Archive for category 測定

Date: 8月 30th, 2016
Cate: 測定

耳はふたつある(その4)

先日、あるオーディオマニアの方と、けっこう長い時間話していた。
その時、この話をした。

不思議というか、おかしな録音だった、と話したところ、
興味深い答が返ってきた。
マイクロフォンが水平ではなかったんじゃないか、ということだった。

1970年代は生録がブームだった。
生録マニアの中には、オープンリールデッキを持ち運ぶ人もいた。

私は録音の経験はあるけれど、いわゆる生録の経験はない。
そのオーディオマニアの方は、生録の現場にも行かれていた。
そこで目にしたのは、マイクロフォンを水平にしていない人が意外にいた、ということだった。

ステレオのマイクロフォンの場合、
それが一本でステレオ仕様であれ、
マイクロフォンを二本用いる場合であれ、
左右のマイクロフォンは水平になるようにセッティングするのが基本中の基本であるから、
まさかそんな使い方をする人がいるとは想像もしなかった。

けれど現実にはそういう使い方をする人が少なからずいた。
そうやって録音したものを聴いた経験もないから、どういう音になるのか想像し難いが、
確かにあの時聴いたおかしなワンポイント録音には、その可能性もあったのかもしれない。

左チャンネルのマイクロフォンを上に、右チャンネルのマイクロフォンを下に、
というセッティングで録音したら、どういう音(音場)になるのだろうか。
ほぼモノーラルに近い録音になのだろうか。

斜めだったらどういう録音になるのか。
測定だったら、どういう結果になるのだろうか。

マイクロフォンが一本であれば、こういう心配はない。

Date: 8月 30th, 2016
Cate: 測定

耳はふたつある(その3)

メーカーがスピーカーシステムを測定する。
その際、マイクロフォンは一本である。
だからといって、聴き手が自分のリスニングルームで測定をする際に、
マイクロフォンが一本のままでいい──、とどうしてなったのだろうか。

メーカーが測定するのは、あくまでもスピーカーの特性であり、
しかも無響室という、現実のリスニングルームとはかけ離れた環境での測定である。

そこでマイクロフォンが一本だからといって、
残響があり、その残響を含めての音響特性を測定するのに、
なぜマイクロフォンが一本のままだったのだろうか。

リスニングルームでのマイクロフォンが一本の測定が無意味とはいわないが、
なぜ一本のまま来てしまったのだろうか。

耳はふたつある。
ふたつある耳で聴いている。
測定と聴くということは必ずしも同じではないから、
マイクロフォンは一本でいい、ということなのだろうか。

岩崎先生の「カタログに強くなろう」は、40年以上前に書かれている。

ただマイクロフォンを二本にすることによる危惧もないわけではない。
数年前に、あるオーディオマニアが録音したという自主製作のCDを聴いた。
ワンポイントマイクロフォンによるピアノの録音だった。

これが実に不思議な音というか、奇妙な録音だった。
どうすれば、こういう録音ができるのか、と逆に感心したくなるほどだった。

マイクロフォンを設置してそのまま録音しているのだろうから、
いい悪いは別として、もっとまともに録れているはずである。

Date: 8月 29th, 2016
Cate: 測定

耳はふたつある(その2)

マイクロフォンを聴取位置に立てる。
けれど聴取位置とは正確にはどこなのか。
右耳の位置なのか、左耳の位置なのか。
右耳と左耳の中央なのか。

マイクロフォンを使った測定の経験のある人ならば、
マイクロフォンの位置がわずか違っただけでも、測定結果が同じにはならないことを知っている。
それは右耳の位置、左耳の位置の違いでもはっきりと出る。

しかも音は右耳と左耳の両方に入ってくる。
たとえ右側のスピーカーだけで音を出していても、
右側のスピーカーの音は右耳にしか入ってこない、ということは現実にはあり得ない。
右側のスピーカーの音は左耳にも、ほんのわずかな時間差で入ってくる。
左側のスピーカーの音は左耳だけでなく、右耳にも入ってくる。

ということは右側のスピーカーの測定を行う場合、
人が音を聴くのに近づけるには、マイクロフォンを二本使う、ということになる。

マイクロフォンを二本使っての測定は、ずいぶん以前に岩崎先生が述べられている。
週刊FMに連載されていた「カタログに強くなろう」に、こうある。
     *
 前置きが長くなったが、スピーカーの特性を前にすると、アンプと違って山や谷が細かく続き、さらに全体にまたがって大きな起伏がいくつもある。
 これは横の目盛が周波数で、縦の高さがそれに応じた音響出力だ。細かい山や谷は、周波数がわずかずれると出力が大きくなったり、小さくなったりするということを意味する。
 これは簡単な構造のようにみえるスピーカーの振動板が、実は細かい部分部分がそれぞれ別々の動き方をしているため、マイクとスピーカーの距離によってその各部の出力が、相加わったり打ち消し合ったりして、出力が増えて山になり、減って谷ができるわけ。
 ところで、そうした細かい山や谷は、実は耳で聴いたところほとんど気にならない。それは測定上の条件からできる山や谷であるからだ。もしスピーカー前方のマイクの位置を少しずらせば、山や谷のできる周波数もまた少しずれてくる。
 だから人間の耳のように約一六cm離れた二つのマイクで測定してこれを合成すると、山や谷はほとんどなくなって、特別の理由でできた山や谷と、全体の大きな起伏とがはっきりした形となり、それが音の傾向を物語るデータとなる。
     *
マイクロフォンを人間の耳のように離して立てる。
ならばダミーヘッドを使うという手もある。

Date: 1月 25th, 2015
Cate: 測定

FLEXUS FX100(その4)

パソコンが登場し普及し、高性能化と小型化によって、
測定はずいぶんと身近なものになってきている。

30年ほど前、スペアナ(スペクトラムアナライザー)を持っている人は少なかった。
しかも、そのころのスペアナは10バンドのモノが多かった。30バンドのモノもあったが、
価格も40万円前後にはねあがる。

いまはタブレットでそれが可能になっている。
持ち運びもずいぶんと楽になっている。
しかも測定できる項目も増えてきている。

手軽に身近になり、それだけでなく精度も上ってきている。
しかもディスプレイはカラー表示である。

スピーカーの周波数特性も、マイクロフォンを用意して、
測定用のアプリケーションをインストールしてあれば、それだけで行えるようになった。

そういう時代に、NTi AUDIOFLEXUS FX100という、オーディオ専用の測定器は、
オーディオメーカーには重宝なモノであっても、一般ユーザーにとってそれほどのモノなのか、
そう疑問に思われるかもしれない。

自作を趣味としている人ならば魅力的な測定器であっても、自分には関係ない。
それにオプションをあれこれ揃えていくと、けっこうな値段になりそうではないか……。

私はそういう人にこそ、FLEXUS FX100に興味をもってもらいたいと思っている。
FLEXUS FX100の購入を検討する、とまでいかなくていい、
FLEXUS FX100に何ができて、どこまでできるのかを知ってほしい。

FLEXUS FX100は、室内における壁、天井、床からの反射の影響を除外して、
無響室でなくとも無響特性の測定が可能になっている。
詳細は、FLEXUS FX100の当該ページを参照してほしい。

Date: 1月 25th, 2015
Cate: 測定

FLEXUS FX100(その3)

イギリスのスピーカーメーカーは、小さな規模の会社が少なくなかった。
スペンドールにしてもハーベスにしても、小さな会社である。

いまは違うだろうが、創立当時、無響室はどちらの会社ももっていなかった。
ではどうしていたのかというと、BBCが無響室を貸し出していた、ときいたことがある。

無響室が必要になればBBCの無響室まで出向く。
そういう協力関係があったから、
無響室を持たなくとも優れたスピーカーシステムをつくり出していた、ともいえよう。

日本はどうなんだろう。
たとえばNHKが新興スピーカーメーカーに無響室の利用を許しているのだろうか。

仮にそうだとしても、これはBBCでも同じことがいえるのだが、
これらの無響室を使いたいメーカーは、近郊になければ不便である。時間も限られる。
そういう制約がどうしても生じる。

無響室がなくともスピーカー開発は行える。
たしかにそうではある。だからといって、無響室は不必要といえるものではない。

それに測定のためだけの無響室ではない。
無響室に一度でも入ったことのある人ならば、
壁、天井、床からの反射がなくなることで、どれだけ音が変化するのかを体験できる。
自分の声さえも変化する。

だから無響室の音はぜひとも体験してほしい。

Date: 1月 25th, 2015
Cate: 測定

FLEXUS FX100(その2)

音を出すために必要な意味でのオーディオ機器ではないが、
NTi AUDIOFLEXUS FX100は、私にとってオーディオ機器と呼びたくなる測定器である。

その1)を書いたのが2013年10月、
一年以上ほったらかしにしていたが、(その2)を書くために、NTi AUDIOのサイトを見ていた。

FLEXUS FX100は知れば知るほど、欲しくなる一台である。

私がFLEXUS FX100について書こうと思ったのは、
無響測定機能を装備したことを知ったからである。

アンプ、CDプレーヤーなどの電子機器は、測定器を揃え扱える人がいれば測定は可能になる。
けれどスピーカー、それにマイクロフォンとなると、
測定器と人だけでは満足とはいえず、無響室も要求される。

無響室を備えて、測定環境が整う。
オーディオブームだったころは、各メーカーに無響室があった。
大きな会社であれば無響室を用意できた。
けれど小さな規模の会社となると、無響室は用意できない。

無響室に入ったことのある人ならば、
無響室が、いかに一般の部屋と異る環境であるかを実感している。
奇妙な空間ともいっていい。

スピーカーシステムを鳴らすのは、そういった空間ではなく、
一般のリスニングルームであるのだから、必ずしも無響室は必要ではない──、
はたしてそう言い切れるだろうか。

Date: 9月 14th, 2014
Cate: 測定

耳はふたつある(その1)

1977年ごろ、ポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieが登場し話題になった。
価格は100万円をこえていたように記憶している。

いま当時のIvieの製品のスペックをみれば、貧弱といえるが、当時はそうでもはなかった。
だから岡先生は購入された。

このころオーディオマニアが自分のリスニングルームの音響特性を測定することは、
まず機材を揃えることが大変だった。
いまはもう違う。
特性が保証されているマイクロフォンがあれば、
以前とは比較にならないほど誰でもできるように思えるくらいになっている。

とはいえ実際にやってみると、マイクロフォンを立てる位置をどうするのか。
これが意外と難しい。
聴取位置に立てればいいじゃないか、と思うだろうが、
実際に聴取位置で測定した結果と聴感とは必ずしも一致しないことがある。

それにマイクロフォンの位置をわずか動かしただけでも測定結果は変ってくる。
聴取位置(頭)をほんのわずか動いても、測定結果ほどの音の違いは生じないにも関わらずだ。

なぜなのか。
答は耳はふたつあるからだ。
左右に、10数cm以上離れて耳はある。

音響測定に使うマイクロフォンは一本である。

Date: 10月 10th, 2013
Cate: 測定

FLEXUS FX100(その1)

昨日、こういう製品が出ているのを知った。
NTi AUDIOFLEXUS FX100という、測定器である。

NTi AUDIOでは、FLEXUS FX100をアナログ&デジタルオーディオアナライザーと呼んでいる。
FLEXUS FX100の詳細については、NTi AUDIOのページを参照して欲しいし、
YouTubeには、FLEXUS FX100に関する動画が公開されている。

こういう機器が、いつのまにか登場していたのか、と思っていた。
これまでオーディオ機器の測定は、アンプにしてもスピーカーにしても、
一台の測定器ですむわけがなく、いくつも測定器を揃える必要があった。
それだけでもけっこうな金額になるし、場所だって必要となる。

メーカーならばいざ知らず、個人できちんとした、といえるレヴェルの測定器を揃えるのは、
けっこう面倒なことといえる面もあった。

測定器はオーディオマニアにとって、絶対に必要なモノかといえば、
そうとはいえないモノだけに、一台の機器であらゆる測定が行えるモノ、
そんな都合のいいモノが出てきて欲しい、と思っていた。

1977年ごろ、ポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieが登場した。
いまから見ると、こんなレヴェルなのか、と思えるかもしれないが、
それでも当時Ivieの登場は話題になったし、かなり高価だった。

Ivieを欲しい、と思った人は少なくなかっただろう。