Archive for 7月, 2009

Date: 7月 31st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その21)

CDプレーヤーが登場し、単体のフォノイコライザーアンプが市場に現われはじめたときに、
井上先生と山中先生が指摘されていたことがある。

CD登場以前の日本のコントロールアンプは、フォノイコライザーアンプとラインアンプ、
トータルで音を決めているのに対して、
海外製のコントロールアンプ、とくにアメリカ製のコントロールアンプは、
つねにライン入力の音も試聴を重ねて、音決めされているものが大半だということだった。

つまり国産コントロールアンプは、アナログディスク再生では見事な音を聴かせてくれる機種でも、
ライン入力の音は、ちぐはぐさを感じさせるものが少なからずある、ということだ。
一方、海外のコントロールアンプのなかには、フォノ入力の音は、もうひとつ感心できないもでも、
ライン入力の音となると、俄然魅力を発揮するものがある。

もちろんフォノ入力の音、ライン入力の音、どちらも素晴らしいものが優れたコントロールアンプといえるし、
数は少ないながらも存在していた。

ラインアンプの優秀さがひときわ際立っていたのは、AGIの511(b) だろう。
ブラックパネルの511のライン入力の音は聴いたことがないが、
改良モデルの511bでは、聴く機会があった。ブラックパネルの511で受けた、いい印象がそこにあった。

ということは、日本仕様、日本からの要求ということで、
フォノイコライザーアンプのイコライザーカーヴをいじりすぎていたのかもしれない。
そんな気がしてならない。

SL10も、ライン入力の音を聴く機会があったら……、と、いまは思うしかできない。

Date: 7月 31st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その20)

スレッショルドの800Aは、マークレビンソンからML2Lが出るまで、LNP2Lと組み合わせるが、憧れだった。
それだけにスレッショルドには、強い関心をもっていたし、そのコントロールアンプにも期待していた。

NS10は聴いたことがないのでなんともいえないが、SL10は、こちらの期待が一方的に大きくなりすぎていただけに、
何を聴いても、もどかしさを感じてしまう音に、正直、がっかりした記憶がある。

スレッショルドは、というよたも、ネルソン・パスはパワーアンプを得意とするエンジニアだと、
このときから思いこんでしまっている。
ただ、いま思うのは、CDプレーヤーで、ラインアンプの音のみを聴いてみたら、
すこし印象が変化するかもしれないということだ。

SL10を聴いたときは、アナログディスクのみで、
いうまでもないことだがフォノイコライザーアンプ、ラインアンプの両方を通った音を聴いている。

Date: 7月 31st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その19)

スレッショルドは、1976年から80年までの4年間に開発したパワーアンプは、
800A、400A、4000 (Custom)、CAS1、ステイシス1、2、3である。
コントロールアンプは、というと、前述したように、NS10とSL10の2機種のみ。

400Aは、800Aのパワー(200Wから100W)、規模をすこし縮小したモデルであり、シリーズ機種と呼べるし、
800Aにかわるパワーアンプとして登場した4000は、すぐに全段カスコード化されて型番末尾にCustomがつき、
同時にやはりカスコード回路を全面的に採用し、NS10のシャーシーの厚みをすこし増した程度の大きさで、
75W+75Wの出力をもつCAS1を出すなどしている。

ステイシス・シリーズのあとに出たSシリーズ、SAシリーズも、パワーアンプはシリーズ展開しているのに対し、
コントロールアンプは、一時期、2機種出していたことをもあったが、
アンプ開発への力の入れ方に、コントロールアンプとパワーアンプとでは、
温度差、といったものを、どうしても感じてしまう。

ステイシス1とペアとなるコントロールアンプを出していれば、違う見方もできただろうが、
ネルソン・パスの関心は、少なくとも、スレッショルド時代は、コントロールアンプよりも、
パワーアンプのほうにつよく向いていたと言っても差し支えないだろう。

それにスレッショルドを退き、パス・ラボラトリーズから、1992年に出した最初のアンプ、
Aleph 0もまたパワーアンプである。

Date: 7月 30th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その20)

文章を書いている最中にも、こまかい判断を、いくつもしている。
文章を書こうというときには、もうすこし大きい判断をしている、といえようか。

それらの判断がすべて正しいわけでもないだろうが、判断なくしては書けない。
書き手がつねに心がけておくべきことは、小さなものであれ大きなものであれ、
判断は、つねに読み手に向ってなされるべきであること。

どちらを向いて、その判断を下したのか。
読み手に向っての判断であれば、その人が、私とまるっきり正反対の判断をされたとしても、
それは尊重するし、異は唱えない。けれども……。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その18)

スレッショルドの話に戻ろう。
ステイシス1のプロトタイプにいっしょに発表されていた、
NS10とSL10の2段重ねのコントロールアンプに相当するものは、ついに現われなかった。

ステイシス・シリーズとペアとなるコントロールアンプは、SL10ということになる。
SL10は、545,000円。ステイシス3が760,000円、ステイシス2は1,138,000円、
そしてステイシス1は、3,580,000円(ペア)だから、
価格の上では、SL10jとバランスがとれるのは、ステイシス3ということになる。

しかし、前述したように、SL10と同じツマミを、
ステイシス1の、メーターの動作切替スイッチに使っている。
ステイシス2と3のフロントパネルにあるスイッチは、電源スイッチのみ。
フロントパネルの印象では、SL10とステイシス1がペアとなるのだが、価格的なちぐはぐさだけでなく、
規模もそうだし、アンプそのもののクォリティにも、ちぐはぐな印象がある。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力
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the Review (in the past) を入力していて……(その17)

SUMOのThe Goldのこと、それにこのアンプの設計者、ジェームズ・ボンジョルノについては、
いずれ改めて書くつもりでいるが、実際に、The Goldを自分のモノとして使うと、
井上先生の言葉が正しいことが実感できた。惚れこんで、使っていた。

そうなると、やはり回路図を入手したくなる。
いまもそうだが、興味のあるオーディオ機器、自分で使っている(いた)モノについては、
回路図をできるかぎり入手してきた。

回路図を見たからといって、なにかが変わるわけでもないだろう。
その機械の回路構成を知ったからといって、それだけでいい音が出せるようになるわけではない。
それでも、やはり回路図は、どれだけ時間がかかっても、見ておかないと気が済まないところがある。
しつこい性格なのだろう。

だから、いまも、気が向いたとき、すこし時間の余裕があるときは、
じっくりとあれこれネット検索して、回路図を入手している。

最近入手したもので興味深いと思ったのは、
スチューダーのA101という電圧増幅用モジュールアンプの回路図である。
差動入力で、トランジスターの使用数はわずか4石。抵抗が5本に、コンデンサーがひとつ、という、
これ以上、どこも削りようがないくらいの素子数の少なさである。

素子数の少なさ=シンプルな回路、といえるほど単純なものではないが、
このA101の回路は、よく考え抜かれたものだと感心する。
この回路は、いろいろと使えそうだと、直観した。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その16)

プロトタイプのステイシス1に使われた言葉を、井上先生は、SUMOのThe Goldにも使われている。

ステレオサウンド 55号の新製品紹介の記事で、The Goldの音は、一定の姿形を持っていないため、
あらゆるいい言葉があてはまり、つまり言葉で表現しにくい、とことわられている。
さらに以前紹介したステイシス1とよく似た印象である、とも。

この記事を読んだとき、まだThe Goldの音は、当然だが、聴いていなかった。
それに、800A以来、ずっとスレッショルドのアンプには注目してきていただけに、
この、少しばかりガサツなところが感じられるアンプが、
洗練された印象のスレッショルドのステイシス1と似ている、ということは少なからずショックだった。

それにステイシス1はモノーラル構成で、規模も大きい。
価格もThe Goldの2倍以上なのに……、とも思っていた。

しかも井上先生は、ステイシス1よりも、The Goldのほうが反応が速く、より変化自在である、とも語られている。

つまりステイシス1よりも優れている、ということに、すこしThe Goldが憎く思えてきたものだ。
結局、のちに、そのThe Goldに惚れこんで購入するのだけれど……。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その15)

4、5年前だったか、ネルソン・パス主宰のパス・ラボのウェブサイトで、
パスが過去に設計したアンプの回路図のほとんどが公開されていたことがあった。
残念ながら、いまはダウンロードできないようだ。
でも、ここで入手したのものだろう、いくつかの海外の個人サイトでは、
主だったものの回路図が公開されている。

デビュー作の800Aはもちろん、私がいちばん知りたかったステイシス・シリーズの回路図も、そこにはあった。
回路図を実際にみると、あとに公開された概念図どおりの構成だった。
カレントミラー・ブートスラップと名づけられた回路が、出力段のトランジスターに接続され、
ステイシスアンプ(むしろステイシスセクションと呼ぶべきだろう)の要求通りの電流を、
供給するようになっている。

プロトタイプのステイシス1が、2台のアンプを組み合わせることで実現していたことを、
市販されたステイシス・シリーズは、より合理的に1台のアンプとしてまとめあげたわけだ。

とはいうもの、ここまで回路構成が異ると、設計思想は同じでも、とうてい同じ音がするわけはない。
もちろん、設計者のネルソン・パスは、市販した方のステイシス回路を、
より発展性があり(だから、ステイシス2、3が出たのだろう)、
よりスマートなものとして、進化したステイシス回路と考えているのであろう。

それでも、プロトタイプのステイシス1の音は、いちど聴いてみたかった。
見ればみるほど、プロトタイプのステイシス回路は、興味深いからだ。

井上先生は、たしか「変化自在の音」と言われていたように記憶している。

Date: 7月 28th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その12)

スピーカー用のLCネットワークの減衰特性には、オクターブあたり6dB、12dB、18dBあたりが一般的である。
最近ではもっと高次のものを使われているが、6dBとそれ以外のもの(12dBや18dBなどのこと)とは、
決定的な違いが、ひとつ存在する。

いまではほとんど言われなくなったようだが、6dB/oct.のネットワークのみ、
伝達関数:1を、理論的には実現できるということだ。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その11)

少し前に、あるスピーカーについて、ある人と話していたときに、たまたま6dB/oct.のネットワークの話になった。
そのとき、話題にしていたスピーカーも、「6dBのカーブですよ」と、相手が言った。
たしかにそのスピーカーは6dB/oct.のネットワークを採用しているが、
音響負荷をユニットにかけることで、トータルで12dB/oct.の遮断特性を実現している。

そのことを指摘すると、その人は「だから素晴らしいんですよ」と力説する。

おそらく、この人は、6dB/oct.のネットワークの特長は、
回路構成が、これ以上省略できないというシンプルさにあるものだと考えているように感じられた。
だから6dB/oct.の回路のネットワークで、遮断特性はトータルで12dB。
「だから素晴らしい」という表現が口をついて出てきたのだろう。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その14)

ステイシス・シリーズが出揃ったころ、ステイシス回路の概念図が、なにかに載っていた。
アンプを表わす三角形と電源ラインの間に、円をふたつ重ねたものに三角形を組み合わせた記号が、
プラス側、マイナス側にそれぞれあり、この三角形からも出力が取り出されているというものだった。

あきからにステレオサウンドで見た技術資料に載っていたものとは違う。
このときわかったのは、プロトタイプのステイシス回路と、実際に市販されたステイシス回路は、
設計思想そのものこそ同じだが、手法は異っている、ということだ。

それでも、ステイシス回路が具体的にどういうものなのか、その詳細はずっと知りたくてもわからなかった。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その13)

プロトタイプとして登場したステイシス1は、ステイシス回路で特許を取得している。
ステイシス回路とは、当時は、電圧と電流の変動を極力おさえたステイシスアンプと、
それに付随する電流供給源を組み合わせたものと、説明されていた。

ステイシスアンプもスピーカーとつながっているが、大半のパワーは、
ステイシスアンプがコントロールする電流供給源からおこなわれる。
こういう説明がなされていたが、具体的な回路構成にはついてはまったくわからなかった。

ステレオサウンド編集部にあったスレッショルドの技術資料をみると、
たしかにステイシスアンプと呼ばれるもののほかに、スピーカーとアース間にごく小さな値の抵抗が挿入され、
ここで電流検出をして、電流供給源アンプの入力へと接続されていた。
つまり小出力の、リニアリティに優れているステイシスアンプと、
大出力のアンプを組み合わせた回路、つまり2台分のアンプが必要ということになる。

この回路の概念図が、1980年にステイシス2、3を加えて市販されたあとで、じつは変更されている。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その17)

DBシステムズの最初の輸入元は、R.F.エンタープライゼスだった。
その後、1970年代にタンノイ、SME、オルトフォン、
それにマークレビンソンのLNP2のサンプルを最初に輸入したシュリロ貿易に勤務されていたHさんが独立されて、
取り扱われるようになった。
DBシステムズのために会社をつくったような印象を、受けた。

Hさんは、DBシステムズの音、コントロールアンプのモジュール思想に、心底惚れての、行動だったように思う。

DB1本体は、機能をほとんど省略した構成だが、同サイズのDB5が用意され、
トーンコントロール機能、モード切替も備えている。
DB5のモード切替は、ステレオ/モノーラルだけでなく、L−R信号、−(L+R)信号も取り出せる。
DB5も、DB1同様、ディスクリート構成。ただし上記信号を取り出す回路のみオペアンプを使っている。

型番は忘れてしまったが、やはり同寸法のチャンネルデバイダー、
それにMC型カートリッジ用ヘッドアンプDB4が用意されていたことからわかるように、
シャーシーそのものをモジュールとみなす設計思想だった。

外部電源は、すべてに、DB2が共通で使える。
つまりDB1、DB4、チャンネルデバイダーすべて、±2電源ではなく、−電源のみ、ということだ。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その12)

無線と実験が取り上げていたステイシス1のプリント基板は、一枚だったように記憶している。
サイズも天板とほぼ同寸法程度の大きさだったはずだ。
それがステレオサウンド 56号で取り上げられているステイシス1では、2枚構成になり、
合わせた大きさも、以前のものより小さくなっている。

当時、無線と実験、ステレオサウンド、それぞれに掲載された写真を見比べた。
無線と実験のほうはモノクロで、ステレオサウンドのほうはカラーだけど、サイズが小さいため、
細部まで比較することは無理だったけれど、プリント基板上の部品は位置もかなり異っていたはずだ。

無線と実験に、ステイシス1といっしょに紹介されていたコントロールアンプからもわかるように、
以前取り上げられた、最初のステイシス1は、プロトタイプだったことがわかる。
それにしても、基本そのものが、ここまで変わるとは……、と当時思っていた。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(余談)

6月1日からはじめた “the Review (in the past)” の記事が、1000本になった。
これでなんとかデータベースと呼べるぐらいの規模になったかな、と感じている。

とにかく1000本までは、という気持で、”the Review (in the past)” のほうを優先してきたので、
これからはすこしペースを落としていく。年内に2000本を、目標としている。
そして、こちらの “audio identity (designing)” を優先していく。