Bösendorfer VC7というスピーカー(その25)
ベーゼンドルファーのVC7は、録音(演奏)された場が、どういうところなのかを、
その響きの違いでしっかりと提示してくれる。
このことは、スピーカーシステムのどういう能力と関係することなのだろうか。
木で造られた教会か石で造られた教会なのかの違いは、
マイクロフォンが収録する間接音成分によってわれわれは聴き分けている。
マイクロフォンがとらえる楽器や歌手からの直接音には、その録音(演奏)の場に関する情報は含まれていない。
そういう場の情報は、マイクロフォンにはいってくる間接音に含まれている。
だからVC7が響きへの対応の柔軟性の確かさを高く評価しているけれど、
もともとの録音に、「場」に関する音的情報が収録されていなければ、
どんなスピーカーシステムをもってこようと、聴き分けることはできない。
録音における直接音と間接音のレベル的な比率は、いったいどのくらいなのだろうか。
マイクロフォンが楽器に近ければ近いほど直接音の比率が高くなり、間接音の比率は低くなる。
楽器とマイクロフォンとの距離が離れていくほど、間接音の比率は上ってくる。
ここまでははっきりといえても、マイクロフォンの設置場所やその場の広さやつくりなどによって、
直接音と間接音のレベル的な比率はさまざまであろうから、この程度だという具体的なことはいえない。
それでも大半の録音では直接音のレベルのほうが高い。
それに間接音には1次反射だけでなく、2次反射、3次反射……とある。
反射の次数が増えていくほどレベルは低くなる。
ただ録音(演奏)の場の壁が木なのか石なのか、
そういう違いは1次反射にそれに関する情報量が多く含まれているのか、
意外に2次反射、3次反射のほうがレベル的には低くなっても、
壁の材質に関する情報は逆に増えているのかもしれない。
それともまた別の要素があって、それも絡んでのことなのだろうか……。
このへんになると不勉強ゆえ、これ以上のことはなにも書けないけれど、
響きの鳴らし分けに関しては、レベル的には低いところのスピーカーの鳴りが大いに関係しているように思えるし、
それはただ単に微小入力へのリニアリティが優れていることだけではなさそうである。