私がこんなことを考えていた時は、まだLPの時代でありCDは登場していなかった。
だからシンプル・イズ・ベストがほんとうに最上の方法であると仮定して、
その極端な例としてカートリッジに直接スピーカーを接ぐということを考えてみる。
MC型カートリッジの出力は小さい。MM型カートリッジでもMC型よりも大きいとはいえ数mVの値。
けれど、ステレオサウンド 43号に広告が載っているウイン・ラボラトリーのSDT10というカートリッジは、
0.5Vの出力をもつ(最大出力1V/RMSとある)。
しかもこのSDT10にはRIAAイコライザーを必要としない。
だからコントロールアンプのライン入力、もしくはボリュウム付きのパワーアンプであれば直接接続できる。
SDT10は実物を見ることもできなかった。
どういう音を聴かせてくれるのかはわからない。
けれど、カートリッジの発電方式によってはかなり高い電圧を得ることもできる。
そしてスピーカーの能率がそうとうに高いものがあれば、
カートリッジとスピーカーを、
音量調整さえ必要としなければ直接接続し鳴らすことも技術的には決して不可能ではない。
これは非常に極端な例をあえて考えているわけで、
オーディオを理解しようとしたとき、ときにはこういうふうに極端な例を考えたり、
極端な値を想定してみることも、私は必要だと思っている。
カートリッジとスピーカーの直接接続は極端すぎるから、
そこに音量調整もでき、音量もさらに得られるようにと考えたとき、
カートリッジとスピーカーの間に挿入するのは、非反転アンプなのか、反転アンプなのか。
アンプの動作の理屈はどうであれ、直感的には反転アンプのほうが、
カートリッジとスピーカーの直接接続に、より近い、と概略図を描いてみると、そうなる。
非反転アンプはNFBをかけようがかけまいが信号はアンプを通ることになる。
けれど反転アンプはNFBをかけたときとかけないときとでは、その信号経路が変ってくるようにも見える。
NFBをかけなれば反転アンプでも非反転アンプと同じにみえる。
だがNFBをかけた反転アンプであれば、
カートリッジとスピーカーを結ぶラインに直列にはいるのは、
昨日も述べたように入力抵抗と帰還抵抗であり、アンプは帰還抵抗に対して並列にはいるかたちとなる。
これはあくまでもOPアンプと抵抗だけの概略図を見た印象での話であることはわかっている。
それでも非反転アンプと反転アンプではNFBの作用が異るのではないか、と疑問をもったのが、
いまから30数年前のことである。