Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 7月 29th, 2020
Cate: 218, MERIDIAN

218(version 9)+α=WINDER DAC(余談・その後)

ルンダールのLL1658に取り付ける部品の一つが、前回は手に入らなかった。
電話で問い合せてみた。

すると9月に入荷予定、とのこと。
9月なのか……、と思ってしまう。

自分のモノならば、9月まで待つのもいいけれど、頼まれている分だから、
9月までは……、と思うわけだ。

欲しかったのは、DALEの無誘導巻線抵抗の20Ω(3W)が、五本。
これが9月まで手に入らないのであれば、10Ω+10Ωでいくか、と考えた。

けれど10Ωも在庫がない、ということ。
そうなると、サイズがけっこう大きくなってしまうけれど、
20Ω(5W)の無誘導巻線抵抗の在庫を訊いた。

こちらはなんとか必要な本数分あった。
海人無線にはウェブサイトがあって、
そこで各部品の在庫は確認できる。

今回ももちろん確認していた。
DALEの無誘導巻線抵抗の在庫は、ウェブサイト上はあることになっていたが、
こまめに更新されているわけではないことは知っていた。

なので、電話で確認するのが確実である。

3Wと5Wとでは、かなり大きさが違う。
5Wのサイズだとちょっとめんどうかな、と思うところもあるが、
とにかく仕上げることができるようになった。

前回、コロナ禍の影響がこんなところにまで、と書いたが、
影響は想像以上に、こんなところでも大きくなってきているようだ。

Date: 7月 25th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その25)

7月のaudio wednesdayで、フルニエのバッハの無伴奏をかけたときに、
「目の前で弾いているかのようだ」という感想があった。

そのときのコーネッタは、まだまだ本調子といえる鳴り方ではなかったけれど、
そう感じられるところは確かにあったし、そう感じてくれた人がいたのは嬉しいことでもある。

ここでの「目の前で弾いているかのようだ」は、人によってはそう感じないこともあるだろう。
もっと別の鳴り方でなければ、そう感じない人がいても不思議ではない。

いまどきのハイエンドオーディオの鳴り方になれている人だと、
「目の前で弾いているかのようだ」とは、たぶん感じないであろう。

フルニエのチェロの音像は、いわば虚像である。
その虚像に対して「目の前で弾いているかのようだ」と、まさしく錯覚であって、
錯覚のしかた、というか、そのひきがねとなる要素は、すべての人がみな同じなわけではないだろう。

同じ人であっても、時と場合によって少しは違うことだってありうるであろう。

7月のaudio wednesdayで、「目の前で弾いているかのようだ」と錯覚させてくれたのは、
なんだったのか、といえば、それはおそらく弦の息づかいではなかろうか。

ここ十年以上ステレオサウンドの試聴記をきちんと読まなくなった。
なので、そんな私の感想にすぎないのだが、
最近の試聴記に「弦の息づかい」は使われていないような気がする。

使われているとしても、
私が熱心に読んでいたころとは、ニュアンスの違いがそこにあるような気すらする。

Date: 7月 21st, 2020
Cate: 218, MERIDIAN

218(version 9)+α=WINDER DAC(余談)

メリディアンの218を使っている人たちがいる。
その人たちも、200Vにする。
そのための昇圧トランスを6月にまとめて五つ注文した。

もちろんルンダールのLL1658である。
先日届いた。予定よりもいくぶん早かった。
コロナ禍の影響で遅れるかな、と思っていた。

トランスが届いたから、200Vで使えるようにしなければならない。
そのための部品を秋葉原に購入しに行った。

いつもならすんなり買えるのに、今回は違った。
部品の在庫が少なくなってきている。
三つの部品は、ぎりぎり必要な数が揃った。

一つの部品は、まったく在庫がなかった。
店の方に訊くと、二ヵ月くらいまえに注文を出しているけれど、まだ届かないそうだ。
そろそろ入荷するだろうけど、こういう状況だから、はっきりとしたことはいえない、とのことだった。

なので製作を頼まれている分も手つかずのまま。
コロナ禍の影響は、こんなところにも出てきている。

Date: 7月 16th, 2020
Cate: 218, MERIDIAN

メリディアン 218を聴いた(喫茶茶会記の場合・その8)

今日、開店前の喫茶茶会記に行ってきた。
メリディアンの218にさらに手を加えるためである。

これで6月のaudio wednesdayで鳴らした218と同じになった。
ただしLAN用のターミネーターはなし、の状態だし、100Vでの使用である。

これで来月のaudio wednesdayから218を持参しなくてもいい──、とはならない。
また、わずかだが手を加える予定でいるからだ。

Date: 7月 14th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その24)

いうまでもなく、ここでのそれぞれのアンプの音については、瀬川先生の個人的な印象である。
これらのアンプを聴いたことのある人すべてが、瀬川先生と同じに感じるわけでもないだろう。

マランツのModel 7やModel 2、Model 9で聴いた音が、
なんらかのレコードや曲名と、深く結びついて耳の底にずっと焼きついている──、
そういう人もいるとは思う。

それでも、瀬川先生がいわんとされるところが、よくわかる、といいたい。

私は、マッキントッシュ、マランツ、JBLのアンプを、
それぞれ別の場所で、別の時期に聴いたことは何度かある。
JBLのSG520は、それほど長い期間ではないが、自分でも使っていたことがある。

でも、ほぼ同時期に、同じ場所できいたという経験はない。
それでも、なんとなくわかる気がする。

それに、なんらかのレコードや曲名と結びついた記憶がないから、
優れたアンプではない、ということでもない。

アンプとしての優秀さとは、直接的な関係はない、ともいえるし、
当時のマッキントッシュ、マランツ、JBL、
これらのなかではマランツがもっとも優秀なアンプだった、といえよう。

このことは、アンプだけの話ではないように、いまも感じている。
スピーカーにしてもそうだし、いまもそうだ、と感じているところがある。

オーディオ機器として優秀であるのならば、
それで聴いたなんらかのレコードや曲名と音とが、耳の底に焼きつくはずなのだが、
現実にはむしろ違う、と感じることが多すぎる。

蘇音器ではなくなってきている、ともいえるのは、なぜなのか。

Date: 7月 14th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その23)

蘇音器の本来の意味から離れて、
蘇音器を構成する漢字からイメージすることだけで、思い出すのが、
瀬川先生の1981年の「いま、いい音のアンプがほしい」のなかに出てくる、
マッキントッシュ、マランツ、JBLのアンプについてのところである。
     *
 昭和41年の暮に本誌第一号が創刊され、そのほんの少しあとに、前記のプリメインSA600を、サンスイの新宿ショールーム(伊勢丹の裏、いまダイナミックオーディオの店になっている)の当時の所長だった伊藤瞭介氏のご厚意で、たぶん一週間足らず、自宅に借りたのだった。そのときの驚きは、本誌第9号にも書いたが、なにしろ、聴き馴れたレコードの世界がオーバーに言えば一変して、いままで聴こえたことのなかったこまかな音のひと粒ひと粒が、くっきりと、確かにしかし繊細に、浮かび上り、しかもそれが、はじめのところにも書いたようにおそろしく鮮度の高い感じで蘇り息づいて、ぐいぐいと引込まれるような感じで私は昂奮の極に投げ込まれた。全く誇張でなしに、三日三晩というもの、仕事を放り出し、寝食も切りつめて、思いつくレコードを片端から聴き耽った。マランツ♯7にはじめて驚かされたときでも、これほど夢中にレコードを聴きはしなかったし、それからあと、すでに十五年を経たこんにちまで、およそあれほど無我の境地でレコードを続けざまに聴かせてくれたオーディオ機器は、ほかに思い浮かばない。今になってそのことに思い当ってみると、いままで気がつかなかったが、どうやら私にとって最大のオーディオ体験は、意外なことに、JBLのSA600ということになるのかもしれない。
 たしかに、永い時間をかけて、じわりと本ものに接した満足感を味わったという実感を与えてくれた製品は、ほかにもっとあるし、本ものという意味では、たとえばJBLのスピーカーは言うに及ばず、BBCのモニタースピーカーや、EMTのプレーヤーシステムなどのほうが、本格派であるだろう。そして、SA600に遭遇したのが、たまたまオーディオに火がついたまっ最中であったために、印象が強かったのかもしれないが、少なくとも、そのときまでスピーカー第一義で来た私のオーディオ体験の中で、アンプにもまたここまでスピーカーに働きかける力のあることを驚きと共に教えてくれたのが、SA600であったということになる。
 結局、SA600ではなく、セパレートのSG520+SE400Sが、私の家に収まることになり、さすがにセパレートだけのことはあって、プリメインよりも一段と音の深みと味わいに優れていたが、反面、SA600には、回路が簡潔であるための音の良さもあったように、今になって思う。
 ……という具合にJBLのアンプについて書きはじめるとキリがないので、この辺で話をもとに戻すとそうした背景があった上で本誌第三号の、内外のアンプ65機種の総試聴特集に参加したわけで、こまかな部分は省略するが結果として、JBLのアンプを選んだことが私にとって最も正解であったことが確認できて大いに満足した。
 しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ思ったものだ。
 だが結局は、アルテックの604Eが私の家に永く住みつかなかったために、マッキントッシュもまた、私の装置には無縁のままでこんにちに至っているわけだが、たとえたった一度でも忘れ難い音を聴いた印象は強い。
 そうした体験にくらべると、最初に手にしたにもかかわらず、マランツのアンプの音は、私の記憶の中で、具体的なレコードや曲名と、何ひとつ結びついた形で浮かんでこないのは、いったいどういうわけなのだろうか。確かに、その「音」にびっくりした。そして、ずいぶん長い期間、手もとに置いて鳴らしていた。それなのに、JBLの音、マッキントッシュの音、というような形では、マランツの音というものを説明しにくいのである。なぜなのだろう。
 JBLにせよマッキントッシュにせよ、明らかに「こう……」と説明できる個性、悪くいえばクセを持っている。マランツには、そういう明らかなクセがない。だから、こういう音、という説明がしにくいのだろうか。
     *
ここでのマッキントッシュ、マランツ、JBLのアンプとは、
ずいぶん昔のアンプのことである。
マッキントッシュはC22とMC275のことであり、
マランツとはModel 7のことである。

この三つのブランドのアンプで、マランツだけが、
いわゆる蘇音器的ではない、と私は感じる。

Date: 7月 13th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その22)

タンノイは蓄音器的といわれている。

そのことは、ステレオサウンドの試聴室でタンノイを聴いても、そう感じるところはあった。
コーネッタは、私がステレオサウンドで聴いたタンノイのスピーカーシステムと比較すれば、
口径も小さいし、エンクロージュアもコーナー型で、フロントショートホーン付きと、
さらに蓄音器的といえる内容だ。

ことわっておくが、ウェストミンスターは省いて、である。

そういうコーネッタだから、鳴らすのであれば、真空管アンプだな、と考えていた。
能率は、いまでは高い方に属するけれど、当時のスピーカーとしては低い。

300Bのシングルアンプというのは、出力として不足するであろう。
ならばEL34のプッシュプルアンプか。

伊藤先生がサウンドボーイに発表されたEL34のアンプが、第一候補となる。
けれど、電圧増幅、位相反転回路を共通で、
出力段のみEL34の三極管接続にしたデッカ・デコラ内蔵のパワーアンプの回路にするか。

そんなところを、音を聴く前に考えていたけれど、
音を聴いてしまうと、がらりと変ったところが出てきてしまった。

確かに真空管アンプで鳴らしてみたい、という気持はいまも捨てきれずにいる。
でも、ケイト・ブッシュをMQAで聴いて、こんなふうに鳴ってくれるのであれば、
最新の、とまではいかなくても、比較的新しいパワーアンプ、
もちろんトランジスター式のパワーアンプで鳴らしてみたい、という気持に大きく傾いた。

蓄音器的ということでは、真空管アンプだ。
蘇音器的というとこでは、トランジスターアンプである、私にとっては。

Date: 7月 8th, 2020
Cate: TANNOY, 型番

タンノイの型番(その2)

タンノイの同軸型ユニットは、1974年登場のHPDシリーズからは、
ユニット口径をインチから変更した。

それまではモニター15とかモニター12とか、インチだった。
モニター15はHPD385に、
モニター12はHPD315に、
モニター10はHPD295になっている。

15インチ、12インチの型番が385、315になったのはわかるけれど、
なぜ10インチが295なのか、と疑問に思う人もいるだろう。

この295という数字は、フレームの最大外形からきている。
HPD295だけフレームの形状が違うからだ。

いまコーネッタのことを書いているが、コーネッタのスペルはCornettaだ。
英語が堪能な人は、コルネッタ、もしくはコㇽネッタと発音している。

おそらくコーネッタよりも、そちらのほうが正しいのだろう。
でも、ステレオサウンドが企画してうまれたCornettaは、コーネッタでいい。

Date: 7月 7th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その21)

タンノイは蓄音器的といわれている。

瀬川先生は《電気蓄音器の音と共通の響きであったように思えてならない》と、
「私のタンノイ」で書かれているし、
井上先生は《アコースティック蓄音器を思わせる音》と、「私のタンノイ観」で書かれていた。
どちらも「世界のオーディオ」のタンノイ号で読める。
長島先生も同じことをステレオサウンド 49号、ロックウッドのMajorのところで書かれている。

いまのタンノイがそうだとはいわない。
違うともいわない。
なにしろ、いまのタンノイのスピーカーがきちんと鳴った音を聴く機会がなさすぎる。
インターナショナルオーディオショウでの音を聴いて、
あれがタンノイの音とは思わない方がいい。

電気蓄音器とアクースティック蓄音器とでは、音の印象として違うところもあるが、
郷愁をくすぐるところがあるという意味では、同じことである。

エジソンの蓄音器が日本に最初に入ってきた時には、
蘇音器(機)、もしくは蘇言器(機)と呼ばれていた。

今回コーネッタの音を、じっくりと聴いていて、
私にとっては蓄音器的というよりも、蘇音器的だな、と感じていた。

蘇音器的といっても、エジソンの蓄音器的ということではない。
聴いていて思い起されること、というよりも、思い起こされる音がいくつもあったからだ。

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その20)

ケイト・ブッシュのCDは、2018年にすべてリマスター盤が出ている。
今回、HくんがもってきてくれたCDもそうである。

この時にMQAも配信が始まった。
44.1kHz、24ビットだった。

デジタル録音のアルバムにあわせるためなのだろう。
でもアナログ録音のものは、サンプリング周波数を高くしてほしかったのが本音だ。

大きな期待は、その時はしてなかった。
MQAの音は、ULTRA DACで聴いて衝撃を受けていたけれど、
まだ自分の部屋でMQAが鳴っていたわけでもなかった。

なのでMQAということに期待しながらも、
音に大きな違いはないのかもしれない──、そんなことも考えていた。

これが違っていたことは、218で聴くようになってからである。
数値上は、44.1kHz、16ビットと44.1kHz、24ビットは、どれだけの違いがあるのか。
そのわずかな違いにMQAということが加わる。

そこで、どれだけの音の変化が生れるのか。

実際に聴いてみると、MQA、MQAとバカの一つ覚えのように、
ここ二年ほどの、私が何度も書いたり話したりしている理由がわかる。

コーネッタで聴いても、その違いははっきりとしているし、大きい。
最後のところでかけた“Hello Earth”の音には、ほんとうに驚いた。

20代のころ、QUADのESLをSUMOのThe Goldで鳴らしていたころの音がよみがえってきた。
“Hello Earth”でESLの仰角や振りを調整していたものだ。

コーネッタで聴くケイト・ブッシュは、
ケイト・ブッシュがイギリスの歌手であることも、感じさせてくれた。

アメリカの英語ではなく、イギリスの英語で、ケイト・ブッシュは歌っている。
そう感じられたのが、なによりもうれしいことだった。

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その19)

喫茶茶会記では、コーネッタをコーナーに設置することは難しかった。
床も壁も理想的な条件からほど遠い。

それでもアルテックのいつものセッティングよりは、後面の壁との距離はかなり近い。
けれど左右の壁との距離は、けっこうあいている。

コーナー型のセッティングとしては、フリースタンディングに近い、といえる。
こういうときに、メリディアンの218のトーンコントロールはありがたい。

7月のaudio wedneadayでは、鳴らし始めてしばらくして1.0dB低音をブーストしていた。
途中で1.5dBにして、最後までそのままで鳴らしていた。

そうやってえられたコーネッタの低音の表現力は、
私にとって意外だった。いい方向に意外であった。

喫茶茶会記のスピーカーは、アルテックで、38cm口径。
コーネッタは、タンノイで、25cm口径。

コーネッタは四十年以上前のスピーカーで、
コーナー型という、これも古い形式であり、
同軸型というスピーカーユニットも、古い形式といえる。

しかも新品ではなく、中古で手に入れたモノだ。

音を聴かずに頭でのみ判断して、その日のCDを前夜選んでいた。
結果は、あのディスクももってくればよかった……、と後悔することになった。
そのくらい、よく鳴ってくれたからだ。

兵庫から来てくれるHくんが、ケイト・ブッシュの”Hounds of Love”をもってきていた。
私のiPhoneには、ケイト・ブッシュのアルバムはすべてMQAで入っている。

audio wednesdayが始まる前にCDで聴いて、MQAで聴いた。
最後のほうに、もう一度MQAで聴いた。

ケイト・ブッシュの鳴り方も、私には意外だった。
よく鳴ってくれるのだ。

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その18)

ステレオサウンド 37号、38号、39号掲載のコーネッタの記事は、
エンクロージュアの設計がどう決っていったのか、どう変化していったのかがわかる。

最初に試作されたエンクロージュアはフロントショートホーンが付いていない、
いわゆる四角い箱(レクタンギュラー型)である。
W53.0×H68.0×D45.0cmの外形寸法で、
バスレフの開口部が18.0×10.0cmで、ポート長16.5cmである。

この状態での周波数特性が載っている。
約45Hzまでほほフラットで、それ以下の周波数では急激にレスポンスが下降する。
典型的なバスレフ型の特性といえる。

コーネッタはコーナー型である。
つまり部屋のコーナーに設置するわけだ。

コーナーは二つの壁と床が交叉するところであり、コーナー効果が発生する場所でもある。
理想的な壁と床が用意されていれば、
低域のレスポンスは無響室での結果よりも、18dB上昇することになる。

これはあくまでも理論値であって、
壁と床が理想的な条件とは遠いほど、レスポンスはそこまで上昇しない。
一般的には8dBから12dB程度だと考えられる。

そのためコーネッタの低域特性は、コーナー効果を前提とした設計となる。
つまり低域に向ってなだらかにレスポンスが下降していくのが望ましい。

バスレフ型であるならば、ポート長は長いほど、コーナー型に適した低域レスポンスが得られる。
ただし、そのポート長がエンクロージュア内におさまらなければ意味がない。

記事には、48.6cmのポート長で、コーナー型として適した低域特性になる、とある。
こんなに長いポートは処理がむずかしい。
結果として、レクタンギュラー型と同じポート長にして、
エンクロージュアの内容積を増すことで、約100Hzからなだらかに下降するレスポンスを得ている。
約45Hz以下では急激にレスポンスが下降していく。

コーネッタの周波数特性は、38号に載っている。

Date: 7月 5th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その17)

いまもそうなのだろうと思うが、
タンノイの同軸型ユニットは、ウーファーの口径に関係なく、
中高域のダイアフラム口径は同じである。

HPD385A、HPD315A、HPD295A、
中高域のダイアフラムは共通である。
そしてクロスオーバー周波数も、三つのユニットとも1kHzで同じである。

ということはウーファーの口径に起因する指向特性の変化を考慮すれば、
38cm口径の場合、ウーファーの受持帯域にわたって良好な指向特性は無理である。
30cm口径でも、やや苦しい、といえる。

単純に指向特性の良好さということだけで判断すれば、
25cm口径ということになる。

それでも、私は、どこかHPD295Aの実力を侮っていたところがあった。
タンノイのユニットを代表するのは、やはり38cm口径である。

30cm口径はそのジュニア版といえる。
HPDシリーズをみても、ウーファーに補強リブがあるのはHPD385AとHPD315Aで、
HPD295Aにはないことからも、
HPD295Aは、ラインナップにおいて上二つのユニットとは設計方針が違うのだろう。

発表時期も、30cm口径は、モニターシルバーになる直前であるが、
25cm口径は1961年、モニターレッドになってからだった。

そして25cm口径のIIILZをおさめたシステムは、
IIILZ in Cabinetは、タンノイ初の密閉ブックシェルフ型であることからも、
25cm口径のタンノイのユニットは、ブックシェルフ型向けといえる。

そのユニットを、見かけの割には内容積が確保しにくいコーナー型とはいえ、
それでも誰の目にもあきらかなフロアー型エンクロージュアにおさめたのが、コーネッタである。

Date: 7月 5th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その16)

その9)で、コーネッタに手持ちのサーロジックのサブウーファーを追加したい──、
そんなことを書いた。

HPD295Aは、25cm口径。
それほど低いところまで再生できるとは考えていなかったからなのだが、
実際にコーネッタを鳴らしてみると、意外にもかなり低いところまで再生できることに気づく。

HPD295Aのカタログ上のf0の値は、22Hzなのは知っていた。
喫茶茶会記のアルテックのシステムのウーファー416-8Cとそれほど変らない。

25cm口径としてはけっこう低いf0である。
ステレオサウンド 38号では実測データが載っている。
HPD295は、シリアルナンバー200427と200003の二本が測定されていて、
200427が18.5Hz、200003が18.4Hzである。

IIILZ MkIIの実測データもある。
シリアルナンバー138822と141464で、前者が38.2Hz、後者が55.3Hzである。

HPD295のf0は低いだけでなく、
この実測データをみるかぎりは、バラツキも少ないことがわかる。

でも、これだけで数値でどれだけの低音の再生能力があるのかを、
正しく予想できるわけではない。

サブウーファーを考えていたぐらいだから、
私は、f0の数値の低さをそれほど重視していたわけではなかった。

なのに聴いてみると、サブウーファーは必要ないかも……、と思っていた。
もちろんサブウーファーを持っているのだから、試すことになるだろう。

かなり低いところをうまく補うだけで、全体の音の印象は大きく変る。
ピアノを聴くと顕著である。
サブウーファーがうまくつながっていると、フォルティシモでの音ののびがまるで違う。

それにaudio wednesdayでかけたクナッパーツブッシュの「パルジファル」は、ライヴ録音。
こういうライヴ録音こそ、サブウーファーがあるとないとでは、
全体の雰囲気が、これまた大きく変ってくる。

そんなことがわかっているから、やることになる。
それでもコーネッタだけで、何の不足があるのだろうか、とも感じていたのは本音でもある。

Date: 7月 3rd, 2020
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(ガラード301との比較・その16)

歌い手の口の小ささを優先した気持は、私にもかなり強くある。
それでも、口の小ささばかりに気をとらわれていると、
歌は口からばかり発せられているのではないことを、忘れてしまいがちになるのかもしれない。

口の小ささに強くこだわっている人をみていると、そんな気がすることがある。
人の声は口から発せられているのは間違いないが、
身体は共鳴体でもある。

頭蓋骨からも音が発せられている、ということを何かで読んだことがある。
腹から声を出す、ともいう。
腹式呼吸が重要だということである。

少なくともプロフェッショナルの歌い手は、口だけではない。
上半身から声を出しているように感じている。

ウォルター・レッグの「レコードうら・おもて」に興味深いことが書かれている。
     *
カラスが、私の妻がミラノにその晩来ていると知っていて、一緒に食事をしたいといい張った時のことは、しばしば報道されている。私がカラスの代りを探しているという根拠のない噂が何人かの有名なソプラノを磁石のように引きつけ、私たち夫婦がきまって食事するビフィ・スからの中や周辺を、望みを抱いて動き廻っていた。そこへ、まるで何事もないかのような顔でカラスが入って来て、妻の頬に申しわけのようにせっかちなキスをして腰も下ろさずにいった、「あなたの最高音AとBの歌い方を、そのディミヌエンドの仕方を歌って見せて下さい。ウォルターが私のを聴くと船酔いがするっていうの。」シュヴァルツコップが躊躇していると、カラスは、驚いているレストランの客たちを無視して、彼女のトラブルになっている音をフル・ヴォイスで歌った。その間、シュヴァルツコップは横隔膜や下顎や喉、それに肋骨を手で触っていた。給仕たちはびっくりして足を止め、客は眼を見張り耳を傾けてこの面白い光景を楽しんだ。数分してシュヴァルツコップが同じ音を歌い始め、カラスが、どのようにしてそれらの同じ音を安定して歌うことができるのかを探ろうと、同じ箇所を指でつついた。二十分ほどしてカラスは「分かったと思うわ。朝またやって来ます。それまで練習しておきますわ」といって腰を下ろし、夕食を始めた。
     *
身体は共鳴している。
というよりも、プロフェッショナルの歌い手になればなるほど、
身体の共鳴をコントロールしているのだろう。