Archive for category チューナー・デザイン

Date: 10月 17th, 2024
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン孝(オーレックス ST720・その2)

オーレックスのチューナー、ST720とパイオニアのExclusive F3の両方を眺めていると、
写真だけで見比べていた時には気づかなかったことを発見する。

ST720は、斜めから見た時に、立体的なデザインであることに、
今更か、といわれそうだが、気づいた。

プッシュボタンがあり、レバースイッチがあり、
受信局をプリセットするためのパネル両端のツマミ、
それらが醸し出す陰影は、
実機をやや薄暗いところで眺めて初めて気づいた時代。

こういうデザインのチューナーは、今も昔もなかった。

Date: 9月 16th, 2024
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン孝(オーレックス ST720・その1)

チューナーは一台持っている。
パイオニア Exclusive F3だ。
岩崎先生が使われていたモノを譲っていただいた。

FM放送を聴くことはほとんどない。
それにいま住んでいるところは受信状態がいいわけでもない。
専用アンテナもたてられない。
なのでExclusive F3の性能を活かしきっているとは到底言えない。

そんな状況で、二台目のチューナーが要るのか。
誰でも必要ないと答えるはず。
私もそうだ。

なのに先ほどヤフオク!で、オーレックスのST720を落札した。
この価格で? と思うほどあっけない落札だった。

さほど広くない部屋にチューナーが二台。
しかもほとんど使う機会はない。

それでもST720は、実機を手元に置きたい──、
中学生の頃からのおもいだった。

Date: 9月 11th, 2022
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(マッキントッシュ MR89・その2)

マッキントッシュのMR87の日本での販売価格は880,000円(税込み)。 
MR89の日本での発売価格がいくらになるのかはわからないが、
MR87よりも高くなるであろう。

そうなると1,000,000円前後の価格になるかもしれない。
MR87と同価格だとしても、この時代、チューナーで音楽を聴く人はどれくらいいるのだろうか。

私が考えているのよりも意外に多いのかもしれない。
私と同じくらいの世代、上の世代となると、
若い頃にチューナーを購入しているであろう。

FM受信にそれほど熱心ではなかった私でも、
いいチューナーは一台は持っておきたい、と思ってきた。
いまはパイオニアのExclusive F3があるから、これでいい。

ようするに、いまの時代、チューナー購入を検討している人は、どれだけいるのか。
かなり少ないように感じている。
それもマッキントッシュのチューナーを購入しようと検討している人は、
少なくともマッキントッシュのアンプを使っている人であろう。

アンプは他社製を使っていて、
チューナーだけマッキントッシュのモノを、という人は多くはないはずだ。

その意味で、マッキントッシュのチューナーの新製品は、
他社のチューナーの新製品とは位置づけが違うところがある。

それでも、この時代に、チューナーの新製品を出す。
それはなかなかのことだと私も思っている。

そういう時代に出すチューナーの新製品なのだから、
アンプと筐体、パネルデザインを共通にして、コストダウンを計るのは、
メーカーとしては当然の策といえば、そうだろうと思いはする。

けれどマッキントッシュにはMR87というチューナーがある。
このモデルを継承するデザインにしなかったのはなぜだろうか。

MR87には、受信周波数を数字で表示するダイアルスケールがある。
一般的なチューナーの顔付きをしている。

このダイアルスケールは、国によって周波数バンドが違うため、
輸出する国の周波数バンに合わせなければならない。
それもコストの一部である。

MR89には、MR87にあったダイアルスケールはない。
この部分の国に合せる必要をなくしている。

マッキントッシュのプリメインアンプとデザインを共通にすることで、
ここにかかるコストもカットする、というところは合理主義の結果といえる。

これらのことをふまえて、MR89のデザインをどう評価するのか。
人それぞれとはいえ、私は、この項のテーマを考えていくうえでは、
ポジティヴな面とネガティブな面、どちらも感じているし、
それはMR89というチューナーの評価ではなく、
チューナー・デザインを考えていくうえで、
どう捉えるかのほうにおもしろさを感じている。

Date: 9月 11th, 2022
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(マッキントッシュ MR89・その1)

マッキントッシュの本国のウェブサイトは、数ヵ月に一度くらいアクセスしている。
どんな新製品が発表になっているかな、という野次馬的な好奇心から見ている。

今回、チューナーの新製品、MR89に気づいた。
輸入元のエレクトリのサイトをすぐに見たけれど、まだ紹介されていない。
現時点での日本で取り扱われているマッキントッシュのチューナーはMR87のみだ。

MR87は、いま風のマッキントッシュのパネルになっているものの、
以前からのマッキントッシュのチューナーの面影は残っている。
チューナーという感じがする。

MR89は何も知らずに写真だけを見たら、チューナーと思わない人が多数だろう。
マッキントッシュにしては、やや薄型のプリメインアンプと思う人が多いはずだ。
実際にMA5300の写真と見較べてほしい。

左右に、マッキントッシュの特徴といえるブルーのメーターがある。
その下に丸いノブとプッシュスイッチが並んでいる。
中央には液晶ディスプレイがある。

いまのマッキントッシュのアンプのデザインそのままといえる。
これが最新のマッキントッシュのチューナーのデザインである。

これを新しいチューナーのデザインと受けとるか、
それともコストダウンのためのデザインと受けとるか。

Date: 5月 25th, 2021
Cate: チューナー・デザイン

20年目のiPod(チューナー・デザイン考)

2001年に登場したiPodは、クリックホイールだった。
クリックホイールは、2014年のiPod classicの販売終了とともに終了した。

別項で書いているように、夜おそく音楽を聴く時は、
iPhoneとヘッドフォンの組合せが多くなった。

iPhoneだからクリックホイールはない。
iPhoneの操作に、大きな不満はないけれど、
別項の「チューナー・デザイン考」を書いていると、
クリックホイールだったら、どんな感じだろうか、とふと思ったりするし、
クリックホイールは、チューナーの選局ダイアルだな、とも思う。

Date: 5月 17th, 2021
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その14)

roonは、
roonならではのメタデータを活かしての未知の音楽をさがしていける機能がある。

5月16日に一新されたAudirvanaも、最新のAudirvana Studioでめざしているのは、
roon的なデータベースの構築と機能なのだろう。

roonの機能はよく出来ている。
それでも、私がroonとAudirvana、
それから今後登場してくるかもしれないアプリケーションに求めたいのは、
六次の隔たり、という仮説に基づく機能である。

六次の隔たりは、すべての人、物事は、
6ステップ以内でつながっている、というもの。

友だちの友だちは友だちで、
そうやって友だちの友だちを、何人か介していくことで、世界中の誰とでも、
つながっている、という仮説である。

まったく縁がなさそうな人であっても、私とその人のあいだに最大六人の人が介することで
友だちの友だちの友だち……、という感じでつながっている、とのこと。

六次の隔たりを知った時には、そんなものかな、と思ったけれど、
ここ十年ほどは、六次の隔たりは、けっこうそうなのかもしれない、と思うことがあった。

だから、未知の音楽をさがしていくうえでも、この六次の隔たりはあてはまるのではないだろうか。

といっても、私が考えている(欲しい、と思っている)のは、
六次の隔たりのところにいる音楽(アルバム)ではなく、
六次の隔たりそのものである。

つまり好きな音楽(アルバム)を二枚選ぶ。
まったくつながりなんてなさそうな二枚を選ぶ。

この二枚の隔たりを、最大六枚の音楽(アルバム)が埋めていく。
その音楽(アルバム)がなんであるのかを知りたい、と思っている。

Date: 5月 15th, 2021
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その13)

(その12)は、2015年3月だから、六年経つ。
続きは書くつもりでいたので、自分でもそんなに経っていたか……、と思う。

六年経つと、続きをどんなふうに書くつもりだったのか、
ほとんど憶えていない。まぁ、書いているうちに思い出してくるかもしれない。

それでも続きを書いているのは、TIDALを使うようになったから、というのが大きな理由である。
TIDALのライブラリー曲数は6000万曲をこえる、らしい。

TIDALだけでなく、ほかのストリーミングサービスも、同じくらいのライブラリーの曲数である。
それぞれのサービスでタブっている曲もあれば、そうでない曲もあるだろうから、
すべてのストリーミングサービスの曲数を合計すると、いったいどれだけになるのか。

そのなかから自分の聴きたい曲を選ぶためのインターフェースとしてのチューナー・デザイン、
それだけでなく未知の音楽をさがしていくためのインターフェースとしてのチューナー・デザイン、
この二つのことが、この項を書き始める前から考えていたことだ。

TIDALを半年使っていて、やはりチューナー・デザインを考えていく必要がある、と感じている。

六日前に「TIDALという書店」を書いた。
こういう感覚をTIDALに対してもっているわけだから、
その感覚にふさわしいインターフェースは、チューナー・デザインの発展形だという直観がある。

Date: 3月 6th, 2015
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その12)

1992年、サザーランドからC1000というコントロールアンプが登場した。
ステレオサウンドの新製品紹介のページで、C1000を見た時に「やられたぁ」と思っていた。

そう思ったのにはいくつか理由があるが、
そのひとつはB&Oの4チャンネル・レシーバーBeomaster6000のことがあったからだ。

前回も書いたが、もう一度書いておく。
B&OにはBeomaster6000という型番の製品が二機種ある。
ひとつはよく知られている、1980年代のレシーバーで、
私がここで書いているのは1974年に登場したBeomaster6000のことである。

Googleで画像検索すれば、どちらのBeomaster6000もヒットする。
見てもらえば、どちらなのかはすぐおわかりいただけるはずだ。

4チャンネル・レシーバー、つまり古い方のBeomaster6000を最初に見たのは、
なんだったのかはもう憶えていない。
それでも、これが4チャンネル・レシーバーではなくコントロールアンプだったら……、
と強烈に思ったことは憶えている。

サザーランドのC1000を見た時、
このコントロールアンプの開発者もBeomaster6000を知っているはず、とだから思ってしまった。
それゆえの「やられたぁ」だった。

C1000の開発者がBeomaster6000を知っていたのか、
その影響を受けていたのか、ほんとうのところはわからない。
それでもC1000の写真を初めて見て、頭に浮んでいたのはBeomaster6000だった。

Date: 9月 4th, 2014
Cate: Technics, チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(テクニクスの型番)

テクニクスのオーディオ機器の型番にはルールがあった。
スピーカーシステムはSBから始まる。
プリメインアンプとコントロールアンプはSU、パワーアンプはSE、レシーバーにはSAが頭につく。
チューナーはST、グラフィックイコライザーはSH、カセットデッキ、オープンリールデッキはRSで始まる。

アナログディスク関連の機器はプレーヤーシステムがSL(CDプレーヤーもSL)、ターンテーブル単体はSP、
カートリッジはEPC(省略されることが多く、型番末尾にCがつく)、トーンアームはEPA、といった具合にだ。

昨晩、ドイツ・ベルリンで開催されているIFAで、テクニクスの製品が発表になった。
R1シリーズとC700シリーズがあり、
R1シリーズのスピーカーシステムがSB-R1、コントロールアンプがSU-R1、パワーアンプがSE-R1、
C700シリーズのスピーカーシステムがSB-C700、プリメインアンプがSU-C700、CDプレーヤーがSL-C700、
ネットワークプレーヤーと呼ばれる新ジャンルの機器がST-C700となっている。

ほぼ従来通りの型番のつけ方であるわけだが、ST-C700だけが少しだけ違う。
STの型番は、これまではチューナーの型番だった。

今回のラインナップにチューナーはない。
おそらく今後もチューナーが出ることはないだろう。

そのチューナーの型番(ST)が、ネットワークプレーヤーに使われている。
アルファベットは26文字あるから、ネットワークプレーヤーSTではなく、他の型番をつけることもできる。
にも関わらず、今回テクニクスはネットワークプレーヤーにSTとつけている。

個人的に、ここに注目している。

この項(チューナー・デザイン考)を書いているだけに、
わが意を得たり、の感があるからだ。

Date: 8月 2nd, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その11)

カウンターポイントのチューナー開発は結局は形となることはなかった。
どこまで話が進んだのかは知らない。

ただ長島先生が強い関心を示されていた、ということは、乗り気であった、ということでもある。
おそらく長島先生の頭の中には、チューナーとしてのあるべき構成、アイディアがなにかしらあったのだろう。
それは内部に関することだけではなかったはずだ。

長島先生はデザイナーではないけれど、
コントロールアンプ、チューナーといった、使い手が直接触れる機器のインターフェースに関しては、
長島達夫としての考えをお持ちだった、と私は感じていた。

このころの私は、いまのようにチューナーに対して、チューナーのデザインに関しては、
ほとんど興味・関心がなかった。
いまだったら、長島先生がチューナーのインターフェイスをどういうふうに考えられていたのかを、
あれこれきいた、と思う。

そういえばステレオサウンドにいたころも、チューナーの話はほとんど記憶がない。
話題になることがあっただろうか。

もし私が10年早く生れていて10年早くステレオサウンドで働くようになっていたら、
チューナーについての話をいろいろきくことができただろう。

でもそんなことをいってもどうにもできないわけだから、
チューナーの写真をとにかく見ている。
チューナーの写真だけではない、レシーバーもまたチューナーであるからだ。

そうなるとB&Oのレシーバーであり、
Beomaster6000ということになる。

Beomaster6000といっても、1980年代のBeomaster6000ではなく、
1975年ごろの4チャンネル・レシーバーのBeomaster6000のことだ。

Date: 8月 1st, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その10)

長島先生はマランツのModel 9を使われない理由を話されていたことがある。
Model 9が素晴らしいパワーアンプだということはわかっているけれど、
長島先生の性分としてつねにベストな状態にしておきたい。
となるとModel 9は調整箇所が多く、大変だから、ということだった。

少しくらい出力管のバイアス電流が変動しても気にならない人もいれば、
すごく気にする人もいる。
こればかりはその人の性分だから、まわりがとやかくいうことではない。

Model 9のように調整・チェック用のメーターがついているアンプは、
細かなことが気になる人、つねにベストの状態にしておかないとダメな人には向かない、ともいえる。
視覚的に動作チェックができるアンプは、どうしてもメーターに目が行ってしまいがちになる。

そういう長島先生だから、あえてModel 10Bをとらなかったかもしれない……、
そんな想像もできる。

Model 10Bの調整箇所がどれだけあるのか、
それがどれだけ大変なのかは、正直わからない。
けれど使用真空管の数からして、つねにベストの状態を維持しようとなると、そう簡単なことではないだろう。

カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団の公演の放送もやってくれるFMである。
けれど、これだけの内容のものとなるとそう度々放送されるわけではないし、
ラジオなのだから、少し気楽に聴いていたい、という気持もある、と思う。
少なくとも私にはある。

いいチューナーは欲しい。だけど調整が大変なチューナーはできれば勘弁、というのが私の本音である。
長島先生がそうだったのかはわからない。
でも、Model 10Bにされなかったのは、案外そういう理由なのではないのか。

だとしたらカウンターポイントのマイケル・エリオットが構想していた、
受信部(高周波回路)は半導体で、低周波の回路は真空管で、
というチューナーに、強い関心を示されたのも納得がいく。

Date: 8月 1st, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その9)

長島先生のアンプ遍歴は、ステレオサウンド 61号に載っている。
私がステレオサウンドに入ったころ、長島先生は岡先生や山中先生から、トラさんと呼ばれていた。

なぜトラさんなのか、疑問だった。
そのころ長島先生はコーヒーといえば、トアルコトラジャばかり注文されていた。
まさか、それでトラさんということはないだろうとは思っていたけれど、
トラさんのトラの意味がわからなかった。

結局、山中先生にだったと記憶しているが、「長島先生はなぜトラさんなんですか」ときいた。
答は「最初にトランジスターに飛びついたから」だった。

そういえばステレオサウンド 61号の記事にも、かなり早い時期からトランジスターについて勉強し、
無線と実験に連載記事を書かれていたことを思い出した。

私がステレオサウンドを読みはじめたころは、すでに長島先生は真空管アンプ派の人だと思っていたから、
トランジスターのトラとは思いもしなかった。

その長島先生が使われていたルホックスのチューナーFM-A76はトランジスター式である。
長島先生はマランツのModel 7、Model 2を愛用されていた。
このマランツの管球式アンプに惚れ込まれていた。

きっと長島先生はチューナーもマランツのModel 10Bで揃えられたかったのだと思う。
そして長島先生が10Bを手に入れられたら、きっと各部の調整をしっかりとやられていたはずだ。

Date: 7月 27th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その22)

この項の(その4)で、T104も瀬川先生のデザインだと思う、と書いた。
なにか確証があるわけではない。私の思い違いの可能性もある。

それでも瀬川先生のデザインだ、とやはり思う。
オーレックスのST420は川崎先生のデザインだ。

川崎先生はオーレックス時代に瀬川先生と何度か会われているし、
瀬川先生のリスニングルームへも行かれている。
川崎先生がいまも所有されているヴィソニックの小型スピーカーは、瀬川先生に薦められたモノ。

瀬川先生は川崎先生がオーレックスのデザインを手がけられていることをご存知だった。
だからアキュフェーズのT104が瀬川先生のデザインだとすれば、
瀬川先生はST420に、チューナー・デザインの解答のひとつを発見された──、
私はそう思っている。

そうでなければシンセサイザー方式のチューナーのT104に、
バリコン使用のアナログチューナーST420のデザインをもってくるだろうか。

だからこそ、(その18)で、嬉しい、と書いた。

Date: 7月 27th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その21)

アキュフェーズのチューナー、T104と三点セットとなるコントロールアンプのC240とパワーアンプのP400。
この三台を「横一列に並べたときの美しさは独特だ」と瀬川先生が、以前書かれている(ステレオサウンド 59号)。

この三台のデザインを比較すると意外なことに気づく。
C240はP400とは対照的に意欲的なデザインとなっている。

P400は同社のほかのパワーアンプと並べてみても、これだけが特異な存在ということはない。
C240はレベルコントロール、バランスコントロール、カートリッジの高域特性のコントロールだけが回転ノブ、
ミューティングのON/OFFの切替えがレバースイッチ、
ほかの機能はすべて57個のプッシュボタンで操作する。

アキュフェーズのコントロールアンプとして、かなり思いきった方向性を打ち出している、ということで、
デザインに関してはC240、P400、T104の三台では、どうしてもC240に注目がいってしまいがちだった。

T104はシンセサイザー方式のチューナーである。
C240よりも、プッシュボタンによる操作がしっくりくるものであった。
にも関わらず、T104は、それまでのアナログ式チューナーのインターフェイスのままである。

T104も、チューナーとしてはプッシュボタンの数は多い。
それでもシンセサイザー方式であることを、T104のフロントパネルは強く主張していない。

C240と同じ方向でのT104のデザインもありえた。
にも関わらずそうなっていない。
そうなっていないからこそ「横一列に並べたときの美しさ」が生れているのかもしれない。

Date: 7月 26th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その20)

川崎先生が、7月25日のブログに、オーレックス時代にデザインされたチューナーについて書かれている。
「デザインには発明が必要だということを学んだ作品」というタイトルがつけられている。

ST910、ST720、ST420、ST220、四つのオーレックスのチューナーのことに触れられている。
そして、書かれている。
     *
「このデザインには、発明があるだろうか」という自問自答です。
今ではチューナーはインターネットラジオになってしまいましたが
チューナーでのこの代表機種全てに「デザインによる発明」です。
だから、あきらかに言えることは、
「デザイン=造形が必ず発明」は必要十分条件だと思っています。
     *
いまでも、デザインは好き嫌いでしょう、といったことを言い放つ人がいる。
オーディオマニアでも、そういう人がいるのを残念ながら知っている。
そういう人は、「デザインに発明が必要だ」ということを一生知らずに終っていくのかもしれない。

デザイナーが「このデザインには、発明があるだろう」と自問自答するのであれば、
デザイナーではないわれわれ受け手の者は、何かをそのデザインに発見しなければならない。

デザインは好き嫌いでしょう、といってしまったら、そこには発見はない。
発見しようとしないから、好き嫌いでしょう、で終ってしまうのかもしれない。