Archive for category 数字

Date: 6月 5th, 2018
Cate: 数字

300(その9)

テープスピードの違いによる音の変化。
38cm/secの剛から、76cm/secの柔。

こんなことを思われる人はいないだろうが、
テープスピードが38cm/secよりも遅くなったら、もっと剛の音になるかといえば、
もちろんそんなことはない。

カセットテープの音を、私は以前、ふわふわして、どこか頼りない、
不安定さを感じる──、そんなふうに書いた。

2トラック3/cm/secからすると、
カセットテープは、この狭いテープ幅で4トラック、
テープスピードもそうとうに遅い。

それが9.5cm/secのオープンリール(4トラック)になると、
音は安定の方向を示しはじめる。

19cm/sec(4トラック)になれば、さらにしっかりとしていき、
同じテープスピードであっても2トラックになれば、トラック幅が約二倍になり、
このへんからようやくオープンリールテープらしい音を聴かせてくれるようになる。

カセットテープも、私が知る以前の音は、もっと頼りない感じの音だった(ときいている)。
カセットテープとデッキは、日本のオーディオメーカーが、ほぼ極限まで進歩させてきた、といえる。

メタルテープで、各社の代表的なカセットデッキでの音は、
4トラック19cm/secのオープンリールの存在をおびやかしそうなくらいのクォリティでもあった。

オープンリールの音は、だから2トラック19cm/secから、といえる。
その19cm/secから倍の38cm/secになると、オープンリールの音のひとつの極点なのかもしれない。

より安定して、確かに剛と表現したくなる音を特徴とする。
それがさらに倍の76cm/secとなると、柔となるというのは、実に興味深い。

4トラック19cm/ces以下の音は、どこか頼りなくふわふわしている。
剛とはいえない音であるが、でもそれは柔といえる音では決してない。

Date: 6月 1st, 2018
Cate: 数字

300(その8)

ステレオサウンド 44号の音楽欄、
「東芝EMIの〈プロ・ユース〉シリーズとTBMの〈プロフェッショナル・サウンド〉シリーズを試聴記」
という記事を、井上先生が書かれている。

プロ・ユースシリーズ五枚、
プロフェッショナル・サウンドシリーズ三枚のレコードについて、
それぞれ紹介されていて、
TBMの「MARI」についての文章のなかに、
テープスピードの違いによる音について書かれている。
     *
一般的に、38センチを剛とすれば、76センチは、むしろ柔である。テープらしいガッチリとして引締まり、パワフルな音が2トラック38センチの音の特長だが、76センチとなると、低域は豊かに伸びやかであり、中域以上も滑らかで、より細やかでナチュラルになるのが普通である。
     *
これはかなり意外だった。
44号は1977年に出ている。
このころの私は38cm/secの音も、まだ聴いていない。

76cm/secは、38cm/secの倍である。
つまり剛の二倍である。

剛(ごう→五)の二倍は柔(十)、
たしかにそうだな、と高校生だったにも関らずオヤジギャグ的なことも思っていた。

マッキントッシュの一連のシリーズもそうではないか。
300WのMC2300が、ちょうど38cm/secのテープスピードの音にあたる。
600WのMC2600が、76cm/secの音である。

井上先生が76cm/secの音について書かれていることは、
そのままMC2600の音にあてはまる。
《低域は豊かに伸びやかであり、中域以上も滑らかで、より細やかでナチュラル》、
MC2300からMC2500を経てのMC2600への音の変化も、まさにこれである。

Date: 6月 1st, 2018
Cate: 数字

300(その7)

300WのMC2300は、500WのMC2500になり、
MC2500のブラックパネル(内部も改良されている)、
さらに600WのMC2600にまで発展していった。

パワーアンプとしても、MC2300よりもMC2500、
MC2500のシルバーパネルよりもブラックパネル、
そしてMC2600と優秀になっていっている。

MC2600はMC2500の系譜にあたる音(アンプ)である。
MC2300とMC2500(シルバー)、
MC2500(シルバー)とMC2500(ブラック)、
MC2500(ブラック)とMC2600の比較試聴はしているが、
MC2300とMC2600とは比較試聴したことはない。

その機会があったとしても、印象は大きくは変ってこない、と思う。
MC2300から始まった、このシリーズは派ワーを増すごとにしなやかさに身につけている。
柔軟になってきた、ともいえる。

こんなふうに書いてきて気づくのは、オープンリールデッキのテープスピードのことである。
一般的に19cm/sec、38cm/sec、76cm/secがある。
76cm/secの音を聴いたことがある人は、ごくわずかだろう。
私もない。

19cm/secと38cm/secは何度も聴いているし、
このふたつのテープスピードによる音の違いも、まったく知らないわけではない。

19cm/secから38cm/secになったときの音から、
38cm/secから76cm/secになった音を想像すると、見当はずれになるようだ。

井上先生は、38cm/secの音を剛とすれば、
76cm/secの音は柔である、と表現されている。

Date: 5月 29th, 2018
Cate: 数字

300(その6)

C27は、コントロールアンプとして必要な機能を、
最小限といってもいいトランジスターの使用数で実現している。

MC2300は、開発当時としては大出力であり最高出力といえる300Wの実現のため、
その時代のアメリカの製品らしく、惜しみなく物量を投入した結果のトランジスターの使用数である。

まったく対照的な設計思想といえるアンプが、
同じメーカーから登場しているわけだ。
それだけに音の傾向も、大きく違う。

私がMC2300の音を聴いたころには、
他のメーカーからも300W級のハイパワーアンプは登場していた。
MC2300を聴く前に、それらのアンプのいくつかを聴いている。

それでもMC2300の音は、衝撃だった。
暴力的といいかえてもいいように感じた。

300Wというスペック的には同じパワーであっても、
瀬川先生が書かれているとおりに、
《その底力のある充実したサウンドは、並の300W級が色あせるほどの凄みを感じさせる》。

MC2500の500Wは、その点、ソフィスティケートされている。
アンプとしても、MC2300よりもずっと優秀になっている。

よほどの低能率のスピーカーと組み合わせるのであれば、
500Wという出力の大きさが活きてこようが、
90数dBクラスのスピーカーであれば、
300Wと500Wの違いは感覚的には感じとりにくいどころか、
むしろMC2300の300Wのほうが、音と対峙する世界といえるほどに衝撃的である。

MC2300とMC2500、
SAEのMark 2500とMark 2600、
どちらにおいても、300Wのほうに、私は惹かれてきた。

Date: 5月 29th, 2018
Cate: 数字

300(その5)

真空管時代からアンプメーカーであったマッキントッシュでも、
それだけ歴史が長いだけに、真空管アンプよりも半導体アンプの数が多い。

すべてのマッキントッシュのアンプを聴いているわけではないが、
数あるマッキントッシュの半導体アンプのなかで、
いまも欲しいと思うのは、コントロールアンプならばC27、
パワーアンプならばMC2300の二機種である。

といってもC27とMC2300を組み合わせて鳴らそうとは、まったく思っていない。
コントロールアンプ単体としてC27に、
パワーアンプ単体としてMC2300に、それぞれに違う魅力を感じている。

C27はパネルフェイスと型番からわかるようにC26の改良型ともいえる。
C28の改良型のC29が登場したためだろうか、C27はあまり注目されてこなかったように感じている。

《現代アンプの純度とは異なった、井戸水の自然さを感じさせる音だ》
井上先生が、ステレオサウンド 47号に書かれている。
この簡潔な文章のとおりの音がする。

マッキントッシュらしからぬみずみずしい音がする。
C27は、アンプ部(片チャンネル)のトランジスターの数は八石である。
イコライザーアンプ、トーンコントロールつきのラインアンプ合せての八石である。

トランジスターの数が少ないから、シンプル・イズ・ベストでみずみずしい音が聴ける──、
などとは思っていないが、1978年登場のアンプとしては、思い切った回路構成といえる。

MC2300は、そういうわけにはいかない。
回路図を見ていないのではっきりしたことはいえないが、
出力段のパワートランジスターの数だけで八石を上回ってそうである。

MC2300の音は、まったくみずみずしくない。

Date: 5月 28th, 2018
Cate: 数字

300(その4)

アキュフェーズのM60は、M100になり出力は500Wに、
マッキントッシュのMC2300もMC2500になり、出力は500Wに、
SAEのMark 2500は2600になり、400Wへとなっていった。

ラックスのM6000は、出力180WのM4000がM4000Aになったけれど、
なぜかM6000Aは発表されず製造中止。

300W超えのパワーアンプは、いくつか登場してきた。
ローテルのRB5000(500W)、ソニーのTA-N9(450W)、テクニクスSE-A1(350W)、
アムクロンのM600(600W)、GASのGODZiLLA AB(350W)、マランツのSm1000(400W)、
フェイズリニアの700SII(360W)、D500SII(505W)、SUMOのThe Power(400W)などである。

そうなってくると出力300Wという数字も、特別な数字ではなくなってくるわけだが、
たとえばSAEのMark 2500とMark 2600。
音で選ぶなら、Mark 2500である。

外観は型番表記の2500と2600ぐらいの違いしかないが、
内部をみると、まず電源トランスがEIコア(2500)とトロイダルコア(2600)の違いがある。
基本的なコンストラクションは同じでも、細部までまったく同じでもない。

回路は2500も2600も同じはずで、
それでも出力が100W増したのは、もともと電源部に余裕があったため──、
そんな説明もされていたが、音が変らずに出力だけアップというわけにはいかなかった。

他のメーカーのアンプとの比較では、MArk 2500もMark 2600も、
ほぼ同じ音のアンプということになるけれど、
2500と2600を比較すれば、わずかとはいえ音に違いはあって、
私はMark 2500の方をとる。

こうなってくると、私のなかでは400Wという出力が、妙に中途半端なところに位置づけされる。
瀬川先生は出力の増大は、できれば2倍、最低でも1.4倍にならないと、
パワーの余裕は感じとりにくいといわれていた。

300Wの1.4倍は420W。
Mark 2600の400Wはぎりぎりの値でもある。
その点、マッキントッシュのMC2300は、2500になって500Wになっている。
1.66倍である。

ではMC2300とMC2500だったら、MC2500を選ぶかというと、
オーディオはそこが微妙であって難しい。

以前書いているので、理由は省くが、私はMC2300に魅力を感じる。
もちろんパワーアンプとして優秀なのはMC2500なのはわかっていても、だ。

Date: 5月 27th, 2018
Cate: 数字

300(その3)

当時のステレオサウンドのパワーアンプのリファレンスは、
マランツのModel 510Mである。

このパワーアンプの出力は256W。
250Wでもなく260Wでもなく、256Wという数字。

このくらいの値になると、そのへんの違いが聴感上わかるかというと無理であろう。
それに256Wと300Wのアンプがあって、
回路構成、コンストラクション、使用パーツも同じというアンプが仮にあったとしても、
出力の余裕が、どれだけ聴きとれるかはなんともいえない。

それに300Wという出力がほんとうに必要なのか。
SAEのMark 2500を常用されていた瀬川先生は、
ステレオサウンド 43号に《日頃鳴らす音量は0・3W以下》と書かれている。

このころのスピーカーの出力音圧レベルは90dB以下は低能率といわれていた。
93dBでも低い、といわれがちであった。
4343がカタログ上では93dB/W/m、タンノイのArdenが91dB/W/mだった。
それでもいまの平均的な出力音圧レベルよりは高い。

いまならば300Wくらいは必要という人も増えているだろうが、
当時は300Wという値は、ほんの一瞬のピークのためのものでもあった。

その、ほんの一瞬のピークも、すべての人が求めていたわけではなく、
割合としてはそう多くはなかったはずだ。

それはスーパーカーの300km/hというスピードとて同じことだろう。
カウンタックが仮に300km/h出せたとしても、いったいどこで出せるのか。

ならば、カウンタックの実際の最高速度が300km/hを切っていたとしても、
それに近い速度は出せたはずであって、たいした差はないと思う。
それでもやはり300という数字のもつ魅力というか、
単なる数字であって、そこまで出せる人なんてほんのわずかしかいないのはわかっていても、
カウンタックの速度にしても、アンプの出力にしても、
どちらもパワーであるかぎり、ロマンのようなものを感じてしまう。

Date: 5月 27th, 2018
Cate: 数字

300(その2)

そんな中学生のころ、時速100kmというのは、
高速道路でのスピードであって、
アンプの出力が100Wというのも、同じ感覚として受け止めていた。

時速200kmというのは、当時体験したことはなかった。
初めて新幹線に乗ったのは数年後だし、
いくら高速道路とはいえ時速200kmまで出す人はいなかった。

これとリンクするように、200Wの出力はさらなる大出力という領域に感じていたし、
その上の300W(300km)ともなると、最高出力(最高速度)という感覚であった。

地上で最も速いスピードとしての300km/h、
アンプで最も大出力といえる300W。
当時は、誇張なくそんな感じだった。

セパレートアンプともなると100Wの出力はそう少なくはなかった。
200Wになると、やはり数は減る。
300Wの出力ともなると、1977年でもそう多くはなかった。

300Wが珍しくなくなりつつあったけれど、
まだまだそれほど多くのアンプがあったわけではない。

アキュフェーズのM60(300W)、エトーンのExcellent Power Amp(1000W)、
ラックスのM6000(300W)、サンスイのBA5000(300W)、マッキントッシュのMC2300(300W)、
SAEのMark 2500(300W)ぐらいである。

エトーンのExcellent Power Ampは、
高さ170cmの19インチラックに収められたモノーラル管球式OTLアンプで、
重量は98kgで、消費電力は無信号時で800W(一台)、
価格は3,900,000円(一台)という規格外の製品で、A級動作でも300Wの出力をもつ。

これを別にすれば、300Wは上限の出力だった。

Date: 5月 27th, 2018
Cate: 数字

300(その1)

私にとって、スーパーカーの代名詞といえば、
ランボルギーニのカウンタックである。

中学生のころに盛り上っていたスーパーカーブーム。
ホンモノを見たい、と思ったのはカウンタックだった。

カウンタックを初めて見たのは、
走っているところを見たのは、東京に来てからだった。

知人で、車にまったくうとい男がいる。
私より10くらい若い。
知人は、ランボルギーニのクルマをみかけると「カウンタックだ」という。

笑い話だけれど、知人にとってもカウンタックは、どうも特別な存在のようである。

カウンタックは、いまでも憧れのクルマであり、東京にいると年に一回くらいは、
いまでも見かけることがある。

カウンタックが、いまでも特別な存在なのは、
そのデザインだけではなく、最高速度が300kmだということもある。

クルマに詳しくない私は、ずいぶん後になってカウンタックは300km出ないことを知るわけだが、
それでもカウンタックと300という数字は切り離せない。

中学二年のころ、オーディオに夢中になった。
オーディオの世界で、300という数字は、パワーアンプの出力にすぐに結びつく。

当時は100Wを超えると大出力という感じだった。
100Wを超える出力のプリメインアンプも、そう多くはなかった。

アキュフェーズのE202(100W)、ラックスのL100(110W)、パイオニアのSA9900(110W)、
ローテルのRA1412(110W)、サンスイのAU1000(110W)、AU1100(110W)、AU20000(170W)、
トリオのKA9300(120W)、ビクターのJA-S20(12W)、
ヤマハのCA1000III(100W)、CA2000(120W)、マランツのModel 1250(130W)、
このくらいである。

このころ200機種近いプリメインアンプがあって、そのうちのこれくらいである。
マッキントッシュのMA6100も70Wだった時代である。

Date: 1月 17th, 2017
Cate: 数字

数字からの解放(その6)

別項を書くためにステレオサウンド 131号を、ここ数日手元に置いている。
パラパラとめくって、目に留った記事を読む。

勝見洋一氏の「硝子の視た音」を読んでいた。
     *
 こんなことで気分のすぐれない日々を送っていたら、フランスの美術館から写真の束が送られてきた。
 以前、私の本業である美術品の鑑定を受けた美術館からなので、興味深く写真を見つめてびっくりした。
 ほとんどが偽物である。
 写真を見ただけではっきりと判るくらいなのだから、よほど性質の悪いものなのだ。
 てっきり偽物美術展を冗談まじりでやるのかと思ったら、大まじめ、近ごろの鑑定人たちも質が落ちたものだ。
 写真と一緒に分厚い資料があった。中を見るとコンピューターを使った鑑定方法ばかりの結果だった。なるほど、原因はこれである。
 昔ならばその道の権威が自分のプライドをかけて良いといえばそれで済んでしまったことである。もし間違えれば世間で笑いもの。美術館の展覧会の鑑定を引き受けるということは真剣勝負そのものだった。
 ではなぜコンピューターによる鑑定が基本的な間違いを起こすのだろうか。これは単純な話である。
 コンピューターに入れたデータの上をいく偽物が増えてきたのだ。
 しかしコンピューターをだますために作られているのだから、経験のある人間の眼をだますためには作られていない。ひどくめちゃくちゃな偽物が、コンピューターの結果で本物になってしまう。まあそれ以上に、見る目がなくなった若い鑑定人たちが増え過ぎたということが原因なのだが、と言って溜飲を下げるのである。
     *
131号は1999年の夏号だ。
18年ほど前に出ている。

ここまでインターネットは普及していなかった。
個人のウェブサイトも数はそう多くはなかった。
SNSもなかった時代だ。

そのころ読んだ感想と、いま読んだ感想とでは、その点が違っている。
131号が出て以降、インターネットは急速に普及して、
さまざまな面をディスプレイを通して伝えてくる。

勝見洋一氏の文章は、そのままオーディオにいえることだ。
このことを強く感じている。

当時でも、測定結果・数値のみに拘泥する人たちはいた。
でも、それほどとは思っていなかったが、
インターネットの普及は、意外にもそういう人たちが少なくないことを伝えている。

Date: 7月 13th, 2014
Cate: 数字

数字からの解放(その5)

測定で得られるものとは、いったい何なのか。

歪率を測る。
そこで得られた値をグラフに表示する。
もしくは数字でカタログに載せる。

世の中には測定値に変化がなけれは、さらにはほぼ同じであれば音は変らない、という人がいる。
オーディオは科学技術の産物で、スピーカーよりも特にアンプはそうである。

そのアンプを比較するときに、測定結果が似たようなものであれば、音に違いはない、ということである。
そんなに簡単なことであるならば、アンプはとっくに完成形に至っている、といえる。
けれど実際には、まだまだそこには遠く至っていない。

測定値が……と主張する人は、測定で得られる数値が、質を直接的に表していると勘違いしているのではないか。
歪率が良ければ、それは質の高さ・良さを保証していることになるだろうか。

歪率が良いとは歪が少ないことであり、
歪率が悪いとは歪が多いことであり、
つまりは歪の多い少ない、量を表していることになる。

これが歪波形をオシロスコープで表示して、それを写真におさめたものとなると、
そこでは量とともに質に関係してくることを読みとることができないわけではない。

だが歪率を数字で表している以上、そこでの比較はあくまでも量にとどまる。

量と質は、必ずしも切り離せるものでないことはわかっている。
それでも、測定で得られる数字はどこまでいっても量である。
歪率だけではない、S/N比も、
ノイズの多い少ないであり、そこでのノイズの質(しつ・たち)を表しているとは言い難い。

Date: 12月 31st, 2013
Cate: 数字

100という数字(その7)

でかい音を、どう表現するか。

でかい音を聴いたことのある人が、その時について話す時に注意してきいていると、
あの音圧はスゴかった、と音圧で表現する人もいるし、
あの音量にはまいった、と音量で表現する人もいる。

意識して音圧と音量を使い分けているとは思えないからこそ、
ここでの音圧と音量の、いわば無意識の使い分け(というよりも選択というべきか)は、
おもしろいと思うこともある(そうでないこともある)。

音圧はsound [acoustic] pressure、
音量はthe volume、である。

Date: 11月 17th, 2013
Cate: 数字

100という数字(その6)

変換効率の高いスピーカーは、カタログスペックの出力音圧レベルの値が高い。

いまでは一般的とはいえなくなったが、
私がオーディオに興味を持ち始めたころ、
つまり1970年代後半の国産ブックシェルフ型スピーカーシステムの出力音圧レベルは92dB/W/m前後だった。
実はこの92dBという値は、アンプから入力された信号の1%が音に変換された、ということである。
残りの99%は熱になって消費されてしまう。

92dBを切っているスピーカーシステムは、1%以下の変換効率ということになるわけだ。
92dBよりも10dB低い82dB/W/mだと、10dBは約3.16倍であるから、1%を3.16で割ればいいし、
102dB/W/mだと10dB高いわけだから、1%の3.16倍の変換効率といえる。

100%は1%の100倍だから、dBでは40dBの差となる。
92dB+40dB=132dB、である。

JBLのD130のカタログに発表されている出力音圧レベルは103dB/W/mだから、
これで計算すれば、92dBのスピーカーの約3.54倍となる。
82dBのスピーカーと比較すれば、約11.22倍となる。

ちなみにJBLのコンプレッションドライバーの2440は、カタログには118dB/W/mと表記されている。
92dBとの差は26dBだから約19.95倍となる。

100dBを超えているスピーカーを、簡単に高能率といってしまっているけれど、
130dBのD130ですら、約3.54%しか音に変換できていないわけで、
dBではなく%でみると、D130ですら、高能率といっていいのかどうか考えてしまう。

こんな計算をしながら考えていたのは、
音圧と音量について、である。

Date: 10月 23rd, 2013
Cate: 数字

100という数字(その5)

いまスピーカーシステムは、高性能化している、といわれる。
たしかに周波素特性は低域、高域の両端に伸びているし、
しかもただ伸びているだけでなく、一部のスピーカーシステムでは、
以前では考えられなかったほど平坦な周波数特性も実現している。

なにも周波数特性だけではない。
パルスを使った測定で明らかになる累積スペクトラムでも、
見事としか、他にいいようのないくらいに高性能化しているモノもある。

その意味では、はっきりとスピーカーシステムは、高性能化している──、
私もそう思っているし、そういうことがある。

けれどスピーカーはカートリッジと同様、変換器である。
変換器の性能として語られるのは、周波数特性、歪率……といった項目だけでいいのだろうか。

変換器としての重要な項目は、変換効率なのではないだろうか。

真空管からトランジスターへと移行して、大出力が実現し得やすくなっている。
そのこともあって、スピーカーの変換効率は、他の項目を優先するために犠牲になってきている。

周波数特性と変換効率は、今のところ両立し難い。
変換効率を高くしていけば、周波数特性は狭くなる傾向にある。
周波数特性をワイドレンジにしようとすれば、変換効率を犠牲にすることにつながっていく。

アンプのパワーが、実質的には制限なしに得られる状況では、
スピーカーの変換効率は優先順位として下にきてしまうのは、仕方ないことになってしまう。

だが、スピーカーは、あくまでも変換器であり、
変換器にとって、変換効率の高さはどういうことを指すのだろうか。

Date: 10月 15th, 2013
Cate: 数字

100という数字(WIN LABORATORIES SDT10)

ウイン・ラボラトリーズというカートリッジメーカーがあった。
ステレオサウンド 43号に広告が載っていた。
当時は菅原商会というところが輸入元になっていて、その後別のところに変ったと記憶している。

ウイン・ラボラトリーズのSDT10というカートリッジに関する資料は少ない。
43号に掲載された菅原商会の広告の文章、
それにインターネットで検索して得られることぐらいである。

SDT10の型番は、Semiconductor Disc Transducerの略であり、
型式としては、Semiconductor Strain Gaugeとなっている。
半導体型のカートリッジと理解していいはずだ。

だからPOWER SOURCEと名づけられた外部電源を必要とする。

詳細についてあまりわかっていない。
実物をみることはできなかった。
いったいどれだけ日本に輸入されたのかもわからない。

でも、聴いてみたかったカートリッジのひとつであり、
いまも機会があればぜひとも聴いてみたい、と思い続けている。

SDT10はかなりの高出力型である。
たしか500mVで、負荷インピーダンスは500Ωとなっていた。
SDT10の出力電力は0.5mWとなる。

桁違いの出力電力の大きさである。
SPU-Synergyにしてもマイソニックの一連のカートリッジにしても、単位はnW(ナノワット)だった。
SDT10はmW(ミリワット)である。

オルトフォンのSPU-Synergyよりも、マイソニックのカートリッジよりも圧倒的に高い出力電力ではあるが、
オルトフォン、マイソニックのカートリッジが磁界中のコイルを動かして発電しているのに対し、
SDT10は発電をして、これだけの高出力電力を得ているわけではない。
あくまでも外付けの電源から供給されるバイアスを変調させているのだから。

とはいうものの、イコライザーアンプも原則として必要としない振幅比例型で、
しかも高出力ということでライン入力、ボリュウムつきならばパワーアンプに直結もできる。

SDT10は出力の高さから高効率といえるけれど、発電という意味ではない。
同じ高効率でも発電しての高効率との音の出方の違い、表現の違いがあるのかどうか。
そして高効率ということに共通する良さが、SDT10にもあるのかどうか──、
こうやって書いていると、一度でいいから聴きたいという気持はますます強くなってくる。