ヤマハ NS10Mのこと(その2)
私ぐらいの世代だと、NS10Mの前に、ヤマハにはNS451があったことを思い出す。
NS451は、私がオーディオに興味を持った1976年には、すでに登場していた。
20cm口径のウーファーとコーンとドームを組み合わせた複合トゥイーターの2ウェイのスピーカーシステム。
NS451の広告を見て、まず思ったのは、ウーファーのコーン紙が貼り合わせてあったことだった。
最初は、なぜこういうコーンの作り方をしているのだろうかだった。
一枚の紙をコーン(円錐形)にしているかのように貼り合わせてある。
他のスピーカーのウーファーには、そういうモノはなかっただけに、
余計に不思議に思えた。
カタログや広告を読んでいくと、いわゆるプレス紙ではなく、
シート状の和紙に近い紙を使っているためだとわかる。
NS451のウーファーは白かった。NS10Mのウーファーも白い。同じ製法によるもので、コーン紙はプレスでなく貼り合わせてある。
NS451は、当時気にはなっていたが、聴いていない。
瀬川先生は、ステレオサウンド 43号で、こう評価されている。
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内外の目ぼしい製品を殆ど聴いてみて、私自身がローコストスピーカーの限界に一線を引くとしたら(サブ的に気軽に鳴らすのは別にして)、このNS451をボーダーラインに置く。これの成功以後、各社がこのランクに狙いをつけて新製品をぶつけるが、この価格では、NS451の生き生きと弾むバランスの良い音を越える製品は難しいと思う。良いアンプと良いプログラムソースで鳴らしてみると、いっそう真価がわかる。
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同じ43号で、菅野先生もベストバイとして選ばれている。
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低価格スピーカーとして、実に巧みな音のまとめられ方をしたシステムである。本当は、こういうスピーカーをつくるのは、高級スピーカーに匹敵する難しさがある。ヤマハらしい、音のノウハウの蓄積がよく出た製品といえる。よくコントロールされた、それらしさの再生では実に優秀なスピーカーシステムだ。音色的に、アメリカ製のスピーカーのような力強さがあって、ジャズの積極的な表現がよく生きる。
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《生き生きと弾むバランスの良い音》、
《アメリカ製のスピーカーのような力強さがあって、ジャズの積極的な表現がよく生きる》、
白いコーン紙のウーファーの採用がこのあたりに活きていると思いながら、読んでいたことを思い出すし、
NS10Mの良さも、NS451譲りの白いウーファーあってのことだろうから、
プレス紙のウーファーからは、決して得られないはず。