続・再生音とは……(その12)
ロボット(robot)は、カレル・チャペックの戯曲「R.U.R.」において、
初めて提示され、このロボットの着想にはゴーレム伝説が影響していると、チャペックが述べている。
ゴーレムは泥人形であり、機械仕掛けのロボットではない。
その意味では、ゴーレムは、アトムやその他のロボットよりも、
イメージとしてはピノキオに近い、といえるだろう。
ピノキオは、意志をもって話をすることができる木をゼペットじいさんが人形に仕上げたものだ。
ピノキオにも、手足を動かしたりする機構は、ゴーレム同様ない。
意志をもった木であっても、ピノキオに人間の脳に相当するものがあるわけではない。
ピノキオのストーリーについては多くの人が知っていることだから省くけれど、
小学生の時、学校の図書館にあったピノキオの本の結末と、
その10年以上後に文庫本で読んだピノキオとでは、若干ディテールに違いがある。
ピノキオは人間になる。
小学生のころ読んだ本では、木で作られたピノキオの体がそのまま人間の肉体へと変化していき、
人間の少年になる。
ところが文庫本では(こちらは原作通りなのだが)、
ピノキオの意志(魂)が、新たに与えられた人の体に、いわば乗り移るかたちで人間の少年となる。
そして抜け殻となった、それまでの自分の意志(魂)の容れ物であった木の体を見てつぶやく一言は、
オーディオマニアとしては、再生音とは何かを考えていく者としては、いろいろと考えさせられる。