トーキー用スピーカーとは(その18)
タイトルには、「トーキー用スピーカーとは」とつけている。
トーキー用は劇場用とも置き換えられる。
たとえばアルテックのスピーカー。
同軸型ユニット604を搭載したシステムは、モニター用であり、
一人で聴くためのモノ。
一方、A7、A5、さらにその上のA4などになると、はっきりと劇場用スピーカーであり、
あくまでも個人的ではあるが、
これらのスピーカーで一人ひっそりと好きな音楽を楽しみたいとは思わない。
アルテックの劇場用スピーカーの音の特質は私なりにわかっているつもりだし、
その良さに惹かれるところもあるが、
その良さを、私が聴きたい音楽を、一人ひっそりと聴くためためならば、
アルテックではなくイギリスのヴァイタヴォックスを選ぶ。
──そんな認識が私にはあった。いまも残っているといえる。
アルテックの劇場用スピーカーは、多くの人で聴く音なのだ、という。
けれどシーメンスのオイロダインも劇場用スピーカーである。
私にとってオイロダインは、一人ひっそりと聴くためのスピーカーである。
このことは二十代のころ初めて聴いた時から、その印象は変っていない。
ヴァイタヴォックスもCN191、Bitone Majorは家庭用スピーカーだが、
Bass Binはその規模からして、劇場用スピーカーであり、
ヴァイタヴォックスの成り立ちからして、ユニットそのものは劇場用といえる。
同じ劇場用スピーカーなのに、そういう違いを感じとってしまうのは、
ただ単に思い込みからくるものなのか──、そんなことを自問することもあるが、
実際にその音にふれると、思い込みでは片づけられないことも実感できる。