マッキントッシュのMR87の日本での販売価格は880,000円(税込み)。
MR89の日本での発売価格がいくらになるのかはわからないが、
MR87よりも高くなるであろう。
そうなると1,000,000円前後の価格になるかもしれない。
MR87と同価格だとしても、この時代、チューナーで音楽を聴く人はどれくらいいるのだろうか。
私が考えているのよりも意外に多いのかもしれない。
私と同じくらいの世代、上の世代となると、
若い頃にチューナーを購入しているであろう。
FM受信にそれほど熱心ではなかった私でも、
いいチューナーは一台は持っておきたい、と思ってきた。
いまはパイオニアのExclusive F3があるから、これでいい。
ようするに、いまの時代、チューナー購入を検討している人は、どれだけいるのか。
かなり少ないように感じている。
それもマッキントッシュのチューナーを購入しようと検討している人は、
少なくともマッキントッシュのアンプを使っている人であろう。
アンプは他社製を使っていて、
チューナーだけマッキントッシュのモノを、という人は多くはないはずだ。
その意味で、マッキントッシュのチューナーの新製品は、
他社のチューナーの新製品とは位置づけが違うところがある。
それでも、この時代に、チューナーの新製品を出す。
それはなかなかのことだと私も思っている。
そういう時代に出すチューナーの新製品なのだから、
アンプと筐体、パネルデザインを共通にして、コストダウンを計るのは、
メーカーとしては当然の策といえば、そうだろうと思いはする。
けれどマッキントッシュにはMR87というチューナーがある。
このモデルを継承するデザインにしなかったのはなぜだろうか。
MR87には、受信周波数を数字で表示するダイアルスケールがある。
一般的なチューナーの顔付きをしている。
このダイアルスケールは、国によって周波数バンドが違うため、
輸出する国の周波数バンに合わせなければならない。
それもコストの一部である。
MR89には、MR87にあったダイアルスケールはない。
この部分の国に合せる必要をなくしている。
マッキントッシュのプリメインアンプとデザインを共通にすることで、
ここにかかるコストもカットする、というところは合理主義の結果といえる。
これらのことをふまえて、MR89のデザインをどう評価するのか。
人それぞれとはいえ、私は、この項のテーマを考えていくうえでは、
ポジティヴな面とネガティブな面、どちらも感じているし、
それはMR89というチューナーの評価ではなく、
チューナー・デザインを考えていくうえで、
どう捉えるかのほうにおもしろさを感じている。