サウンドラボ 735のこと(その2)
コンデンサー型スピーカーの動作原理を知ると、
この方式こそが、理想のスピーカーのありかたでもあるし、実現なのだ、という気がしてくる。
薄い振動膜は同容積の空気よりも軽かったりする。
その振動膜全面に駆動力が加わり、ピストニックモーションをしているわけだから、
一枚の振動膜で、ほぼ全帯域の再生が可能になる。
ウーファー、スコーカー、トゥイーターとユニットを帯域ごとに分割する必要性がない。
これまで素晴らしい変換方式は、他にないのではないか。
コンデンサー型スピーカーを知ったばかりのころ、そう受けとめていた。
それにマーク・レヴィンソンがHQDシステムの中核に、
QUADのESLをダブルスタックで採用したことも、このことに大きく影響を与えている。
やはりコンデンサー型スピーカーなのか──。
とはいえQUADのESLは3ウェイだった。
そこにハートレーのウーファーとデッカのトゥイーターを足しているのだから、
全体としては5ウェイという、そうとうに大がかりなシステムでもあった。
コンデンサー型スピーカーならばフルレンジ。
そんなふうにも考えていたところに、アクースタットのモデルが登場した。
ステレオサウンド 43号にAcoustat X、49号にMonitorが、
新製品紹介記事に登場している。
どちらも駆動アンプ搭載(管球式のOTL方式)で、
Acoustat Xは振動パネルが三枚、Monitorは四枚のモデルだった。
どちらもモデルも聴いてみたかったけれど、聴く機会はなかった。
アクースタットのコンデンサー型スピーカーを聴いたのは、
別項で何度も書いているように、
ステレオサウンド別冊「サウンドコニサー(Sound Connoisseur)」で取材だった。
1982年の初夏だった。
43号から五年経っていた。