ステレオサウンド 51号に「♯4343研究」の第一回が載っている。
サブタイトルには、ファインチューニングの文字があり、
JBLのプロフェッショナル・ディヴィジョンのゲーリー・マルゴリスとブルース・スクローガンをまねいて、
ステレオサウンドの試聴室で、実際に4343のセッティング、チューニングを行ってもらうという企画だ。
いまステレオサウンドでは、過去の記事を寄せ集めたムックを頻繁に出しているが、
こういう記事こそ、ぜひとも収録してほしいと思う。
この記事の中で、スピーカーのセッティングは、
ふたつのスピーカーを結ぶ距離を底辺とする正三角形の頂点が最適のリスニングポイント、となっている。
ステレオ再生の基本である正三角形の、スピーカーと聴き手の位置関係は、大事な基本である。
マルゴリスは、正三角形の基本が守られていれば、
スピーカーのバッフルを聴き手に正面を向くようにする必要はないと語っている。
その理由として、水平方向に関しては60度の指向特性が保証されているから、ということだ。
さらにスピーカーシステムにおいて、指向特性が広帯域にわたって均一になっていることが重要なポイントであり、4343、つまり4ウェイの構成のスピーカーシステムを開発した大きな理由にもなっている、として、
他では見たことのないグラフを提示している。
そのグラフは、水平方向のレスポンスが6dB低下する角度範囲を示したもので、
横軸は周波数、縦軸は水平方向の角度になっている。
十分に低い周波数では指向特性はほとんど劣化していない。周波数が上っていくのにつれて、
角度範囲が狭まっていく。
グラフはゆるやかな右肩下りを描く。
グラフ上には、4ウェイの4343、3ウェイの4333、2ウェイの4331の特性が表示されていて、
ミッドバスユニットのない4331と4333では500Hzを中心とした帯域で指向特性が劣化しているのがわかる。
4331ではこの帯域のほかに、トゥイーターの2405がないためさらに狭まっていく。
4343がいちばんなだらかな特性を示している。
ただしこれはあくまでも水平方向の指向特性であり、垂直方向がどういうカーヴを描くのかは示されていない。
マルゴリスは、指向特性が均一でない場合には、直接音と間接音の比率が帯域によってアンバランスになり、
たとえばヴォーカルにおいて、人の口が極端に大きく感じられる現状として現れることもある、としている。
別項でもふれているように、4ウェイ構成は、なにも音圧だけの周波数特性や低歪を実現するためだけでなく、
水平方向の指向特性を均一化のための手法でもあり、
私は、瀬川先生は指向特性をより重視されていたからこそ、4ウェイ(4341、4343)を選択され、
さらにKEFのLS5/1Aを選択された、と捉えている。
だから瀬川先生のリスニングルームに、4341とLS5/1Aが並んでいる風景は、
瀬川先生が何を求められていたのかを象徴している、といえる。