耳はふたつある(その1)
1977年ごろ、ポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieが登場し話題になった。
価格は100万円をこえていたように記憶している。
いま当時のIvieの製品のスペックをみれば、貧弱といえるが、当時はそうでもはなかった。
だから岡先生は購入された。
このころオーディオマニアが自分のリスニングルームの音響特性を測定することは、
まず機材を揃えることが大変だった。
いまはもう違う。
特性が保証されているマイクロフォンがあれば、
以前とは比較にならないほど誰でもできるように思えるくらいになっている。
とはいえ実際にやってみると、マイクロフォンを立てる位置をどうするのか。
これが意外と難しい。
聴取位置に立てればいいじゃないか、と思うだろうが、
実際に聴取位置で測定した結果と聴感とは必ずしも一致しないことがある。
それにマイクロフォンの位置をわずか動かしただけでも測定結果は変ってくる。
聴取位置(頭)をほんのわずか動いても、測定結果ほどの音の違いは生じないにも関わらずだ。
なぜなのか。
答は耳はふたつあるからだ。
左右に、10数cm以上離れて耳はある。
音響測定に使うマイクロフォンは一本である。