Archive for category フルレンジユニット

Date: 3月 23rd, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その18)

すべてのコーン型ユニットが、平面バッフルで鳴らす音が最良の結果を生むとは限らない。
それでも5.5畳ほどのワンルームマンションに、
シーメンスのコアキシャルを1.9mw(縦)×1m(横)の平面バッフルにとりつけて押し込んで鳴らしていた。

そんな経験をしてきた私は、まずは平面バッフルという意識が強い。
それだけのスペースが用意できれば、2m×2mという、
平面バッフルのサイズとしては、ひとつの到達点といえるサイズにしたいけれど、
それだけのスペースは無理である。

となるとサイズを小さくするしかない。
平面バッフルのサイズが小さくなるということは、低音の再生限界が上へと移動してくることでもある。

昔のスピーカーの教科書には、平面バッフルの説明があり、
次に後面開放型の説明があった。
平面バッフルの左右を後に折り曲げるようなかっこうにすることで、
奥行き方向には長くなるものの、横幅はぐんと狭くできるのが後面開放型という説明だった。

それで後面開放型から平面バッフルそのままの音が出てくればいいわけだが、
世の中そううまい話はなく、後面開放型には平面バッフルにはない問題点が生じる。

ならば平面バッフルのサイズとともに、形状を工夫することで、
コンパクト化はできないのか──、思い続けている。

セレッションのSL600のことは、これまで何回か書いている。
SL600には、System 6000という専用ウーファーがのちに登場した。

System 6000は、いわゆるエンクロージュアをもたないサブウーファーだ。
必要最小限のサイズのバッフルにウーファーが取り付けられている。
これだけではどんなにやっても低音再生は無理だから、前後に一基ずつ配置されている。

この方式の場合、平面バッフルのサイズは前面(後面)から見たサイズだけでなく、
ユニットが取り付けられているバッフルの厚み(これが二基分)と、
前後のバッフルの間隔、これらがすべてサイズとして含まれる。

平面バッフルにとって、バッフルの厚みもサイズのうちである。

Date: 2月 25th, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その17)

ユニットの三角形配置(三発配置)に、
昨日電話をくれた友人ふたりは興味をもってくれた。
ひとりは三発ウーファーのEurodynの音を聴いている。

スピーカーユニットの三角形配置は、こんな電話をもらうと、
妄想がふくらんでいく一方だ。

ウーファーを、38cm口径三発はたいへんでも、
30cm口径三発ならば、なんとかなるんじゃないか、
そんなことまで考えはじめている。

それで気づいた。
そういえばUREIのModel 815も、そうじゃないか、ということに。

Model 813は604-8Gに同口径のサブウーファーを一発足している。
Model 815は二発足したシステムで、
三本のユニットは三角形配置である。

一本は604-8Gであるから、同じユニット三本というわけではないが、
サブウーファーの受持帯域に関しては三角形配置の音である。

Model 815の音を聴く機会はなかった。
見たこともない。
どんな音だったのだろうか。

Date: 2月 23rd, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その16)

シーメンスのEurodynが、38cm口径ウーファーを22cm口径三発に変更したときは、
シーメンスも堕落したものだと思った。

その後に登場したスタジオモニター(八木音響の広告に載っている)は、
アルテックのユニットを使ったシステムだっただけに、
そのイメージが重なり、シーメンスともあろうものが……、
そんなふうに思っていた時期があった。

思い入れが強いだけにそう思ってしまったのだが、
少し冷静になって考え直してみると、
1970年代後半にEurodynのウーファーの変更は、
それなりの意図があってのことだ、とも思えてくる。

いまから40年ほど前とはいえ、すでにEurodynは古典的スピーカー、
もっといえば古物的スピーカーともいえた。
Eurodynを新規に購入する劇場はどのくらいあっただろうか。

38cm口径時代のEurodynには音響レンズはついてこなかった。
22cn三発になってからは標準装備されている。
このことは、指向特性の改善を図ってのこと。

ということはユニット三発配置は、この点に置いてはっきりとしたメリットがあるのだろう。
しかもEurodynは、ウーファーとホーンを固定しているフレームも変更している。
旧型のフレームそのままでは、22cm三発の配置はサイズ的に無理があるから、
旧型の49cmの横幅は、61.8cmへとなっている。

ただユニットの造りそのものを比較すると、
やっぱり堕落したな……、と思ってしまうけれど、それでも三発配置について、
真剣に考え直してみる必要と価値はあるはずだ。

Date: 2月 22nd, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その15)

ウーファーは10cm口径を三発、
トゥイーターはLS5/1のように二本使いながらも、
上側のトゥイーターに関しては、途中からロールオフさせていく──、
こんなことを考えていること自体、
ここでのテーマから外れてしまっているのは、自分でもわかっている。

わかっていても、
SICAのフルレンジとAUDAXのトゥイーターによる2ウェイの自作スピーカーの音を聴くと、
オーディオマニアの性として、こんなことを考えてしまうのだ。

トゥイーターは何にしようか、と、そんなことまで考えている。
AUDAXでいいじゃないか、といわれそうだが、
LS5/1的トゥイーターの使い方で重要となるのは、
二本のトゥイーターのダイアフラムをどこまで近接できるか、がある。

AUDAXのトゥイーターに限らないのだが、
ドーム型トゥイーターはフランジ部分が大きすぎる。

AUDAXのトゥイーターを二本縦に並べた場合、
ふたつのダイアフラムのあいだはけっこう開いてしまう。

フランジを最小限の大きさにカットするとしても、
マグネットの直径が70mmある。
AUDAX以外のトゥイーターでも、ドーム型では、このへんの寸法に大きな違いはない。

この視点からドーム型トゥイーター探しをしていくと、非常に限られてしまう。
ならばATM型にしようか、とも考える。

Date: 2月 12th, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その14)

たった二例(二社)だけの採用例なのに、
もう頭のなかでは三本のフルレンジユニットの配線をどうしようか、と考えている。

4Ωのユニットを三本並列にしたら、1.33Ωとなる。
これだけいくらなんでも低すぎ。

8Ωのユニットだと2.66Ω。
これでも低すぎる。

となると4Ωのユニット三本を直列にすれば、12Ωとなる。
妥当な値である。

三本を直列接続するとなると、
それぞれのユニットの取付位置と接続の順番について考える必要がある。
通常の三角形配置の場合、
上側に位置するユニットの配線の順番をどうする。
一番目か二番目か、それとも三番目か。

考えてても、音を聴くまではなんともいえないのだが、
なんとなくなのだが、二番目、
つまり真ん中に位置するようにしたほうがいいように感じる。

実際に作ったときも、どこかにまず決めて配線をしなければならない。
決めて音を聴いて、配線の順番を変えてまた聴く、そのくり返しだ。

シーメンスのEurophonのように逆三角形の配置であっても、
下側にくるユニットの配線の順番は二番目のような予感がある。

その上にトゥイーターをつけるのであれば、
B&OのBeoLab 90ように三本を三角形配置にするのか、
それともEurophonのように縦一列にするのか。

Europhonのように四本のトゥイーターを縦一列にする場合、
BBCモニターのLS5/1のように、
上側のトゥイーターは3kHzあたりからロールオフさせたほうがいいのか、
そのほうが定位がシャープになるような気もする。

Date: 2月 9th, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その13)

Europhonは21cm口径のウーファー(三本)と10cm口径コーン型トゥイーター(四本)を、
250Hzクロスオーバー(それぞれに専用アンプを搭載)で構成されたシステム。

トゥイーターは縦一列配置で、下二本と上二本は軸方向を変えている。
ウーファーは逆三角形になっている。

私の知る範囲では、こういうユニット配置に他に見たことがない。
シーメンスの劇場用スピーカーEurodynは、最初ウーファーは38cm口径(一本)だったが、
1970年代の終りごろに、22cm口径ウーファー(三本)に変更になっている。
その配置も、Europhonと同じで逆三角形である。

ユニットの複数個使用は、指向特性(放射パターン)が、
一本のときとは違ってくる。
三角形配置の場合は、どうなるのか。
おおよそ、こうなるのでは……、とある程度は想像がつくものの、
そのメリットはどこにあるのか。
なかなか掴み難いと感じていた。

とはいえシーメンスというメーカーが、あえてこういう配置を採用しているのだから、
なんらかのメリットがあるはず──、そう思ってきたが、
Eurodynは終のスピーカーとして欲しい、と思っていても、
欲しいのはやはり一本ウーファーのほうであって、
三本ウーファーのEurodynには、さほど魅力を感じていなかったから、
それ以上深く考えることはしなかった。

なのに今回、三角形配置について書いているのは、
B&OのBeoLab 90のスコーカーとトゥイーター、BeoLab 50のスコーカーの配置がそうであるからだ。

BeoLab 90、BeoLab 50は三本のユニットを三角形配置している。
シーメンスは逆三角形だったが、B&Oは通常の三角形配置である。

BeoLab 90、BeoLab 50のスコーカーは4インチ口径(約10cm口径)のコーン型である。

Date: 2月 8th, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その12)

小口径フルレンジユニットの複数個使用。
そうなるとユニットをどう配置するのか。

これを考えていくのは、実に楽しい。
複数個の最小数二つの場合でも、縦配置か横配置かで、音は変ってくる。
一本は正面、もう一本は上に向けて、という配置もできるし、
正面と横という配置もできるし、前後というのもある。

二本でもさまざまな配置が考えられる。
これが三本、四本と増えていけば、配置の数も増していく。

縦にずらりと並べるトーンゾイレにしても、
エンクロージュアを真横からみた時に、
バッフルがストレートなのか、それとも内側に向けて湾曲しているか、
反対に反るように湾曲しているのか、
エンクロージュアの形状を含めて、ヴァリエーションは相当な数になる。

ユニットの数が増えていくと、コストもかかるが、
インピーダンスの問題も発生してくる。

BOSEの901のように、専用ユニットとしてインピーダンスを0.9Ωという低い値にし、
九本すべてのユニットを直列接続することで、0.9×9=8.1Ωとすることは、
アマチュアにはマネできない。

4Ω、8Ωなりのインピーダンスのユニットを、
うまく直列、並列を組み合わせて、妥当な値にしていく必要がある。

いま私が小口径フルレンジユニットを複数個使用するとなったら、三本にしたい。
配置は三角形になるようにする。

三本のユニットを配置したスピーカーシステムとして、
シーメンスのEurophon Studio Monitorがある。

シーメンスのスピーカーといえば、Eurodynがよく知られているが、
Europhonはアンプ内蔵のモニタースピーカーである。
ステレオサウンド 46号には紹介記事が載っている。

Date: 1月 7th, 2018
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(次なるステップは……)

ステレオサウンド 35号。
そこで岩崎先生は、こんなことを書かれている。
     *
 これをフルレンジとしてまず使い、次なるステップでウーファーを追加し、最後に高音用を加えて3ウェイトして完成、という道を拓いてくれるのが何よりも大きな魅力だ。
     *
パイオニアのPM12Fについての文章である。
コーン型のスコーカーである。
いわば小口径フルレンジともいえるユニットである。

このユニットからスタートしたのであれば、次のステップとして、
大半の人がトゥイーターを足すことを考える。
私だってそうである。

その次のステップでウーファーとなるわけだが、
岩崎先生は違い、トゥイーターよりも先にウーファーを優先されている。

これを読んだ時は驚いた。
気持のいい驚きだった。

いつかはフルレンジに、まずウーファーを足した音を聴いてみたい、と思いつつも、
試すことなく、ずるずる今日まで経ってしまった。

今日、小口径(10cm)フルレンジに、サブウーファー(一基)を加えた音を聴いた。
サブウーファーはエンテック。
MFBを採用したサブウーファーである。

カットオフ周波数は、以前のスピーカーのままで、レベルだけ簡単に調整しての音。
とはいえ、10cmフルレンジにサブウーファーが加わった音は、悪くない。

悪くないどころか、確かにトゥイーターよりもウーファーかも……、と思わせるだけの鳴り方だ。

これがもう少し口径の大きなフルレンジだったら、
トゥイーターが先ということになるのだろうが、
小口径であれば、次なるステップはウーファーを考えてみたい。

Date: 12月 4th, 2017
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その11)

シングルボイスコイル、
つまり同軸型ではないフルレンジユニット。

代表的なユニットといえば、私の世代では、
JBLのLE8T、アルテックの755Eがダントツの存在といっていい。

それからダイヤトーンのP610、テクニクスのEAS20PW09(ゲンコツ)などが浮ぶ。
もちろん、この他にもいくつかのユニットを挙げられるが、
個々のユニットについて触れたいわけではなく、
その口径は中口径のモノばかりである。

JBLとアルテックとテクニクスは20cm口径、
ダイヤトーンは16cm口径。

20cmの口径があれば、エンクロージュア次第では、
低音もそこそこのレベルで出るし、高音もトゥイーターの必要性を感じさせながらも、
まとまった音を聴かせてくれるのだから、
いさぎよくフルレンジ一発という選択をしたくなる。

これが10cm口径、つまり小口径フルレンジとなると、
やや違ってくる。
どうしても口径の小ささゆえの低音再生の弱さは否めない。

けれど反面、10cmならばユニットを複数個使うという選択もできる。
ようするにジョーダン・ワッツのModule Unitの在り方そのものである。

瀬川先生はHIGH-TECHNIC SERIESの一冊目、
マルチアンプの号で、
フルレンジからスタートする、最終的な4ウェイシステムへのプランを書かれている。

そこに、こうある。
     *
 こうして、最低音と中低音のあいだと、中高音と高音のあいだをマルチアンプで、そして最高音域用のスーパートゥイーターだけはLCネットワークで、という4WAYのシステムができ上り、しばらくのあいだは、各帯域のユニットを少しずつ入れかえたりして楽しんでいた。このころ使ったユニットとしては、ウーファーにはパイオニアPW38A(のちにJBL LE15Aに交換)、ミッドバスには、ダイヤトーンP610A、ナショナル8PW1(現テクニクス20PW09)、フォスター103Σの2本並列駆動、最後のころはジョーダンワッツのA12システム(いまは製造中止になった美しい位相反転型エンクロージュア、現在のJUNOに相当?)を、一時は二本積み重ねてたりした。
     *
このプランでも、最初は16cmから25cm口径のフルレンジから、とある。
10cm口径とは書いていないが、10cm口径ならば複数個使用という手もある。

ステレオサウンド 61号の特集、STEREOLA DPS100の紹介欄には、
《故・瀬川冬樹氏がマルチチャンネルを試みておられていた時代に、中低域用に、発売直後の、このユニットを使われた。すばらしい音がしていたそうである》と。

もちろん16cmn、20cm口径の複数個使用も考えられるが、
フルレンジユニットの分割振動領域を考えると、
複数個使用においては、小口径フルレンジの優位性が際立ってくるのではないだろうか。

Date: 12月 3rd, 2017
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その10)

ステレオサウンド 12号(1969年秋号)の新製品紹介欄に、
STEREOLA DPS100は登場している。山中先生が担当されている。
     *
 とにかくこれまで接してきた各種のスピーカーシステムとはまったく異なる次元にあるシステムであることは確かで、しかもその再生音のもつ一種独特の強烈な魅力は忘れることのできないものであった。この音はちょっと表現しにくいのだがおなじみのこのユニットを使った小型システムとはまったく異なるやわらかでふくよかな品位の高い響きは中心部から放射状に部屋全体をくるうように拡がり、これまでのステレオサウンドとは、はっきり区別されるものだ。いわゆるシャープでリアルな音ではなく、まろやかにかもしだされたような音はレコードマニヤにとっては麻薬的な引力をもっているとでも言えばよいのだろうか、だいぶオーバーな表現となったがともかくグラモフォンマニヤには一聴をすすめたいスピーカーシステムである。
     *
聴いたことのない、おそらくこれから先も聴く機会はないであろうSTEREOLA DPS100。
どんな音なのかというのは、山中先生の書かれたもの、
61号特集での鼎談を読んでも、はっきりとはつかみにくいことこそが、
このスピーカーの特徴といえるのだろう。

STEREOLA DPS100のDPSは、
Delayed Phase Stereophonic の略である。

BOSEの901も、Delayed Phase Stereophonicといえるスピーカーである。

Date: 12月 3rd, 2017
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その9)

STEREOLA DPS100を聴く機会はないな、とあきらめていた。
一年後の冬(1981年12月)、ステレオサウンド 61号の特集に、
なんとSTEREOLA DPS100が登場している。

サウンドボーイの記事にジョーダン・ワッツが刺戟されて……、ということは考えにくいが、
輸入元の今井商事に、問合せがあったのだろうか。
それに応えての復刻だったのかもしれない。

復刻版のSTEREOLA DPS100は、スピーカーシステムとしての販売ではなかった。
エンクロージュア(ネットワーク込み)とModule Unitは別売であった。

なのですでにModule Unitを鳴らしている人は、
ユニットを追加購入し、STEREOLA DPS100を買えばシステムとして完成する。
トータル価格は、366,000円だった。
ちなみにエンクロージュアは国産である。

復刻されたとはいえ、どさだけ売れたのだろうか。
復刻版も実物を見たことはない。

61号の特集では、菅野先生が語られている。
     *
菅野 たしかに、非常によくできたミュージックボックスというイメージがありますね。先ほど岡先生がパラゴン的とおっしゃいましたが、また別の見方をしますと、使っているユニットの口径といい、ボーズの901的なところもありますね。あちらは9発使っていて、こちらは1個不足していて8発です。それせステレオですから、半分以下ということだけど、何となくパラゴン・ボーズという感じがします。いうなれば、ミニ・パラゴン・ボーズですね(笑い)。
 それは冗談としても、とにかくこの音というのは完全に自分の世界を持っていますね。とにかく出た音というのはすごく気持がいいです。レンジがどうのこうのという聴き方は全くナンセンスです。もちろん、ここから出てこない音とか、違って出てきてしまう音もあるんですが、とにかく聴いていてすごく気持がいい。本当にレコード音楽に真摯に取っ組んでというのなら別ですけれども、家庭の中に非常に趣味のいい音楽を流しておくというような目的には実にぴったりですね。
     *
やはりボーズ的という表現が出ている。
BOSEの901を、Module Unitで作ったら──、
そんな妄想をしたことのある人は私だけではない、と思う。

Date: 12月 3rd, 2017
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その8)

10cm口径のフルレンジユニットで、私が中学生のころ憧れていたのは、
ジョーダン・ワッツのModule Unitだった。

アルミ合金製の振動板、ベリリウム銅カンチレバーによるサスペンション機構、
そんな謳い文句もだけど、見た目が日本の同口径のユニットとはまったく違っていた。

繊細な音がしてきそうな印象の、小口径ユニットだった。

Moduleと型番につくことわかるように、複数個使用を前提としたユニット、
そんなふうな説明を、当時のオーディオ雑誌で読んだ。

けれどジョーダン・ワッツのスピーカーシステムは、1970年代後半、
Jumbo、Jumo、GT、Fragon、Qubique、Jupiter TLSなどがあったが、
Modele Unitを複数個(二発)使用しているのは、Jupiter TLSのみだった。

Fragonはよく知られていたし、オーディオ店で見たことはある。
けれどJupiter TLSの実物を見たのは、十数年前、それも中古で、である。

複数個用いてのModule Unitの音、それに使用例は……、と思っていたところに、
STEREOLA DPS100の製作記事が、サウンドボーイ(1980年10月号)に載った。

初めて聴く型番のスピーカーだった。
ステレオサウンド 12号で紹介されていた、と記事中にあった。
しかも輸入元の今井商事によれば、日本に正式に輸入されたのは一台だけ、とのこと。
知らなくて当然である。

STEREOLA DPS100は、左右一体型のスピーカーで、
両チャンネルあわせて八本のModule Unitを使っている。

Module Unitは、1977年は一本17,000円だった。
1980年にMKIIIになり、耐入力が12Wから20Wへ、ピーク入力は40Wへと高くなっている。
価格も21,000円となった。

サウンドボーイの記事を見て、自分で作ろうとすればユニット代だけで、
21,000円×8で168,000円。

当時高校生だった私には、それだげで無理だった。

Date: 12月 3rd, 2017
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その7)

BOSEの901というスピーカーは、私にとっては、
どこか心の隅にひっかかっている存在である。

欲しい、とまで強烈におもうことはなかったけれど、
いいスピーカーだな、とおもうことは度々あった。

それはきまって井上先生が鳴らされた901の音である。

それ以前も、一度901の音は聴いてはいた。
鳴っているのを聴いた──、ぐらいのものでしかなかった。

おもしろいスピーカーなのかもしれないけど……、その程度の感触しかなかった。
けれど井上先生が、ステレオサウンドの試聴室で鳴らされる901の音は、違った。

この音を聞いているかいないかは、
901という独得のスピーカーの存在を肯定するかどうか、と同じことだ、といいたくなるくらいに、
私の中では901の音は、井上先生が鳴らされた音である。

901に搭載されているユニットは10cm口径のフルレンジである。
それを前面に一発、後面に八発配置している。

901は、私がオーディオに興味をもったときにはすでにあった。
その構成ゆえ、日本では、カワリモノ的スピーカーという括りでもあった。

そういう見方をしうない人でも、
日本のそのころの住宅環境では鳴らしにくいタイプという認識であった。

それでも、なんとなくおもしろいスピーカーだな、と思いながらも、
ユニットが、こんなモノでなくて、
例えば同軸型だったら……、
具体的にいえば、タンノイのHPD295Aがついていたら……、とおもっていた。

小口径フルレンジの良さをわかっていなかったから、である。

Date: 8月 19th, 2014
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その6)

カセットテープの音には、どこかしら、ふわふわした感じを受ける。
この感じは、どんなに高級なデッキを用意したところで、多少は減りはするものの、なくなることはない。

このふわふわした、カセットテープにつきまっている不安定さは、
個人的にオーディオで、もっとも避けたい(取り除きたい)要素のひとつである。

私はカセットテープをそう感じしまう。
けれどこの点も、人さまざまで、カセットテープの音にふわふわした感じ、不安定さを感じない人もいる。
これは再生音に求めている優先順位が、それこそ人によって大きく違っているからであろう。

音の安定を求める私にはカセットテープのふわふわした感じは、
たまに聴く分には、カセットテープの音だな、というふうに受けとめられるが、
日常的に、メインのプログラムソースとなってくると、どうにも我慢できない要素となる。

だが再生音に、安定よりも他の要素をより強く求める人には、
カセットテープのふわふわした感じは、特にそうとは感じないようでもあり、
感じたとしても、そのことが音の不安定さということにはならないようだ。

カセットテープの音に、私と同意見の人もいれば、
そうかな、と首を傾げる人もいよう。

とにかく音は安定していほしい。
だからアナログプレーヤーにEMTの930st、927Dstを求めてきた、ともいえる。

Date: 10月 19th, 2013
Cate: フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(その5)

音像に関して、自分でも少し気にしすぎではないかと思うくらい気になる時はすごく気になる。
四六時中そうではなくて、あまり気にならなくなるときもある。
けれど、どちらかといえば、気になる(気にする)方だと思う。

なぜ気になるのか、と自問すれば、
これは別項「EMT 930stのこと」でも書いているように、
再生音に関して、できるだけ不安定さをなくしていきたいと思っていることと深く関係しているようだ。

とにかく音楽に没頭したい、
音のことを気にせずに没頭するために、まず私が求めているのは音の安定なのだ、と気がついた。
音の安定があるからこそ、こまやかな音の表現は可能になるし、
脆い、儚げとでも表現したくなるような音を、腫れ物に触るように愛でる趣味は、基本的には私にはない。
そんな音を、繊細な音だと曲解・誤解することも、もうない。

そんな音を愛でていくのもオーディオの趣味のありかたとして理解はできても、
そういう音では、私が聴きたい音楽を鳴らすことはできない、とわかっているし、
そんな音を愛でることと、繊細な音とすることとは同じことで決してない。

見せかけだけの、上っ面だけの繊細さは、私はいらない。
だから音の安定を求めてやまない。