Archive for category DIATONE

Date: 1月 18th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その42)

雑共振、不要輻射をひとつひとつできるだけ抑えていく。
結果、確かに聴感上のSN比は、少しずつ確実に高くなっていく。

けれど、同時に、世の中に存在する、すべての物質には固有音がつきまとう。
どんなに高剛性で内部音速が速い素材であろうが、固有音から逃れることは出来ない。

その固有音が、いままで雑共振や不要輻射にマスキングされていたのだろうか、
ダイヤトーンでいえば DS5000の6年後に登場したDS-V9000は、より徹底した高SN比を実現したためであろう、
特にドーム型振動板に採用されたB4Cの固有の音が、際立って聴こえる。

これはビクターのZero-L10にもいえる。
やはりDS5000より3年後に登場した分だけ、DS5000よりも、高SN比化の手法が随所に見られる。
そして、その分だけ、やはりドーム型振動板のセラミック特有の音が、際立つようになった、と私は受けとめている。

いま思うと、DS5000は、なかなかバランスのとれたスピーカーだったのかもしれない。

そういえば、早瀬さんが、昔、吉祥寺に住んでいたときのスピーカーがDS5000だった。
意外に小さめな音量で鳴っていたように記憶している。
しかも、そういう音量でも、音が痩せるということはなく、余裕があって、静かに鳴っていた。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その41)

雑共振を抑えるだけでなく、不要輻射も抑えることで聴感上のSN比は、確実に向上していく。

振動板から出るより先に、スピーカーのフレームから音が出ることは以前書いたとおりだ。
フレームの表面処理も重要になってくるし、フレームをフロントバッフルに固定しているネジにも言える。
ダイヤトーンのDS10000、DS9Zのネジの頭にゴム製のキャップをかぶせていた。
ネジの頭の凹みから不要輻射を抑えるためである。このキャップにも、DIATONEの文字が入っていた。

ラウンドバッフルの採用も、不要輻射を抑えるためで、
DS5000は曲線ではないけれど、両サイドを斜めにカットすることで、鋭角な箇所をなくしている。

4343も、後継機の4344、4344 MkIIも、フロントバッフルはすこし奥に付いている。
その分、直角のコーナーが増えることになり、不要輻射の箇所も増しているわけだ。

4348が、音響レンズの採用をやめたのも、フロントバッフルも引っ込ませていないのも、
聴感上のSN比向上のためであろうし、実際に早瀬さんのところで4343Bと直接比較した際にも、
はっきりと、そのことが確認できたし、
おそらく今後JBLは音響レンズ付きのモデルを開発することはないであろう。

ダイヤトーンのスピーカーは、DS5000までは、フロントバッフルにレベルコントロールがついていたが、
その後に出た機種、DS1000から、レベルコントロールそのものがなくなってしまう。

レベルコントロールを廃したことに賛否あったが、これも不要輻射をなくすための手法である。
レベルコントロールのツマミも、そのまわりのパネル部分も雑共振と不要輻射の元である。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その40)

聴感上のSN比を高めるために、井上先生が4343に施されたことを一言で表せば、雑共振を抑えることである。

このことはダイヤトーンのDS5000やビクターのZero-L10を仔細に見ていけば、納得されるだろう。
ひとつひとつ具体例をあげていこうと思ったが、そうすると、この項がいつまでも終らないので省かせていただく。

それでもいくつかあげれば、吸音材はどちらもウール100%の天然素材だし、
エンクロージュアのどの部分を叩いてみても、雑共振を感じさせるところはない。
Zero-L10はドーム型振動板の保護用の金属網を着脱できるようになっていた。
ダイヤトーンもDS5000ではないが、DS1000あたりから鉄と銅の異種金属を使い、
少しでも影響を少なくしようとしていた。

異論もあるだろうが、スピーカーユニットの分割振動も、ある種の雑共振といえるだろう。

国内メーカーが、スピーカーの振動板に高剛性の素材を使いはじめたころから、
聴感上のSN比の向上が始まっていた、といえるし、
ピストニックモーションの追求は、SN比の追求でもあった。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その33)

DS5000について書くために記憶を辿っているうちに、ひとつ思い出したことがある。
おそらくDS5000が、バイワイヤリング対応の最初のスピーカーではないか、ということだ。

入力端子は2組あり、下がウーファー専用の端子、上がミッドバス、ミッドハイ、トゥイーター用の端子で、
上下の端子は金メッキが施された無酸素銅のバーで結ばれていた。

バイワイヤリング方式は、イギリスから始まったように言われているようだが、
少なくとも1982年にDS5000はバイワイヤリング方式を採用していた。

ただし当時は、バイワイヤリングという言葉がまだ使われていなかった。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その28)

ダイヤトーンが、アコースティックキューブと呼んでいたDK5000は、
カナダ産カエデを使い、ブロックを12分割したランバーコア構成にしたもので、
先に述べたように上部センターに無酸素銅のピンが打ち込まれている。
アクセサリーとして直径25mm、厚み1.6mmの無酸素銅のスペーサーが8枚ついている。

通常の銅よりも無酸素銅は振動の減衰が早い。
同じ直径、厚みのものを弾くと、チーンという音の鳴りの時間が無酸素銅は短いことからもわかる。

このスペーサーを利用することで、スピーカー底面への接触面積は減り、より自由な鳴り方になるとともに、
当然、この銅スペーサーの音も、わずかとはいえ、音にのる。

DK5000の後には、ヤマハからスペーサー・セットが発売された。
無酸素銅のスペーサーの他に、セーム革やフェルトなど、素材の異る円状のスペーサーの詰め合わせだった。

DS5000(DK5000)が登場した1982年ごろから、
置き台、スタンドに、専用のモノがぼつぼつ出てくるようになった。

セレッションのSL6も、木製の専用スタンドが用意されていたし、
SL600ではクリフストーンスタンドと呼ばれる鉄製で、パイプの中に石が詰め込まれたものになっている。
ダイヤトーンからも自社製ブックシェルフ・スピーカー用に、DK5、DK10などが用意されていた。
ビクターやヤマハからも、木製のスタンドが登場している。

それまでのキャスター付きの、間に合わせ的なつくりのモノから、
しっかりとしたつくりで、組み合せるスピーカーとのことを配慮しはじめたモノへと変化していっている。

そして国産4ウェイ・スピーカーで、1985年と遅くに登場したビクターのZero-L10には、
専用の置き台ST-L10が用意されていた。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その26)

4343とDS5000のいちばんの大きな違いは、ともにエンクロージュア底面も仕上げされたフロアー型だが、
DS5000には、DK5000という専用のベース(脚)が用意されていることだ。

フロアー型スピーカーだから床に直接設置して、それでいい音が得られるわけではない。
台輪(ハカマ)付きであっても、多少持ちあげて鳴らしたほうが好結果のことが多い。

床からの反射ということだけでなく、スピーカーと床との相関関係は、
スピーカーの重量が重く、エンクロージュア底部の面積が広いモノほど、密接なものとなる。
この関係をどう捉え、どうコントロールするかが、スピーカー設置、
特にフロアー型スピーカーの使いこなしの最大のポイントといえよう。

DK5000は一辺9cmの、良質の木の立方体のブロックで、上面センターに金属のピンが打ち込まれている。
8個1組のDK5000で、DS5000を4点支持、もしくは3点支持で持ちあげる。
アンプやCDプレーヤーもふくめて、3点支持だと音の輪郭がくっきりする傾向がある。
4点支持では、安定した、しなやかな音になる。

スピーカーの場合、床が完全にフラットのことは稀なため、
3点支持の方がガタツキなくセットしやすい。
4点支持だと、ガタつかないまでも、4つすべてのDK5000の上に、均等に荷重がかからないことが多々あり、
ひとつだけ手で容易に動かせてしまうものが出てきたりする。

そのままにしておくと、4点支持の良さは活きてこない。
なんらかのスペーサーを、床とDK5000の間に挿し込み調整する必要がある。
当然、スペーサーの素材によっても音は違ってくる。
私の経験では、和紙の使用がいい結果をもたらしてくれることが多かった。

最近では「レベラー」というコンクリートがある。
通常のコンクリートよりも、水のようにさらさらしたもので、
水は自然に水平が出るように、このレベラーも、流し込むだけいい。
ただし通常のコンクリートよりもかなり高価だけど。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その25)

DS5000が、4343を意識しているのは外形寸法の他に、ソニーのSS-G7、G9同様、
フロントバッフルに、ウーファーとミッドバス以上3つのユニットの間に、スリットをいれている。

もっとも4343の場合は、横向きで使うことを考慮して、
上3つのユニットを取りつけたバッフルの向きを90度変えられるように、
フロントバッフルを2分割したため生じたスリットだが、
DS5000は、エンクロージュア表面を伝わる振動をカットするためのスリットという違いはある。

この他にも違いはいくつもある。
ウーファーの位置も、4343がエンクロージュア下部ぎりぎりまで下げているのに対し、
DS5000のウーファーの位置はできるだけ上に取りつけようと、
他の3つのユニット配置も考慮されている。
4つのユニットは、4343と異りぎりぎりまで近接している。
おそらくこれ以上近づけたらフロントバッフルの強度が不足するのだろう。

レベルコントロールも、4343は、上3つの帯域がそれぞれ可変なのに対し、
DS5000はウーファーとミッドバスのレベルは固定され、ミッドハイとトゥイーターのみ可変だ。
これはDS505もそうで、ミッドバス帯域のレベル設定に自信があることの現われだろうし、
中低域再生能力を高めるための4ウェイ構成であると語っている。

DS5000の音は、ダイヤトーンのスピーカーの中で(すべて聴いたわけではないが)、
意外に新しさは少なく、そのかわり、もっともゆとりある音を聴かせてくれたように記憶している。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その24)

どこかに試作品っぽいところを残している4S-4002P、
4S-4002Pの経験を活かして、売れ筋の価格帯で腕試しをしたともいえるDS3000、
この2機種開発の経験があるからこそ、DS5000の完成度は高いものになっているといえよう。

いわば力作である。それを、なにも4343と同寸法に作ることはないではないか。
もっと自信をもって、最良と考えられるサイズにすればいいのに……、
それともあえて4343と同寸法という制約を自ら設けて、挑んだということか。

モノは試作品を経て製品になり、そして商品になることで完成する。
資本主義というよりも、商業主義の世の中では、製品のままでは、会社は成り立っていかない。

だから売るため売れるために、4343と同寸法にしたことも理解できないことはないといいつつも、
DS5000と同じようなユニット構成で、6年後(1988年)に登場したDS-V9000のエンクロージュアの寸法は、
W65.2×H108×D49.7cmで、4343よりも奥行きが長く、背が低くなっている。

だからDS-V9000の完成度は、DS5000よりも高い、と言えないところがスピーカーの面白いところだ。

DS-V9000のトゥイーターとミッドハイのドーム型ユニットの振動板は、新開発のB4Cである。
DS5000も、ボロンを採用しているが、
ダイヤトーンにとってボロンの採用はこれがはじめてではなく、DS505に搭載している。
その後、3ウェイのブックシェルフ型DS501にも使うなど、
DS5000開発時には、ダイヤトーン技術者にとって、ボロンは新素材ではなく、
手なれた素材だったのかもしれない。

DS-V9000は、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
DS5000とDS-V9000のあいだに、ダイヤトーンは、
DS1000やDS2000、これらのHR板、それにDS10000も開発している。
それらの成果が活きているのだろう、スピーカーとしては、DS5000よりも高性能になっている、
そんな印象とともに、新素材振動板の音が際立っているとも受けとめた。

Date: 12月 31st, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その23)

ダイヤトーンは、DS5000の5年前(1977年)に、フロアー型の4ウェイ・スピーカーを発表している。
ただしコンシュマー・モデルではなく、放送局用として開発されたモデルで型番も4S-4002Pと、
2S305の流れを汲むものとなっている。
40cm口径のウーファー(ハニカム振動板)、18cm口径のミッドバス(これもハニカム振動板)、
5cm口径のミッドハイ、トゥイーターのみドーム型で口径は2.3cm。
エンクロージュアはバスレフでも密閉型でもなく、ウーファーと同口径のパッシヴラジエーターを採用している。
そのため、かなり大型といえ、高さは133.6cm、重量は135kg。
上3つのユニットは両端にハンドル付きのサブバッフルに取りつけられている。
エンクロージュアのサイドはウォールナット仕上げにはなっているが、
全体的な雰囲気は素っ気無い、やや冷たい感じを受ける。

ステレオサウンド 45号のモニタースピーカー特集で取りあげられているから、
一般にも市販されたと思われるが、いままで見たことはない。

同じ4ウェイでも、4S-4002PとDS5000はずいぶん雰囲気が違う。
DS5000からは、つくり込まれているという印象が伝わってくる。

資料や写真のみでの判断するしかないが、
4S-4002Pは、とりあえず4ウェイ・スピーカーを作ってみました、という感じを、
(私だけだろうが)どうしても受けてしまう。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その22)

ダイヤトーンのDS505は見た目からして、
アラミドハニカムの振動板をウーファーとミッドバスに採用したとで、
それまで紙コーンが黒色に対して、山吹色といったらいいか、色合いからして、それまでと異る。
ミッドハイ、トゥイーターのドーム型も振動板とボイスコイルボビンを一体化したDUD構造とするなど、
いわばダイヤトーンとしての新世代のスタートを切るスピーカーでもあった。

それをブックシェルフ型で、価格も38万円(ペア)というところで出してきて、
市場の反応を見るというのが、日本のメーカーらしいといえよう。

DS505の音だが、実は一度も聴いたことがない。なかなか聴く機会がないまま、
ステレオサウンドで働くことになり、しばらくしたらDS5000が登場してきた。

ダイヤトーン新世代スピーカーの頂点にあたるモデルとして開発されたDS5000が、
ステレオサウンド試聴室に搬入されたとき、
ダイヤトーンの技術者が「4343が置いてあった場所にそのまま置けます」と言ったのをはっきりと憶えている。

4343の横幅は63.5cm、DS5000の横幅も63.5cmは同じで、
4343からの買い替えを狙って、この横幅に決定した、とのことだった。
奥行きは、4343が43.5cm、DS5000が46cmとすこしだけ大きいが、
4343はサランネット装着すると、奥行きは46cmくらいになる。
高さは、4343が105.1cm、DS5000が105cmと、徹底して4343を意識した寸法となっている。