Archive for category German Physiks

Date: 7月 3rd, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その14)

中核となるユニットは一つ。
つまりDDD型ユニットなわけだが、
ジャーマン・フィジックスのスピーカーシステムのラインナップは多い。

まだチタンの振動膜のDDD型ユニットだけだったころから、そうだった。
すべてのラインナップを、当時、聴いたわけではないが、
個人的に強く心惹かれたのは、Troubadour 40とUnicornの二機種だけだった。

最上機種のGaudíも、タイムロードの試聴室で聴いている。
その時の音が、Gaudíが真価を発揮した音とは思っていないけれど、
それでも自分にとって大事な音、
いいかえれば心に近い音を出してくれるスピーカーであれば、
どんなにひどい状態で鳴っていても、なにかしら感じるものがある。

その意味で、Troubadour 40とUnicornだけだった。
Unicornは、エンクロージュアの製作に時間がかかるのか、
なかなか出来上ってこない、という話を聞いていた。

時間がかかるのがわかっているから、見込みで早めに注文しても、
出来上ってこない。

そのため、Unicornを購入したい人をずいぶん待たせた、ともきいている。

そのUnicornが、MK IIになった。
ずいぶんと変ってしまった──、と感じてしまった。
エンクロージュアの構造を簡略したのか、とも思ってしまうほどだった。

やっぱり、最初のUnicornなのか──。
Unicorn MK IIを聴きもせずに、そんなふうに思ってしまっていた。

しかもDDD型ユニットもカーボン振動膜になった。
そのこともあいまって、ますますUnicorn MK IIへの関心は失っていった。

そんな勝手な思い込みを、今年のOTOTENでのHRS130の音は、
消し去ってくれた。
Unicorn MK II、いいんじゃないのか。

そういう気持が芽ばえてきたし、
聴いているうちに大きくなってもいた。

現在、輸入元のタクトシュトックはHRS130だけしか取り扱っていない。
ぜひとも、Unicorn MK IIの取り扱いも始めてほしい。

Date: 6月 27th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その13)

(その4)で、Troubadour 40のカーボン仕様が登場した時に、
菅野先生に、どうでしたか、と訊いたことを書いている。

その時、菅野先生は少し渋い表情をされて、やっぱりチタンだよ、といわれた。

カーボン仕様のTroubadour 40が登場したのは2008年ごろ。
それから十年以上が経っていて、
今回のOTOTENでHRS130を聴いて、まず思ったことは、カーボン、いい! だった。

十年以上の歳月のあいだに、カーボン振動板も改良されていることだろう。
Troubadour 40のカーボン仕様を聴く機会は、あのころはなかった。

実際のところ、どうなのだろうか。
私は勝手に良くなっている、と思っている。

それに昨年9月、サウンドクリエイトで聴いた時よりも、印象がずっといい。
あの時は、チタンのTroubadour 40がよかったかも……、そんなことを思いながら聴いていたけれど、
今回はカーボンのDDD型ユニットのほうがいいかも、と思っていたくらいだ。

比較試聴すると、どうなのだろうか。
どちらにもそれぞれの良さがあるのだから、あえて比較試聴しないほうがいい。

でも、そのくらいに今回のHRS130はよく鳴っていた。
もしかするとなのだが、カーボンのDDD型ユニットは、ある程度鳴らし込む時間が必要なのかもしれない。

Date: 2月 5th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その12)

ステレオサウンド 225号で、
小野寺弘滋氏は、《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない、それでいて無指向性システムならではのリラックスした雰囲気をかもし出す無二の存在。》
とジャーマン・フィジックスのHRS130のところで書かれている。

ここで、小野寺弘滋氏がいうところの無指向性とは、
この項で書いてきている無指向性スピーカーのこととは思えない。

ビクターのGB1の代表されるような複数のユニットを搭載した多指向性を含めてなのか、
それともコーン型ユニットを上向きにして取りつけ、
円錐状のディフューザーがコーン紙前面にある、いわゆる間接放射型の無指向性を含めてなのか。

そのことが曖昧なままでの《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない》のように感じる。

小野寺弘滋氏は、菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40(80)は聴いてるだろうし、
それだけでなくステレオサウンドの試聴室、輸入元のところでもそうであろう。

そのうえで《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない》としたのか。
なんとも曖昧なままの印象しか残らない。

Date: 2月 2nd, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とベストバイ・その3)

Kindle Unlimitedで、ステレオサウンド 225号を読んでいる。
ステレオサウンド・グランプリで、ジャーマン・フィジックスのHRS130は選ばれている。

小野寺弘滋、傅 信幸、和田博巳の三氏がHRS130について書かれている。

小野寺弘滋氏は、《無指向性であっても曖昧さや茫洋なところのない、それでいて無指向性システムならではのリラックスした雰囲気をかもし出す無二の存在。》、
傅 信幸氏は、《本機の鳴りかたには特有のライヴ感がある。本機の位置にステージが出現するのには、ギョッとさせられてしまう。まるでトリックアートを観るかのようだ。》、
和田博巳氏は、《リビドーを喚起するDDDユニットの妖艶な音は、この音に魅せられたら最後、本モデルを買うしかない。個人的に困った存在だ。》、
というふうに評価されている。

三氏の本音はなんともわからないが、
高く評価されている、と受け止めていいだろう。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットの実力を高く評価している者としては、
それぞれにちょっとずついいたいことはあるけれど、ここでは控えておく。

ベストバイでもHRS130は選ばれている。
小野寺弘滋、傅 信幸、山之内 正の三氏が星(点)を入れていて、
三氏とも一つ星で、計三星で、ペアで320万円以上のスピーカーシステムとしては、七位。

ベストバイでは、小野寺弘滋氏がコメントを書かれている。
さらっとしているな、と読んでいてまず感じた。

和田博巳氏は今回はベストバイの選考委員ではない。
和田博巳氏が例年とおり選考委員の一人だとしたら、星いくつだったのか。

《個人的に困った存在だ》とまで書かれているのだから、
星一つということはないだろう。
星二つ、もしくは三つか。

そうなっていたら、小野寺弘滋氏ではなく、和田博巳氏が書かれていたかもしれない。
ステレオサウンド・グランプリとベストバイでの評価に温度差を感じることは、
今回のHRS130だけのことではない。

これまでにはあった。
ステレオサウンド・グランプリではけっこう高く評価していたはずなのに、
同じ号でのベストバイでは、意外に冷静な評価(冷たい評価)と感じたことは、ままある。

それはステレオサウンド・グランプリとベストバイとでは選考基準が違うから──、
そのことはわかっているうえで、これを書いている。

Date: 1月 28th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その7)

昨晩は、音楽好き、オーディオ好きな人たちが六人集まっていた。
四時間以上、あれこれ話をしていた。

スピーカーのことが話題になった。
となればジャーマン・フィジックスのことを私は話す。

私の話を聞いていた人は、ジャーマン・フィジックスに興味を持ってくれた。
なので、銀座のサウンドクリエイトで常設されているから、聴くことができる、と伝える。

ずっと以前、4343が売れていたころ、
4343というスピーカーがある、いいスピーカーだと話題になって、
聴きたいと思ったら、全国のどこのオーディオ店であっても、たいていは4343があった。

もちろん4343を置いてないオーディオ店もあっただろうが、
あの時代の4343の勢いはすごかった。
聴くのが難しい、とはいえなかったはずだ。

けれどジャーマン・フィジックスは違う。
十年以上にわたり、日本には輸入元がなかったし、
昨夏、やっと輸入が再開されたけれど、ここに行けば聴ける、とはいえなかった。

やっといえるようになったし、
そうなると、こちらも熱っぽく語ってしまう。

「でも聴けないんでしょ」という返事をきかずにすむということ。
これは、ずっとジャーマン・フィジックスのよさを伝えたいと思い続けてきた者にとって、
ほんとうに嬉しいことだ。

昨晩、ジャーマン・フィジックスに興味を持った人は、
近々サウンドクリエイトに行き、その音に触れるはず。

Date: 1月 15th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その6)

その3)で、ジャーマン・フィジックスのHRS130を、
MQAで聴いてみたかった、
それもできればメリディアンのULTRA DACを使っての音を聴いてみたかった、と書いた。

聴いてみたい、と書かなかったのは、実現の可能性がとても低いと感じていたからだ。
けれど、HRS130が、サウンドクリエイトに常設されたということは、
今後、その可能性は昨年の9月よりもずっと高くなっている。

一週間ぐらいでもいいから、
MQAとULTRA DACで聴くHRS130という試聴会をやってくれないだろうか、と切に願う。

Date: 1月 15th, 2023
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その5)

銀座のサウンドクリエイトに、
今年からジャーマン・フィジックスのHRS130が常設されている。

それだけのことでっても、私にとってはとても嬉しいことだ。
一人でも多くの人が、ジャーマン・フィジックスの音に触れてほしいからだ。

Date: 12月 29th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その11)

無指向性のスピーカーは部屋の影響を大きく受ける、とか、
設置場所が難しい、とか、そんなことが昔からいわれている。

ほんとうにそうだろうか。
ここでの無指向性スピーカーとは、
ジャーマン・フィジックスのDDD型ドライバーのような無指向性スピーカーではなく、
複数のスピーカーユニットを多方向に取りつけて放射する多指向性のことであり、
多指向性スピーカーの場合、確かに部屋の影響は受けやすい、といえる。

だからといって、真に無指向性、それも直接放射型の無指向性スピーカーを、
そんなふうに最初から捉えてしまうのは、思い込みでしかない。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、実際どうなのか。
これまで聴いてきた経験から断言できるのは、
むしろ一般的なスピーカーシステムよりも、部屋の影響は受け難い。

このことを意外! と受け止めるか、
反対にベンディングウェーヴの動作方式を理解すれば、むしろその通り! となるか。

私は2002年のインターナショナルオーディオショウで、
Unicornの音を聴いた時から、そうではないのか、と感じていた。

タイムロードのブースでは、後の壁から十分な距離をとってのセッティングだったから、
そのことを確かめることはできなかったが、
2008年、菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40を聴いたときに、
このことは確信へと変った。

そして、知人宅でTroubadour 40のセッティングをあれこれやって、
その確信は深まっていった。

Date: 12月 28th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その10)

多指向性だけでなく、無指向性のスピーカーは古くからある。
ただし昔からある無指向性のスピーカーは、
コーン型ユニットを上向きにして取りつけ、円錐状のディフューザーがコーン紙前面にある。

こうすることで一つのスピーカーユニットで、無指向性にしているわけで、
ビクターのGB1などに代表されるスピーカーユニットを複数個使う多指向性とは違う。

この手の無指向性スピーカーでは、
スピーカーユニットの中心と円錐状ディフューザーの中心は一致させる。
いわゆる同軸上に並ぶように配置されるが、
以前見たフランスのスピーカーメーカーは、
あえてスピーカーユニットとディフューザーの中心軸をずらして配置するというのがあった。

四十年ほど前のことだから記憶が曖昧だが、こうすることで、
この種の無指向性スピーカーの欠点を抑えられる、らしい。
それで特許を取得した、ともあった。

一般的なピストニックモーションのスピーカーユニットを使っての無指向性は、
ディフューザーがあってこそだったし、その意味では間接放射型の無指向性といえる。

直接放射型の無指向性スピーカーは、DDD型の原型であるウォルシュドライバーが最初のはずだ。
とはいえ、私が初めて聴くことができたオーム・アコースティックスのモデルは、
ウォルシュドライバーを保護するカバーが取りつけられていた。

この円筒状の保護カバーの内側には、部分的に吸音材が貼られていた、と記憶している。
指向特性をある程度コントロールしようとしていた。
いま思うと、あの保護カバーを外したオーム・アコースティックスの音は、
どんなだったのだろうか、である。

つまり、私が聴いた範囲では、直接放射型の無指向性スピーカーは、
ジャーマン・フィジックスのモデルが最初ということだ。

聴きたいと思っているものの、
MBLのスピーカーシステムを聴く機会は私にはなかった。

直接放射型の無指向性スピーカーについて語る上で、
MBLは外せない存在であるし、それ以上の興味ももっている。

Date: 12月 16th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(そのセッティング)

持っていないので私のところでは試していないが、
知人宅でTroubadour 40のセッティングで、あることを試してみた。

知人は磁石の反発力を利用したフローティング機構のSAPを持っていた。
Troubadour 40の下にSAPを置く。
つまりTroubadour 40をフローティングしたかっこうになる。

試す前から、そうとうな音の変化が得られるであろうことは、
以前、スピーカーシステムをコロ支持することでの音の変化を体験しているだけに、
容易に想像がついていた。

出てきた音の変化は、予想を超えていたところもあった。
結果は成功といってよかった。

なので私のところのTroubadour 40でも同じことを試すつもりである。
と同時に気になる製品がある。

ウェルフロートのバベルである。

試してみたいと思っても、そうとうに高価なモノだ。
しかもTroubadour 40用には二台必要となるから、さらに高価となる。

私はバベルを試したことはないし、実物をみてもいないが、
友人は、このバベルによる音の変化を録音の現場で体験している。

その音の変化を興奮気味に語ってくれたことからも、
そうとうな実力だということは伝わってきた。

Troubadour 40とウェルフロートのバベル。
ユニークな組合せとなるはずだ。

Date: 12月 13th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とベストバイ・その2)

今日(12月13日)は、ステレオサウンド 225号の発売日。
いまではKindle Unlimitedで読めるので、公開されるまで待てばいい。
なのでKindle Unlimitedを利用するようになって、
書店でステレオサウンドを手にすることも、ほぼない。

でも今日だけは、ちょっととはいえ立読みしてきた。
ベストバイでジャーマン・フィジックスのHRS130がどれだけ星を獲得しているか、
それだけが知りたかったからだ。

三人が星を入れていた。
みな一つ星だった。

予想としていたとはいえ、やっぱりその程度の評価なのか……、と思うしかない。
B&Wの802 D4は、HRS130よりも高い評価になっている。
これは昨年の結果からもわかっていたことといえるし、納得もいく。

ここで考えるのは、ベストバイという企画が、
以前のように価格帯関係なしの選定であったら──、ということだ。

Date: 12月 12th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス HRS130(とベストバイ・その1)

いま日本に輸入されているジャーマン・フィジックスの製品は、
HRS130、一機種のみだ。

HRS130の価格は、サテン仕上げが4,180,000円、ハイポリッシュ仕上げが4,620,000円、
カーボンファイバー仕上げが4,950,000円(いずれもペア、税込みの価格)。

HRS130とほぼ同価格のスピーカーシステムとして、B&Wの802 D4がある。
すでに2023年1月11日からの値上げが発表になっているが、
HRS130も来年になると値上りするかもしれないので、
ここでは現時点(2022年12月)の価格を挙げておく。

802 D4も仕上げによって価格は違う。
ローズナット、サテン・ホワイト、ウォールナットが4,114,000円、
グロス・ブラックが4,356,000円(いずれもペア、税込み)。

明日発売のステレオサウンド 225号のベストバイでB&Wの802 D4は高い評価だろう。
HRS130はベストバイになっているとは思うが、何人が星を入れているのか、
どのくらい集まっているのかは知らない。

802 D4ほどは星を獲得していないはずだ。

それに802 D4が試聴できる販売店の数はそこそこあろう。
HRS130が試聴できる販売店となると、いまのところないのではないだろうか。

期間限定の試聴会はいくつかのオーディオ店で行われていても、
そこに行けばいつでも聴けるというわけではない。

東京でも、HRS130を常設しているオーディオ店はないはずだ。

ブランドの知名度もかなり違う。
ジャーマン・フィジックスは別項で書いているように、
十年ほど日本での取扱いはなかったのだから、より違いは大きくなっている。

つまり日本での販売台数は802 D4が上のはずだ。
かなりの差があるように思う。

HRS130と802 D4、
どちらがベストバイなスピーカーシステムといえるのか。

Date: 12月 8th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(試してみたいこと)

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40を手に入れたら──、
以前からおもっていたことがある。

Troubadour 40はマイクロフォンとして使ったら、どういう結果になるのか。
いうまでもなくスピーカーとマイクロフォンは、
どちらもフレミングの法則からの動作である。

ならばTroubadour 40もマイクロフォンとして動作するであろう。
もちろんマイクロフォンとしてはダイアフラムが大きすぎるという問題があるかもしれない。

けれどTroubadour 40のチタン振動板は、メーカー発表値だと3gである。
まったくマイクロフォンとして機能しないということはないように思う。

そんなバカなことはやらなくてもいいじゃないか、とは思わないのは、
ベンディングウェーヴ型スピーカーの動作を理解するには、必要なことだと考えるからだ。

Date: 12月 6th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(Troubadour 80のこと)

Troubadour 40は、残念なことにすでに製造中止になっている。
German Physiksのウェブサイトをみると、
PQS100というモデルがある。さらにPQS100 Plusもある。

PQS100がTroubadour 40の後継機ということになるのだろうか。
後継機である、と言い切りたいところなのだが、少しばかり微妙なところも感じて、
なかなか言い切れないのだが、それでもTroubadour 40の代りになるモデルを手に入れたければ、
現時点ではPQS100かPQS100 Plusになる。

PQS100は外観上は、PQS100以上にTroubadour 40に近いけれど、
6インチ口径のウーファーを下向きに取りつけられたモデルだ。
このウーファーを使わないのであれば、
PQS100 PlusはかなりTroubadour 40に近くなる。

ジャーマン・フィジックスの現行ラインナップには、
このようにTroubadour 40に近いモデルは存在するが、
Troubadour 80の後継機、近いモデルはいまのところない。

Troubadour 80はTroubadour 40を上下にスタックしたモデルであり、
菅野先生はTroubadour 40をまず導入され、それからTroubadour 80にされている。

Troubadour 40かTroubadour 80か。
どちらがいいのか、おまえならばどちらをとるのか、と問われれば、
どちらでもいい、と答えてしまう。

私のところにやって来たのはTroubadour 40だが、
もしTroubadour 80がやって来ても、同じように喜んでいたはずだ。

ユッカ=ペッカ・サラステ/トロント交響楽団によるシベリウスのレンミンカイネン組曲。
この曲を菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40で聴いた時の、
聴き手であるこちらの腕をさわさわと響きが、音の波が伝わってくるのが、
はっきりと感じられて、こういうデリカシーの再現性の高さは、
Troubadour 40の独擅場といえる。

ならばTroubadour 40ではないか、とまた問われそうなのだが、
Troubadour 80で菅野先生が聴かせてくれたベートーヴェンのピアノ協奏曲。
ケント・ナガノと児玉麻里による演奏における動的平衡の音の構築物、
それが聴き手の眼前に展開されていくさまは、Troubadour 80の独擅場と思っている。

なので、どちらがやって来たとしても、私はそれでよかったわけだ。
そして妄想はここでも頭をもたげてくる。

Troubadour 80において、下側のDDD型ユニットはカーボンで、
上側のDDD型ユニットはチタンという仕様にしたら、いったいどういう音が鳴ってくるのか。

Date: 11月 29th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その9)

ステレオサウンドしか読んでいない人にとっては、
ジャーマン・フィジックス、Troubadour 40(80)といえば、
菅野先生ということになるだろうが、
ラジオ技術では、高橋和正氏もかなり積極的に取り組まれていた。

2005年の測定記事もその一つで、
Troubadour 40で必要となるウーファーに関しても、いくつかを製作されていた。
MFBをかけたウーファーもあったと記憶している。

時間があれば大きな図書館に行き、このころのラジオ技術を読み返したい。