Archive for 4月, 2010

Date: 4月 30th, 2010
Cate: 書く

続々続々・毎日書くということ

書くのにひどく苦労する日は、テーマはいくつもあっても、頭の中が空っぽなような気もする。

だが、である。

エリック・ホッファーは言っている。
「空っぽの頭は、実際は空ではない。ゴミで一杯になっているのだ。
空っぽの頭に何かを詰め込むのが難しいのは、このためである。」

頭の中が空っぽのように感じて、ひどく書くのが億劫なときも、ゴミが溜まっているのかもしれない。
種々なことが、誰にでもある。朝、家を出て夜、帰宅するまでのあいだに、
多い日もあれば少ない日もあるだろうが、頭の中にゴミが溜まりはしないのだろうか。

そういう日は、まずTwitterで、いくつかつぶやく。それから the Review (in the past) の入力をする。
とにかく指を動かす。指を動かすことで頭を刺激しているという作用もあるだろうが、
指を動かすことで、実は頭の中のゴミを掻き出しているのかもしれない。
だから、書き出せるようになる。最近そう思えてきた。

一日休めば、それだけゴミは溜まっていく。

Date: 4月 29th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その13)

NFBのかかった反転アンプを、グラフィック的にメビウスの環として捉えるのであれば、
同じくグラフィック的にとらえたときに、クライン・ボトルといえるフィードバックのかけかたは、
いったいどんなものだろうか、と考えてみる。

マッティ・オタラ博士が、1963年にTIM(Transient Intermodulation)歪を発見。
’68年からTIM歪の理論づけをはじめ、’70年までにほぼ終え、’72年にTIM歪の抽出法の論文発表。
’74年にTIM歪の測定法を発表し、翌年TIM理論を発表している。
’76年には、IIM(Interface Intermodulation)歪、
’79年にはPIM(Phase Intermodulation)歪を発見し、発表している。

これらの歪の違いは、TIM歪が、スピーカーを接続しない状態でのアンプ内部でのNFBに起因するもので、
IIM歪は、スピーカーをつないだ状態でTIM歪と同じ追求をしたもの。
PIM歪は、位相と振幅の直線性の不一致を問題にしているもの、とのことだ。

これらの歪を発見したマッティ・オタラ博士によると、最良のNFB量は、
回路構成や使用部品の違いによって多少は異るものの、
1970年の時点では22dB、’80年では12dB程度で、オタラ博士が設計したパワーアンプ、
ハーマンカードンのサイテーションXX(ダブルエックス)は、わずか9dBである。

Date: 4月 28th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その12・余談)

メビウスの環といえば、
ステレオサウンドが49号からはじめた「ステート・オブ・ジ・アート(State of the Art)賞」。
受賞した製品をつくりだしたメーカーには、トロフィーが贈られていた。

田中一光先生デザインで、メビウスの環をモチーフにした銅製のトロフィーだった。
こんな素敵なトロフィーが届いたら、どんなにか嬉しいことだろう。

ステレオサウンドの53号には、受賞メーカーから寄せられた感謝文が掲載されている。
そこには、ESLの横に、このトロフィーをもってほほえんでいるピーター・ウォーカーの写真も載っている。

なぜメビウスの環をデザインされたのか。
すごく知りたい……。
いまとなっては訊くことはできない。

Date: 4月 27th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その12)

初段が差動回路ではない、たとえば一般的な真空管アンプでは、
NFBは終段のプレートもしくはカソードから、非反転アンプであれば、初段のカソードにかえってくる。

つまり初段の、入力信号をうける真空管とNFB信号をうける真空管は同じである。
それが差動回路では、対となるトランジスターや真空管で、別個に受けるわけだ。

このことが、NFBをかける前は同一回路であっても非反転アンプと反転アンプとで、
歪率に差が生ずる原因である、とラジオ技術の記事では結論としていた。

NFBループを含めたアンプ全体の回路をトーラスとして捉えるのならば、
非反転アンプで、初段が差動回路ならば、なんらかの工夫が必要となるだろう。

初段が差動回路でなければ、非反転アンプもトーラスとして見えてくる。
反転アンプもトーラスだが、こちらは出力と入力の位相が180度異る。
つまりトーラス的にみれば、非反転アンプが通常の環(わ)だとすれば、
NFBのかかっている反転アンプは、メビウスの環といえるのではないだろうか。

ひねりのところはNFBループではなく、むしろ増幅部にあたる。位相が反転しているところだからだ。

メビウスの環的な反転アンプ。こういう考え方もあっていいのではないだろうか。

Date: 4月 27th, 2010
Cate: 朦朧体

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その3)

中学、高校時代と、カバンに入っていたのは教科書ではなくステレオサウンドだった。
教科書は、すべてとはいわないけど教室の机の中に置きっぱなし。
毎日、家と学校のあいだを往復していたのはステレオサウンドと、他のオーディオ雑誌だった。

授業中にこそ読まなかったけど、休み時間のすこしのあいだでも、ステレオサウンドのページをめくっていた。
レコードだったら、溝がすりきれるくらいのいきおいで、ステレオサウンドを読んでいた。

まだ、どういう音を求めているのか、そんなことはわかっていない時期でもあったが、
それでもここまで読んでいると、なんとなく、そして自然に、「この人の感性に近いかも……」と思えてくるものだ。

それが私には、瀬川冬樹だった。
また、このころは、女性ヴォーカルものに、惹かれていた時期でもあった。

Date: 4月 26th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その11)

誰が付けたのはわからないが、「回路」ということばには、感心する。

電気的・電子的ではなく、この「回路」ということばからアンプを捉えれば、
NFBをかけた状態が、アンプとしての本来のあり方のように思えてくる。

現在の大半のアンプの初段は差動回路となっている。オペアンプにおいても、そうだ。
通常、アンプは入力と出力の位相が同じ、いわゆる非反転アンプとなっている。
アンバランス入力、アンバランス出力のアンプの場合、
出力は、信号を受けとるトランジスター(プラス側)ではなく、
対をなすトランジスター(マイナス側)の入力(ベース、FETであればゲート)にもどされる。

一方、入力と出力の位相が逆相となる反転アンプの場合は、というと、
出力は、入力信号を受けるトランジスターのベースにもどされる。

非反転アンプと反転アンプを見比べると、初段のトランジスターなりFETが、
前者はNFBのループから外れているし、後者ではループ内に収まっている。

かなり以前のラジオ技術誌で、オペアンプでの非反転動作と反転動作時の歪率を測定した記事があった。
いくつかのオペアンプで測定されていたように記憶しているが、例外なく反転アンプのほうが歪率が低い。

Date: 4月 26th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その10)

無帰還アンプが、ひじょうに気になっていた時期もあった。

それでも勉強していくすぐにわかることだが、トランジスター・パワーアンプで、
終段がエミッターフォロワーだから、無帰還を謳っているアンプでも、
厳密には完全な無帰還アンプではない、ということ。

いわゆるローカル・フィードバックはかかっている。
無帰還アンプとは、一般的な、ループ・フィードバックを排除したもので、
このふたつのフィードバックは性格の違うものである。

NFBはなにも、いわゆる静特性だけを良くしていく技術ではない。
うまく使えば、アンプの安定化にも寄与する技術でもある。
それに、NFBによって、アンプのかたちも変っていく。

いわば、アンプの歴史はNFBの歴史、NFBの歴史はアンプの歴史、である。
とにかくNFBを無視して、アンプについては語れない。

そして「回」だ。
これがトーラスなのだから、NFB(ループ・フィードバックのほう)も、
トーラスという見方・捉え方ができるのではないだろうか。

Date: 4月 25th, 2010
Cate: 朦朧体

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その2)

4343ほどではないにせよ、1970年代後半において、マークレビンソンのアンプも、
またスターといっていい存在だった。

4343、マークレビンソンのアンプ以外にも、スター的存在のアンプやスピーカーシステムはあった。
ただ、それらのいずれもが、4343、マークレビンソンと比較すると、旧世代のスターといえなくもない、
そういうところを感じさせるなにかを、オーディオをはじめたばかりの若輩ものでも感じていた。

ステレオサウンドを、41号、42号、43号……と読み続けていくほどに、
4343とマークレビンソンの組合せを、いつの日か……と思いはじめていた。

同時に、瀬川先生の文章にもつよく惹かれていった。
それは、重ね合わせる行為でもあった。

Date: 4月 25th, 2010
Cate: 朦朧体

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その1)

オーディオに興味をもちはじめた1976年。この年のおわりちかくに、JBLの4343が登場した。
はじめて買ったステレオサウンド 41号、ほぼ同時に発売されていた別冊「コンポーネントステレオの世界 ’77」、
どちらも、4343を大きく取り扱われていた。

41号では表紙に、真正面から撮った静かな迫力の4343がまずあり、
特集の「世界の一流品」でも、登場したばかりの4343は取りあげられている。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」のなかの、11通りの組合せで、4343は2回、登場してくる。

なにか特別扱いされいてるスピーカーだ、ということは、初心者にもはっきりと伝わってきていた。
そして、なによりも4343はカッコいいスピーカーシステムだった。
いわばスターだったのかもしれない。
そうでなければ、ペアで100万円超すスピーカーシステムが、日本国内だけで、
いまとなっては考えられない数が売れた理由がみつからない。

Date: 4月 24th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その9)

「回路」という言葉から連想しやすいアンプの回路技術といえば、
やはり帰還回路、つまりNFBやPFBではないだろうか。

出力信号の一部を入力にもどすことで、ゲインの安定化、周波数、歪率、S/N比などの諸特性を改善する、
この技術は、市販されている大半のアンプに採用されている、古くからある技術だ。

1970年代後半、マッティ・オタラ博士が、多量のNFBによるTIM歪の発生について発表があったころから、
NFBをやにくもに使うことが見直され、パイオニアからは、
独自開発のスーパーリニアサーキット(SLC)による無帰還アンプ、C-Z1、M-Z1が登場した。

オーディオに興味をもちはじめて、アンプの回路技術にも関心をもちはじめた時、
まっさきに疑問をいだいたのは、この帰還回路だった。
アンプ内の信号の伝わる速度は無限大ではない。ということは、NFBにおいて、
出力信号の一部が入力にもどるときには、入力には次の信号が来ているはず。
音楽信号はつねに変化しているものだから。
その時間は、ごくごくわずかなものであっても、遅れることは変らない。

それに多量のNFBをかけるトランジスターアンプと違い、
比較的軽めのNFB、もしくは無帰還の真空管アンプは、
NFBをかける前(オープンループ時)の諸特性が優れている、ということも、盛んにいわれていた。

Date: 4月 23rd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その8)

マークレビンソンのパワーアンプML2には、電源トランスがEI型のものとトロイダル型、2つのコアの種類がある。
どちらが音がいいのかは人それぞれだろうが、以前書いたように、
EI型のものをエポキシで固めたものが、ML2らしい音をもっともよく抽き出すと、
私のまわりに限っては、高く評価する人が多いように感じている。

Oさんの受け売りだが、トロイダルコアの電源トランスは、一般的にいって、音が甘くなる傾向が強い、とのこと。
その理由として、巻線の巻き方にある、ときいている。

EIコア型の場合、巻枠にコイルを巻いていく。このとき、巻きのテンションは管理され、
しっかりと巻かれていくことが多い。
ところがトロイダルコアの場合、線材をあらかじめコイル(バネ)状にして、
そのままトロイダルコアに回転させながら絡ませていくだけだから、
どうしてもコアに対してしっかりとテンションをかけて巻いていくことができない。
比較的、ゆるゆるな巻きになるから、だそうだ。

巻きが緩いものを、あとからピッチで固めてもだめなことは、容易に想像できる。

この話をきいたのは1982年頃のことだから、現在のトロイダルコアの電源トランスが、
いまもこういうふうに巻かれているとは限らない。
テンションをしっかりとかけながら(管理しながら)が可能な方法が生み出されているかもしれない。

その点、フィデリティ・リサーチのMCカートリッジの昇圧トランスは、ひとつひとつ手巻きだったと聞いている。

Date: 4月 22nd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その7)

回路──、ここにも「回」の字がある。

だから回路は、すべてトーラスである、とは言わないけれど、
トーラスとは何なのか、トーラスがオーディオ機器の中に存在しているのかどうか、
存在しているとしたら、どういうかたちでなのか、
そういった観点から、アンプや回路を見て考えていく、というのも「あり」だと思うようになっている。

たとえばアンプの部品でいえば、トロイダルコアがトーラスである。

ノイズ環境がひどくなってきたいま、ノイズフィルターとして使われるコイルは、
トロイダルコアに巻かれているし、
電源トランスに、トロイダルコアを採用してきたものは、1970年代後半から増えてきた。
信号用トランスでは、フィデリティ・リサーチのMCカートリッジ用昇圧トランスが、
早い時期からトロイダルコアを採用している。

あまり知られていないようだが、真空管のパワーアンプで、
トロイダルコアの出力トランスを搭載しているのもあった。
Gotham(ゴッサム)社のアンプがそうだ。
残念ながら現物をみたことはないが、聴いたことのある人(サウンドボーイの編集長だったOさん)の話では、
相当にいい音だった、らしい。< 真空管アンプに関しては、人一倍うるさ型のOさんが褒めるわけだから、 機会があれば、ぜひ聴いてみたいとずっと思っているアンプのひとつだ。

Date: 4月 21st, 2010
Cate: 「本」

オーディオの「本」(その5)

読むことに関しては、本で読もうと、パソコンの画面上で読もうと、
同じであろうはずなのに、やはり違う。

このことについては、別項の「Noise Control/Noise Designという手法」で述べている。

audio sharing、このブログをやっていて、こんなことを書くのはなんだかだが、
ウェブマガジンというものは、いまあるものではなく、もっと別のかたちだと思っている。
そんなふうに思っていたこともあって、紙の本にこだわろうとしてきた。

でも、もう「紙の本」でなくてもいい、と考えている。

Date: 4月 20th, 2010
Cate: 「本」

オーディオの「本」(その4)

いまはCDだけでなく、DVD-Audio、SACDもあり、容れものとしてはCDよりも大きい。
さらにネットでは、ハイビット・ハイサンプリングレートによる配信も可能になっている現在では、
1980年半ばのCDを附録としたオーディオ雑誌よりも、
より精確に試聴室で鳴っていた音を収録することは可能になっている。
やろうとおもえば、試聴室で取材そのものをライヴでネット中継することもできる。

時代が、技術がさらに進んでいけば、それじゃ、オーディオ雑誌はいらなくなるのか、というと、
決してそうじゃない、やっぱりオーディオを読む楽しさは、
これから先もずっとずっとつづいていくと固く信じている。

Date: 4月 20th, 2010
Cate: 「本」
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オーディオの「本」(その3)

このブログを書いていくにあたって、想定している読者が、ひとりいる。

13歳のころの、オーディオに関心をもちはじめたばかりの「私」だ。
1976年、このころは、読むオーディオの楽しみが、それこそあふれていた。
五味先生の「五味オーディオ教室」は、まさしくオーディオを読む楽しみそのものだった。

いまあのころの私がいたとして、その私に「オーディオを読む楽しみ」を体験してほしい、と思うからだ。