Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 4月 9th, 2024
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その31)

ここでは、
アルテックの604-8Gを中心としたワイドレンジシステムの構築について書いている。
ウーファーについて書いている。

トゥイーターは、というと、エラックの4PI PLUS.2で決りだな、と、
4月3日のaudio wednesdayの音を思い出しながら、いま書いている。

4PI PLUS.2が終のスピーカーとしてやって来る前から、
604-8Gには4PI PLUS.2が合う、という確信めいたものはあった。

一般的にいわれている(おもわれている)ような604-8Gの音を、私は求めていない。
それだからこそ4PI PLUS.2だ、と目星はつけていた。

同じ同軸型ユニットでも、タンノイよりもアルテックにつけて鳴らしてみたい。
いままでは604-8Gをなんらかのエンクロージュアにおさめて、
その上に4PI PLUS.2を置くことを想像していたけれど、
604-8Gを平面バッフルに取りつけるというのが、大きくなってきている。

今回の会のような置き方でもいけるという手応えが、そうさせている。

それにエンクロージュアの上に4PI PLUS.2というかっこうは、
604-8Gのスタイルとうまく一致しないような気もしている。
単に見た目の問題だけなのだが、604-8Gの精悍な正面をみながら、
その上にきのこスタイルの4PI PLUS.2だと、ちぐはぐでしかない。

サランネットをつければ604-8Gは見えなくなるのだから、
それでいいじゃないか、といわれそうだが、サランネットをつければ、
それですべて解決するようなことだろうか。

サランネットで隠れていようと、
サランネット越しに604-8Gが見えている。
そのくらい焼きついているのだから、サランネットはもう関係なくなる。

Date: 3月 26th, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その6)

昨年の新製品で、オーラ・デザインのプリメインアンプVA40 rebirthがある。
VA40 rebirthの記事は、目につくかぎり読んでいる。
あることについて、誰か書いているか発言しているか、それを確かめたかったからだ。

誰も指摘していなかった。
おそらく輸入元からの資料に、そのことが記載されていなかったからなのか、
それとも内部を直接もしくは写真で見ても気づかないのか、
どちらにしろなかった。

そうだろうと思っていた。
それでも井上先生ならば、さりげなく指摘されたことだろう。

VA40 rebirthは、ステレオサウンド・グランプリを受賞している。
井上先生は、そこでの座談会で重要なことを、ほんとうにさりげなく発言される。
ステレオサウンドのバックナンバーを読み返してみれば、そのことはわかる。

わからなければ、読み手側がそれまでのレベルだというだけのこと。

VA40とVA40 rebirthは、メインのプリント基板の向きが違う。
VA40はプリント基板の上に部品という、いわゆる一般的な配置だ。

VA40 rebirthではプリント基板を裏返している。
つまりプリント基板に部品がぶら下がっている格好である。

このことは写真を見ればすぐにわかること。
そして、このことが音に与える影響は決して小さくないことは、
井上先生の試聴で何度か確認している。

でも、VA40 rebirthに関する記事で、誰もそのことを指摘しない。
できないだけなのかもしれないが、
自分の目でみて、自分の頭で考えることをやらないのだろうか。

それとも、プリント基板の向きで音は変らないという考えなのか。

昨年末に、そんなことを考えていただけに、
DSP3200について何か語られたとしたら、
ボザークのB200Yのことを話されていた可能性はある、と思っている。

Date: 3月 24th, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その5)

メリディアンのDSP3200のトゥイーターはすでに書いているように、
アルミニュウム振動板のコーン型である。

ずっと以前のスピーカーシステムでは、コーン型トゥイーターは珍しくはなかった。
それがいつのころからか、コーン型からドーム型へ流れは移っていった。

そういえばと思い出すのは、ダイヤトーンの2S305だ。
5cm口径のコーン型トゥイーター(TW25)を搭載していた。
2S208というモデルもあった。
このスピーカーシステムも、5cm口径のコーン型トゥイーター(TW501)である。

昨年末に、あるオーディオ店で、この2S208の壁面設置モデルの2S208Cが鳴っていた。
これが、なかなかいい感じで鳴っていた。
けっこう大きなモデルだから、私の部屋に、このスピーカーを置くスペースはないけれど、
2S208もいいし、以前、何度か聴いている2S305の音も思い出しては、
いいスピーカーだな、ともう一度、きちんと聴きたくなった。

ダイヤトーンのコーン型トゥイーターの振動板は紙だった。
アルミニュウム振動板のコーン型トゥイーターといえば、
ボザークのB200Yである。口径は約5cm。

ボザークのほとんどのシステムに搭載されている。
井上先生が愛用されていたB310B Contemporaryは、
このトゥイーターを八本、縦一列に配置していた。

ボザークとメリディアンとでは時代がかなり違う。
国も違う。スピーカーシステムとしての大きさも違う。

それでもどこか共通するところがあるようにも思う。
残念なことに、私はボザークの音は一度も聴いていない。
だから想像するしかない。

それでも井上先生ならば、メリディアンのDSP3200をどう評価されただろうか。
その想像は、けっこう楽しい。

Date: 2月 15th, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その4)

メリディアンのサイトにアクセスすると、
DSP8000 XEをフラッグシップとして、
DSP9、Special Edition DSP7200、Special Edition DSP5200などが、
DSP3200とともにラインナップされている。

DSP8000 EXのユニット構成は、
ウーファーが20Cm口径コーン型(6本)、スコーカーが16cm口径コーン型、
トゥイーターは2.5cm構成のベリリウム振動板のドーム。

DSP9のユニット構成はDSP8000 XEと基本的に同じで、
ウーファーの数が6本から4本となっている。

DSP7200もスコーカー、トゥイーターは同じで、
ウーファーが2本になり、
DSP8000、DSP9ではエンクロージュアの両サイドにあったウーファーが、
フロントバッフルに取りつけられている。

DSP5200は一見するとダブルウーファーの2ウェイのようだが、
ウーファーとスコーカーが16cmと同口径のコーン型、
トゥイーターは2.5cm口径のベリリウムのドーム型の3ウェイである。

これらのモデルがベリリウム振動板のドーム型トゥイーターを採用しているのに、
DSP3200では8cm口径のアルミニウム振動板のコーン型トゥイーターである。

DSP3200のウーファーは16cm口径コーン型。上級機のスコーカーとまったく同じではないだろうが、
基本的にはそう大きくは違わないだろう。

DSP3200の開発にあたって、上級機の上の帯域二つのユニット、
2.5cmのドーム型トゥイーターと
16cmのコーン型ウーファー(スコーカー)とで組むことも考えられたのではないのか。

その方が、ずっと開発も楽になるはず。
なのに実際のDSP3200は、8cmコーン型ユニットをトゥイーターに採用している。
このことの、なぜかを考えずにオーディオ評論は書けるのだろうか。

Date: 1月 31st, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その3)

メリディアンのDSP3200のユニット構成に疑問を抱く人も少なからずいよう。
DSP3200と同サイズの2ウェイのスピーカーシステムは、
16cm口径前後のウーファーとドーム型(もしくはATM型)が一般的といえる。

2022年のインターナショナルオーディオショウで聴いたYGアコースティクスのCAIRNは、
まさにこの構成だし、CAIRNの音は、この種のスピーカーシステムの完成形に、
いまのところいちばん近いのでは──、そんなふうに思わせるほど、
印象に残る音を聴かせてくれた。

それまでYGアコースティクスのスピーカーシステムの音に感心はすれば、
それ以上の感想をもつことはなかったけれど、CAIRNは違っていた。
(もっともそれだけの内容(実力)にふさわしい価格でもあるが……)

このCAIRNを、小型2ウェイのスピーカーシステムのリファレンスとしたうえで、
DSP3200を捉えるならば、トゥイーターのコーン型なんて時代遅れも甚だしい、とか、
理解できないユニット構成──、そんなふうに受けとる人に、何をいったらいいだろうか。

スピーカーというのは、これまで何度も書いてきているように、からくりである。
そのからくりのおもしろさをどう受けとめ理解し、鳴らしていくのか。

スピーカーシステムは忠実な変換機を目指していくべき──、なのは、
私だって同じ考えだが、だからといって、見識が狭すぎる人が少なくない、というか、
融通がきかないのか、スピーカーをからくりと捉えていないのか。

そういう人にとって、DSP3200のコーン型トゥイーターは指向特性ひとつとっても、
その採用を認めないことだろう。

確かにスピーカーユニットの指向特性は振動板の口径で決ってしまう。
可聴帯域すべて指向特性を同じするのはなかなか大変なことだし、
8cm口径の振動板ならば、数kHzから指向特性は狭まっていく。

そんなことは指摘されまでもなく、スピーカーを設計する人ならば知っている。
それでも8cm口径のコーン型ユニットを、トゥイーター的ポジションに選択している。
そのことを理解しようとしない人がいる。

Date: 1月 16th, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その2)

メリディアンのDSP3200のサランネットは、
トゥイーター、ウーファーぞれぞれについていることもあって、円の形をしている。

この状態のDSP3200を、何も知らずに見れば、
小口径ウーファーとドーム型トゥイーターによる2ウェイだと思いがちである。

実際は16cm口径のウーファーと8cm口径のトゥイーターであり、
この口径からも推測できるように、どちらもコーン型ユニットとなっている。

同サイズの他のスピーカーシステムとは、この点が大きく違うところであり、
DSP3200の特徴ともいえる。

トゥイーターというよりも、小口径フルレンジにウーファーを足したかっこうである。
だから岩崎先生の文章を思い出したわけだ。

8cmのフルレンジユニットの振動板はアルミである。
といってもカチカチのアルミ振動板ではない。

メリディアンのウェブサイトをみても、クロスオーバー周波数は発表されていない。
同サイズのコーン型ウーファーとドーム型トゥイーターのスピーカーシステムでは、
数kHzあたりに設定されているが、DSP3200ではおそらくかなり低いクロスオーバー周波数のはずだ。

しかもDSP3200はアクティヴ型であり、
このユニット構成のメリットを最大限に活かしている、と私は捉えている。

Date: 1月 14th, 2024
Cate: MERIDIAN

メリディアン DSP3200のこと(その1)

三年ぶりに再開したaudio wednesdayでの音出し。
1月10日の序夜では、メリディアンのDSP3200を鳴らした。

DSP3200を聴く(鳴らす)のは、今回で二回目。
9月に一度聴いている。
この時も、自分でセッティングして、その音を聴いている。

そして今回。
部屋は大きく違っている。
造りも大きさも、ずいぶん違う。

今回のほうが広い。天井もかなり高い。
容積的に、DSP3200で大丈夫だろうか……、とちょっと心配もしていた。

DSP3200は小型の2ウェイである。
小型スピーカーといっても、
LS3/5Aの時代とはずいぶん鳴り方が進歩している面があるのはわかっているといっても、
今回の部屋は、かなり大きい。
そこに十人以上の人が入ったら──、そんなふうにいくつかのことを心配していた。

2020年まで、喫茶茶会記でやっていたころは、
菅野先生録音の「THE DIALOGUE」をかけていた。

9月に聴いた印象では、「THE DIALOGUE」はちょっと無理かな、と思っていた。
なので鳴らすことはなかったのだが、これは鳴らせるな、と考えを改めた。
そのくらいDSP3200の鳴りが違っていた。

DSP3200のユニット構成は、いわゆる小型2ウェイのモデルとはちょっと違う。
そこで思い出すのは、岩崎先生がステレオサウンド 35号に書かれていることだ。
     *
 これをフルレンジとしてまず使い、次なるステップでウーファーを追加し、最後に高音用を加えて3ウェイとして完成、という道を拓いてくれるのが何よりも大きな魅力だ。
     *
パイオニアのPM12Fについての文章である。
コーン型のスコーカーであり、いわば小口径フルレンジともいえるユニットである。

Date: 7月 3rd, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その14)

中核となるユニットは一つ。
つまりDDD型ユニットなわけだが、
ジャーマン・フィジックスのスピーカーシステムのラインナップは多い。

まだチタンの振動膜のDDD型ユニットだけだったころから、そうだった。
すべてのラインナップを、当時、聴いたわけではないが、
個人的に強く心惹かれたのは、Troubadour 40とUnicornの二機種だけだった。

最上機種のGaudíも、タイムロードの試聴室で聴いている。
その時の音が、Gaudíが真価を発揮した音とは思っていなけれど、
それでも自分にとって大事な音、
いいかえれば心に近い音を出してくれるスピーカーであれば、
どんなにひどい状態で鳴っていても、なにかしら感じるものがある。

その意味で、Troubadour 40とUnicornだけだった。
Unicornは、エンクロージュアの製作に時間がかかるのか、
なかなか出来上ってこない、という話を聞いていた。

時間がかかるのがわかっているから、見込みで早めに注文しても、
出来上ってこない。

そのため、Unicornを購入したい人をずいぶん待たせた、ともきいている。

そのUnicornが、MK IIになった。
ずいぶんと変ってしまった──、と感じてしまった。
エンクロージュアの構造を簡略したのか、とも思ってしまうほどだった。

やっぱり、最初のUnicornなのか──。
Unicorn MK IIを聴きもせずに、そんなふうに思ってしまっていた。

しかもDDD型ユニットもカーボン振動膜になった。
そのこともあいまって、ますますUnicorn MK IIへの関心は失っていった。

そんな勝手な思い込みを、今年のOTOTENでのHRS130の音は、
消し去ってくれた。
Unicorn MK II、いいんじゃないのか。

そういう気持が芽ばえてきたし、
聴いているうちに大きくなってもいた。

現在、輸入元のタクトシュトックはHRS130だけしか取り扱っていない。
ぜひとも、Unicorn MK IIの取り扱いも始めてほしい。

Date: 6月 27th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その13)

(その4)で、Troubadour 40のカーボン仕様が登場した時に、
菅野先生に、どうでしたか、と訊いたことを書いている。

その時、菅野先生は少し渋い表情をされて、やっぱりチタンだよ、といわれた。

カーボン仕様のTroubadour 40が登場したのは2008年ごろ。
それから十年以上が経っていて、
今回のOTOTENでHRS130を聴いて、まず思ったことは、カーボン、いい! だった。

十年以上の歳月のあいだに、カーボン振動板も改良されていることだろう。
Troubadour 40のカーボン仕様を聴く機会は、あのころはなかった。

実際のところ、どうなのだろうか。
私は勝手に良くなっている、と思っている。

それに昨年9月、サウンドクリエイトで聴いた時よりも、印象がずっといい。
あの時は、チタンのTroubadour 40がよかったかも……、そんなことを思いながら聴いていたけれど、
今回はカーボンのDDD型ユニットのほうがいいかも、と思っていたくらいだ。

比較試聴すると、どうなのだろうか。
どちらにもそれぞれの良さがあるのだから、あえて比較試聴しないほうがいい。

でも、そのくらいに今回のHRS130はよく鳴っていた。
もしかするとなのだが、カーボンのDDD型ユニットは、ある程度鳴らし込む時間が必要なのかもしれない。

Date: 5月 29th, 2023
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その31)

LS3/5Aをダブルスタックで鳴らすのは、いまもやっている人はいるようだ。
LS3/5Aをダブルスタック(つまり計四本)で聴くのは、邪道だ──、
そういいたくなる人のほうがきっと多いだろうし、
同じ気持をもっていないわけでもない。

けれど同時に、スタックにしてでも鳴らしたい──、という気持もわかる。
LS3/5Aの音(その世界)に惚れ込んだ人ならば、
このままあとすこしスケールアップしてくれたなら──、
そんなことは一度も思ったことはない、と言い切れる人はどのぐらいいるだろうか。

LS/3/5A用のウーファーはいくつか出ていた。
瀬川先生は、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
JBLの15インチ・ウーファー136A、
エンクロージュアにはサンスイとJBLが共同開発したECシリーズの中からEC10とを組み合わせ、
LS3/5A用のサブウーファーとする組合せをつくられている。

これらすべての音を聴いているわけではないが、聴いている音もある。
けれど、LS3/5Aの魅力そのままに、スケールアップに成功した音とは思えなかった。

そういう耳の私にとって、メリディアンのM20はまさしくLS3/5Aの音をスケールアップした音が、
いまここで鳴っている──、と感じたし、
その事実に、とにかく嬉しくなったものだ。

M20はLS3/5Aの延長線上にある音であり、スピーカーシステムである。
M20を聴いた、いまから四十年近く前から、そう感じていた。

けれど、そんなふうに感じる人はいなかった──、と感じていた。
誰もそんなことを書いたりしていない。

昨日、別項で書いている野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会に行ってきた。
そこで、Mさんという初対面の方から声をかけられた。

このブログで、以前、書いている。
LS3/5Aの延長線上にあるM20だ、と。
MさんはLS3/5Aを計五回買ってしまうほど、惚れ込んでいる人だ。

そのMさんは、私の書いたものを読んでM20を買った。
その音を聴いて、ほんとうにLS3/5Aの延長線上の音だった、と話してくださった。

そうだろう、そうだろう、と思いながら聞いていた。

Date: 4月 13th, 2023
Cate: High Resolution, MERIDIAN, ULTRA DAC

MQAのこれから(とメリディアン ULTRA DAC)

MQA破綻のニュースから、ほぼ一週間。
断片的な情報が二、三入ってきたけれど、それらを元に今後MQAがどうなるのかかまでは判断できない。

一方でTIDALがMQAからFLACへと移行するというニュースもあって、
アンチMQAの人たちは大喜びである。

MQAの音源は、今後限られたタイトル数になることだって考えられる。
そうなってほしくないけれど、可能性としては十分ある。

となるとメリディアンのULTRA DACの必要性が、個人的にはとても大きくなってくる。
MQA用D/Aコンバーターとしてではなく、通常のCDやFLACの再生におけるULTRA DACの存在だ。

別項で何度も書いているように、ULTRA DACには、独自のフィルターをもつ。
short、medium、longの三種のフィルターである。

これらのフィルターはMQA再生に使えない。
CD、FLACなどのPCMに対して使える機能で、
とても有用性の高いだけでなく、MQAの音を聴いたあとでは、このフィルターなしで、
通常のCD、FLACはできれば聴きたくないと思わせるほどだ。

このフィルターがどういう処理を行っているのかは、詳細ははっきりとしない。
けれどMQAには使えないこと、うまく選択できた時の音の良さからも、
こういうことをやっているのでは、という想像はなんとなくできるけれど、
それが合っているのかどうか、確認しようがない。

音楽ジャンルによって、というよりも録音の仕方・状態などによって、
short、medium、longの選択は変ってくる。

このことも別項で書いてるが、
マリア・カラスの「カルメン」の通常のCDを、
ULTRA DACのshortフィルターで再生した音が、声楽家をめざす人ならば、
この音を手に入れるべき、といいたくなるほどの見事さだった。

製品の規模が違うし、価格も大きく違うから、
同じメリディアンの218でMQAで再生した音よりも、
マリア・カラスのリアリティということではULTRA DACだった。

いまのところULTRA DACでマリア・カラス(MQA)は聴いていない。
その音はさらに素晴らしいのだろうが、
そんなことありえないのだが、MQAの音源が世の中からすべてなくなったとしても、
ULTRA DACがあればそれでいいや、と思わせてくれるほどだ。

三種のフィルターの有用性は聴いた人(使いこなせる人)でないと、
なかなか伝わりにくいのかもしれない。

Date: 2月 12th, 2023
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その16)

世代によって、はじめてきいたJBLのスタジオモニターは違ってくる。

いま七十代か、上の世代になると、
JBLのスタジオモニターとして最初に、その音を聴いたのは4320で、
その次に4331や4333、そして4341、4350、4343という順序だろう。

いま六十前後の世代だと、4343が最初だったりする人も多いだろう。

4343を最初に聴いている。
それから4350、4341、4333Aなどを聴いて、4320を聴く機会が訪れたのは、
4343を聴いた日からけっこう経っていた。

この項で、4320を自分の手で鳴らしてみたい、と書いている。
そんなことを書いてきたおかげなのかどうかはなんともいえないけれど、
年内には4320を聴くことができそうである。

その時が来てみないことには、どんなかたちで4320の音を聴けるのかはっきりしないけれど、
自分の手で鳴らすことができるかもしれない。

4320を、現在高い評価を得ているスピーカーシステムよりも優れている、とはいわない。
物理特性を比較しても、4320は古い世代のスピーカーといえる。

だから懐古趣味で聴きたい(鳴らしてみたい)わけではない。
別項で書いているように、オーディオマニアには、
スピーカーの音が好きな人とスピーカーの音が嫌いな人がいる。

4320の音は、スピーカーの音が好きな人にアピールするところがあるのかもしれない。

以前聴いた4320は、じっくりとはとても言い難かった。
聴くことができた、という感じでしかなかった。

それでも4320の音を、また聴きたいといま思い出させるほどに、
記憶のどこかにはっきりと刻まれているのだろう。

4320を、いま聴きたい(鳴らしてみたい)と思う理由を、はっきりと探るための機会。
そうなったら嬉しいし、何を見つけられるだろうか。

Date: 2月 5th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その12)

ステレオサウンド 225号で、
小野寺弘滋氏は、《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない、それでいて無指向性システムならではのリラックスした雰囲気をかもし出す無二の存在。》
とジャーマン・フィジックスのHRS130のところで書かれている。

ここで、小野寺弘滋氏がいうところの無指向性とは、
この項で書いてきている無指向性スピーカーのこととは思えない。

ビクターのGB1の代表されるような複数のユニットを搭載した多指向性を含めてなのか、
それともコーン型ユニットを上向きにして取りつけ、
円錐状のディフューザーがコーン紙前面にある、いわゆる間接放射型の無指向性を含めてなのか。

そのことが曖昧なままでの《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない》のように感じる。

小野寺弘滋氏は、菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40(80)は聴いてるだろうし、
それだけでなくステレオサウンドの試聴室、輸入元のところでもそうであろう。

そのうえで《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない》としたのか。
なんとも曖昧なままの印象しか残らない。

Date: 2月 2nd, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とベストバイ・その3)

Kindle Unlimitedで、ステレオサウンド 225号を読んでいる。
ステレオサウンド・グランプリで、ジャーマン・フィジックスのHRS130は選ばれている。

小野寺弘滋、傅 信幸、和田博巳の三氏がHRS130について書かれている。

小野寺弘滋氏は、《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない、それでいて無指向性システムならではのリラックスした雰囲気をかもし出す無二の存在。》、
傅 信幸氏は、《本機の鳴りかたには特有のライヴ感がある。本機の位置にステージが出現するのには、ギョッとさせられてしまう。まるでトリックアートを観るかのようだ。》、
和田博巳氏は、《リビドーを喚起するDDDユニットの妖艶な音は、この音に魅せられたら最後、本モデルを買うしかない。個人的に困った存在だ。》、
というふうに評価されている。

三氏の本音はなんともわからないが、
高く評価されている、と受け止めていいだろう。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットの実力を高く評価している者としては、
それぞれにちょっとずついいたいことはあるけれど、ここでは控えておく。

ベストバイでもHRS130は選ばれている。
小野寺弘滋、傅 信幸、山之内 正の三氏が星(点)を入れていて、
三氏とも一つ星で、計三星で、ペアで320万円以上のスピーカーシステムとしては、七位。

ベストバイでは、小野寺弘滋氏がコメントを書かれている。
さらっとしているな、と読んでいてまず感じた。

和田博巳氏は今回はベストバイの選考委員ではない。
和田博巳氏が例年とおり選考委員の一人だとしたら、星いくつだったのか。

《個人的に困った存在だ》とまで書かれているのだから、
星一つということはないだろう。
星二つ、もしくは三つか。

そうなっていたら、小野寺弘滋氏ではなく、和田博巳氏が書かれていたかもしれない。
ステレオサウンド・グランプリとベストバイでの評価に温度差を感じることは、
今回のHRS130だけのことではない。

これまでにはあった。
ステレオサウンド・グランプリではけっこう高く評価していたはずなのに、
同じ号でのベストバイでは、意外に冷静な評価(冷たい評価)と感じたことは、ままある。

それはステレオサウンド・グランプリとベストバイとでは選考基準が違うから──、
そのことはわかっているうえで、これを書いている。

Date: 1月 28th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その7)

昨晩は、音楽好き、オーディオ好きな人たちが六人集まっていた。
四時間以上、あれこれ話をしていた。

スピーカーのことが話題になった。
となればジャーマン・フィジックスのことを私は話す。

私の話を聞いていた人は、ジャーマン・フィジックスに興味を持ってくれた。
なので、銀座のサウンドクリエイトで常設されているから、聴くことができる、と伝える。

ずっと以前、4343が売れていたころ、
4343というスピーカーがある、いいスピーカーだと話題になって、
聴きたいと思ったら、全国のどこのオーディオ店であっても、たいていは4343があった。

もちろん4343を置いてないオーディオ店もあっただろうが、
あの時代の4343の勢いはすごかった。
聴くのが難しい、とはいえなかったはずだ。

けれどジャーマン・フィジックスは違う。
十年以上にわたり、日本には輸入元がなかったし、
昨夏、やっと輸入が再開されたけれど、ここに行けば聴ける、とはいえなかった。

やっといえるようになったし、
そうなると、こちらも熱っぽく語ってしまう。

「でも聴けないんでしょ」という返事をきかずにすむということ。
これは、ずっとジャーマン・フィジックスのよさを伝えたいと思い続けてきた者にとって、
ほんとうに嬉しいことだ。

昨晩、ジャーマン・フィジックスに興味を持った人は、
近々サウンドクリエイトに行き、その音に触れるはず。