BBCモニター、復権か(音の品位・その5)
(その4)までで引用してきたステレオサウンド 60号での試聴は、
個別の試聴ではなく全員での試聴である。
瀬川先生も菅野先生も、同席されての試聴である。
音の品位は、なにもスピーカーについてのみいえるのではなく、
アンプについても、カートリッジに関しても、他のオーディオ機器であってもいえる。
けれど、もっとも感覚的に捉えられるのは、やはりスピーカーである。
60号の一年半前にステレオサウンドは、スピーカーの試聴を行っている。
54号である。
この時の試聴は、黒田恭一、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏によるものだが、
個別試聴である。
試聴レコードも三氏で違うし、
スピーカーを鳴らすオーディオ機器(プレーヤー、カートリッジ、アンプ)も三氏皆違う。
それに試聴方法も違っている。
スピーカーだから、そのセッティングが重要になるわけだが、
ここも微妙に違っている。
そのうえで、特集の鼎談を読むわけだが、
ここでも音の品位について、菅野先生と瀬川先生とでは、
完全に一致しているわけではない。
たとえばグルンディッヒのProfessional BOX 2500。
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菅野 私は、瀬川さんがこのスピーカーに、まあ9点はびっくりしましたが、8点くらいつけるのはよくわかる気がします。瀬川さんは、あるところ非常にハードに厳しいけれど、あるところすごく甘いところがあるように思う。徹底してどちらかにいってしまう。
瀬川 ……(苦笑)。
菅野 引っかかると徹底的にハードを追求し、引っかからないと徹底的にハードを無視してソフトに行くという、そういう性癖がある(笑い)。
このグルンディッヒはひっかかってきたひとつだと想うのです。まず音が非常に電蓄的ですね。先ほど古いとおっしゃったが、まさにその通りでノスタルジーは感じます。しかし、今日の水準で聴くと、クォリティ面で、特にユニット自体の品位があまり高くないことが露呈してくる。
瀬川 そうですか? 品位は高いと思いますけれど……
菅野 それは全体としてでしょう。バランスはそれなりにとれていると思いますが、たとえば低域は、なかなか重厚といえば重厚だが、よく聴くとボコボコですよ。
瀬川 私が鳴らすとボコボコいわないんてすよ。
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編集部によると、Professional BOX 2500での三氏が鳴らす音に、
それほど大きな違いはなかった、とあるが、
三氏がそれぞれに指摘している長所、短所は、同席していて納得がいくともある。
Professional BOX 2500は、60号でのマッキントッシュのXRT20とは反対に、
菅野先生は品位がない、と感じ、瀬川先生は品位があると感じられた例である。