能動素子の並列接続。
たとえば初段のFETなりトランジスターを複数並列接続することにより、
FETなりトランジスターが発生するノイズは、ひとつひとつ違っているために、
合成出力ではノイズが打ち消される。つまりS/N比が向上する。
マークレビンソンのヘッドアンプJC1のころから使われ出した手法である。
出力素子を複数並列接続することで、
パワーアンプの出力は増すし、出力インピーダンスは低くなる。
ありきたりの表現を使えば、駆動力が増す、ともいう。
一方で入力素子を並列接続することは、ノイズだけを打ち消しているわけではない。
微小信号領域においては、ノイズだけでなく信号も打ち消されているとみるべきである。
それに入力容量が増える。
出力段に関して、同じことはいえ、能動素子を多数並列接続すれば、
それだけ入力容量は増えるし、どんな素子にもサイズがあり、
サイズがある以上、配線が長くなることにつながる。
それに出力段の素子は熱を発するから放熱器に取り付けてあるわけだが、
数が少なければ、すべての素子をほぼ同条件にできても、
数が増えれれば増えるほど、同条件を満たす難しさは急激に増し、
現実問題として不可能ともいえる。
並列接続にはメリットもあれば、当然デメリットもある。
これが真空管アンプとなると、
たとえば出力管を片チャンネル当り二本使用の場合、
プッシュプルにするか、シングルにして並列接続にするか。
どちらを選択するかは設計者の考え方である。
プッシュプルの場合、位相反転回路が必要になるし、
完全なプッシュプル動作は非常に難しい、ともいえるわけで、
ならばすっきりとシングル動作にして、
どうしても出力が足りなければ、並列接続にする。
いわゆるパラシングル動作である。
プッシュプルアンプには、プッシュプルアンプ独自の難しさはあっても、
能動素子の並列接続特有の音質劣化が気になる人は、
パラシングル動作ではなくプッシュプル動作を選択することになる。
私は、真空管を並列接続するのは好まない。
なので出力管を二本使うのであれば、パラシングルよりもプッシュプルを選択する。
けれど別項「新製品(Nutube・その4)」で触れた武末数馬氏製作のECC81のパワーアンプは、
いまも気になる存在である。
ECC81を片チャンネル当り八本使用したプッシュプルアンプ、
出力は、5W+5Wである。
いつか追試してみたいと思っているが、
能動素子の並列接続をあまり好まない私としては、そのままの回路ではなく、
能動素子の並列接続ではなく、アンプそのものの並列接続での追試を考えている。