Mark Levinson JC-2(続×十・モジュール構成について)
手に入れなかったという、いわば不完全燃焼からの未練もないわけではない。
でも、それよりもずっと強いのは、私にとっての、あの時代のマークレビンソンのアンプは、
すべて瀬川先生と、その文章と深く結びついているということである。
ステレオサウンド 41号の瀬川先生のLNP2、JC2に関する文章。
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最近の可変抵抗器に新型が採用されたLNP2やJC2では、従来の製品よりもいっそう歪みが減少し解像力が向上し、音がよりニュートラルになっていることが明らかに聴きとれ、パーツ一個といえども音質に大きな影響を及ぼすことがわかる。レベルコントロールのツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻ることで見分けがつく。
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ツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻る──、
このことを確認できたのは三、四年後だった。
熊本に新しくできたオーディオ店にLNP2が置いてあった。
「触らないでください」とは、どこにも書かれていなかった。
それでもこっそりとLNP2のレベルコントロールのツマミを廻してみた。
確かに瀬川先生の書かれていたとおりに、何もついてないかのように軽く廻る。
たったそれだけのことでどきどきしていた時期があった。
まだ音は聴いたことがなかった。
こんなふうにして、
瀬川先生がマークレビンソンのアンプについて書かれたことを確認していくことが始まった。
ようするに私にとって、この時代のマークレビンソンのアンプに触れ、その音を聴くことは、
記憶を喚起すること以上に、記憶そのものといえるところがある。
いわば、この時代のマークレビンソンのアンプは外部記憶なのだろう。
ゆえに未練が断ち切れない、断ち切れるはずがない。