Archive for category 世代

Date: 3月 26th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(中古オーディオ店の存在・その2)

現行製品を扱うオーディオ店も楽しいが、
中古オーディオを扱うオーディオ店には、別の楽しさがある。

それは人によって少し違ってくるかもしれないが、
中古オーディオ店には、かなり古いモノから、
オーディオが日本でブームだったころのモノ、
比較的新しい製品など、年代の幅は、
その時々の品揃えによって変化するとはいえ、かなり広い、といえよう。

この広さこそが、現行製品を扱うオーディオ店にはない楽しさにつながっている。
今回、ハードオフの吉祥寺店を取り上げたのは、そのことを実感したからだ。

東京にも中古オーディオを扱う店舗は他にもある。
そこを取り上げずに、ハードオフについて書いているのは、
ハードオフ吉祥寺の店舗は、1フロアーだということもある。

階がわかれていないことの楽しさを感じていた。
この規模で、1フロアーだけで実現した中古オーディオ店は、
過去にはあっただろうか。

中古オーディオ店は、同世代のオーディオマニア同士で行っても楽しいし、
世代の違う者同士で行っても楽しい。

同世代であっても、憧れていたオーディオ機器は同じモノもあれば、そうでないモノもある。
この人は、これに憧れていたのか、と思い掛けない一面を知るきっかけになることだってあろう。

世代が違えば、相手が年上ならば、実際のオーディオ機器を前にしてこその話が聞けるだろうし、
若い人が相手であれば、世代が違っても共通することが意外にあることに気づかされるかもしれない。

中古オーディオ店はひとりで行くのもいいが、
親しいオーディオ仲間同士で行くのも楽しい。

いままで中古オーディオを扱っているオーディオ店には何度も行っているが、
こういうことを思ったことは初めてだった。

Date: 3月 14th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(中古オーディオ店の存在・その1)

オーディオがブームだったころ、吉祥寺にはオーディオがいくつかあった。
オーディオガラという、鉄製のプレーヤーキャビネットを製作しているところもあったし、
パルコの地階にはダイナミックオーディオもあったし、ジャズ喫茶も多かった。

住みたい街No.1である吉祥寺(最近の調査ではそうではなくなったようだが)に、
オーディオ店はつい最近までオーディオユニオンだけだった。

今日西荻窪に用があり、吉祥寺まで五日市街道を歩いていた。
いつもなら途中で左に曲り駅に向うのだが、今日は少しまっすぐ歩いた。
するとハードオフが見えてきた。

ハードオフについての説明はいらないだろう。
ハードオフの店舗が少しずつ増えてきたころは、
店舗を見付けては覗いていた。

そのころはオーディオ的には穴場といえるところもあった。
これが、この値段なの? ということが時々あった。
でもここ数年、中古オーディオの価格は、他のオーディオ店と対して変らなくなった。
そうなるとハードオフから足は遠ざかる。

理由はオーディオ機器の扱いがぞんざいだからだ。
他の中古オーディオ店がていねいに扱っていると見えるほどに、
ハードオフの扱いはぞんざいだった。

ハードオフもいくつも店舗があるからすべての店舗がそうであるとはいわないが、
少なくとも私が行ったことのある店舗はすべてぞんざいとしか思えなかった。

けれど吉祥寺にできたハードオフ オーディオサロンは、違っていた。
だから、ここで書いている。

まず建物が新しい。
三階にオーディオサロンがある。
店舗が広いから、ゆったりと展示してある。

これまでのハードオフのそんざいな扱いではない。
オーディオ機器として扱っている店舗である。

ハードオフという名称を使わない方がいいのでは……、と思ってしまうほど、
他の店舗とは違って見える。

先週の金曜日(3月10日)にオープンしたばかり、とのこと。
ちょっと心惹かれるモノがいくつかあった。

見ていて、楽しい、と感じていた。
あの人には、こんなモノがあったよ、
また別の人には、これがあったよ、と写真を撮ってメールしたくなる気分になっていた。

オープンしたばかりだから、品揃えもいいのかもしれない。
今後、どうなっていくのかはなんともいえないが、
少なくとも吉祥寺にオーディオの活気が戻ってくるのかもしれない、とは思える。

Date: 1月 21st, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(It’s a Sony・その3)

お詫びと訂正。

その1)でIt’s a Sony展でのH型テープレコーダーのリールの取りつけ方が間違っている、と書いた。
けれど現在の展示は正しい取りつけ方だということがわかった。

通常のオープンリールデッキのリールの回転は反時計回りである。
このことが頭にあったので、取りつけ方が間違っていると思ってしまった。
けれどH型テープレコーダーは、左側のリールは通常と同じ反時計回り、
右側のリールは時計回りという設計だそうだ。

つまり右側(巻き取り)側のリールには、
磁性粉が塗布されている面が外側にくるようにテープが巻かれる。
実はもしかすると時計回り? と一瞬思ったが、そうすると通常とは反対の巻き方になる。
そのままでは次の再生には使えない。
だから時計回りという可能性を、何も確認せずに排除して(その1)を書いてしまった。

ここにお詫びと訂正をしておく。

ただ11月にIt’s a Sony展が始まった時点では、
左右のリールともテープが巻かれている状態で、間違った状態での展示だったことも確認できた。
誰からの指摘があったのだろう、いまは正しい展示になっている。

それにしてもH型テープレコーダーは、なぜ右側のリールを通商とは逆の回転にしたのだろうか。
H型テープレコーダーで再生したら、巻き戻さなければならない。
使い手にそういう手間をかけさせても、技術的な、何からのメリットがあったからこそ、
ソニーは右側のリールを逆に回転させたのだろう。

結果として(その1)で間違ったことを書いてしまい、
その点は反省しているが、
でも書いたことによってH型テープレコーダーの特徴を知ることができた、ともいえる。

同時に(その1)を書いた二日後にKK適塾の三回目があったこともあり、
「安」という漢字と、ここでのテーマで世代について考えることもできた。

Date: 1月 20th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(It’s a Sony・その2)

きくところによるとIt’s a Sony展でのH型テープレコーダーの展示は、
いまはまだいいほうらしい。
It’s a Sony展が始まったばかりのころは、
巻き取り側リールにもテープがいっぱいに巻かれていたそうだ。

つまり左右ふたつのリールともテープがいっぱいに巻かれていた状態だったらしい。
これはあくまでもきいた話で確認をしたわけではない。
もしかした間違っているかもしれない。

でも仮にそんな展示をしていたとしたら、いまの展示は誰かからの指摘があって、
あるところまでは正した、ということだろう。
それでも、あの状態なのか。

こんなことをねちねちと書いているのは、ソニーが憾みがあってことではない。
今回はたまたまソニーだった、というだけのことだ。

他のオーディオメーカーが、It’s a Sony展のようなことをやったとき、
似たようなミスをやらかさないと自信をもっていえるだろうか。

十年ほど前か、あるオーディオ関係者から聞いている。
古くからのオーディオ・ブランドが、いわゆる投資会社に買収された。
海外のメーカーで、誰もが知っているブランドである。

それまでは新製品の発表や、日本でのオーディオショウの際に来日するスタッフは、
自社製品のことを、そして自社の歴史のこともきちんとわかっている人ばかりだった。
だから古いモデルの、こまかなことを質問してもきちんとした答えが返ってきたそうだ。

それが買収されてからは、来日するのは買収先から派遣されている人ばかりで、
彼らは会社の規模や業績といった、
経済誌が記事にするようなことはことこまかに説明してくれても、
こちらが訊きたいこと、つまりオーディオ詩が記事にしたいことはまったく知らないそうだ。
製品のこと、歴史のことは知らない。せいぜいが新製品についてだけだそうだ。

どこかに買収されたからといって、すべてがこうなるとは限らない。
でもそうなる可能性はある。
買収されなくとも、世代が変っていくごとに失われていく何かがあるのだろう。

今日のKK適塾の三回目で、川崎先生が「安」という漢字について話された。
だから、これを書いた。

Date: 1月 18th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(It’s a Sony・その1)

上京したばかりのころ、行きたいところはいくつもあった。
秋葉原もそうだったし、銀座のソニービルのそのひとつだった。

昔は銀座に行けば、かなりの頻度でソニービルに寄っていた。
この十数年はめったに寄ることはなかった。

ソニービルも老朽化のため建替えになる。
2月12日まで、カウントダウンイベントとして「It’s a Sony展」を行っている。

まだ行ってないが、
インターネットのニュース系サイトGigazineで取り上げられていた。

この記事を読んでいて、スクロールする指が止った。
H型テープレコーダー(1951)のところで止った。

オーディオマニアならば、この写真を見てすぐにおかしいと感じる。
何がおかしいのかはあえて書かないが、
いまのソニーには、どこがおかしいのかがわかる人、
つまりオープンリールデッキの正しい扱い方を知っている人がいないようである。

わからなかったら、社内の誰か、わかっている人に訊ねることもしないのだろうか。
展示だから、この程度でいい、という判断なのだろうか。

いまの、それがソニー(It’s a Sony)なのか。

(2017年1月21日追記)
ソニーのH型テープレコーダーに関して、私の知識不足ときちんと確認せずに書いてしまった。
11月の開始時点では正しくなかったリールの取りつけは、
上記リンク先の写真が正しい。
このことは(その3)で書いている。

Date: 12月 24th, 2016
Cate: 世代
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世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン)

ヘッドフォン、イヤフォン市場は活況のように見える。
ヘッドフォン祭に行くけば、若い人たちが多い。
家電量販店でもヘッドフォン、イヤフォンのコーナーは広かったりする。

このことについてよくいわれるのが、
ヘッドフォン、イヤフォンで音楽を聴いている人たちの一部でもいいから、
スピーカーで音を聴くことに目覚めてくれれば……、といったようなこと。

若い人たちは、スピーカーではなくヘッドフォン、イヤフォンで聴く、とはいわれている。
スピーカーは置き場所を必要とするし、住宅状況からいってもスピーカーを買う人は少なくなっている。
──そんなふうにいわれているけれど、そうなのだろうか。

私が若かったころも、住宅状況はよくなかった。
若者の独り暮しで、広い部屋に住んでいるのは、私のまわりにはいなかった。
さほど、この点に関しては変わらないのではないだろうか。

なのになぜ、いまはスピーカーで音楽を聴く人が減っているのか。
いくつかの理由があるはずだが、そのひとつに、
スピーカーの音が嫌いな人たちが増えてきたためではないか、と思っている。

好きな音楽をいい音で聴きたい。
そういう人は今も昔もいる。
けれどいまはスピーカーの音が嫌い、という人たちの割合が増えてきたのかもしれない。

スピーカーの音を嫌う人は、昔もいた。
昔からスピーカーではなく、ヘッドフォンだけ、というマニアがいた。
でも少数派のように見えた(実際そうたったと思う)。

このスピーカーの音を嫌う人たちの存在が顕在化したのは、
1980年代にはいり、いわゆるプレナー型スピーカーがいくつか登場したからだろう。

スピーカーの音が嫌いでも、いい音で聴きたい。
スピーカーの音が好きで、いい音で聴きたい。
どちらもいるわけだ。

私ははっきりとスピーカーの音が好きで、である。

ほんとうにスピーカーの音を嫌う人たちが増えているのかどうかは、まだはっきりしたわけではない。
でもそうであったとしたら……。
その人たちはスピーカーで聴くようには、まずならないのではないか。

Date: 11月 13th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その15)

別項でヴィンテージをテーマにして書いている。
これから先、どう書いていくのかほとんど決めていないが、
それでもヴィンテージをテーマにして、JBLの4301について書くことはない。

4301が登場してそろそろ40年になる。
かなり古いスピーカーではある。
けれど、4301はヴィンテージスピーカーと考えたことは、これまで一度もなかった。

なのにこんなことを書いているのは、
ネットオークションに4301が出品されていて、
そこにはヴィンテージの文字があったからだ。

オークションだから、売り手はできるだけ高く売りたい。
売り文句としてヴィンテージなのかもしれない。

それとも売り手は、本気で4301をヴィンテージスピーカーと思ってるのだろうか。
そして、それを見た人の中にも、4301をヴィンテージスピーカーと捉えてしまう人がいるのか。

4301をヴィンテージと呼ぶ人が、どういう世代なのかはわからない。
私と同じ、もしくは上の世代であれば、4301をヴィンテージとは呼ばないだろう。

4301が製造中止になって十年以上経ってからのオーディオマニアなのだろうか。
だとしても、だ。
私がオーディオに興味を持つ以前の、4301よりもずっと古いスピーカーで、
4301的位置づけのスピーカーを、ヴィンテージとは捉えない。

売らんかなだけの商売。
そこで使われる「ヴィンテージ」。
それがつけられてしまう4301(オーディオ機器)。
時代の軽量化を感じてしまう。

Date: 11月 4th, 2016
Cate: 世代

タンノイがふさわしい年齢

タンノイがふさわしい年齢。
そういったことを、いま考える人(世代)は、いるのだろうか。

タンノイといっても、これまでにさまざまなモデルが登場して消えていっている。
同軸型ユニットを採用していないモデルもある。

同軸型ユニットにしても、アルニコからフェライトになっているし、
フェライト採用のユニットには、
ウーファー用とトゥイーター用をひとつのマグネットで兼ねているタイプと、
独立させてふたつのマグネット採用のものとがある。

だからタンノイといっても、人によって真っ先に頭に浮ぶモデルは違ってくる。
そうなれば、タンノイにふさわしい年齢も違ってこよう。
もしくは、そんなこと、まったく感じない、ということにもなろう。

けれどタンノイといえば、Guy R. Fountain Autographという者にとっては、
タンノイがふさわしい年齢を意識するのではないだろうか。

私は、いまどうなんだろうか。

Date: 10月 28th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その14)

「JBLのすべて」巻末の「発刊によせて」には、
ブルース・スクローガンも書いている。
そこにも瀬川先生のことが、やはり出てくる。
     *
 新しく開発した製品の試聴は、つねに、ある種の興奮と期待が伴います。私は、20年間において何度も落胆したり元気づけられたりしました。いまでも、K2シリーズのブラックボックス・プロトタイプを最初に聴き、私達の期待どうりのすはらしい性能であることを知った時の喜びを思いだします。もっと溯れば、4341モニターシステムで、初めてビッグスピーカーシステム本来のパワーとリアリズムを実感したことを思いだします。この4341体験は、私をJBLの完全な信奉者にしてしまいました。’70年代俟つ、コバルトの高騰で、アルニコからフェライトマグネットに転換しなければならなくなったときは不安でした。実際、フェライトマグネットを搭載したスピーカーは、私達にとって、一聴においてショックを与えるものだったのです。フェライトでは大きな歪みが起きていました。アルニコとフェライトの再生音の違いは明らかでした。そこで、それまでのフェライトマグネットを搭載した磁気回路の欠点をなくし、アルニコよりもさらに優れた特性ももつものとして、SFG回路を開発したのです。私達はこの新しいSFGが、アルニコより優れていると確信していましたが、まず日本で、オーディオの専門家の意見をうかがうことにしました。故・瀬川冬樹氏の自宅で、夜通しリスニング・セッションが行われました。結果は大成功でした。私達はその場にはいませんでしたが、その結果を電話で聞いた時、私達は喜びで泣き出さんばかりでした。この時が、JBLにとっての大きな転換期であると私達は感じていました。
     *
ブルース・スクローガンも4341だったのか、とまず思った。
SFG以前のフェライトマグネット搭載のユニットは、やはりダメだったのか、とも思い、
当時のJBLにとって、もし瀬川先生が「Good」ではなく、「Bad」といわれていたら、
SFG回路はどうなっていたんだろうか……、そんなことも考えてしまった。

ゲイリー・マルゴリスとブルース・スクローガンの「発刊によせて」を読み返していると、
4301を無性に鳴らしてみたくなる。
何も最新の、高額な、優秀なアンプで鳴らしたいわけではない。

あの頃に戻りたくとも、戻れはしない。
そんなことはわかっているけれど、あの頃の私に何かひとつ伝えることができるのならば、
後一年ほど待て、といいたい。

サンスイのプリメインアンプで鳴らし、プリ・パワー分離機能を使って、
サブウーファーとパワーアンプを加えるとともにバイアンプ駆動にする。
そうやってグレードアップ(ステップアップ)していくことを選択するように──、そう伝えたい。

Date: 10月 28th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その13)

JBLの4301の値下げがもう一年早かったら……、
ここで書いてきたようなシステム(組合せ)で始まり、
グレードアップをしてきたかもしれない。

でも現実はそうならなかった。
4301は当時はそこまで入手しやすい価格ではなかった。

本格的なスピーカーとして4301を自分のモノとできていれば、
その後の私のオーディオは、どうだったのだろうか、と想像してみるのは楽しいし、
4301について調べていくと、当時はわからなかったことがはっきりしてくる。

4301の開発責任者はゲイリー・マルゴリスである。
ステレオサウンド 51号から始まった4343研究に登場している。

ゲイリー・マルゴリスは1974年にJBLから勧誘され入社している。
彼が最初に取り組んだのが4301である。

ゲイリー・マルゴリスはステレオサウンドの誌面に、もう一度登場している。
53号掲載の、瀬川先生によるJBLの新ユニットの記事である。

アルニコマグネットからフェライトマグネットへの移行、それにともなう磁気回路のSFG化。
4343搭載の2231Aが2231Hに、2121が2121Hになっている。

ゲイリー・マルゴリスはこれらのユニットを瀬川先生のリスニングルームに持ち込んでいる。
ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」に、
ゲイリー・マルゴリスが、そのときのことを書いている。
     *
 ブルース・スクローガンから私が受けた特命は、プロトタイプのSFGユニットを日本のオーディオ関係者に紹介するとともに、瀬川氏が当時使用していた4343のウーファーとミッドバスをSFGのそれと交換し、その評価を聞くというものでした。瀬川氏は、日本でもっとも尊敬されていた評論家のひとりであり、彼がJBL4343を称賛してくださったことが、このスピーカーが日本のオーディオファイルに受けいれられる大きな助けとなりました。このことから、瀬川氏によるプロトタイプSFGユニットの評価は、われわれにとって決定的なことだったのです。
 当日は、夜の8時すぎからテストセッションがはじまりました。瀬川氏所有の4343のウーファーとミッドバスのユニットをSFGタイプに交換して試聴を始めましたが、最初にでてきたお歳は、決して満足のいくものではありませんでした。ノースリッジのJBL試聴室で聴いた音とは違い、深みもパワーもない音です。私はてっきり、スピーカーが輸送によって破損したのだと思ったほどです。しかし、パワーアンプを交換してみたところ、いままでの音が嘘のような、鮮明な音が聴こえてきたのです。どうやらパワーアンプに異常があったようでした。
 その後何時間もの間、私たちはさまざまなレコードを試聴し、その間、瀬川氏はSFGユニットの新しい音響特性を注意深く観察していました。ちょうど真夜中を過ぎようというころ、瀬川氏は私に大きな笑顔をみせ「Good」とおっしゃってくださいました。私たちはさらに何時間もレコードを聴き、新しいスピーカーの音について議論を重ねました。
 試聴が終わり、新しいSFGユニットを取り外すとき、瀬川氏はとても残念がったものです。しかしわれわれには、このSFGユニットをJBL社に持ち帰り、量産製品のスタンダードとする必要があったのです。瀬川氏には量産品が完成次第、さっそく発送することを約束して、深夜というより荘重に近い時間に氏のお宅をおいとましました。ホテルに戻ったのは明け方でした。アメリカで結果を待ちわびているブルース・スクローガンに電話で第一報をいれたときの、何ものにもかえがたい充実感を忘れることはできません。長時間にわたる真剣な試聴で非常に疲れてはいても、たいへん元気づけられました。
     *
メーカー側の人間からのリポートである。
53号の瀬川先生の記事は読んでいた。
54号では特集で4343と4343Bを直接比較されていて、それももちろん読んでいる。
暗記するほど読んでいる。

その裏側というか、あまり表に出てこない話が、14年ほてあきらかになる。
そして、こういう人(マルゴリス)が4301の音室決定をしていたことが、
実に興味深いと思う。

瀬川先生とゲイリー・マルゴリスとの会話がどういうものであったのか、
その詳細を知りたいとも思う。

Date: 10月 10th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その12)

オンキョーのGS1について書いていてあわせて考えていたのは、
オーディオエンジニアということ。

エンジニア(engineer)は、技術者、技師と訳される。
オーディオエンジニアは、オーディオの技術者となるわけだが、
エンジニアは技術者──これは納得いくが、
エンジニアは開発者だろうか、エンジニアは実験者なのだろうか、とも思う。

どうも一緒くたに語られるところがあると感じている。
実験者も、技術をもっている。だから技術者と呼ぶことに抵抗はない。

だが私の場合、エンジニアの前にオーディオとつくと、
エンジニアの意味を考えてしまう。

特にオーディオメーカーのオーディオエンジニアとは、について考えてしまう。

Date: 10月 10th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その11)

オンキョーのGS1のデザインをされた方が誰なのかは知らないし、
その人を批判したいわけでもない。

実験機としてのGS1を製品としてまとめあげる。
それもバラック状態のGS1の音と同じか、
できればよりよい音で製品としてまとめあげることのできる人は、そうそういない。
ほとんどいない、といってもいいだろう。

バラックの外側を囲ってしまう。
それだけで音は変化するものだし、ましてGS1はスピーカーである。

結局は体裁を整える、というレベルで留まっているGS1は、
果して製品といえるモノだろうか。

勘違いしないでいただきたいのは、
GS1の音そのものを否定しているのではない。
実験機としてのGS1はユニークなスピーカーだった。
けれど製品としてのGS1の評価は、違ってくる、ということだ。

そういうGS1を、オンキョーの営業の人たちは売っていかなければならない。
たいへんなことだった、と思う。
実験機と製品の違いがまずある。
そのうえで、製品と商品の違いがある。

私は、この違いをGS1の開発者の由井啓之氏はわかっておられたのか。
由井啓之氏がfacebookでGS1について書かれているのを見ると、
そう思う時がある。

そこにはオンキョーへの不満もあったからだ。
日本での評価への不満もあった。

だか日本での評価は高いものだった。
けれど売行きは決してよいものではなかった。
でもそれは致し方ない。製品といえるモノではなかったのだから。

由井啓之氏はGS1の開発者と名乗られている。
けれど、真の意味で開発者だったのだろうか。
実験者だったのかもしれない。

GS1は30年以上前に登場したスピーカーだ。
オーディオ雑誌で取り上げられることは、ほとんどない。
その一方でSNSでは由井啓之氏自身が語られている。

このこと自体は悪いこととは思わない。
けれどあまりにも由井啓之氏の一方的な見方が過ぎるように感じる。

Date: 10月 9th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その10)

オンキョーのGS1の開発において、デザインはなされたのか、といえば、
なされていない、と言い切れる。

バラックの状態で開発が進んでいったGS1を製品化するには、
家庭におさまるモノだからバラックのままというわけにはいかない。
オンキョーの研究室内ではバラックでもかまわない。

そこは実験室だからである。
実験室で、バラックの状態でいい音が得られたとしても、それは製品にはほど遠い。
それはオンキョーもわかっていた。

製品にするためにデザインが施されている、と見えるのだが、
パッケージが施されただけ、といえる。
とってつけた外装パネルともいえよう。

だから外装(化粧)パネルの一枚である天板代りのガラス板を外すだけで、
音が良くなるし、このことからいえるのは、外装をすべてはぎ取った状態、
つまりバラック状態に戻した音こそが、GS1本来の音のはずだ。

本来ならばバラックだったGS1よりも、
いい音で鳴るためになされるのがオーディオにおけるデザインだと考える。

だが残念ながら、音を悪くしているのだから、
GS1になされたのはデザインではなく、デコレーションといえる。

Date: 8月 25th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(映画と音)

映画「シン・ゴジラ」の公開にあわせて、
Huluは7月1日から、ゴジラの映画を一作目から順次公開していった。
ゴジラの公開のあとには、ガメラの公開が始まった。

ゴジラもガメラも、最初の数作を除いて、小学生のころ、映画館で観ている。
あのころの映画は、冒頭でタイトルが大きく映し出される。

タイトルの下には、決って”Litton-Westrex”のロゴがあった。
小学生には、それが何を意味するのかはわからなかったし、知ろうともしなかった。

仮に身近な人に、あれは何? ときいたところで誰も知らなかった、と思う。

いまはもちろん知っている。
そうか、このころの映画は、冒頭で表示されていたのか、
知らず知らずのうちにWestrexの名前を見ていたか、と思うと同時に、
いつのころからか、Litton-Westrexはなくなり、代りにDolbyである。

いまやほほすべての映画といっていいだろう、
映画のエンドクレジットにはDolbyのロゴが表示される。

Date: 7月 27th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その15)

マークレビンソンのNo/29、チェロのEncore Powerが登場した時期は、
パワーアンプのハイスピード化が音質向上につながる、といったことがよくいわれていた。

電源の平滑コンデンサーは、だから大容量よりも小容量のほうが有利だし、
音のにじみをなくすために出力トランジスターの並列接続をやめ、シングルプッシュプルにする、
アンプのプリント基板もできるだけ小さくまとめる──、といったことがいわれていた。

JBLのSE408Sを、そういう視点で一度ながめてみてほしい。
まずシングルプッシュプルである。
しかも出力トランジスターのすぐ隣にドライバー段のトランジスターがあり、
この間は、これ以上縮めようがないほど近接している。
しかもアルミだキャストフレームがヒートシンクを兼ねているため、
いわゆる音叉的な構造体が存在しない。

増幅部のプリント基板も無駄に大きくはない。
入力段のトランジスターから出力段のトランジスターの距離も短い。
とくにNFBをかけたアンプの場合、この距離(ループの大きさ)は重要な項目となる。

平滑コンデンサーの容量も4500μFを二本並列にしているから、9000μF。
大容量とはいえない(これは、時代的なものも関係してのことではあろうが)。

しかもSE408S(に限らず同時代のJBLのアンプ)には、保護回路がない。
出力が40W+40Wという小ささも関係してのことであるが、
保護回路がないのは、音質劣化の要素がひとつないということである。

それから外装パーツがないということは、この部分におけるループの問題も発生しない。
シャーシーでアンプ全体を囲ってしまうことは、シールドの面からはメリットもあるが、
その他のデメリットもある。

六面体の筐体の場合、それぞれの面が電気的に接続されていて、
ループに対する配慮がなされていないと、デメリットの発生が大きくなる。

あらゆるところで、時代はくり返す、といわれる。
オーディオに関しても、そうであることが実に多い。
ただ前の時代、さらにその前の時代について知らない人が少なくないために、
もしくは盛大に技術内容を歌っているか謳っていないかの違いによっても、
くり返しが、新しいこととして受けとめられることが多い。