銀座で買うということ
いまから四十年ほど前、
イタリア・チェトラから、
フルトヴェングラーとミラノ・スカラ座による「ニーベルングの指環」が出た。
発売前のアナウンスではステレオ録音ということだった。
フルトヴェングラーがステレオで聴けるのか、という期待、
そして初めて手にする「ニーベルングの指環」の全曲盤は、
銀座の山野楽器で購入した。
そのころ、まだ六本木にはWAVEはなかった。
だから銀座まで出かけて買ったわけだが、
立派なボックスにおさめられたフルトヴェングラーの「指環」は重たかったし、
高価でもあったけれど、なんだか誇らしい気持になれたことを思い出す。
そのころの銀座にはハルモニアというレコード店もあった。
ハルモニアのほうによく行って買っていたけれど、
山野楽器でもけっこう買うことがあった。
CD全盛時代でも、他の店になかったアルバムを見つけることもけっこうあって、
銀座に行くことがあれば、わりと行くようにはしていた。
けれどコロナ禍のすこし前あたり、CD売場が縮小された。
かなりの縮小だった。その時から銀座に行っても山野楽器に寄ることはなくなった。
その山野楽器が、7月31日でCD、DVDコーナーをなくす、という。
オンライン販売も5月31日で終了する。
縮小したときから、こうなることは予想されたことなのだろう。
特に驚きはないけれど、さびしい気持もないけれど、
銀座という街が変っていくことに、少しばかりさびしいといえばそうである。