Archive for category コントロールアンプ像

Date: 9月 8th, 2019
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その9)

別項「ある写真とおもったこと(その12)」で、
録音された音楽の共通体験ということでは、
CD、CDプレーヤー以上に、一歩も二歩も押し進め、活かしたのがiPodだ、と書いた。

iPodといっても、かなり世代を重ねているし、ヴァリエーションもある。
それに、いまではiPodではなくiPhoneにとって代られている。

iPodといっても,そこに音の違いがま:ったくないわけではないし、
付属のイヤフォンにしても変ってきているし、
同時代のイヤフォンにしても、製造工場が複数あって、
音が同じというわけではない、というウワサもきいている。

CDをリッピングしてiPodで聴く。
すべてが同じ音で鳴っているわけではないが、
それでもアナログディスクをアナログプレーヤーで再生した音の違いの大きさからすれば、
ほとんどないものということだってできる。

つまりiPodは、CDとCDプレーヤーの登場によってスペックの画一化されたのを、
音のうえでも画一化していった、といえる。

CDプレーヤーは、スペックは基本的に同じでも、
ローコストの製品と最高性能をめざした製品とでは、音は大きく違う。

しかもCDプレーヤーの先には、アンプがあり、スピーカーがあり、
部屋の違い、鳴らし手の違いなどがあり、実際に鳴ってくる音は、
元のスペックが同じとは思えぬほどの違いを聴かせるのも事実である。

iPodは、そこが違う。
それを意図していたのかそうでないのかはわからないが、結果としてそう見える。
しかもiPodと付属のイヤフォンの普及は、
CDとCDプレーヤーが成し遂げられなかった(あえてこう書いている)領域で、
画一化といえるほどの音楽の共通体験を、ほぼ実現している。

このことは、ものすごいことであり、
だからこそ、その画一化(抑圧)から逃れたい、と思う(願う)人が出てくる。

いまのヘッドフォン、イヤフォンのブームの根っこは、
そのへんにあるようにも感じている。

Date: 9月 7th, 2019
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その8)

1982年に登場したCDとCDプレーヤーの登場は、
現象として捉えてみると、オーディオに画一化をもたらした、といえるのではないか。

CDの規格は、サンプリング周波数が44.1kHzで、量子化数は16ビットである。
一体型のプレーヤーであっても、セパレート型のプレーヤーであっても、
この点はまったく同じである。

さらには一万円程度で買えるローコストのCDプレーヤーであっても、
百万円、さらにもっと上の価格帯のCDプレーヤーであっても、
そのスペックはCDの規格によって制約されているから、
基本性能としては、同じといえる。

さらには再生の、この規格は、
録音側のスペックにもなっていった。

CD登場以前の、レコード会社はそれぞれにデジタル録音を研究・実験、
実用化に向けていた。

サンプリング周波数もまちまちだった。
16ビットもあれば14ビットもあった。

それがCD登場により、44.1kHz、16ビットに統一されてしまった。

CDというフォーマットの登場は、画一化である。

画一化には、抑圧という側面もある。
規格というものは、すべてそうなのかもしれないが、
それでもアナログ時代の規格と、デジタル時代の規格とでは、
画一という点では、ずいぶん違う。

画一化は浸透した。
浸透したからこそ、それを抑圧と感じる人が出ていた、とは考えられないだろうか。

アナログディスクのブーム、さらにはカセットテープのブーム、
そういったことを何かで目にする度に、
ブームの理由は一つではないはずだが、
それでも抑圧からの逸脱行為として、アナログディスクの選択、
カセットテープの選択があるようにも思うのだ。

Date: 9月 7th, 2019
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その7)

コントロールアンプにはバラストの役割がある、と(その6)で書いた。
つまりコントロールアンプは、秩序の象徴である。

「プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン」で、
コントロールアンプとプリメインアンプのデザインの違い、
それも本質なところでの違いはなんなのかについて考えている。

まだまだ考えていかなければならない、と思っているが、
コントロールアンプは秩序の象徴である、
これはいまのところの一つの結論である。

秩序の象徴であるコントロールアンプを、
CDとCDプレーヤーの登場によって、一部ではコントロールアンプ不要論が起ってきた。

一つの試みとして、コントロールアンプを省いて、
パッシヴ型のフェーダーを使うというのは理解できる。

パッシヴ型フェーダーを試して、どう思ったのか、どう考えたのか。
コントロールアンプはもう要らない、となったのかと、
やはりコントロールアンプは必要、となったのか。

どちらが正しいというよりも、
そこでコントロールアンプの役割を、どれだけ理解したか、ではないのか。

と同時に、CDプレーヤーの定格出力が2Vと高くなければ、
コントロールアンプ不要論は出てこなかったのか、についても考えてみる必要はある。

Date: 7月 5th, 2018
Cate: コントロールアンプ像

コントロールアンプと音量設定の関係(その1)

audio wednesdayで、マークレビンソンのLNP2を鳴らしたのは昨晩で三回目。
ステレオサウンドの試聴室にも、それ以前のリファレンスとしてLNP2があった。

何度か試聴室で鳴らしたことがある。
そのころはさほど強く意識してこなかったことを、
長いブランクをはさんで、いまLNP2にこうやって触れると感じることがあった。

感じること、というより、自分の行動をふりかえって気づいたことがあった。
それは音量設定を、細かくやっている自分に気づく。

LNP2のブロックダイアグラムからわかるように、
左右独立のINPUT LEVELと、
いわゆるボリュウムにあたるOUTPUT LEVELの設定は、
物理的なS/M比に関係してくる。
それゆえに細かく調整する必要も出てくるのだが、
ここで書きたいのは、そういう理由ではなく、ツマミの形状、大きさ、感触、
レベルコントロールのツマミ周囲の表示、
そういった要素によって、積極的に(細かく)レベル調整をする気になる、ということだ。

個人的には径の大きなツマミは好まない。
ツマミじゃなくて、ニギリだろ、と悪態をつきたくなるような大きなツマミはイヤだ。

中に使われているポテンショメーターが同じなら、ツマミの径が大きい方が、
周囲の表示もより細かくできるのは頭でほかっていても、
なんとなく径が大きい(というか大きすぎると感じる)ツマミだと、
こんなところでいいかな、と逆になってしまう。

ではツマミの径がちょうどよい小ささならばいいのかというと、
例えばマッキントッシュのツマミとLNP2のツマミの径はそれほど変らない。

けれど、そこには感触の違いがまずある。

Date: 3月 13th, 2018
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その表示)

その3)に書いているように、
ルボックスのプリメインアンプB750MK2の3バンドのトーンコントロールの真ん中の帯域は、
MIDではなく、PRESENCEとなっている。

3kHzより上の帯域をいじると、確かに空気感が変っていく。
ルボックスがMIDとはせずに、PRESENCEとするのもうなずける。

マーグオーディオ(maag AUDIO)というプロ用のイコライザーがある。

マーグオーディオのイコライザーにはAIR BANDとAIR GAINと呼ばれるふたつのツマミがある。
AIR BANDは周波数の切り替えで、2.5kHz、5kHz、10kHz、20kHz、40kHzから選択できる。
AIR GAINは文字通りブースト量の調整で、減衰はできない。

AIR BAND+AIR GAIN、確かに空気感である。

Date: 11月 28th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その6)

マッキントッシュ号の、
青柳圭亮氏による「マッキントッシュ製品の変遷」という記事の中に、
マッキントッシュ・クリニックのことが書かれている。
     *
 末尾ながら、マッキントッシュ社のアフターサービスで、あまり日本人には知られていない、マッキントッシュ・クリニックのことに触れてみたい。原則的にはマッキントッシュ・アンプ類の保証期間は、オーナーズ・マニュアルのポケットに入っている、「3YEARS SERVICE CONTRACT」に署名し、各欄に記入して郵送することによって、始めて三年間の無償補修が受けられることになっている。このコントラクトを発送しない場合は、購入時から90日間の保証のみというわけだ。このカードを受領すると、本社ではそれをファイルし、以後そのアンプがいつ、どういう修理を受けたかすぐに調べられるようになっている。従ってある傾向的な故障が続くとすぐに改良、その他の処置が取れるわけで、人間のカルテのようなものである。しかしマッキントッシュ・クリニックというサービス・システムほど私を驚かせたことはなかった。名目上は三年間の保証となっているけれども、マッキントッシュの人気の秘密は実は、このクリニックにこそあるのである。すなわち、全米各地を一州何都市か定めて、一年に一度このクリニックチームが巡回する。各都市のデポとなるオーディオ・ショップはこのクリニックの開催を前もって自分のコミュニティーの顧客に店頭或はラジオコマーシャル等で知らせる。そして通常クリニック・チームその店頭の一角を借り、自分たちの持って来た、ヒューレット・パッカード、テクトロニクス等の超一流測定器を並べて持ち込まれるアンプを待つわけである。又このサービスは自社製品にだけ適用するのではなく、例えばサイテーション、マランツ等と言った他社製あるいは自作のアンプの特性もこれらの測定器で測りデータを無料で対数グラフに移し取って渡してくれる。そしてマッキントッシュ製品についていえば、それがどんなに古い機種でも、トランス以外の故障であるならば、その場で、見ている前で、ものの20分とかからぬうちに必要部品を取り替え、データを取って返してくれる。しかもこれが一切無料なのだ。
     *
このマッキントッシュ・クリニックの測定のところだけでも、
リスニングルームでできるようにならないのか。
しかも誰にでもできるようにならないのか。

そのために必要なモノはなんのなのか、と考えての、
ここでのタイトルで「パノプティコンとしてのコントロールアンプ像」である。

Date: 11月 28th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その5)

パノプティコン(Panopticon)は、全展望監視システムのことである。
もっと詳しいことを知りたい方はGoogleで検索していただきたい。

ここでテーマとして考えているのは、
コントロールアンプがオーディオシステム全体を監視・管理・制御できるようになり、
さらにはリスニング環境を含めてのことである。

たとえば、こんな機能があっていいと思うのは、
個々のオーディオ機器の診断である。

どんなオーディオ機器であっても、初期性能をずっと維持できるわけではない。
使っているうちに性能は、少しずつ衰えていく。

音が出なくなるとか、ノイズが出るようなったとか、そういう症状が出れば、
修理に出すけれど、そういう症状が出なくとも、初期性能は劣化している。

神経質な人であれば、定期的にメーカー、輸入元にチェックに出すかもしれない。
けれど、どこといって異状の感じられない機器を、しばらくのあいだとはいえ、
リスニングルームから持ち出すことは、気乗りしない。

移動すれば、それだけで事故に合う可能性が出てくる。
たいていは無事戻ってくるだろうが、万が一ということが絶対にないとはいいきれない。
それに振動や衝撃がオーディオ機器に与える影響もある。

できればリスニングルームにおいて、初期性能がどれだけ維持できているのか、
どれだけ性能が劣化しているのか、故障につながるような劣化が発生していないか、
そういったことを、特別な技術的な知識なしに可能になれば──、とおもう。

以前マッキントッシュは、マッキントッシュ・クリニックというアフターサービスを行っていた。
いまもやっているのどうかは調べていないが、
1970年代のアメリカでは行われていたことが、
ステレオサウンド「世界のオーディオ」のマッキントッシュ号に載っている。

Date: 9月 10th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その5)

SE-P900とAudio Paletteとでは、
3バンドと6バンドという違いはあるが、どちらもパラメトリックイコライザーである。

価格は10倍以上違っていた。
知名度は、どちらも高いといえる。

なのにオーディオ雑誌での取り上げ方は違っていた。

たしかにマーク・レヴィンソンは話題作りがうまい男である。
でもチェロと輸入元のRFエンタープライゼスに対して、
ソニーはひじょうに大きな会社である。

それでも違いが生じたのは、そういったことよりも、
扱いやすさ、もっといえばとっつきやすさに関係していたのではないだろうか。

SE-P900に触れたことはない。
その使い勝手についてあれこれ書けるわけではないが、
パラメトリックイコライザーという、
いわばプロの現場から生れてきたといえる、ふたつの製品であっても、
SE-P900とAudio Paletteでは、まとめ方が違う。

Audio Paletteはイコライザーの中心周波数は固定である。
イコライザー帯域幅も固定である。

SE-P900は写真で見ているだけであるから、はっきりとはいえないが、
ツマミからすれば左右独立で調整が可能のようだ。
それは中心周波数、帯域幅、レベルともに左右独立と思われる。

さらに低域と高域はピーキング特性とシェルビング特性を選べるようになっている。
3バンドとはいえ、かなりこまかな調整ができる、といえよう。

SE-P900の操作性とAudio Paletteの操作性を見ていると、
まとめ方のうまさがAudio Paletteにはあり、
そのうまさとは、
パラメトリックイコライザーにふだん接していない人に対してのアプローチでもある。

Date: 9月 10th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その4)

3バンドのトーンコントロールということで思い出す機種がまだある。
エスプリ(ソニー)のSE-P900である。

1981年の発売、
ソニーはSE-P900をアコースティックイコライザーと呼んでいたから、
トーンコントロールと称しては失礼かもしれないが、
3バンドのパラメトリックイコライザーである。

当時のソニーの広告を見ればわかるが、かなりの力作といえる。
価格は200,000円だった。

この年の秋、テクニクスからSH8065が登場した。
33バンドのグラフィックイコライザーで79,800円、
翌年にSH8075が100,000円で登場している。

パラメトリックイコライザーとグラフィックイコライザーはひとくくりにできないが、
3バンドで20万円、33バンドで10万円。

そういう製品だけに、SE-P900の広告では、次のように謳っていた。
     *
感性を生かしたカラーレーションを試みてほしい。
と主張する以上、このイコライザーのクオリティ
TA−E900と同等(ベストペア)に仕上げてあります。
     *
TA-E900とはエスプリ・ブランドのコントロールアンプで、600,000円していた。
SE-P900は、もっと話題になってもおかしくない製品だった。
けれど、ほとんど話題になることはなかった、と記憶している。

SE-P900の三年後に登場したチェロのAudio Paletteは、あれだけ話題になったのに……、
といまはおもう。

Date: 8月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その6)

歌人の上田三四一(みよじ)氏は、短歌について
「活気はあるが猥雑な現代の日本語を転覆から救う、見えない力となっているのではないか」
と語られていることは、(その3)で書いている。

この上田三四一氏のことばを置き換える。
「活気はあるが猥雑な現代のオーディオを転覆から救う、見えない力となっているのではないか」
こう置き換えてみると、コントロールアンプの役割としてのバラストが、
どういうことであるのか、朧げながらではあるが少しははっきりしてくる。

ずっと以前から、優れたコントロールアンプは、ほんとうに少ない、
そういわれ続けてきている。
音だけなら……、けれどコントロールアンプとして見た時に……、
そんなこともいわれたりしてきている。

パワーアンプに優れたモノは多いし、ある意味広いともいえる。
けれどコントロールアンプとなると少ないし、狭いともいえるところがある。

ずっと以前から、そういわれているし、多くのオーディオマニア、
それにオーディオ評論家も、同じにおもってきている。

それでも、なぜなのか、についてはっきりと答えられる人はいなかった。
にも関わらず、多くの人がそう思っているということは、
コントロールアンプの役割を、ひじょうにぼんやりとではあるが、
それだけの人が認識している、ということなのかもしれない。

CDが主流となったころ、コントロールアンプは不要だ、とばかりに、
パッシヴのフェーダーを使う人も現れた。
実験、試みとしては、パッシヴ型フェーダーに関心はあったし、私もいくつか試した。

そういうことをやってみると、コントロールアンプの役割というものが、また見えてくる、
というより感じられてくる、といったほうが、より正しいか。

コントロールアンプはバラストとしての役割がある。
そのことを少なからぬ人がなんとなくではあっても感じていたから、
優れたコントロールアンプが、ほんとうに少ない、といわれ続けてきたのであろうし、
このバラストとしての役割を、作り手側がどれだけに認識しているのか、
そこがはなはだこころもとないから、優れたコントロールアンプが少ない理由とも思う。

Date: 6月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その3)

3バンドのトーンコントロールで、
それぞれの帯域のことを低音、中音、高音と、
日本語ならばこうなるが、英語だとどうなるのか。

BASS(もしくはLOW)、MIDRANGE、TREBLE(もしくはHIGH)と、
たいていのアンプでは、こう表示されている。

中音、MIDRANGEとは、トーンコントロールの場合、どのあたりの周波数なのか。
カタログ発表値を見ていくと、
マークレビンソンのLNP2は5kHzである。
サンスイのアンプでは1.5kHz、マランツは700Hz、
マッキントッシュのC504だと750Hz、
ルボックスのプリメインアンプB750MK2は3kHzとなっている。

マランツがいちばん低くて700Hz、マークレビンソンがもっとも高くて5kHz。
どちらもフロントパネルの表示はMIDとなっていても、3オクターヴ近く違うわけだ。

700Hzと5kHzでは、同じMID(中音)といっても、
ツマミをまわしてみたときの音の変化はそうとうに違う。

音の感じとしては、700Hzあたりは可聴帯域(20Hzから20kHz)のほぼ中心であり、
再生音の土台ともいえる帯域の中心であり、
オノマトペ的にいえばコンコン、カンカンといった感じであり、
5kHzともなると、1オクターヴ下の2kHzあたりのキンキンと耳につきやすい感じから、
シャンシャンと浮き上るような感じになっていく。

ここで注目したいのはルボックスの表示である。
B750MK2ではMIDとはなっていない。
PRESENCEとなっている。これはうまい表示だと思う。

B750MK2の3kHzよりも高いLNP2のMID(5kHz)は、
PRESENCEと表示したほうが適切というものだ。

Date: 6月 12th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その2)

3バンドのアンプということで最初に思い浮べるのは、
私の場合は、やはりマークレビンソンのLNP2であり、
次に浮ぶのはマランツのプリメインアンプである。

といっても1970年代のマランツであり、
アメリカで設計して日本で製造していたころのプリメインアンプ、
コントロールアンプは3バンドのトーンコントロールを装備していた。

Model 1070(69,900円)でも、トーンコントロールは3バンドだった。
型番が四桁時代のアンプのすべてが3バンドだったわけではないが、
それでも四桁型番のマランツのアンプといえば、
私にとっては3バンドのトーンコントロールと、テープ入出力の充実ぶりが、
まず特徴として浮ぶほどに印象に残っている。

1070の上級機のModel 1150 MKII(129,000円)、
Model 1250(195,000円)も3バンドで、しかも左右独立コントロールになっている。

この時代のマランツは日米ハーフだった。
純国産のアンプで3バンドのトーンコントロールといえば、サンスイのアンプだ。
こちらはブラックパネルと3バンドのトーンコントロールが、
特徴としてすぐに頭に浮ぶほどだ。

プリメインアンプもコントロールアンプも3バンドなのは、マランツと同じである。
AU888、AU5900(53,000円)、AU6900(65,000円)、AU7900(85,000円)、
AU9900(140,000円)、AU10000(148,000円)、
AU11000(180,000円)、AU20000(280,000)などのプリメインアンプが、
3バンド仕様になっていた。

不思議なのはマランツのプリメインアンプのトップモデル、
Model 1200B(325,000円)は2バンド仕様ということ。
設計時期の違いによるものなのか。

サンスイのプリメインアンプは、上記モデルのあとに登場したAU607、AU707、
そしてダイヤモンド差動回路を搭載したAU-D907、AU-D707、AU-D607が、
ベストセラーモデルになるわけだが、トーンコントロールは2バンド仕様になっていた。

AU-D907 Limitedは使っていた。
そのころはまだ3バンドのトーンコントロールを使ったことがなかったから、
2バンドであることに特に不満も疑問も感じなかったが、
のちにLNP2の3バンドのトーンコントロールにふれて、
なぜサンスイは3バンドのトーンコントロールをやめたのか、と思うようになった。

Date: 6月 11th, 2017
Cate: コントロールアンプ像

トーンコントロール(その1)

私がオーディオに興味を持ち始めたころぐらいから、
国産のアンプにはトーンコントロールをバイパスするスイッチがつくようになっていた。

トーンコントロールをバイパスすれば、
それだけ信号経路はシンプルになり、音の鮮度はたいていの場合、高くなる。

トーンコントロールの有用さはわかっていたし、
瀬川先生がよく書かれていた。
なのでバイパスすることもあれば、積極的に使うことも多かった。

トーンコントロールは必要なのだろうか。
瀬川先生は、そういわれていた。
確かにそうだ、とうなずける。

一方で長島先生は、トーンコントロールでいじれるのは音の表面的なところであり、
本質的な性格は変化しない、といったことをいわれていた。
これも、確かにそうだ、とうなずける。

まるでトーンコントロールにポリシーがないように思われるだろうが、
自分で使ってみると、瀬川先生のいわれることも長島先生がいわれることも、
わかるとしかいいようがない。

これも何度も書いていることだが、どんな方式にもメリットとデメリットがあるわけで、
そこをどう理解して使うか、でしかない。

それでもトーンコントロールを使わなくなってきたのは確かである。
まずトーンコントロールが省かれるアンプが、1980年ごろから増えてきた。
まずコントロールアンプから省かれ、
プリメインアンプからも省かれるようになってきた。

そうなると使いたくともトーンコントロールがないのだから、どうしようもない。
トーンコントロールは不要になってきたのだろうか。

私にとって必要なトーンコントロールは? ということをだから考えてみた。
一般的な低音と高音だけの、2バンドのトーンコントロールは正直、あまり必要性を感じない。

私にとって必要なトーンコントロールは、中音もコントロールできる、
3バンドのトーンコントロールである。

このことはマークレビンソンのLNP2を触ったことのある方ならば、わかってくれるだろうか。
マーク・レヴィンソンがJC2にトーンコントロールをもうけなかったのは、
2バンドならば不要と考えたためではないだろうか……、と勝手に妄想するくらいに、
LNP2のトーンコントロールの中音のツマミは動かしてみると、その有難みがわかる。

Date: 11月 23rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その5)

CX10000、MX10000が登場するまで、
ヤマハのアンプのフロントパネルは、セパレートアンプが黒、プリメインアンプはシルバーだった。
(プリメインアンプでは、普及モデルで若者向けを謳っていたCA-V1は例外的にブラックパネルだった)

CI、BI、C2、B2をはじめ、その後のB3、C4、B4、C6、B6、C70、B70などすべて黒だった。
それが100周年記念モデルということもあってか、
CX10000、MX10000は黒ではなく、かといってもシルバーでもなく、
ガンメタリックのヘアーライン仕上げとなっている。

CX10000登場時は、単に100周年記念だからなのだろうな、というぐらいにしか捉えていなかった。
おそらくそうであろうとは思う。
でもそれだけでもないのでは、といまは思っている。

CIはアナログ時代の多機能コントロールアンプである。
CX10000はデジタル時代を迎えての多機能コントロールアンプだ。

CIにはフォノイコライザーが搭載されていた。
CX10000にはフォノイコライザーは搭載されていない。
HX10000という単体のフォノイコライザーアンプが、少し遅れて登場した。

HX10000は、フォノイコライザーアンプとしては、かなり大きい。
HX10000と同じものをCX10000に内蔵するのは、CX10000本体が大きくなりすぎるし、
それにデジタル信号との干渉を考えても、独立した形しかない。

CIとCX10000の間の12年、
コントロールアンプに求められるものがずいぶんと変化しようとしていることを、
CIとCX10000のデザインとともに、フロントパネルの色が表しているように見える。

同時に、CIはなぜ黒なのかという、別項のテーマに関係することも考えてしまう。

ステレオサウンドは81号の新製品紹介のページでCX100000をMX10000、CDX10000とともに取り上げている。
柳沢功力氏が担当されている。

その半年後、83号で長島先生がCX10000だけを、
「エキサイティング・コンポーネントを徹底的に掘り下げる」を取り上げられている。
この記事の写真の撮影は、私の指示で撮影してもらった。
写真の説明文も、私が書いた。

いまごろになって、CIとCX10000を並べての写真を撮影しておくべきだった、と後悔している。

Date: 11月 20th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン

コントロールアンプと短歌(その4)

ステレオサウンドのバックナンバーを読み返していると、
いまになって気づくことがある。

ヤマハのコントロールアンプCX10000のことを、いま思い出している。
CX10000はヤマハ創業100周年記念モデルとして、1986年に登場した。

CX10000の他に、パワーアンプのMX10000、CDプレーヤーのCDX10000、
スピーカーシステムのNSX10000があった。

100周年を記念しての10000番シリーズの中で、いま注目したいのはCX10000である。
CX10000は、デジタル信号処理を採り入れたコントロールアンプである。

CX10000の登場からいまでは約30年が経過している。
デジタル信号処理の進化はすごいものがあった。
だからCX10000のデジタル信号処理の性能、それと音について語ろうとは思っていない。

ここでのテーマである「コントロールアンプと短歌」ということで、
CX10000を見直すことができないか、と思っている。

CX10000はブロックダイアグラムをみれば、アナログ系は実にシンプルになっている。
そこにデジタル信号処理が加わり、当時としてはかなり複雑(細かな)なことが可能になっていた。

1986年当時はiPadもiPhoneは、それこそ影も形もなかった。
つまりデジタル信号処理に関する操作は、すべてコントロールアンプだけで完結している必要があった。

タブレットのようなタッチディスプレイもなかった。
CX10000にはふたつのディスプレイがついているが、
どちらも数字と文字だけの表示である。表示領域も狭いし、モノクロ表示である。

CX10000はレベルコントロールだけがロータリー型で、
あとはすべてプッシュボタンである。
ただ正確にいえばバランスコントロールもロータリー型であるが、
フロントパネルにはなく、右前脚の隣にひっそりとつけられている。

ボタンを多用したコントロールアンプとしては、
CX10000の前にアキュフェーズの C240があった。
C240はレベルコントロール以外のすべてボタンにはしていなかった。

CX10000の写真をみながら、いまごろ思っているのは、
CX10000のデザインに関する苦労である。

いまならばiPadにインターフェースをすべてもっていって、
コントロールアンプ本体は、いわゆるブラックボックス化していくだろうが、
1986年はそういうわけにはいかない。

少ない情報量のディスプレイといくつものボタンとその操作だけで、
CX10000の多機能を、使い手に直感的に理解してもらう必要がある。