オルトフォンのSPUよりも前に登場し、
いまでは製造中止になってしまったものの、かなりのロングランを続けたのが、JBLのD130である。
このD130も、SPUと同じように極初期のモデルと後期のモデルとのあいだには、いくつかの変遷がある。
これも型番は変らなくても、時代によって変化が見られる。
もっとも厳密にいえば、極初期のD130は、ユニット本体の銘板には「D-130」と表記されている。
細かなことだが、Dと130の間にハイフンがはいっている。
このD-130の写真もインターネットで検索すれば、すぐに見つかる。
われわれがD130ときいてすぐにイメージするユニットと基本的には同じであっても、
細部にはいくつもの違いをすぐに見つけられる。
でも、どれもJBLの15インチのユニット、D130である。
D130は1980年代のコバルトの極端な不足によりアルニコマグネットからフェライトへと仕様変更された時に、
D130Hは型番にも変更があった。
D130Hも1980年代半ばには製造中止になっている。
D130と似た型番に、E130というユニットがある。
口径もコーン紙もD130と同じであるから、D130の後継機として受けとめている人も中にはいるようだが、
E130は正確にはD130Fの後継機である。
D130とE130は何が違うのか。
D130はショートボイスコイルである。
E130はそうではない。磁気回路の前側プレートの厚みとボイスコイル幅が同じになっている。
D130とE130のコーンアッセンブリーは同じのはずだから、
D130F及びE130では前側プレートが、D130よりも薄い、ということになる。
ところで、D130の「D」は何を意味しているのだろうか。
ランシングがアルテックを辞めた理由として「家庭用の美しいスピーカーをつくりたい」といっていた──、
こんなことが昔からいわれている。
ただ真偽のほどはさだかでない。
アルテックとは最初から5年契約だったことはわかっている。
だから単純に、その時期が来たからだったのかもしれない。
けれどD130の「D」は、domesticの「D」かもしれない、ともおもう。
D130のウーファー版の130Aにも、最初はD130AとDがついていた。
175も最初はD175だった。
やはり「D」はdomesticを意味しているのだろうか。
たぶんそうなのだろう、とおもうとともに、私個人にとってD130の「D」は、
まだ別の意味をもつ。
differentの「D」である。
それは私にとって、D130は「異相の木」であるからだ。