Archive for category フルレンジユニット

Date: 11月 26th, 2020
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その14)

レベルコントロールに使われるポテンショメーターが、
どういう構造になっているか分っている方は読み飛ばしてもらっていい。

10kΩのポテンショメーターがあるとする。
減衰量が0のとき、10kΩのポテンショメーターは、
そのままアンプの入力に並列に接続されたかっこうになる。

絞りきった状態、減衰量が∞のときは、10kΩのポテンショメーターが、
アンプの入力に対し直列に接続された格好になり、
アンプの入力はショートされた状態でもある。

ポテンショメーターの減衰量は、R1とR2の抵抗の比で決る。
つまり10kΩのポテンショメーターの場合、R1+R2=10kΩであり、
減衰量によってR1、R2の値が変っていく。

R1がアンプの入力に対して直列に、R2が並列に入る。
減衰量0のときは、R1が0kΩで、R2が10kΩとなり、
減衰量∞のときは、R1が10kΩで、R2が0kΩとなる。

つまり減衰量が増えるほどR1の値が大きくなり、R2の値は小さくなっていく。
R2はアンプの入力に並列に入るわけだから、
この値が小さくなっていくことと、ショート状態に近くなっていくことでもある。

その分R1の値が大きくなっていくわけだから、どちらが音質への影響(デメリット)が大きいのか。
いままではR1の値が大きくなる方だ、と考えていたが、
間違っていたわけではないものの、R2が小さくなることのメリットも、
実はけっこう大きいのではないか、とグリッドチョーク的ケーブルをあれこれやっていて、
そう考えるようになってきた。

繰り返すが、絞った状態で使うのであれば、
良質のポテンショメーターの使用が条件となる。

Date: 11月 12th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その13)

マークレビンソンのLNP2のインプットアンプのゲイン切り替えは、
NFB量を変えて行っているため、
単純にインプットレベルのポテンショメーターを絞った状態だから──、
といったことは言い難いところはある。

ゲインをあげれば、その分だけNFB量が減っているわけで、
そのことにる音の変化は当然ある。

ゲインを高くして、レベルコントロールを絞り気味にして使うのか、
ゲインを低めにして、レベルコントロールをできるだけ絞らずに使うのか。

ボリュウム(ポテンショメーター)の音の影響を考えれば、
できるだけ絞らずに使う方が好ましい、と考えられる。

それでも私がオーディオに興味を持ち始めたころには、
すでに余剰ゲインによる音のよさ、といったことがいわれていた。

システム・トータルのゲインを高くとったうえで、
ボリュウムを絞り気味にしたほうがいい、ということがいわれていた。

もちろん、一方で、そういった余剰ゲインは要らない。
余剰ゲインの分だけアンプを減らして、ボリュウムはできるだけ絞らずに使う、
そのほうが音がいい、という意見もあった。

LNP2では、インプットアンプのゲインを高くして、
つまり余剰ゲインを確保したうえで、ボリュウムは絞り気味にして使う。
そのほうが、なぜか好ましいように感じた。

20代のころは、LNP2に搭載されているポテンショメーターの質が高いからなのか、
とも考えたことがある。

LNP2のポテンショメーターはスペクトロール製で、かなり高価だった。
それに比べ、国産の普及クラスのプリメインアンプのそれは、ずっと安価だった。

スペクトロール製だから、絞り気味でも大丈夫なのか。
グリッドチョーク的ケーブルについて書いていて、
なんら関係のないLNP2のことを持ち出したのは、
ポテンショメーターを絞り気味にするという使い方は、
グリッドチョーク的ケーブルの直流域の抵抗の低さに通じるからである。

Date: 11月 11th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その12)

1970年代のプリメインアンプには、ミューティングスイッチがついている機種が割とあった。
たいていの機種では、このスイッチをONにすると、20dB減衰する。

私が使っていたアンプでは20dBだったけれど、
機種によっては10dBのものもあったと思う。

このスイッチはどういう時に使うかというと、
音楽を聴いている最中に電話がかかってきたりして、
急に音量を下げたい時に便利だし、
それだけでなく小音量で聴く場合に、
ミューティングスイッチをONにすれば、その分ボリュウムの位置は上になる。

いまでこそ、あまりいわれなくなったけれど、
当時は、ボリュウムは、絞り気味で使うと音が悪くなる──、
そんなことが、オーディオ雑誌によく書かれていた。

聴く音量、スピーカーの能率によっては、
ボリュウムをかなり絞った状態で使うことがある。

真夜中に音量を絞って聴きたい時に、
ボリュウムを絞りすぎると、音がやせることもあったし、
あまり質の高くないボリュウム(ポテンショメーター)だと、
左右チャンネルの減衰誤差が生じて、音量がアンバランスになることもある。

それらを回避するために、ミューティングスイッチを活用する、
ということがオーディオ雑誌に、これまたよく載っていた。

たしかにそうだったのだが、
たとえばマークレビンソンのLNP2を使ってみると、
ほんとうにそうなのか、と思うことがあった。

LNP2のインプットアンプのゲインは切り替えられる。
このゲイン設定によって、LNP2の音は変っていく。

以前書いているのが詳細は省くが、
インプットアンプのゲインは最大にして、
レベルコントロール(ポテンショメーター)を絞り気味で使ったほうが、
意外にも好ましかったりしたからだ。

Date: 11月 9th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その11)

11月4日のaudio wednesdayでも、グリッドチョーク的ケーブルを試用した。
(その10)で書いているように、タムラのA8713の一次側巻線に、
1kΩの抵抗(DALEの無誘導巻線抵抗)と
1000pFのディップマイカコンデンサーを直列したものを並列にハンダ付けした音を聴いてもらった。

ここでも、確かに効果がある。
今回くらいの値だと、効果があるのはなんとなく説明がつくようなところがあるが、
スピーカーのユニットに、数Ωと数pFの抵抗とコンデンサーを接続したときの音の変化は、
どう説明できるのだろうか、といまも迷うところだ。

そうとうに高い周波数では作用しているだろうが、可聴帯域ではほとんど、というか、
まったく特性的には変化ない、といっていい。

電子回路のシミュレーターでも、変化は出なかったそうだ。
けれど音を聴く(聴いてもらう)と、抵抗、コンデンサーの有無による音の違いは、
そうとうにはっきりした もので、一度ありの音を聴いてしまうと、
なしの音は、どこか濁りを感じてしまうし、
人の声を聴けば顕著なのだが、ありの音を聴いた後では、
なしの音は、喉にえへん虫がいるような感じの発声にきこえてしまう。

今回のグリッドチョーク的ケーブルでの音の変化は、
録音の細工的なところが、はっきりと聴きとれる方向への変化だった。

その意味ではモニター的ということになるのかもしれないが、
一般的なモニタースピーカーのもつモニター的なイメージとは、ちょっと違う。
すんなり提示してくれる印象なのだ。

こうなると接続されず開放状態の二次側巻線にも、
このCR方法をやりたくなる。

この比較試聴は、12月のaudio wednesdayの最初のところで行う予定だ。

Date: 10月 10th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その10)

前回と今回のaudio wednesdayで試したケーブルのことを、
私は便宜的にグリッドチョーク的ケーブルと呼んでいる。

もっといい呼称を思いついたら、そちらに変更するが、
いまのところグリッドチョーク的ケーブルと表記していく。

グリッドチョーク的ケーブルには、トランスを使う。
トランスには巻線がある。この巻線はいうまでもなくコイルである。

二年くらい前から、このブログでCR方法について書いている
この方法は、グリッドチョーク的ケーブルにも応用できる。

今回のケーブルもそうしようか、と思ったが、
前回のケーブルと今回のケーブルの違いを、
前回来られた方が今回も来てくれるのであれば、比較試聴になるしということで、
あえて試してない。

グリッドチョーク的ケーブルに使っているタムラのA8713の一次側巻線の直流抵抗は、約1kΩ。
なので1kΩの抵抗(ここはDALEの無誘導巻線抵抗)と0.001μF(1000pF)を直列にして、
巻線に並列に接続する。

次はこれを試してみる予定だし、来月のaudio wednesdayの最初の方で、
ありなしの音を聴いてもらう。

さらには開放状態の二次側巻線をどうするかである。
ここにもCR方法を試すつもりである。

これらのことを試していくとともに、
いまはむき出しのままで使っているトランスを、どうケーシングするのかも、今後の課題。
その後、A8713だけでなく、グリッドチョークのいくつかも試してみたい。

それにA8713も一次側巻線を、いまの20kΩから5kΩに変更すれば直流抵抗は約500Ωとなり、
直流域でショート状態に近づけることが、どれだけ音に影響していくのかも、
audio wednesdayでの公開試聴でやっていく予定だ。

Date: 10月 9th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その9)

グリッドチョークのことに、前回気づいてから思い出したことがある。
ステレオサウンドでの井上先生の試聴でのことだ。

CDは登場していたけれど、
まだまだアナログディスクの売上げが多かった時のことだ。
だからプリメインアンプ、コントロールアンプには、
きちんとしたフォノイコライザーが搭載されていた。

その時の試聴はCDのみを使ってだった。
途中で、井上先生がその時使っていたアンプのフォノ端子に、
MC型カートリッジの昇圧トランスを接続してみろ、と指示された。

なぜ、そんなことを? と思いながらやってみると、
小さくないどころか、かなりの音の変化があった。

昇圧トランスの接続前は、フォノ端子には何も接続されていなかった。
次に、昇圧トランスを外して、MC型カートリッジをトーンアームに装着した状態で、
フォノケーブルをフォノ端子に挿す。

また音が変る。
最後はフォノ端子にショートピンである。

アンプの入力セレクターをフォノにして、ボリュウムをあげていく。
レコードは再生していない状態だから、ノイズのみがスピーカーから出てくる。

ここに昇圧トランスを接続すると、ノイズが減る。
MC型カートリッジでも減る、ショートピンでも減る。

ショートピンの時が、もっともノイズが減るのは理屈通りである。
このときはフォノイコライザーのノイズが、
CD再生にどれだけ影響しているのか確認であった。

この時は、CD再生時に、フォノイコライザーのノイズの処理の手法であったわけで、
昇圧トランスの二次側巻線の直流抵抗がどれだけだったのかはわからないが、
少なくともフォノイコライザーの入力インピーダンス(47kΩか50kΩ)よりは低い。

ということはフォノイコライザーほどゲインは高くないし、
ノイズも少ないラインアンプであっても、ノイズの低減化の効果もあるといえる。

とはいえこの時は、
フォノイコライザーのノイズ影響の低減化だけに気を奪われて、
ライン入力にトランスの巻線を並列に接ぐこと、
つまり池田 圭氏が盤塵集に書かれていたことを思い出していたわけではなかった。

Date: 10月 9th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その8)

9月のaudio wednesdayに引き続き、
今回もラインケーブルにタムラのA8713の一次側巻線を並列に接続したものを持っていった。

ただし今回は、A8713をメリディアンの218出力側から、
マッキントッシュのMA7900の入力側へと位置を変更した。

A8713を二組(四個)持っていれば、
ラインケーブルを二組作って、比較試聴ができるけれど、あいにく一組しか持っていない。

ならばケーブルの向きを入れ替えて、ということになるだろうが、
これでは厳密な比較試聴にはならない。

ケーブルの方向性もあるけれど、
それ以外にも自作ケーブルの構造上、
単にケーブルの向きを反転させれば済むというわけにはいかない。

なので当日の午前中、ラインケーブルを自作していた。
前回のケーブルとの比較試聴はできないが、
喫茶茶会記には、同じシールド線を使ったトランスなしのケーブルがある。

9月も、このケーブルとの比較を行っているから、
今回も短いけれど、比較しているから、A8713をどちら側にもってきたらいいのかの、
一応の結論は出た、といっていい。

前回試したときから、今回の結果はある程度は予測できていた。
それにグリッドチョークのことを思い出してもいたし、
そのことからも受け側(MA7900の入力側)のほうが、
好結果が得られる可能性が高いだろう、と。

実際にそうだった。
A8713なしのケーブルとの比較でいえば同じ傾向で音は変化する。
けれどA8713の位置の変化で、今回の方がよさが際立っている、と感じた。

今回A8713をMA7900の入力側にもってきたことで、
アンプの入力と出力、両端にコイルが接続するかっこうになった。

出力には、マッキントッシュ独自のオートフォーマー、
入力にはA8713の一次側巻線というふうに、である。

Date: 9月 13th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その7)

インダクタンスが高くて、直流抵抗が低い──、
こう書いていて、そういえば、と思い出したのが、
真空管アンプ、それもかなり古いアンプに用いられていたグリッドチョークのことである。

ずっと昔の三極管はグリッド電流が多いという問題があった。
そのためグリッド抵抗よりも、直流抵抗が低くできるグリッドチョークが、
いわば必須といえた。

古典的といえる三極管を採用した、昔のアンプの回路図をみても、
真空管アンプの回路の歴史を解説した記事をみても、
グリッドチョークは必ず登場する。

けれどグリッドチョークの採用したアンプを、
私は聴いたことはない。

三極管でも、有名なウェスターン・エレクトリックの300Bは、
グリッド電流が少ないため、グリッドチョークではなく、
グリッド抵抗で、しかも高めの値で設計できる。

良質な抵抗とグリッドチョーク。
どちらが音がいいのかは、聴いたことがないからなんともいえない。

ただ、抵抗とチョークコイルとでは、
価格がずいぶん違うし、それ以上にスペースの違いの問題は、
アンプを自作するうえでは、このことは大きな違いとなってくる。

グリッドチョークの真空管アンプは、自作する以外に、
これからも聴く機会はないだろう。

それでも今回の実験で、グリッドチョークへの関心は急速に増しているし、
それだけでなく、スピーカーユニットに対してのグリッドチョークの応用も考えている。

Date: 9月 12th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その6)

今回の実験に、私は手持ちのタムラのA8713を使っただけであって、
このトランスが最適というわけではない。

これからいろいろ条件を変えて試聴してみたいなことにははっきりしたことはいえないが、
おそらくインダクタンスが高く、直流抵抗が低い巻線をもつモノが、
よりいい結果につながっていくように感じている。

とりあえず試してみたい人は、
MC型カートリッジの昇圧トランスを使うのがいい。

このブログを読んでいる人のほとんどが、
昇圧トランスは何か一つ持っている、と思う。

この昇圧トランスの二次側の巻線を利用すればいい。
試してみて、なにか感じるものがあったならば、それから先は、
他のトランスを買ってきて試してみればいい。

なにがいいだろうか、と探していたら、
染谷電子のトランスが、なかなかいいように思っている。

真空管アンプ用のドライバートランス、インプットトランス、ライントランスなどだけでなく、
オーディオ用チョークコイルもある。

しかもインダクタンス、直流抵抗などのスペックもきちんと記載されている。

Date: 9月 5th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その5)

タムラのA8713は、一次側、二次側ともに二組の巻線がある。
この巻線の結線を変えることで、
一次側は20kΩか5kΩ、二次側は600Ωか150Ωに設定できる。

9月のaudio wednesdayでは、20kΩ:600Ωで使っている。
20kΩにするか、5kΩにするか。

どちらがいい結果が得られるか、
使用機器によって違ってくるだろうが、
私が、今回の音の変化の大きな理由として考えている、
直流域での抵抗の低さが効いているのであれば、
巻線の直流抵抗は低い方がいい、ということになる。

A8713の一次側(20kΩ)の直流抵抗は、ほぼ1kΩである。
5kΩにすれば、直流抵抗は半分の約500Ωになるし、
一次側の巻線を単独ではなく、並列接続すれば、
5kΩであっても、直流抵抗はさらに半分の約250Ωになる。

池田圭氏は、《Lをパラってみると》と書かれている。
トランスもコイルなのだが、
もっとも単純なコイルでも、同等の音の変化が得られるはずである。

ただ同じ値のトランスとコイルとでは、どちらが音がいいのだろうか。
トランス使用では二次側の巻線は開放のままである。
使っていない。

その巻線がぶら下がっているのは、精神衛生上よくない、と考えることもできるし、
意外にも開放状態の二次巻線があるからこそ、
のところはまったくないとは言い切れないようにも感じている。

このへんのことはこれからじっくり聴いて判断していくしかない。
ならばコイルは、何をもってくるのか。

A8713のインダクタンスは、私が持っているLCメーターでは、測定できなかった。
故障しているのか、と思った。
他の部品を測ってみると、きちんと動作している。

20kΩの結線のままだったから、試しに二次側の巻線を測ってみたら、きちんと値が出た。
今度は一次側巻線の半分だけを測る。
10Hを少しこえる値だった。

私が持っているLCメーカーは20Hまでしか測れないためだったわけだ。

Date: 9月 3rd, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その4)

今回使ったケーブルは、私の自作だ。
いま喫茶茶会記で、メリディアンの218に使っているのも、私の自作で、
どちらも同じケーブルを使っている。

なので、今回の比較は、多少長さの違いはあっても、
同じケーブルでのトランスの有無(一次側巻線の並列接続の有無)である。

この実験は、ずっと以前に、
自分のシステムで、まだアナログディスク時代に試している。

今回、ひさしぶり(30年以上経つ)の実験である。
前回の記憶は、けっこう曖昧になっているけれど、
なんとなくの感触は、まだ残っていた。

けれど、今回の音の違いは、あのころよりも大きかったように感じた。
スピーカーもアンプも、なにもかもが違うわけだが、
それにしても、こんなに違うのか、と、私だけでなく、
いっしょに聴いていた人も、そう感じていた。

池田圭氏は、
《たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる》
と書かれている。

昔も、そう感じた。
今回も、まったく同じであるのだが、その違いが大きくなっているように感じた。

児玉麻里/ケント・ナガノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番(SACD)で、
ケーブルの比較を行った。

A8713の一次側側巻線が並列に接続されると、
ピアノのスケールが違ってくる。

並列にした音を聴いてから、ない音を聴くと、
ピアノがグランドピアノが、どこかアップライト的になってしまう。
オーケストラもピラミッド型のバランスの、下のほうが消えてしまったかのうよにも聴こえる。

もう一度、巻線を並列に接続した音に戻すと、悠揚迫らざる音とは、
こういう音のことをいうんだ、と誰かにいいたくなるほどだ。

Date: 9月 3rd, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その3)

その2)で書いていることを、昨晩のaudio wednesdayで試した。

使ったトランスは、タムラのA8713だ。
一次側が20kΩ、二次側が600Ωのライン出力用トランスである。
手に入れたのは30年ほど前のこと。

(その2)か、池田圭氏の「盤塵集」のどちらを読んでほしいのだが、
A8713の一次側の巻線のみを使う。

ラインケーブルに並列に、一次側の巻線が接続されるだけである。
二次側の巻線は使わない。
一般的なトランスの使い方からすれば変則的である。

ようするにCDプレーヤー(もしくはD/Aコンバーター)の出力に、
A8713の一次側の巻線が負荷として接続された状態である。

これならばトランス嫌いの人でも、手持ちのトランスがあれば実験してみようと思うかもしれない。
CDプレーヤーの出力にトランスといっても、
CDプレーヤーが登場してしばらく経ったころに、
ライントランスを介在させると、CDプレーヤーの音が改善される──、
そんなことがいわれるようになったし、メーカーからもいくつか製品として登場した。

いくつか試してことはあるし、
SUMOのThe Goldを使っていた関係で、
TRIADのトランスを使ってバランスに変換して、
The Goldのバランス入力へ、という使い方はやっていたが、
CDプレーヤーの出力に、安易にトランスを介在させるのは、決して絶対的なことではない。

けれと
池田圭氏の使い方は、上記しているように、ちょっと違う。
今回はA8713の一次側は20kΩのまま使った。

一次側、二次側とも巻線は二組あるから、結線を変えれば、インピーダンスは低くなる。
同時にコイルの直流抵抗も小さくなる。

今回のようなトランスの使い方では、
コイルの直流抵抗の低さが、かなり重要になるような気がしてならない。

できればインダクタンス値が高くて、直流抵抗が小さい、
そんなトランスがあればいい。

Date: 6月 26th, 2020
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(次なるステップは・その8)

598戦争時代の一本59,800円のスピーカーシステムは、
著しくアンバランスな製品だった。

この価格帯のスピーカーがターゲットとしている購買層が、
とうていきちんと鳴らせるスピーカーではない、と言い切れるほどだった。

ユーザー宅で鳴っている598のスピーカーの音を聴いたことは一度もない。
それでも、そう言い切れるほど、
ステレオサウンドの試聴室で、国内各社の598のスピーカーシステムはすべて聴いている。

同価格のプリメインアンプとCDプレーヤーの組合せ、
それに598のスピーカーを買うであろう若い人の使いこなしの力量で、
低音をうまく響かせることができた人がいるだろうか。

よほど幸運にめぐまれないかぎり、
低音のほんとうの魅力を知ることなくオーディオをやることにつながっていったはずだ。

それに、いまでもいわれていることだが、
スピーカーの高さはトゥイーターを耳の位置に合わせるのが基準になっているが、
実際に音を聴けばすぐにわかることだが、
当時の598のスピーカーシステムのユニット構成、クロスオーバー周波数の設定などからいえるのは、
比較的バランスがよくポイントは、トゥイーターの位置どころか、ずっと低いところにある。

ウーファーとスコーカーの中間あたりに耳をもってくれば、
けっこうバランスはよくなる。

つまり、当時の標準的な高さのスタンドにのせて598のスピーカーを鳴らすのであれば、
聴き手は床に直に座ったくらいでも、場合によっては耳の位置が高いことになる。

椅子に座って聴くから、といって、
それではスタンドにもっと高いモノをもってきてスピーカーをさらに持ちあげる──、
このやりかたは、おすすめしない。

まず当時は、そんな高さのスタンドはほとんどなかったはずだ。
しかも598のスピーカーは物量を投入しすぎて、重量は重く、
しかもフロント側がやたら重いというアンバランスさもあって、
想像以上にしっかりしたスタンドを用意しなければ、アンバランスな音はさらにひどくなる。

このことについては、どこまでも書いていけるけれど、ここではこのへんにしておく。
とにかく598のスピーカーで、豊かな低音を鳴らしていた人は、ほとんどいないと思っている。
ということは、598のスピーカーで聴いていた人たちは、
あの帯域バランスが基準となっていった可能性も考えられる。

Date: 6月 22nd, 2020
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(次なるステップは・その7)

日本人のオーディオマニアのなかには、
低音に関して臆病な人が少なからずいるように感じている、と以前書いた。

そこへfacebookでのコメントには、
西洋人と東洋人(日本人)とでは、低音への感じ方が民俗的に違うのではないだろうか、
そんなことが書いてあった。

たとえば虫の音。
西洋人には、単なるノイズとしか聞こえないのに、
日本人に秋の虫の音をそんなふうには受け取っていない。

この感じ方の違いは、かなり以前から指摘されていることであり、
確か虫の音を聞いている時の脳の活動をみると、
西洋人と日本人とでは違いがある、とのこと。

ところが低音に関しては、そうではないことをずっと以前に読んでいる。
1980年代の終りごろに読んでいる。

記憶がかなり曖昧なのだが、100Hz以下の低音は、
身の危険を感じさせる音ということで、
西洋人も日本人も、脳の同じ部位で感じとっている。

身の危険、つまり氏に関係してくることで、
本能的ということで右脳で感知している、ということだった。

ここが虫の音と低音とでは、違ってくる。
そうなってくると、オーディオにおいて低音に臆病な人が、
日本人に多いと感じるのは、環境からくることなのか。
それとも、別の何かが関係してくるのだろうか。

もしかすると、1980年代の598戦争が関係しているのかもしれない──、
そんな考えが浮かんでくる。

Date: 5月 13th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その2)

池田圭氏の「盤塵集」に、こんなことが書いてある。
     *
このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上の周波数特性とかひずみ率などの問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
 たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる。
     *
ここではテープデッキの出力となっているが、
CDプレーヤー、チューナー、コントロールアンプの出力の場合もだ。

その出力にライントランスの一次側だけを並列に接続する。
二次側は開放のままである。

「盤塵集」を読んで数年後に試したことがある。
タムラのライントランスで、一次側が20kΩ、二次側が600Ωの仕様だった。

たしかに池田圭氏の書かれているとおりの音になる。
音の静けさも変化してくる。

タムラのトランスは、別のことに使うことになり、取り外したが、
また追試してみよう、とは思っている。

なぜ、そのように音は変化するのか。
トランスは一次側の巻線を信号経路に並列にするだけである。

あれこれ、その理由を考えた時期がある。
結局、これも直流域での抵抗が低さが効いているのではないだろうか。

一次側が20kΩだと、直流抵抗はそれほど低くはない。
それでもアンプのライン入力インピーダンスの一般的な値よりはずっと低くなる。

そういえば池田圭氏は、なるべく太い巻線のトランスのほうが、より効果的とも書かれていた。
つまりは直流抵抗がより低いトランスのほうが、ということでもある。