Archive for 8月, 2024

Date: 8月 31st, 2024
Cate: スピーカーとのつきあい

Acoustic Research LST(その2)

一年前に書いたものにコメントがあったので、この(その2)を書いている。

ARのLSTに関心を持つようになったのは、手元にあるスピーカーユニットを眺めていたからだった。
フィリップスの8インチ口径のフルレンジユニット、AD3800SM、
エレクトロボイスの1828Cドライバーと
823ホーンをながめながら、
この二つのユニットでスピーカーを自作するとしたら──、そんなことを妄想していた。

1828Cは中域用だから、なんらかのトゥイーターを足すつもりだから、
3ウェイの、さほど大きくないシステムとしてまとめたい。

誰かに聴かせるわけでもないし、使わずに保管しているだけのユニットを、
なんとかうまく使って、どんなスピーカーとしてまとめられるか。

フィリップス、エレクトロボイス、なんらかのトゥイーターを縦一列インライン配置をまず考えた。

これが一番無難にまとまりそうではあるが、
フィリップスのフルレンジにエレクトロボイスは、
本当に必要なのか。
少し大きめの口径のドーム型トゥイーターを選択すれば、
2ウェイでいけるし、こちらの方がうまくまとまりそうでもある。

なのにフィリップスとエレクトロボイスを組み合わせることが、
ここで構想しているスピーカーの条件である。

フィリップスとエレクトロボイスは縦一列に配置、
トゥイーターをどうするかを考えた時に、
頭に浮かんだのがLSTだった。

Date: 8月 30th, 2024
Cate: ちいさな結論

ちいさな結論(いい音とは・その1)

音は儚い、ともいえる。
楽器から、スピーカーから発せられた音は、すぐさま消えいってしまう。
あとには、なんの痕跡も残さないからだ。

楽器、人から発せられた音から音楽はなっている。
そのままでは消え去ってしまうのを、
マイクロフォンで捉え、レコーダーで記録する。

録音された音楽を、スピーカーを介して聴いている。
最近では、そのスピーカーからの音を録音することが流行っている。

このことについてあれこれ言おうとは思わないが、
私はやらない。
エアー録音と呼ばれているこの行為が、無意味と思うからではなく、
音の儚さを、なんとなく無視しているようにも感じるし、
なんだかいじましいっぽいところを感じるからでもある。

こうやったから、聴き手に届くのか。
届いているといえば、否定はできないけれど、
ならば聴き手に届くとはどういうことなのかを考える。

聴き手に届く音と届かない音がある。
私は、そう思っている。
どんな音でも聴き手に届いているとは、考えていない。

聴き手に届く音とそうでない音は何が違うのか。
輝きである。

Date: 8月 29th, 2024
Cate: 使いこなし

セッティングとチューニングの境界(その29)

セッティングと精度について考えていたら、五味先生のことを想い出していた。

「想い出の作家たち」のなかで、五味千鶴子氏が語られている。
     *
亡くなる前にベッドに寝ていても、毛布をシュッとかけなおして、「折り目正しくなってるか」とたずねるのです。
「ええ、きちんとなってますよ」と言うと安心しました。何かお見舞いの品をいただいても「真心こもってるか」と言います。「とても真心のこもったものをいただきましたよ」と言うと、「そうか、人間は折り目正しく、真心こめていかなきゃいけないよ」と言っていたのをよく覚えております。
     *
「折り目正しく、真心こめて」が、
五味先生がオーディオ愛好家の五条件のひとつにあげられている、
「ヒゲのこわさを知ること」につながっているのは明らかだろう。

それだけでなく、セッティングにおける精度も、「折り目正しく、真心こめて」なのだ、とおもうわけだ。

Date: 8月 28th, 2024
Cate: 使いこなし

セッティングとチューニングの境界(その28)

別項「一年に一度のスピーカーシステム」、
そこで言いたいことが、セッティング(精度)である。

オーディオ歴の長さに比例して、セッティングの精度は高くなっていくのであれば、
なんの問題もないが、現実は違う。

本人も気づかぬうちに少しずつ少しずつ精度は微妙にズレていく。
そのままにしているとズレは大きくなるばかり。

しかも、その精度のズレをどう見極めるのか。
スポーツ選手であれば、自身の動きを録画して以前の状態と見比べることもできるし、
コーチからの指摘も得られるだろう。

オーディオは、その点、どうなのか。
自分で判断するしかない。

そのために何が必要なのか。
それが「一年に一度のスピーカーシステム」のテーマになっている。

Date: 8月 27th, 2024
Cate: 使いこなし

セッティングとチューニングの境界(その27)

セッティングとチューニング。
この二つの境界は曖昧なところはあるが、
だからといって一緒くたにしていいわけではない。

セッティングに深く関係してくるのは精度、
チューニングに深く関係してくるのは練度。

精度と練度。
これだけで違いを説明できるわけではないが、
大きく外してはいないと思っている。

Date: 8月 26th, 2024
Cate: 未分類

audio wednesday (next decade) – 第七夜を終えて(その5)

8月の会でやったことは、ごくごく基本的セッティングの実例のいくつかだ。
こんなことを、あえてやったのは、どんなことでもそうなのだが、
長年やってきて慣れてしまったことだと、
知らず知らずのうちに、やっていることの精度が微妙にズレてしまうことがあるからだ。

このことに本人は気づきにくい。
しっかりとふりかえらないと、微妙にズレた精度を元に戻すことはできない。

Date: 8月 26th, 2024
Cate: 「オーディオ」考

「音は人なり」を、いまいちど考える(その26)

傷ついた自尊心をどうするか。
傷ついたのではなく、心ない言葉によって傷つけられた──、
本人はそう思っているかもしれないが、
とにかく傷が入ってしまった自尊心は、自ら毀すしかない。
いいきっかけではないか。
私は、そう思う人間だ。

オーディオマニア全員が、そうである必要はない。
傷ついた自尊心を、優しく優しく修復するのもいいし、
自尊心が傷つけられた者同士、傷を舐め合うのもいい。

それらをひっくるめての「音は人なり」なのだから。

Date: 8月 25th, 2024
Cate: オーディオ入門

オーディオ入門・考(いつまでも初心者なのか・その7)

(その6)で、オーディオ歴がながいにもかかわらず、
私は初心者と、ずっとそう言い続ける大人がいて、
彼は謙虚なわけではなく、覚悟がないから、逃げているだけだ。

だから、一本の柱も持つことができないままだ。
ずっとこれまでも、これからも──、
そんなことを書いた。

自尊心だけのオーディオマニアも同じだ。
一本の柱も持つことができない。

Date: 8月 25th, 2024
Cate: オーディオマニア

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その89)

オーディオの想像力が欠如した者は、自尊心しか持てないのだろう。

Date: 8月 24th, 2024
Cate: 「オーディオ」考

「音は人なり」を、いまいちど考える(その25)

自尊心は傷つきやすい。
オーディオマニアの自尊心は、ほんとうにちょっとしたことでも傷つくようだ。

助言や指摘でも傷つく。
批判された、攻撃された、と思うようだ。

だから言う。誇りがないからだ、と。
自尊心だけで、オーディオマニアとしての誇りがどこにもないからだ。

誇りは強い。
自尊心とは違う。

Date: 8月 24th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第七夜を終えて(その4)

おそらくだが、元のネットワークとJimlansing/AMPEXのN800は、
同じ回路で、コンデンサーやコイルの値もほぼ同じと思われる。

つまり使用部品が違い、配置と配線も違い、
ケーシングされているどうかの違いもある。

実際の音の変化の大きさは、人によって受け止め方は違ってこよう。
大きく変ったと感じる人もいれば、さほどでもない、という人がいてもおかしくない。

ネットワークによる音の変化は、
自作スピーカーに取り組んでこなければ、聴く機会はそうはない。

今回のネットワークによる音の違いについては細かくは書かない。
一つだけ書いておくと、
元のネットワークでは、JBLの2420の上にトゥイーターがどうしても欲しい、
そう感じるのが、N800にすると、このままの2ウェイでもいいかな、
そんなふうに感じながら聴いていた。

Date: 8月 23rd, 2024
Cate: plain sounding high thinking

オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる(その19)

《オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる》
気負いだけが漲った音からは、音楽は聴こえてこない。

Date: 8月 22nd, 2024
Cate: 純度

純度と熟度(と自恃)

自恃なき純度はない、
自恃なき熟度もない。

Date: 8月 21st, 2024
Cate: ディスク/ブック

能×現代音楽 Noh×Contemporary Music(その2)

2017年1月4日に、「能×現代音楽 Noh×Contemporary Music」を聴いている。
この日のaudio wednesdayには、常連のHさん一人だけだった。

「能×現代音楽 Noh×Contemporary Music」は、Hさんが持参されたCDだった。
この時聴いてなければ、おそらくいまも聴く機会はなかっただろう。

TIDALを使うようになってすぐの頃、
このアルバムがあるか検索したが、ヒットしなかった。
昨晩、ふと再び検索してみたら、あった。
他のアルバムもあった。

8月のaudio wednesdayに来られた方たちには話してあるが、
10月のaudio wednesdayのテーマは、現代音楽である。

現代音楽にうとい私は、Hさんに選曲をまかせるつもりでいる。
たぶん、このアルバムも選ばれるはず。

Date: 8月 20th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第七夜を終えて(その3)

757Aレプリカのネットワークに使われているフィルムコンデンサーは、
円筒状を押しつぶした形状のモノで、私には、このコンデンサーがどうしてもいい音に寄与するとは、
最初に見た時から思えなかった。

そんな思い込みがあっても音出しであり、ネットワークの交換でもある。
これで、元のネットワークの方が良かった、となれば、
私の思い込み、偏見ということになるが、結果はそうではなかった。

元のネットワークでなんとなく気になっていたところが、かなり改善された、と私の耳には聴こえた。

試しに交換した時に一緒に聴いていた数人も、
Jimlansing/AMPEXのN800の方がいい、という評価。
会が始まって、もう一度、元のネットワークに戻し、
N800に換えた音でも、ほぼ全ての人がN800だった。

なんというか元のネットワークでは、
JBLのユニットをうまく鳴らせなかった時の音像の薄っぺらさが感じられた。
それに個々のユニットが伸び伸びと鳴っていないようにも感じていた。

決して大きな不満ではなかったけれど、聴いていると、
ネットワークが視界に入るたびに、これを交換したら──、
そんな思いが5月の会からしていた。