300(その8)
ステレオサウンド 44号の音楽欄、
「東芝EMIの〈プロ・ユース〉シリーズとTBMの〈プロフェッショナル・サウンド〉シリーズを試聴記」
という記事を、井上先生が書かれている。
プロ・ユースシリーズ五枚、
プロフェッショナル・サウンドシリーズ三枚のレコードについて、
それぞれ紹介されていて、
TBMの「MARI」についての文章のなかに、
テープスピードの違いによる音について書かれている。
*
一般的に、38センチを剛とすれば、76センチは、むしろ柔である。テープらしいガッチリとして引締まり、パワフルな音が2トラック38センチの音の特長だが、76センチとなると、低域は豊かに伸びやかであり、中域以上も滑らかで、より細やかでナチュラルになるのが普通である。
*
これはかなり意外だった。
44号は1977年に出ている。
このころの私は38cm/secの音も、まだ聴いていない。
76cm/secは、38cm/secの倍である。
つまり剛の二倍である。
剛(ごう→五)の二倍は柔(十)、
たしかにそうだな、と高校生だったにも関らずオヤジギャグ的なことも思っていた。
マッキントッシュの一連のシリーズもそうではないか。
300WのMC2300が、ちょうど38cm/secのテープスピードの音にあたる。
600WのMC2600が、76cm/secの音である。
井上先生が76cm/secの音について書かれていることは、
そのままMC2600の音にあてはまる。
《低域は豊かに伸びやかであり、中域以上も滑らかで、より細やかでナチュラル》、
MC2300からMC2500を経てのMC2600への音の変化も、まさにこれである。