Date: 7月 21st, 2020
Cate: 価値・付加価値
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オーディオ機器の付加価値(その11)

(その10)の続きを書く予定でいた。
けれど先日ヤフオク!で、びっくりするような値がつけられた出品をみて、これを書いている。

ナカミチのTX1000のことである。
1981年に登場したTX1000は1,100,000円だった。
レコードの芯出しという、それまでのアナログプレーヤーにはなかった機能を搭載していた。
アブソリュート・センター・サーチ・システムと名づけられていた。

その機能による音の変化は小さくないが、いつも同じ変化量というわけでもない。
レコードのかけかたがうまい、ということには、
レコードの芯出しをどのくらいうまく出せるかも含まれている。

スピンドルの先端でレーベルをこすってしまった線状のあとのことをヒゲという。
ヒゲをつけているようでは、その人のレコードの扱いはぞんざいであって、
芯出しのことなんてまったく考慮していないはずだ。

けれど自分のプレーヤーでなれてくると、意外にも芯出しはうまく行えてくるものだ。
毎回ぴたっときまるわけではないが、ひどくズレることはそうとうに減ってくる。
レコードの芯出しは、何度かかけかえれば、うまくいくものである。

それを自動的に行ったのがTX1000であり、
TX1000はレコードの芯出しの重要性を広めたプレーヤーでもある。

そういうTX1000なのだが、私はアナログプレーヤーとしてはまったく評価していない。
私の評価なんて気にすることはもないのだが、
世の中には、TX1000をおそろしい(むしろおかしな)ほどに高く評価する人がいるようだ。

ヤフオク!にTX1000の未使用品が、10,000,000円で出ている。
ゼロの打ち間違いではなく一千万円である。

未使用のTX1000だから、そのくらいの価値があると考える人もいれば、
私は、未使用であっても、当時の定価でも高いと感じる者もいる。

いまアナログプレーヤーに一千万円出せる人ならば、
別のアナログプレーヤーを買った方がいい。
そちらのほうが音がいいからだ。

TX1000はアナログプレーヤーとしては、よくいって未完の大器でしかない。
アブソリュート・センター・サーチ・システム以前に、
アナログプレーヤーとしての音を、高く評価することはできないからだ。

そんなTX1000が、一千万円である。
誰が買うのだろうか、と思っていたら、
昨年、やはり未使用品が8,500,000円で落札されている、とのこと。

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