Date: 8月 26th, 2011
Cate: ナロウレンジ
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ナロウレンジ考(その2)

以前、アルテックの755Eを持っていた。
鳴らしていた、ではなく、持っていた、と書くのは、普段はダンボール箱の中にしまったままで、
ときどき思い出して引っぱり出してきて、鳴らす。

そういう使い方だから、755Eのために平面バッフルやエンクロージュアを用意していたわけではない。
梱包用のダンボール箱から出した755Eを床に置く。
つまりユニット前面が天井を向くようになるわけだ。
それでダンボール箱となかに入っていたダンボール紙を利用して、755Eを床から少し浮す。
床をバッフルみたいにして使う、しかもユニットは上向きだから、無指向性的使い方でもある。

755Eを使いこなしている方からみれば、なんといいかげんな、と怒られてしまいそうな鳴らし方なのだが、
意外にも、いい感じで鳴ってくれた。

低音も高音も出ていない。典型的なフルレンジ一発のナロウレンジの音なのだが、
それほど編成の大きくない録音を鳴らすと、中央に歌手が意外にも立体的に定位する。
さすがアルテックだな、声がいい感じ鳴ってくれる、と聴き惚れるぐらいの音が、
鳴らす音楽を選びさえすれば、そう思える音が鳴ってくれる。

ナロウだなぁ、と感じるのは聴きはじめのわずかのあいだだけで、
すぐに耳がなれてしまうのか、ナロウレンジであることはさほど気にならなくなる。
そうなってくると、マルチウェイのスピーカーシステムでは鳴らしにくいところを、
すんなり出してくれていることに気がつく。
もちろんマルチウェイのスピーカーシステムが苦手とするところすべてを、
フルレンジ一発のシステムがうまく鳴らすわけではないが、
フルレンジのナロウな音に耳がなれてくると、
意外にも楽器固有の音色の描き分けに関してはフルレンジの方が優っていることが多いのでは……と思えてくる。
楽器の音色だけではない、人の声、歌い手による声質の違いに関しても、
フルレンジのほうが素直に出してくる、というか、聴き分けやすいところがあることに気づく。

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