は4333のコンシューマー版である。
《ほんとうはL400にしたかったのです》は、
(その1)で引用している岩崎先生のスタックスの文章を読んでいれば、
素直に納得できる。
L400の登場がまだならば、L300ではなく4343を選択した組合せにしなかったのは、なぜ?
そう思われる読者もいようが、
ここでの組合せの相談者(架空の読者)は、29歳と想定されている。
そのためもあってか、L300の組合せだけでなく、
パイオニアのCS616の組合せもつくられている。
L300の組合せのトータル価格は、2,156,800円、
CS616の組合せは、491,000円と四分の一に抑えられている。
L300が4343になるとトータル価格は四十万円ほどアップすることになる。
そのへんも考慮されてだろうが、岩崎先生はこう語られている。
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スペクトラムバランスが違いますから、4343よりもはるかに低音が厚くなるはずで、その意味でもマイルスのレコードによく合うんです。
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ここでの組合せは、あくまでも読者の聴きたいレコード(音楽)がはっきりしてのことで、
組合せの予算に制約がなかったとしても、L300だったはずだし、
登場していたらL400のはずである。
瀬川先生は、どうなのだろうか。
別のところで、瀬川先生は4333よりもL300、
そのL300よりも4333Aといわれていた。
そうなると4343のコンシューマー版のL400が登場していたら、
4333とL300の評価のように、L400だったのだろうか。