Archive for category innovation

Date: 1月 4th, 2022
Cate: innovation

イノヴェーション

三人寄れば文殊の智慧、という。

けれど実際は、三人寄っても人の知恵、
ひどい場合は、三人寄っても猿以下の知恵なのかもしれない。

文殊とは、いうまでもなく文殊菩薩のこと。
智慧をつかさどるとされる菩薩である。

つまり人ではない者の智慧。
これがまさしくイノヴェーションなのだろう、と思う。

なのに現実はどうだろうか。
三人寄っても……、と三人が三人とも自説を押し通そうとしたら、どうなるだろうか。

せいぜいが誰かの意見が通り、多少残り二人の意見が加わった程度では、
とうてい文殊の智慧とはいえない。

誰一人として自説を譲ることがなければ、猿以下の知恵となるだろう。

議論とは意見を戦わせることなのだろうか。

Date: 6月 18th, 2017
Cate: innovation

2016年に考えるオーディオのイノヴェーション(その3)

2017年になっているのに、タイトルに2016年とある理由は、(その1)に書いている。

スマートフォンからなのだろうか、
その分野の先端のモノに、スマート(smart)がつくようになったのは。

オーディオの各コンポーネントでは、スピーカーがいちばん遅れているといわれ続けてきた。
そのスピーカーに、いまではスマートがつくようになっている。

スマートスピーカー。
AppleからもHomePodというスマートスピーカーが登場した。
日本での発売は先になるようだが、これから各社からスマートスピーカーなるモノが登場してくるのか。

そうなったとしてしも、オーディオマニアがメインスピーカーとして、
スマートスピーカーを使うことは、まず考えられない。

いまのところはBGMとして音楽を簡単に流すシステムとしての存在であっても、
これから先はどうなるかは、なんともいえない。

スマートスピーカーは一台から使えるし、二台をペアリングして使えるモノもある。
それ以上の数になってもペアリングできるだろうし、
iPhoneが登場した10年前と、現在とではスマートフォンの機能・性能が違ってきた──、
というより存在そのものが変ってきた、といえる。

スマートスピーカーも、現在は10年前のiPhone的存在であっても、
10年後はどうなっているのかは、わからない。

そんなことを考えていたけれど、ここで書くつもりは最初はなかった。
けれど先日、Appleの新社屋をかなり離れたところから撮った写真を見た。

こんなに大きな建物なのか、と思うとともに、
オーディオ最後のイノヴェーションのカタチは、これなんだ、と直感した。

Date: 5月 23rd, 2016
Cate: innovation

2016年に考えるオーディオのイノヴェーション(その2)

オーディオ最後のイノヴェーションとなるのは、スピーカーであろう、
とは多くの人が考えるところのはず。

ステレオサウンド 50号「2016年オーディオの旅」に登場するスピーカーには、
いわゆる振動板にあたるものがない。

そのスピーカーについては、こう書かれている。
     *
 書棚の反対側は壁面となっていて、壁の左右には奇妙な形をした装置がひとつづつ置いてあった。その装置は、高さが2m暗いのスタンド型をしており、直径80cmくらいの太いコイルのようなものが取り付けられていた。スタンドの床に接する部分は安定の良さそうな平たい足になっており、カバーが一部外れて、電子装置のパネルのようなものが顔を覗かせていた。不思議なことに、この装置の他には再生装置らしきものは何も見えなかった。
     *
これが2016年のスピーカーであり、ポールの中心部の複雑なアンテナ状のところから、
ごく短い波長の電波を出し、周囲の空気を磁化することで、
コイルに音声信号を流すことで磁化された空気が振動する、というものである。

空気の磁化。
これが可能になれば、このスピーカーは実現する。
長島先生は、このスピーカーの変換効率を、
50mWの入力で、1mの距離で100dB SPL以上とされている。
2016年では、20Wでもハイパワーアンプとなっている。

このスピーカーの音は聴きたい。
いまでも空気をイオン化させて音を発するスピーカーはある。
トゥイーターだけではあっても、その音は聴いたことがあるものの、
全帯域となると、どうなるのか。そう簡単に想像できない。

1980年代、フランスのオーディオメーカーが、
全帯域をイオン型でカバーしたスピーカーを発表している。
当時アクースタットの輸入元であったファンガティの広告に、そのスピーカーは載っている。

けれどほんとうに発売されたのか、そこから後の情報はまったく入ってこなかった。

いわゆる振動板をもたないスピーカーは、昔から多くの人が考え挑戦してきている。
YouTubeでも、検索してみると、いろんな人がいまも挑戦していることがわかる。

いつの日か、振動板をもたないフルレンジのスピーカーが登場するであろう。
でも、それがオーディオ最後のイノヴェーションとなるのだろうか。

オーディオ最後のイノヴェーションは──。
2016年のいま、私が考えるのはリスニングルームであり、
そのリスニングルームをコントロールする機能としての「コントロール」アンプである。

Date: 5月 23rd, 2016
Cate: innovation

2016年に考えるオーディオのイノヴェーション(その1)

「2016年に考える」としたのは、
古くからのステレオサウンドの読者ならばわかってくれよう。

1979年3月に発売されたステレオサウンド 50号には、
創刊50号記念特集 オーディオ・ファンタジーとして、
長島先生の「2016年オーディオの旅(本誌創刊200号)」が載っている。

小説仕立ての「2016年オーディオの旅」の主人公はN氏。
ある朝、目が覚めると2016年にタイムスリップしているところから始まる。

37年先の未来について、書かれている。
読みながら、こういう未来が来るのだろうか。
来るとしたら2016年くらいなのか、もっともっと先なのか……、
そんなことも考えながら読んだ。

2016年に鳴っているであろう音を想像しながら、読んでいた。
こういう企画は、誰にでもできるというものではない。

あと数ヵ月でステレオサウンド 200号が出る。
200号に、「2041年オーディオの旅(本誌創刊300号)」が載るだろうか。
誰か、書ける人がいるだろうか。

1979年当時、夢中になって読んだ「2016年オーディオの旅」だから、
このタイトルにしたわけだ。

「2016年オーディオの旅」で書かれていることがどれだけ実現しているのか。
そこまで到っていないこともあれば、はるかに進歩していることもある。

5年くらい先のことなら、予測がそう大きく違ってしまうことはなくても、
20年以上先のこととなると、誰が予測できるだろうか。

それでも2016年のいま、
これから先、もしオーディオになんらかのイノヴェーションがあるのならば、
オーディオにおける最後のイノヴェーションとなるのはなんなのか。
そのことについて考えてみたい。