ジャズオーディオにおけるハークネスは、ネットワークはLX5だった、と友人のKさんが教えてくれた。
通常ハークネスのユニット構成は、001と呼ばれるものが、130Aウーファー、175DLHで、ネットワークはN1200。
ウーファーにD130、トゥイーターに075、ネットワークはN2600またはN2400のものが030と呼ばれていた。
ネットワークのNの後につづく数字はクロスオーバー周波数を表している。
N1200は1.2kHz、N2600は2.6kHzというように。
LX5も、LE85、HL91は1960年に登場し、D50S7-1 Olympusに、ウーファー LE15との組合せで使われている。
クロスオーバー周波数は、5が示しているように500Hzとけっこう低い値だ。
LE85は、アルテックの802を範としていると言われている。
その802と組み合わされるホーンは、811Bもしくは511Bで、
こちらも型番が示すように、802のカットオフ周波数を800Hzとするならば811B、
500Hzまで下げるのであれば、ひとまわり大きい511Bということになる。
511Bは、アルテックの代表的なスピーカーシステムA7-500-8にも使われているホーンである。
同じ500Hzから使えるホーンなのに、JBLのHL91とアルテックの511Bとは、
両者の目指す方向性の違いから、とはいえ、形状も大きさも異なる。
JBLの場合、このころのホーンは、どうしても家庭用ということを念頭においていたためだろう、
大きさの制約があったのではないのか。
アルテックのホーンが、ホーンとして素直な形と大きさとなっているのに対し、
JBLのホーンのいくつかは、途中でホーンを切ってしまったかのような印象すらある。
もっともこのホーンの制約があるからこそ、JBL特有のテンションの高い音が生れてきているのかもしれないのだが。
LE85 + HL91は、500Hzでの使用例があるとはいえ、
それはあくまで家庭内での常識的な音量で成り立つことであって、
ジャズオーディオで、岩崎先生が鳴らされていた音量では、
相当にドライバー(ダイアフラム)への負担も大きかっただろう。
でも、そんなことは百も承知で岩崎先生は、あえて500Hzで、使っておられたそうだ。
「JBLのホーンとドライバーのクセを知っているからやれることであり、
そうでない人は勧められない使い方」と言われていた、とKさんから聞いている。
ダイアフラムが、そうなることは承知の上だったのだろう。
ちなみにPAの世界では、ドライバーのダイアフラムが、金属疲労で粉々に散ってしまうことは、割とあることらしい。
でも、ジャズ喫茶とはいえ、日常的な広さの空間で、ダイアフラムを粉々にした人は、
やはり岩崎先生ぐらいだろう、とのことだった。