Archive for category フィッティング

Date: 5月 11th, 2016
Cate: フィッティング

フィッティング(その3)

スピーカーで音楽を聴く場合、それはステレオフォニックな再生である。
左チャンネルのスピーカーから発せられた音は、聴き手の左耳でだけ聴いているわけではない。
右耳にも左チャンネルのスピーカーの音は届いている。

右チャンネルの音に関しても同じである。
右耳だけでなく左耳でも受けとめている。

これがヘッドフォン(イヤフォン)となると、
左チャンネルのダイアフラムから発せられた音は左耳だけが聴いている(受けとめている)。
右チャンネルのダイアフラムの音は右耳だけである。

スピーカーでの再生とヘッドフォン(イヤフォン)での再生との大きな違いは、
まずここにあるわけだ。

このことは音のフィッティングに大きく関係してくるし、
補聴器のフィッティング技術に関心をもつわけだ。

Date: 5月 7th, 2016
Cate: フィッティング

フィッティング(その2)

昨年(2015年)は、映画「Back to the Future Part II」で描かれた未来だった。
2015年は前作「Back to the Future」から30年後の未来という設定で、
そこで描かれた未来の服は自動的に着ている人の体格に応じてフィットし、
ナイキのスニーカーは自動で靴ひもがしまるモノだった。

まさにフィッティング技術の、ひとつの未来形だったと思う。

オーディオ機器で身につけるモノといえば、ヘッドフォン、イヤフォンがある。
ヘッドフォンよりイヤフォンは、自分にフィットするモノであってほしい。

知人の女性は耳穴が小さく、
ほとんどのイヤフォンは痛いというし、カナル型でイヤーピースを一番小さなタイプにしても無理だという。
彼女の子供も母親譲りでやはり耳穴が小さく、イヤフォンは無理とのこと。

耳の各部のサイズや形状は人によって相当に違うようで、
指紋と同じくらい違うものである、ときく。

しかも左右の耳穴の形・大きさが違うことは珍しいことでもないそうだ。

そういう耳の形だから、
NECは人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いた新たなバイオメトリクス個人認証技術を開発している。

ということは既製品のイヤフォンの中から、自分にぴったりのモノを選ぶのは、
音をふくめての選択となるわけだから、かなり困難なことである。

だからカスタムメイドのイヤフォンが登場してきたし、この種のサービスを提供するところもある。
この手のものが、もっときめ細かいサービスを提供するようになっても、
解消されるのはサイズ・形状に関することであり、
ヘッドフォン、イヤフォンのとってもっとも大事なフィッティングは、いまのところ見落とされているのか、
あるいは無視されているのか、わからないがまだである。

けれどヘッドフォン、イヤフォンの世界から少し離れたところ(補聴器においては)、
すでに電子的コントロールによるフィッティング技術がある。

Date: 5月 5th, 2016
Cate: フィッティング

フィッティング(その1)

以前のグラフィックイコライザーの素子数は少なかった。
もちろん素子数の多いプロ用機器はあったけれど、
コンシューマー用とくらべると価格がずいぶんと違っていた。

そのころは10バンド、11バンドという素子数が標準だった。
可聴帯域は20Hzから20kHzまでの10オクターヴだから、
10バンドであれば1バンドあたり1オクターヴということになる。

いまでは1/3オクターヴが当り前の時代である。
つまりグラフィックイコライザーの精度は三倍になったと考えることができる。

精度が三倍になるということは、どういうことなのか。
使い馴れていない人にとっては、
どこから手をつけていいのかとまどうことにつながるかもしれないが、
グラフィックイコライザーの精度があがるということは、フィッティングの精度のあがることである。

そのプログラムソースが録音された現場で再生できるのであれば、
音響的なフィッティングを考慮する必要はなくなるのかもしれないが、
現実にはそういうことはないのだから、音響的なフィッティングを考える必要がある。

グラフィックイコライザーをどう捉えるかは人によって違ってくるし、
どういう状況によって使うかによっても変ってきたとしても、
オーディオマニアがグラフィックイコライザーを導入するということは、
電子的コントロールで、音響特性の補整を行う意味においてである。

適切に使えれば、多素子のグラフィックイコライザーは、よりフィットした補整カーヴをつくれる。
グラフィックイコライザーの調整を自動化することは、dbxの20/20から始まった、といえる。

いまではずいぶんと進歩しているし、精度も高くなってきている。

グラフィックイコライザーは電子的に処理する者だが、
音響特性を音響的に補整するアクセサリーも市場にはいくつも登場している。

グラフィックイコライザーや音響アクセサリーだけであく、
ケーブルやインシュレーターといったアクセサリーも、
自分の部屋によりフィットする状態をつくりあげていくためのモノ、という見方もできる。

結局のところ、自分がおかれている環境にどフィットさせるかを、
オーディオマニアは違う表現で行ってきているともいえよう。

アクセサリーやイコライザーを導入しなくとも、
スピーカーの置き位置を変えていくことも、
その部屋にフィットする位置をさがしての行為であり、
理想のリスニングルームを実現できない以上、なんらかのフィッティングの手法は必要となり、
その手法を導入し、使いこなしていくことになる。