Archive for category コントロールアンプ像

Date: 9月 10th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その5)

SE-P900とAudio Paletteとでは、
3バンドと6バンドという違いはあるが、どちらもパラメトリックイコライザーである。

価格は10倍以上違っていた。
知名度は、どちらも高いといえる。

なのにオーディオ雑誌での取り上げ方は違っていた。

たしかにマーク・レヴィンソンは話題作りがうまい男である。
でもチェロと輸入元のRFエンタープライゼスに対して、
ソニーはひじょうに大きな会社である。

それでも違いが生じたのは、そういったことよりも、
扱いやすさ、もっといえばとっつきやすさに関係していたのではないだろうか。

SE-P900に触れたことはない。
その使い勝手についてあれこれ書けるわけではないが、
パラメトリックイコライザーという、
いわばプロの現場から生れてきたといえる、ふたつの製品であっても、
SE-P900とAudio Paletteでは、まとめ方が違う。

Audio Paletteはイコライザーの中心周波数は固定である。
イコライザー帯域幅も固定である。

SE-P900は写真で見ているだけであるから、はっきりとはいえないが、
ツマミからすれば左右独立で調整が可能のようだ。
それは中心周波数、帯域幅、レベルともに左右独立と思われる。

さらに低域と高域はピーキング特性とシェルビング特性を選べるようになっている。
3バンドとはいえ、かなりこまかな調整ができる、といえよう。

SE-P900の操作性とAudio Paletteの操作性を見ていると、
まとめ方のうまさがAudio Paletteにはあり、
そのうまさとは、
パラメトリックイコライザーにふだん接していない人に対してのアプローチでもある。

Date: 9月 10th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その4)

3バンドのトーンコントロールということで思い出す機種がまだある。
エスプリ(ソニー)のSE-P900である。

1981年の発売、
ソニーはSE-P900をアコースティックイコライザーと呼んでいたから、
トーンコントロールと称しては失礼かもしれないが、
3バンドのパラメトリックイコライザーである。

当時のソニーの広告を見ればわかるが、かなりの力作といえる。
価格は200,000円だった。

この年の秋、テクニクスからSH8065が登場した。
33バンドのグラフィックイコライザーで79,800円、
翌年にSH8075が100,000円で登場している。

パラメトリックイコライザーとグラフィックイコライザーはひとくくりにできないが、
3バンドで20万円、33バンドで10万円。

そういう製品だけに、SE-P900の広告では、次のように謳っていた。
     *
感性を生かしたカラーレーションを試みてほしい。
と主張する以上、このイコライザーのクオリティ
TA−E900と同等(ベストペア)に仕上げてあります。
     *
TA-E900とはエスプリ・ブランドのコントロールアンプで、600,000円していた。
SE-P900は、もっと話題になってもおかしくない製品だった。
けれど、ほとんど話題になることはなかった、と記憶している。

SE-P900の三年後に登場したチェロのAudio Paletteは、あれだけ話題になったのに……、
といまはおもう。

Date: 8月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その6)

歌人の上田三四一(みよじ)氏は、短歌について
「活気はあるが猥雑な現代の日本語を転覆から救う、見えない力となっているのではないか」
と語られていることは、(その3)で書いている。

この上田三四一氏のことばを置き換える。
「活気はあるが猥雑な現代のオーディオを転覆から救う、見えない力となっているのではないか」
こう置き換えてみると、コントロールアンプの役割としてのバラストが、
どういうことであるのか、朧げながらではあるが少しははっきりしてくる。

ずっと以前から、優れたコントロールアンプは、ほんとうに少ない、
そういわれ続けてきている。
音だけなら……、けれどコントロールアンプとして見た時に……、
そんなこともいわれたりしてきている。

パワーアンプに優れたモノは多いし、ある意味広いともいえる。
けれどコントロールアンプとなると少ないし、狭いともいえるところがある。

ずっと以前から、そういわれているし、多くのオーディオマニア、
それにオーディオ評論家も、同じにおもってきている。

それでも、なぜなのか、についてはっきりと答えられる人はいなかった。
にも関わらず、多くの人がそう思っているということは、
コントロールアンプの役割を、ひじょうにぼんやりとではあるが、
それだけの人が認識している、ということなのかもしれない。

CDが主流となったころ、コントロールアンプは不要だ、とばかりに、
パッシヴのフェーダーを使う人も現れた。
実験、試みとしては、パッシヴ型フェーダーに関心はあったし、私もいくつか試した。

そういうことをやってみると、コントロールアンプの役割というものが、また見えてくる、
というより感じられてくる、といったほうが、より正しいか。

コントロールアンプはバランスとしての役割がある。
そのことを少なからぬ人がなんとなくではあっても感じていたから、
優れたコントロールアンプが、ほんとうに少ない、といわれ続けてきたのであろうし、
このバラストとしての役割を、作り手側がどれだけに認識しているのか、
そこがはなはだこころもとないから、優れたコントロールアンプが少ない理由とも思う。

Date: 6月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その3)

3バンドのトーンコントロールで、
それぞれの帯域のことを低音、中音、高音と、
日本語ならばこうなるが、英語だとどうなるのか。

BASS(もしくはLOW)、MIDRANGE、TREBLE(もしくはHIGH)と、
たいていのアンプでは、こう表示されている。

中音、MIDRANGEとは、トーンコントロールの場合、どのあたりの周波数なのか。
カタログ発表値を見ていくと、
マークレビンソンのLNP2は5kHzである。
サンスイのアンプでは1.5kHz、マランツは700Hz、
マッキントッシュのC504だと750Hz、
ルボックスのプリメインアンプB750MK2は3kHzとなっている。

マランツがいちばん低くて700Hz、マークレビンソンがもっとも高くて5kHz。
どちらもフロントパネルの表示はMIDとなっていても、3オクターヴ近く違うわけだ。

700Hzと5kHzでは、同じMID(中音)といっても、
ツマミをまわしてみたときの音の変化はそうとうに違う。

音の感じとしては、700Hzあたりは可聴帯域(20Hzから20kHz)のほぼ中心であり、
再生音の土台ともいえる帯域の中心であり、
オノマトペ的にいえばコンコン、カンカンといった感じであり、
5kHzともなると、1オクターヴ下の2kHzあたりのキンキンと耳につきやすい感じから、
シャンシャンと浮き上るような感じになっていく。

ここで注目したいのはルボックスの表示である。
B750MK2ではMIDとはなっていない。
PRESENCEとなっている。これはうまい表示だと思う。

B750MK2の3kHzよりも高いLNP2のMID(5kHz)は、
PRESENCEと表示したほうが適切というものだ。

Date: 6月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その2)

3バンドのアンプということで最初に思い浮べるのは、
私の場合は、やはりマークレビンソンのLNP2であり、
次に浮ぶのはマランツのプリメインアンプである。

といっても1970年代のマランツであり、
アメリカで設計して日本で製造していたころのプリメインアンプ、
コントロールアンプは3バンドのトーンコントロールを装備していた。

Model 1070(69,900円)でも、トーンコントロールは3バンドだった。
型番が四桁時代のアンプのすべてが3バンドだったわけではないが、
それでも四桁型番のマランツのアンプといえば、
私にとっては3バンドのトーンコントロールと、テープ入出力の充実ぶりが、
まず特徴として浮ぶほどに印象に残っている。

1070の上級機のModel 1150 MKII(129,000円)、
Model 1250(195,000円)も3バンドで、しかも左右独立コントロールになっている。

この時代のマランツは日米ハーフだった。
純国産のアンプで3バンドのトーンコントロールといえば、サンスイのアンプだ。
こちらはブラックパネルと3バンドのトーンコントロールが、
特徴としてすぐに頭に浮ぶほどだ。

プリメインアンプもコントロールアンプも3バンドなのは、マランツと同じである。
AU888、AU5900(53,000円)、AU6900(65,000円)、AU7900(85,000円)、
AU9900(140,000円)、AU10000(148,000円)、
AU11000(180,000円)、AU20000(280,000)などのプリメインアンプが、
3バンド仕様になっていた。

不思議なのはマランツのプリメインアンプのトップモデル、
Model 1200B(325,000円)は2バンド仕様ということ。
設計時期の違いによるものなのか。

サンスイのプリメインアンプは、上記モデルのあとに登場したAU607、AU707、
そしてダイヤモンド差動回路を搭載したAU-D907、AU-D707、AU-D607が、
ベストセラーモデルになるわけだが、トーンコントロールは2バンド仕様になっていた。

AU-D907 Limitedは使っていた。
そのころはまだ3バンドのトーンコントロールを使ったことがなかったから、
2バンドであることに特に不満も疑問も感じなかったが、
のちにLNP2の3バンドのトーンコントロールにふれて、
なぜサンスイは3バンドのトーンコントロールをやめたのか、と思うようになった。

Date: 6月 11th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その1)

私がオーディオに興味を持ち始めたころぐらいから、
国産のアンプにはトーンコントロールをバイパスするスイッチがつくようになっていた。

トーンコントロールをバイパスすれば、
それだけ信号経路はシンプルになり、音の鮮度はたいていの場合、高くなる。

トーンコントロールの有用さはわかっていたし、
瀬川先生がよく書かれていた。
なのでバイパスすることもあれば、積極的に使うことも多かった。

トーンコントロールは必要なのだろうか。
瀬川先生は、そういわれていた。
確かにそうだ、とうなずける。

一方で長島先生は、トーンコントロールでいじれるのは音の表面的なところであり、
本質的な性格は変化しない、といったことをいわれていた。
これも、確かにそうだ、とうなずける。

まるでトーンコントロールにポリシーがないように思われるだろうが、
自分で使ってみると、瀬川先生のいわれることも長島先生がいわれることも、
わかるとしかいいようがない。

これも何度も書いていることだが、どんな方式にもメリットとデメリットがあるわけで、
そこをどう理解して使うか、でしかない。

それでもトーンコントロールを使わなくなってきたのは確かである。
まずトーンコントロールが省かれるアンプが、1980年ごろから増えてきた。
まずコントロールアンプから省かれ、
プリメインアンプからも省かれるようになってきた。

そうなると使いたくともトーンコントロールがないのだから、どうしようもない。
トーンコントロールは不要になってきたのだろうか。

私にとって必要なトーンコントロールは? ということをだから考えてみた。
一般的な低音と高音だけの、2バンドのトーンコントロールは正直、あまり必要性を感じない。

私にとって必要なトーンコントロールは、中音もコントロールできる、
3バンドのトーンコントロールである。

このことはマークレビンソンのLNP2を触ったことのある方ならば、わかってくれるだろうか。
マーク・レヴィンソンがJX-C2にトーンコントロールをもうけなかったのは、
2バンドならば不要と考えたためではないだろうか……、と勝手に妄想するくらいに、
LNP2のトーンコントロールの中音のツマミは動かしてみると、その有難みがわかる。

Date: 11月 20th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その4)

ステレオサウンドのバックナンバーを読み返していると、
いまになって気づくことがある。

ヤマハのコントロールアンプCX10000のことを、いま思い出している。
CX10000はヤマハ創業100周年記念モデルとして、1986年に登場した。

CX10000の他に、パワーアンプのMX10000、CDプレーヤーのCDX10000、
スピーカーシステムのNSX10000があった。

100周年を記念しての10000番シリーズの中で、いま注目したいのはCX10000である。
CX10000は、デジタル信号処理を採り入れたコントロールアンプである。

CX10000の登場からいまでは約30年が経過している。
デジタル信号処理の進化はすごいものがあった。
だからCX10000のデジタル信号処理の性能、それと音について語ろうとは思っていない。

ここでのテーマである「コントロールアンプと短歌」ということで、
CX10000を見直すことができないか、と思っている。

CX10000はブロックダイアグラムをみれば、アナログ系は実にシンプルになっている。
そこにデジタル信号処理が加わり、当時としてはかなり複雑(細かな)なことが可能になっていた。

1986年当時はiPadもiPhoneは、それこそ影も形もなかった。
つまりデジタル信号処理に関する操作は、すべてコントロールアンプだけで完結している必要があった。

タブレットのようなタッチディスプレイもなかった。
CX10000にはふたつのディスプレイがついているが、
どちらも数字と文字だけの表示である。表示領域も狭いし、モノクロ表示である。

CX10000はレベルコントロールだけがロータリー型で、
あとはすべてプッシュボタンである。
ただ正確にいえばバランスコントロールもロータリー型であるが、
フロントパネルにはなく、右前脚の隣にひっそりとつけられている。

ボタンを多用したコントロールアンプとしては、
CX10000の前にアキュフェーズの C240があった。
C240はレベルコントロール以外のすべてボタンにはしていなかった。

CX10000の写真をみながら、いまごろ思っているのは、
CX10000のデザインに関する苦労である。

いまならばiPadにインターフェースをすべてもっていって、
コントロールアンプ本体は、いわゆるブラックボックス化していくだろうが、
1986年はそういうわけにはいかない。

少ない情報量のディスプレイといくつものボタンとその操作だけで、
CX10000の多機能を、使い手に直感的に理解してもらう必要がある。

Date: 10月 28th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その3)

 船舶は、転覆をしないように重心を低くするため、船底に重いバラスト(底荷)を積んでいる。これは直接的な利潤を生まない「お荷物」ではあるが、極めて重要なものである。
 歌人の上田三四一(みよじ)氏は、「短歌は高い磨かれた言葉で的確に物をとらえ、思いを述べる、日本語のバラスト(底荷)だと思い、そういう覚悟でいる。活気はあるが猥雑な現代の日本語を転覆から救う、見えない力となっているのではないか」、このように書かれている。
     *
アキュフェーズの創業者である春日二郎氏の「オーディオ 匠のこころを求めて」からの引用である。
「オーディオはバラスト」とつけられた短い文章だ。

短歌は日本語のバラスト(底荷)だ、という上田三四一氏のことばがある。

多機能コントロールアンプの代名詞といえるヤマハのCI、テクニクスのSU-A2のデザインに、
短歌的といえるなにかを見いだすことができるのであれば、
そのひとつは、バラストということかもしれない。

バラストは底荷だから、機能として目に見える存在ではない。
でもバラストがなければ船舶は転覆する。

コントロールアンプでは、それはどういうことなのか。

Date: 5月 13th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その2)

瀬川先生の文章を読んでヤマハのCIとテクニクスのSU-A2を、まっさきに思い浮べたのは、
そこに書かれていたことから遠い存在として、であった。

その後に、瀬川先生の文章のような存在といえるコントロールアンプいくつか思い浮べていた。
そしてこれらのコントロールアンプのデザインに 短歌的なものを見いだせるとしたら、
CIとSU-A2は、技術者がやりたいことをやったという性格のアンプだから、
文字数の制約のない小説ということになるのか。
そんなことを考えた。

そんなことを考えてながら思い出していたのは、
瀬川先生がステレオサウンド 52号の特集の巻頭に書かれた「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」だった。
マッキントッシュのC29とMC2205のことを書かれている。
     *
 ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万語を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
 けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これほどの機能と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。そう思わせるほど近ごろ大がかりな大きなアンプに馴らされはじめた目に、新しいマッキントッシュは、近ごろのアメリカのしゃれたコンパクトカーのように小じんまりと映ってみえる。
     *
大河小説というキーワードで思い出したにすぎないのだが、
これがCIとSU-A2はほんとうに文字数の制約のない小説なのだろうか、と考え直すきっかけとなった。

ヤマハのCIは実際に触ったことはある。
とはいえ自分のモノとしてしばらく使ったわけではないし、触ったという程度に留まる。
SU-A2は実物を見た記憶がはっきりとない。
もしかすると学生時代に、どこかでちらっと見たような気もしないではないが、もうおぼろげだ。

これだけ多機能のコントロールアンプは短い期間でも自分の使ってみるしかない。
そのうえでないと、きちんと評価することはできない、といっていいだろう。

なのでCIとSU-A2に関しては、あくまでも写真を見ただけの判断になってしまうのだが、
このふたつのコントロールアンプに未消化と感じるところは、私にはない。

Date: 5月 11th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その1)

それは日本古来の短歌という形式にも似ている。三十一文字の中ですべての意味が完了しているという、そのような、ある形の中で最大限の力を発揮するという作業は、まことに日本人に向いているのだ、と思う。
     *
これは瀬川先生がラジオ技術 1961年1月号に書かれた文章である。
瀬川先生は1935年1月生れで、1961年1月号は1960年12月に出ているし、
原稿はその前に書かれているのだから、瀬川先生25歳の時の文章となる。

この文章はコントロールアンプのデザインについて書かれたもの。
短歌は、五・七・五・七・七の五句体からなる和歌であるから、
31文字であれば、六・六・五・五・九や四・五・六・八・八でいいわけではなく、
あくまでも31文字という制約と五・七・五・七・七の五句体という制約の中で、すべての意味が完了する。

正しく、これはコントロールアンプのデザインに求められることといえる。
これだけがコントロールアンプのデザインのあるべき姿とはいわないが、
瀬川先生がこれを書かれてから50年以上経ついま、きちんと考えてみる必要はある。

瀬川先生の、この文章を読んで、まず私が頭に思い浮べたのは、
ヤマハのCIとテクニクスのSU-A2だった。
どちらも非常に多機能なコントロールアンプである。
コントロールアンプの機能として、これ以上何が必要なのか、と考えても、
すぐには答が出ないくらいに充実した機能を備えているだけに、
それまでのコントロールアンプを見馴れた目には、
コントロールアンプという枠からはみ出しているかのようにもうつる。

ツマミの数も多いし、メーターも装備している。
そうなるとフロントパネルの面積は広くなり、それだけの機能を装備するということは、
回路もそれだけのものが必要となり、消費電力も増える。
電源はそれだけ余裕のある設計となり、筐体も大きくなり、
CIは重量17kg、消費電力55W、
SU-A2は重量38.5kg、消費電力は240Wとなっている。

このふたつのコントロールアンプは、だから短歌的デザインとはいえない、といえるだろうか。
私の知る限り、CI、SU-A2に匹敵する多機能のコントロールアンプは他にあっただろうか、
日本以外のメーカーから登場していない。

このふたつのコントロールアンプは、日本だから登場したモノといえる。
ということは、これらふたつのデザインに、短歌的といえるなにかを見いだすことができるのか。
そう考えた。

Date: 2月 4th, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その4)

別項「アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その15)」で、
アナログディス再生の、デジタルディスク再生に対しての強みは、
聴き手の感覚に合せられることのできる柔軟性にある、と書いた。
このことは聴き手の感覚を調整していくこと、とも書いた。

つまりデジタルディスク再生の弱みは、この柔軟性に欠ける点ともいえる。

そんな柔軟性は必要ない、という聴き手にとっては、
私が書いていこうとしているコントロールアンプの必要性はどうでもいいことだろう。

だが日本には四季があり、毎日の天候もまったく同じなわけではない。
乾いた日もあればじっとりした日もある。
気持ちいいと思える日もあれば、どんよりした日もある。

エアコンで空調が完全にコントロールされた部屋から一歩も外に出ずにすむ人ならば、
季節の変化に影響されることはないのかもしれない。
けれど、そんなわけにはいかない。
さまざまな事情で外に出ていく。そして実感している。

そういう暮しの中で、一年中同じ感覚を保つということは、終生変らぬ感覚のままということでもある。
そんなことがあるだろうか。

だから私はデジタルディスク再生における柔軟性を、コントロールアンプに求める。
別項「ミキサーはコントロールアンプたり得るのか」で、そのことについて書いていく。
これも、いま私が考えているコントロールアンプ像であり、
ここで書いていくことも、別のコントロールアンプ像である。

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その3)

CDプレーヤーの出力は2Vrmsで、それまでのチューナーやテープデッキよりも出力電圧が高い。
ラインアンプのゲインが、CD登場以前のままではボリュウムをかなり絞り気味になる。
コントロールアンプのライン入力の感度も従来と同じというわけにはいかなくなってきた。

2Vあれば、ゲイン的にラインアンプは必要としない。
パワーアンプに直接接続すればいい。
レベルコントロールがパワーアンプ側にあれば、多少使いにくさはあるが、
パッシヴのフェーダーすらいらない。

デジタル信号処理が進歩したことでデジタルボリュウムも進歩している。
そうなってくるとパワーアンプ側のレベルコントロールもいらなくなる。
リモコンでレベルコントロールができる。使いにくさはなくなる。

しかもCD登場直前のコントロールアンプは、音質向上を謳い機能を省いたモノが多かった。
入力セレクターとレベルコントロールくらいの機能しかないモノもあった。
ならばいっそのことラインアンプは、もういらないんじゃないか、という発想が起るのが自然ともいえる。

そんなときに、いいタイミングでゼネラル通称がP&Gのフェーダーを使ったフェーダーボックスを製品化した。
けっこうヒットしたように思う。
しばらくしてより筐体をしっかりとつくったモデルも登場した。
こちらはしばらくステレオサウンド試聴室でもよく使っていた。

コントロールアンプの必要性を再考すべき時期が来ていた。
ステレオサウンドにいたとき、しっかりとこのことを再考していた、とはいえない。
反省がある。

離れてずいぶん経ち、こうやってブログを書くようになって考えている。
むしろCD(デジタル)だからこそ、コントロールアンプが必要だと、いまはいえる。

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その2)

コントロールアンプは不要と考える人が出て来た(もしくは増えてきた)のは、
やはりCD登場以降である。

長島先生。
ステレオサウンド 61号を読まれた方ならば、
長島先生もまたコントロールアンプ不要の人ではないか、ということになる。

マランツのModel 7を長島先生は使われていた。
Model 7は管球式コントロールアンプを代表するモデルでもあり、
コントロールアンプとしての機能は過不足なく備えている。

けれど長島先生はModel 7のフォノイコライザーのみを使われていた。
トーンコントロールやフィルター機能をもつラインアンプは使われていない。

そしてレベルコントロールはDAVENのアッテネーターで行なわれていた。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」。
ここでの瀬川先生の120万円の組合せ。
スピーカーはロジャースのLS3/5A、パワーアンプはルボックスのA740、
アナログプレーヤーはEMTの928。
コントロールアンプはない。

928にはイコライザーアンプが内蔵されている。
A740にはレベルコントロールがフロントパネルについている。
コントロールアンプがなくても最低限の機能は備えている。

もちろん予算が120万円と制約されていなければ、なんらかのコントロールアンプを選択されていたはず。
けれど制約の中とはいえ、ここで瀬川先生はコントロールアンプなしの組合せをつくられている。

とはいえ、CD登場以前はコントロールアンプを省こうとする人はそうはいなかったと思う。
それがCDの登場後、オーディオ雑誌でも取り上げられるし、実際の製品も登場するほど、
コントロールアンプの存在が稀薄になっていった。

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その1)

NTi AUDIOFLEXUS FX100に強い関心をもっている。

この関心の強さは、
パノプティコンとしてのコントロールアンプ像を考えていくうえで深く関係してくると考えているからだ。

コントロールアンプは不要という人はいる。
アナログディスクを聴くにしても単体のフォノイコライザーアンプとパッシヴのフェーダーがあればいい、
CDも同様にCDプレーヤーとパッシヴのフェーダーがあれば、そのままパワーアンプに接続できる。

こういう人は、余分なものを通すと必ず音は悪くなる、という。
そしてシンプル・イズ・ベストだともいう。
だが、パッシヴのフェーダーを使い、コントロールアンプを省くことが、シンプルとなるのか。
それについては、別項でこれから書いていくとして、
実は私も一時期、パッシヴのフェーダーを使っていた。

定インピーダンスのアッテネーター、それもH型のバランス仕様のものを使いバランス伝送でやっていた。
もちろんインピーダンスマッチングもやっていた。

これはこれならではの音の良さはあった。
それでも、いまはコントロールアンプは必要とする考えである。

フェーダーだけのモノをパッシヴ型という、
一方、増幅回路をもつモノをアクティヴ型ともいう。

パッシヴとアクティヴ。
パッシヴでコントロール可能なのはレベルだけである。
アクティヴとなると、どうなるのか。
パッシヴとあまり変らないアクティヴも少なくない。

エレクトロニクスは進歩している。
特にデジタルの信号処理技術は驚くほどの進歩である。
だからFLEXUS FX100もあらわれてきた、といえよう。

ならばより積極的なアクティヴなコントロールアンプの出現を、私は望んでいる。
それがパノプティコンとしてのコントロールアンプである。

Date: 12月 12th, 2014
Cate: コントロールアンプ像

ミキサーはコントロールアンプたり得るのか(その2)

マーク・レヴィンソンが送り出したコントロールアンプといえば、
まずマークレビンソン・ブランドのLNP2があり、それから機能を絞った薄型のJC2(ML1)、ML6、ML7が続き、
チェロ・ブランドのAudio Suitがある。

チェロ時代にはEncoreも出しているけれど、
機能的に捉えた場合、EncoreはML1、ML7的位置づけになるので割愛する。
その後のレッドローズ・ミュージック、現在のダニエル・ヘルツに関して、あえて取り上げない。

これら三つのコントロールアンプの形態で、
私がミキサー的なだなと感じるのは、LNP2よりもAudio Suitのほうである。

これら三つのコントロールアンプは、いずれもモジュール構成をとっているが、
そのモジュールの考え方は同じとはいえないところがある。

LNP2、JC2のころのモジュールは、いわばOPアンプ的モジュールである。
プラスチックの比較的小さなケースに回路基板をおさめ、ピッチで固めている。
ICタイプのOPアンプが、大きくなりディスクリート構成になったものといえる。

ML7、ML6A以降のモジュールはプラスチックのケースはなくなり、基板もかなり大型になっている。
モジュールといえばそうなのだが、視覚的にはメイン基板の上にサブ基板がコネクターを介して取り付けられている。

LNP2にはモジュールを追加することができた。JC2ではMCヘッドアンプを追加できた。
ML7以降になると、追加することはできなくなっている。
フォノイコライザー用の基板がMM型カートリッジ用とMC型カートリッジ用が用意されていたくらいだ。

これらとAudio Suitは、
モジュールの考え方・使い方が違っていて、その点がLNP2よりもミキサー的と感じるところへつながっている。