世代とオーディオ(実際の購入・その11)
フィル・ジョーンズのデビュー作といえるアコースティック・エナジーのスピーカーシステム。
私が聴いたのは知人宅で、だった。
50〜60畳はあるかなり広い空間、
しかも弧を描く天井は、いちばん高いところでは6mほどはあろう。
そういう空間でアコースティック・エナジーのAE2を聴いた。
9cm口径のアルミ合金を芯材としたウーファーが二発、トゥイーターはハードドーム型。
イギリスのスピーカーらしく、エンクロージュアのプロポーションは奥に深い。
なのに、このスピーカーのエネルギーは、半端なものではなかった。
ソリッドな音とは、まさにこのこと。
どれほどボリュウムを上げていっても、不安感はない。
フロントバッフルにあるバスレフポートからの空気の放射が顔に当るのがわかるほどに、
そこまでボリュウムを上げても、まだまだ上げられそうな余裕を感じさせる。
オーディオ的快感が、はっきりとあったし、
スピーカー技術の進歩を感じとれもした。
オーディオマニアならば、AE2のポテンシャルを十分に発揮できる環境で、
その音を聴いたならば、誰もがオーディオ的快感に惹かれることだろう。
それは好きな音楽がどうとかではなく、ソリッドな音は音量をあげていっても崩れることなく、
ひたすら音が気持よく、そのことが快感なのだ。
最初は、AE2の音に興奮していたところがある。
あれこれ鳴らしていくと、興奮は増していった。
なのに、あるところまで達すると、そこから先は興奮は薄れていった。
いまおもうと、AE2は、趣味性の高いスピーカーシステムだったのだろうか。
確かに、あのころ、驚くほどのオーディオ的快感をあじわえた。
それが大型のスピーカーではなく、小型スピーカーゆえに音源が小さいということも、
オーディオ的快感を増していったのだが、だからといって、趣味性が高いといえるのか。
実用性の高いスピーカーではあったのではないだろうか。
AE2から、ほぼ30年後のA80ほどの実用性ではなかったのかもしれないし、
まだ趣味性も多少は感じていたのかもしれない。
それでも実用性に傾いていたスピーカーだったように思っている。