Archive for category マッスルオーディオ

Date: 5月 23rd, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その12)

スピーカーの振動板はアンプからの信号によって振動する。
この振動によって発電もしている。

フレミングの法則からいっても、そうである。
そうやって起る電気のことを逆起電力という。

この逆起電力がスピーカーの音に影響を与えている。
そのため逆起電力をアンプ側で吸収するために、
パワーアンプの出力インピーダンスは理想をいえば0(ゼロ)でなければならない、
ダンピングファクターは高くなければならない──、
そういったことが昔からいわれている。

いまもダンピングファクターの値を気にする人が少なくないのに、驚くことがある。
数年前のインターナショナルオーディオショウの、とあるブースでオーディオマニアが、
ブースのスタッフと会話されているのが聞こえてきた。

ダンピングファクターに関する内容だった。
かなり高価なアンプを使われていること、オーディオのキャリアも長いことがわかる。
だから、この人でも、いまだにダンピングファクターの値にとらわれているのか、と驚いた次第だ。

話はさらにスピーカーの能率とダンピングファクターと関係に進んでいった。
その話の最後がどうなったのかは知らない。
私は、そのブースで見たいモノを見て、すぐに出ていったからだ。

スピーカーの逆起電力は、オーディオに興味を持ち始めたばかりのころ、ないのが理想だと思っていた。
でもスピーカーの動作原理上発生するものだから、なんとかキャンセルできる方法はないものだろうか。
そんなことを考えていたこともある。

でも逆起電力をなんらかの方法で完全にキャンセル(打ち消す)ことができたとしたら、
スピーカーの動作はどうなるのだろうか。

モーターを使った実験がある。
乾電池をつなげばモーターは回転する。
乾電池を外せばモーターはすぐに止るからといえば、しばらく廻っている。

ではモーターを瞬時に止めるにはどうすればいいか。
モーターをショートさせる。するとモーターはぴたりと止る。
つまりモーターが発生させている逆起電力によってブレーキをかけるからである。

スピーカーのインピーダンスをアンプの出力インピーダンスで割った値がダンピングファクターだから、
ダンピングファクターが高いということは、アンプの出力インピーダンスが低いということである。
ダンピングファクターが高ければ高いほど、出力インピーダンスは0に近づく。
0Ωでショートされる状態に近づくことになる。

Date: 5月 18th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その11)

もちろん6dB直列型の音が、バイアンプの音をすべての点で超えているわけではない。
バイアンプでなければ鳴らない(鳴らしにくい)音があるのは確かだ。

それでも6dB直列型ネットワークにしたときの音は、
これはこれでいい、といえるだけの説得力が確かにあった。
だからこそ「バイアンプにしましょう」という声があがらなかった、
と私は勝手に解釈している。

バイアンプの良さは、まずウーファーとアンプが直結されることにある。
クロスオーバー周波数が低いほど、コイルの値は大きくなり、
コイルのサイズも大きくなっていく。コイルの直流抵抗もその分増えていく。

コイルは銅線を巻いたもの。
値によって変るが銅線の長さはすぐに10mをこえる。
数10mになることも珍しいことではないし、場合によっては100mほどになることだってある(空芯の場合)。

よく言われることだが、
スピーカーの入力端子まで、スピーカーケーブルにどんなに高価なケーブルを使おうと、
もしくはできるかぎりスピーカーケーブルを短くしても、
スピーカー端子の裏側には、長い長い銅線をぐるぐるに巻いたコイルが、
ウーファーであれば直列に入っている。

それでもスピーカーケーブルを交換すれば、
スピーカーケーブルを短くすれば、音は変るけれど、
バイアンプ駆動にしてコイルを省けば、音の変化はもっと大きい。

一度コイルなしのウーファーの音を聴いてしまうと、やはりバイアンプ(マルチアンプ)か、と思う。
でも6dB直列型の音を聴いていると、そうは思わなかった。

この音が出るのなら、もっともっとこまかくチューニングを施していけば……、
そう期待できる音だった。

最終的にはバイアンプに目指すことになろうとも、
この音は、この音としていつでも鳴らせるようにしておきたい。

Date: 5月 18th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その10)

3月のaudio sharing例会で「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」をやった。
ここでは、マッキントッシュのMA2275の左チャンネルを低域に、右チャンネルを高域に割り当てた。
つまりバイアンプ駆動でネットワークは、アンプとユニットの間に介在していない。

ユニット構成はそのままでステレオにする場合、アンプをどうするのか。
もう一台ステレオアンプを用意して、モノーラル時と同じにバイアンプにするのか。
それともLCネットワークでいくのか。

理屈でいけば、もう一台アンプを用意してバイアンプ駆動にしたほうがいい。
それでも今回試したかったのは、
モノーラルからステレオへの移行期にオーディオをやっていたという仮定の元で、
どうステレオ化していくか、である。

LCネットワークで満足のいく結果が得られれば、それにこしたことはない。
けれどバイアンプとLCネットワークとでは経済的負担も違えば、
得られる結果も当然違う。

同じ結果が得られると考えること自体が間違っているわけで、
LCネットワークならではの良さがあますところなく発揮されれば、
どちらがいいということではなく、バイアンプもLCネットワーク、どちらもいいということになるし、
そういう結果をめざしていたからこそ、6dB直列型を試してみた。

結論をいえば、12dB並列型ネットワークの音だけを聴いていると、
やはりバイアンプにしたい、と思う。
一ヵ月前に、同じシステム(スピーカーの配置は違うが)で、その音を聴いているだけに、
よけいにそう思ってしまう。

6dB並列型にした音は、12db並列型よりもよかった。
それでも前回鳴らしたバイアンプの音を聴いていた人から「バイアンプにしましょう」という声があがった。

私もそれは同じだった。
けれどまだ6dB直列型の音が残っている。
この音を聴いてからである、バイアンプにするのかしないのかも。
実をいうと、バイアンプにするためのケーブル(フィルター内蔵)も用意していた。

このケーブルの出番はなかった。
6dB直列型の音は、そのくらいいい感じで鳴ってくれたからだ。
この音には、「バイアンプにしましょう」という声はあがらなかった。

Date: 5月 11th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(余談)

5月のmuscle audio Boot Campで、直列型ネットワークの音を聴かれた方が、
自分のシステムを、6dB直列型ネットワークにしたい、ということになった。

その方は熱心なジャズの聴き手。
JBLのD130、LE85+2345、075というシステムである。
現在使用されているネットワークはもちろんJBL製で、N1200とN7000である。

2345はカットオフ周波数800Hzのラジアルホーンだ。
LE85のクロスオーバー周波数は500Hz以上となっている。

N1200は型番からわかるように1200Hzのクロスオーバーである。
今回、これも変更してみたい、ということである。
800Hzの6dB直列型にしたい、という要望だ。

2ウェイであるならば、今回muscle audio Boot Campで使用したネットワークで、
そのままいけるわけだが、3ウェイである。

3ウェイの6dB直列型にするという手もあるし、
D130とLE85を直列型ネットワークでまとめあげ、
この2ウェイに対して075を、コンデンサーで低域をカットするという手で追加するという案もある。

JBLの純正ネットワークとつねに比較することができるだけに、
この依頼はひじょうに楽しみである。

結果については、何ヵ月後かに書く予定だ。

Date: 5月 9th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その9)

4月のaudio sharing例会では、まず喫茶茶会記で使用しているネットワークを使った。
12dB/oct.の800Hzのクロスオーバー周波数のものである。市販品だ。

アンプはマッキントッシュのMA2275のあとに、
First WattのコントロールアンプB1、パワーアンプSIT2に交換するなどの試聴の手順は、
(その1)に書いたとおりだ。

12dBの並列型ネットワークから6dB並列型ネットワークに変更。
このときの音の変化も大きく、
聴いていた人から「明るくなった」という声があった。

6dB直列型ネットワークは、どんな音を聴かせてくれたのか。
まず声がいい。これはみんなが感じていたことで、
5月のaudio sharing例会でも12dB並列型から6dB直列型にかえて、
声がよくなった、という感想が聴けた。

4月のaudio sharing例会では下がアルテックに上がJBLというシステム。
このシステムにも関わらず、聴いていて、ほんとうにJBLが鳴っているのか? と思っていた。

アルテックのA7やA5は、”The Voice of the Theatre System”の愛称で呼ばれる。
上がJBLなのに、これも”The Voice of the Theatre System”ではないか、とさえ思っていた。

短い時間での調整だから、下のアルテックと上のJBLがまったく違和感なく鳴ってくれるとは、
鳴らす前から考えてはいなかった。

12dB並列型から6dB並列型にネットワークをかえても、
少しは改善されてはいたが、この点に関しては気になってくる。
けれど6dB直列型では、ここが大きく変ってきた。

もちろん上はJBLだから、純正アルテックの”The Voice of the Theatre System”の音とはいわないが、
下のアルテックと上のJBLの馴染みが、いい感じで鳴ってくれるのだ。

たとえ同じブランドのユニットであっても、
ウーファーは紙の振動板でコーン型、
上はホーン型でアルミニウムの振動板で、形状はドーム型なのだから、
理屈で考えれば、ふたつのユニットがすんなりつながってくれるはずがない、といえる。

それでも時には、マルチウェイがひとつのユニットかのように鳴ることがあるのもわかっている。
6dB直列型ネットワークにすると、
ふたつのユニットのつながりが、有機的になったかのようにさえ感じられる。

音を出す前から、直列型ネットワークの良さは各ユニットのつながりにあると予想はしていた。
実際には私の予想以上のつながりの良さだった。

Date: 5月 1st, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(余談・その2)

JBL・4311のネットワークを並列型から直列型に変えるとしたら……。
スピーカーの教科書に載っているとおりにやる方法がまずある。

もうひとつウーファーだけを別に考える手もある。
4311のウーファーはネットワーク・スルーなのだから、
ネットワークを介しているスコーカーとトゥイーターを直列型にして、
ウーファーは、上ふたつのユニットと並列に接続する、というものだ。

どちらがいい結果を得られるかは、やってみないことにはわからないが、
スピーカーシステムのネットワークを考えていくのであれば、
並列型、直列型の優劣を決めてかかってしまうのではなく、
ふたつの方式を、うまく融合できるのであれば、そういう手もある、ということだ。

4ウェイのスピーカーシステムがあるとする。
このシステムのネットワークを、すべて直列型にしてしまう手もあるが、
直感的に思うのは、直列型の良さは2ウェイのときほど発揮されないような気もする。

もちろん試していないのだから、4ウェイ直列型ネットワークもいい結果を生む可能性はある。
それでも4ウェイのような大がかりなシステムとなると、
システムそのもののまとめ方も柔軟に対処していくことが求められるのではないだろうか。

例えば4ウェイのスピーカーシステムの代名詞といえば、
やはりJBLの4343である。

4343のネットワークを自分で設計するのであれば、どうしたいのか(試してみたいのか)。
4311のユニットはすべてコーン型だった。
4343は上のふたつの帯域はホーン型、下ふたつはコーン型。
振動板の材質も上ふたつはアルミ、下ふたつは紙。

こういうユニット構成だからこそミッドバスが重要なポイントであり、
コーン型ウーファーとホーン型とのあいだをとりもつ、ともいえる。

だからミッドハイとミッドバス、このふたつのユニットのネットワークを直列型とする。
ウーファーとトゥイーターは並列型ネットワーク。

つまりミッドハイ、ミッドバスをひとつのユニット(スコーカー)とみなして、
そこにウーファーとトゥイーターを並列型ネットワークで加え、レンジを拡大する。
こういうやり方も考えられる。

もうひとつ、ミッドハイとミッドバスの直列型は変えずに、
ウーファーとトゥイーターの関係を変えた上で、加える。

ウーファーとトゥイーターを直列型ネットワークでつなぐ。
ウーファーは300Hz、トゥイーターは9.5kHzをそれぞれのカットオフ周波数とする。
当然中抜けの、変則的な2ウェイである。

この中抜けを直列型ネットワークのミッドハイとミッドバスを受け持つ。
つまりミッドハイとミッドバスの直列型、
ウーファーとトゥイーターの直列型、
このふたつの2ウェイを並列にして接続する、というものだ。

Date: 4月 29th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(余談・その1)

実際に同じ部品、同じ定数で、並列型と直列型ネットワークの音を聴き、
こうやってそのことについて書いていると、
あのスピーカーのネットワークを直列型にしたら……、となんてことを夢想している。

なにもすべてのユニット構成において直列型ネットワークが、
いい結果を得られるとは考えていない。
そのうえで、あのスピーカーだったら、どのように直列型にしていくのか。
そういった細かなことも夢想している。

たとえばJBLの4311。
このスピーカーはよく知られるように、
ネットワークの部品点数をこれ以上減らせないところまで省略している。

ウーファーはネットワーク・スルー、
スコーカーはコンデンサーだけのローカット、ハイカットは省略している。
トゥイーターもスコーカー同様、コンデンサーだけのローカット。

ネットワークの部品点数はコンデンサー二つとレベルコントロールだけである。

この4311のネットワークを並列型ではなく直列型にしたら、
どういう音がしてくるのか。

こんなことを夢想しているとけっこう楽しいものであるし、
4311は特に楽しい。

Date: 4月 26th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その8)

直列型ネットワークは、文字通りスピーカーユニットを直列に接続する。
つまり2ウェイのスピーカーの場合、
ウーファーとトゥイーターのどちらを上側にするのか、ということになる。

上側(アンプ出力のプラス側)にウーファー、下側にトゥイーターとするのか、
上側にトゥイーター、下側にウーファーとするのか。

もちろん、これもバイワイヤリングと同じように最終的には音を聴いた上で判断する。
でも、ここでもその音を聴くためにはまず音を出さなければ、何も始まらないわけで、
ウーファーかトゥイーターのどちらかを上にしなければならない。

何を優先するのかが問われる、ともいえる。
同時に、バイワイヤリング対応のシングルワイヤリングにおいて、
片側(プラス側)をウーファー、反対側(マイナス側)をトゥイーターといった、
たすき掛けのような接続方法をとる人、
いいかえれば何かを優先するということができない人にとっては、
直列型ネットワークは眼中にない回路となるであろう。

Date: 4月 22nd, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その7)

バイワイヤリング対応のスピーカーシステムを一組のスピーカーケーブルで鳴らす場合、
どう結線するか。

下側のスピーカー端子(ウーファー用)にケーブルを接ぎ、
上の帯域の端子へはジャンパー線を介すか、
スピーカーケーブルの末端を通常よりも長く剥き、
ジャンパー線の代りも果すようにすることもできる。

これとは反対にスピーカーケーブルを上の帯域側の端子に接ぎ、
ウーファーへはジャンパーという方法がある。

おおまかにはこのふたつだが、
変則的なやり方として、
スピーカーケーブルのプラス側を上の帯域に、
マイナス側をウーファー側に(もしくはその反対)という接続もある。

音を聴いた上で、どの方法がいいのかは判断するわけだが、
その音を出すにはまず接続しなければならない。

上の四つのどれかの方法でスピーカーケーブルを接がないことには、
肝心の音がスピーカーから鳴ってこないのだから。

ここでどれで接ぐのか。
すこし大げさにいえば、その人の音の聴き方の一面がうかがえる。
トゥイーター側(上の帯域側)に接ぐ人もいれば、
片方をトゥイーター、もう片方をウーファーという、
私にいわせればどっちつかずのやり方の人もいるし、
ためらうことなくウーファー側に接ぐ人もいる。

何を優先しての結線なのか。
同じことは、実は直列型のネットワークでも問われる。

Date: 4月 20th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その6)

ステレオサウンド47号「続・五味オーディオ巡礼」を何度も読み返していた高校一年だった私は、
スピーカー内蔵ネットワーク方式で、マルチアンプのよさを出すには……、
反対にマルチアンプ・システムでネットワーク方式のよさも出すには……、
そういうことを考えていた。

多くの人が考えるように、
トゥイーター用のローカットフィルターとウーファー用のハイカットフィルターの干渉を、
どれだけ抑えられるか、について考えていた。

1980年ごろになると国産スピーカーの中に、
ネットワークをエンクロージュア内で分離させているモノが登場してきた。

エンクロージュアの裏側にある入力端子、
この端子の裏側で2ウェイならば二組、3ウェイならば三組のケーブルが、
それぞれのユニットのネットワーク(フィルター)までのびている、というようにだ。

国産のスピーカーシステムで、バイワイヤリングを最初に採用したモデルはどれなのだろうか。
私が見て聴いた範囲では、
ダイヤトーンのフロアー型システムDS5000(JBL・4343と同じ寸法の4ウェイ・システム)だった。

そのころはまだバイワイヤリングという言葉はなかった。
バイワイヤリング方式そのものは、東芝が実用新案をとっていたと、ずいぶんあとになって知った。

エンクロージュア内部でネットワークをそれぞれの帯域ごとに分離させているのであれば、
それをエンクロージュアの外側までのばしていったのが、いわゆるバイワイヤリングの考えである。

バイワイヤリング対応のスピーカーを、
シングルワイヤリングからバイワイヤリングにすれば、ほとんどの場合、音の分離は向上する。
バイワイヤリングでこれだけの効果が得られるのならば、
3ウェイではバイ(二組)ではなく三組に、4ウェイでは四組のスピーカーケーブルで、
アンプと接続できるようにすれば、バイワイヤリングよりもさらに音の分離はよくなる……、
誰もがそう考えるであろう。

私もそう考えた。
JBLの4343のネットワークを回路定数はそのままで、
各帯域ごとに(つまり四つに)分離して、スピーカーケーブルも四組使う、
そんな接続で鳴らしたら……、
4ウェイのマルチアンプ(四組のパワーアンプ使用)とまではいかなくとも、
バイアンプ(二組のパワーアンプ使用)と同等か、
うまくすればもっといい音が得られるのではないか。

そんな都合のいいことを想像していた時期がある。

けれどステレオサウンドの試聴室で、さまざまなバイワイヤリング対応のスピーカーを、
シングルワイヤリングとバイワイヤリングでの音の違いを体験していくうちに、
バイワイヤリングが、シングルワイヤリングよりもすべての面で優れているわけでないことにも気づく。

そのころになって、ようやく直列型ネットワークのことを思い出すにいたる。

Date: 4月 13th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その5)

ステレオサウンド 47号の「続・五味オーディオ巡礼」。
最後まで読めば、4ウェイのバイアンプ(マルチアンプ)による音を認められている。
ほぼ絶賛といってもいい書き方だ。

《仮りに私が指揮を勉強する人間なら、何を措いてもこの再生装置を入手する必要がある、と本気で考えていたことを告白する。》
とまで書かれている。
さらに《エレクトロニクスが技術で到達した現代最高のそれは音だと痛感したことを》
とも書かれている。

しかも、この4ウェイ・システムはJBLのそれだ。
アンプもすべてトランジスターである。

「続・五味オーディオ巡礼」を何度もくり返し読んだのは、
ここのところにもある。

やはり究極的にはマルチウェイ、マルチアンプ・システムなのか……、とも思ったし、
ハーモニーの拡がりにおいても、そうであろう、と。

でも五味先生は最後の最後に書かれている。
《4350が指揮者の位置なら、拙宅のはコンサートホールの最も音のいい席で聴いている感じがする。細部の鮮明さは到底4350にかなわないが、演奏会場の空間にひろがるハーモニイの美は、あやまたず我が家のエンクロージァは響かせている。》

《演奏会場の空間にひろがるハーモニイの美》、
これはオーケストラと指揮者がいるステージ上に拡がるハーモニーと同じとは限らない。

Date: 4月 11th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その4)

オーディオマニアである以上、マルチアンプシステムにできるだけ早く挑戦してみたい、
そんなふうに高校生のころの私は思っていた。

HIGH-TECHNIC SERIES-1は、そんな私に、マルチアンプシステムこそが……、と思わせてくれた。
けれどこのHIGH-TECHNIC SERIES-1から約半年ほど経ってから、ステレオサウンド 47号が出た。

巻頭に「続・五味オーディオ巡礼」が載っている47号である。
     *
 言う迄もなく、ダイレクト録音では、「戴冠式」のような場合、コーラスとオーケストラを別個に録音し、あとでミクシングするといった手はつかえない。それだけ、音響上のハーモニィにとどまらず、出演者一同の熱気といったものも、自ずと溶けこんだ音場空間がつくり出される。ボイデン氏の狙いもここにあるわけで、私が再生音で聴きたいと望むのも亦そういうハーモニィだった。どれほど細部は鮮明にきき分けられようと、マルチ・トラック録音には残響に人工性が感じられるし、音の位相(とりわけ倍音)が不自然だ。不自然な倍音からハーモニィの美が生まれるとは私にはおもえない。4ウェイスピーカーや、マルチ・アンプシステムを頑に却け2ウェイ・スピーカーに私の固執する理由も、申すならボイデン氏のマルチ・トラック毛嫌いと心情は似ていようか。もちろん、最新録音盤には4ウェイやマルチ・アンプ方式が、よりすぐれた再生音を聴かせることはわかりきっている。だがその場合にも、こんどは音像の定位が2ウェイほどハッキリしないという憾みを生じる。高・中・低域の分離がよくてトーン・クォリティもすぐれているのだが、例えばオペラを鳴らした場合、ステージの臨場感が2ウェイ大型エンクロージァで聴くほど、あざやかに浮きあがってこない。家庭でレコードを鑑賞する利点の最たるものは、寝ころがってバイロイト祝祭劇場やミラノ・スカラ座の棧敷に臨んだ心地を味わえる、という点にあるというのが私の持論だから、ぼう漠とした空間から正体のない(つまり舞台に立った歌手の実在感のない)美声が単に聴こえる装置など少しもいいとは思わないし、ステージ——その広がりの感じられぬ声や楽器の響きは、いかに音質的にすぐれていようと電気が作り出した化け物だと頑に私は思いこんでいる人間である。これは私の聴き方だから、他人さまに自説を強いる気は毛頭ないが、マルチ・アンプ・システムをたとえば他家で聴かせてもらって、実際にいいと思ったためしは一度もないのだから、まあ当分は自分流な鳴らせ方で満足するほかはあるまいと思っている。
     *
HIGH-TECHNIC SERIES-1には、瀬川先生の、フルレンジから出発する4ウェイ・システム構想も載っていた。
どのフルレンジユニットから始めて、どう4ウェイまでいくのか、
マルチアンプへの移行はどの時点で行うのか、
そんなことをHI-FI STEREO GUIDEをみながら、あれこれ空想していたころに、
47号の五味先生の、この文章である。

そうなのか……、と思ってしまう。
まだマルチアンプの実際の音を一度も聴いたことのない高校生である。
もし聴いていたとして、その音が優れなかったとしても、
それは調整に不備があってのことで、マルチアンプシステムそのものを疑わなかったであろう、
そんな私も、47号の五味先生の文章によって、考えをあれこれめぐらせるようになった。

Date: 4月 9th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その3)

1977年に出版されたラジオ技術選書「スピーカ・システム(山本武夫 編著)」にも、
直列型ネットワークの記述がある。
そこには、こう書いてあった。
     *
直列型と並列型は2ウェイ構成で、負荷が完全な定抵抗であればおなじ遮断特性が得られます。しかし3ウェイの場合には、中音スピーカ用のバンドパス・フィルタの低域カットと高域カットの二つのクロスオーバ周波数が接近していると、相互の影響が現われ正しい特性が得られません。クロスオーバ周波数を2kHzと5kHzとしたときの特性例を図9−15に示しますが、並列型と直列型では特性が異なります。
     *
図9-15をみると、直列型と並列型とでは特性に違いがあることが確認できる。
それに「負荷が完全な定抵抗であれば」ともある。
実際にはスピーカーユニットは定抵抗とは呼べないインピーダンス特性をもつ。
ということは、直列型と並列型で同じ遮断特性が得られるわけではないことは、
すでに伝わってくるし、
スピーカーユニットが並列なのか直列なのかによっても、
インピーダンス特性に違いが生じるであろうことは予測できる。
となると、実際のスピーカー動作時の遮断特性は、
並列型と直列型とでは違いが大きくなっている……、そう誰もが考える。

私もそう考えた。
それに「スピーカ・システム」を読んだころは、
ステレオサウンドからHIGH-TECHNIC SERIES-1が出ていた。
マルチアンプをとりあげた一冊だ。

マルチアンプシステムを、ひとつの理想として考えれば、
ネットワークの方式として並列型と直列型とでは、並列型のほうがよく見えてくるというものだ。

この時点では、私の中には、マルチアンプシステムとスピーカー内蔵のネットワークを、
別のものとして考えるという発想が、まだなかった。
だから、よりマルチアンプシステムに近いのはどちらか、という視点でしか、
並列型ネットワークと直列型ネットワークの違いを捉えていなかった。

Date: 4月 8th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その2)

私がオーディオに興味をもったころのスピーカー関係の技術書には、
ネットワークの説明のページには、並列型と直列型の回路図が載っているものが多かった。

並列型、直列型というのは、アンプから見たユニットの接続の違いによる。
2ウェイの場合、ウーファーとトゥイーターが並列に接続されていて、アンプとユニットのあいだに、
ネットワーク(ハイカットフィルターとローカットフィルター)が挿入されている。

直列型はウーファーとトゥイーターが直列に接続されている。
ネットワークを構成するコンデンサーとコイルは、
6dBスロープの場合は、ウーファーに対してコンデンサーが、トゥイーターに対してコイルが並列に接続されている。
並列型の場合はウーファーに対してコイルが、トゥイーターに対してコンデンサーが直列になっている。

ようするにコンデンサー、コイルの接続ではなく、
スピーカーユニットの接続がアンプ側から見て並列なのか直列なのかである。

たとえばトゥイーターを複数個、ウーファーをダブルにする場合など、
ほとんどの場合は並列接続をする。
直列接続にする人はそう多くないであろう。

ユニットの直列接続は、並列接続よりも音が悪いという印象がなんなとくあるのではないだろうか。
ユニットの複数使用は、それぞれのユニットをできるだけ同じ条件で鳴らしたい、とまず考える。
そうなると必然的に直列よりも並列に接続した方が、
ふたつのユニットの条件は揃ってくる。

これはウーファー同士、トゥイーター同士の話である。
ましてウーファーとトゥイーターという、まったく別のユニットを直列に接続することは、
そこに技術的メリットは感じとりにくい。

並列型ネットワークであればバイワイヤリングが可能になる。
ウーファー用のハイカットフィルターと、トゥイーター用のローカットフィルターを分離させることで干渉を抑え、
ウーファー空の逆起電力の影響をトゥイーターが受けにくくなる、などの説明がされている。

直列型のネットワークは、バイワイヤリングはできない。
ユニットが直列になっているからだ。
つまりウーファーとトゥイーターの干渉は、並列型のネットワークよりも増すと考えられる。

スピーカー関係の技術書で直列型ネットワークの回路図を見て、
なぜこんな回路があるんだろうか……と疑問を感じたし、並列型ネットワークが優れているとしか見えなかった。

Date: 4月 7th, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(番外)

muscle audio Boot Campの開始は夜七時からなので、
その前に喫茶茶会記に到着して準備をする。
昨日もそうやっていた。
セッティングが終り、確認のための音を出すと、左チャンネルの2441が鳴っていない。
ユニットは問題ないことは確かめた。
となるとアッテネーターのAS10ということになる。

接続は何度も確かめた。間違っていない。
このAS10は未使用のモノだ。
30年以上使われていなかったモノだ。

元箱におさまって保管されていたモノだから、外観は新品そのもの。
なんの問題もなさそうである。
右チャンネルに割り当てたAS10は問題なく動作している。

接点不良とも思えず、それでもスイッチ類を何度か動かしてみるけれどまったく音が出ない。
アッテネーターがないと、ウーファーの416-8Cよりも2441の出力音圧レベルが高いから、
かわりのアッテネーターが必要となる。

秋葉原に行って調達することも考えた。
それでも動くはずだ、という革新めいたものもあったため、
一度結線を外してもう一度接続してみた。

たったこれだけなのに、なんの問題もなくすんなり音が出た。
一安心だ。

音がでなかった理由は、はっきりとしない。

このAS10は岩崎先生が所有されていたモノだ。
なので、扶けてくれたのかも……、と勝手におもっている。