Archive for category トーラス

Date: 1月 6th, 2015
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その27)

その1)を書いたのが2010年3月、五年ほど経っている。
この項の(その26)も2011年2月ですでに四年前、
ずいぶんあいだをあけすぎたな、と思いながら、また書き始める。

「同軸型はトーラスなのか」というタイトルは、
その3)(その4)に書いたように、
「回」という漢字からの連想である。

パイオニアのS-F1のユニットは、まさに「回」の字そのものといえるからだった。

同軸型の「同」。
「回」の下の横棒を上にずらす。
口の部分の上にもってくると、同になる。
こんなこじつけめいたことも考えながら、書き始めた。

同軸型ユニットとはいっても、いくつかの種類がある。
最初から同軸型ユニットとして設計されたものと、そうでないのものとがある。

多くの同軸型ユニットは最初から同軸型として設計されたといえるが、
たとえばコーン型ウーファーもしくはフルレンジユニットの前面に、
コーン型もしくはドーム型トゥイーターを後付けしたユニットがある。
これも同軸型であり、私が昔鳴らしていたシーメンスのコアキシャルも、いわばトゥイーター後付け型になる。

ただ、ここで考えていきたい同軸型から、この手のモノは除外する。

Date: 3月 17th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×十・JBL SA600)

私の知る範囲ではコントロールアンプで逆相(反転アンプ)になっているモノは、
大半がラインアンプが反転(逆相アンプ)になっているのが大半である。

つまりフォノイコライザーは正相であることが多いから、
フォノ入力もライン入力も逆相となって出力されるわけである。

仮にフォノイコライザーが反転アンプであって、ラインアンプが正相だとしたら、
この場合、フォノ入力のみが逆相出力となり、ライン入力は正相出力となる。

フォノイコライザーもラインアンプも、どちらも反転アンプだとしたら、
フォノ入力は正相、ライン入力は逆相ということになり、システム全体の極性の管理がめんどうになってくる。

とにかくカートリッジからコントロールアンプ、パワーアンプ、スピーカーシステムまで、
ほぼすべてのコンポーネントに正相タイプと逆相タイプが混在していて、
しかもカタログや取扱い説明書に、この製品は正相(もしくは逆相)と謳っているわけではない。

どれが正相で逆相なのかは、
オーディオ雑誌やネットなどの情報であらかじめはっきりしていることもあるが、
トーレンスのカートリッジのように製造時期により、正相と逆相が混在しているから、
この問題は少しばかりやっかいでもある。

世の中には、左右チャンネルの極性さえあっていれば、
システム全体の極性が正相であろうと逆相であろうと、音はまったく変化しない。
だから、そんなことは気にする必要はない、と発言される方もいる。

聴く音楽(録音)によっては、たしかに判別しにくいことがあるのは事実ではある。
それでも、あくまでも判別しにくい、のであって、まったく音が変化しないわけではない。

Date: 3月 16th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×九・JBL SA600)

MM型カートリッジでもMC型カートリッジと同様にシェルリードのところ、
もしくはトーンアームの出力ケーブルのところで極性を反転させればいいんじゃないか、
そう思われる方もいるだろう。

けれどMM型カートリッジでは、原則としてここでの極性の反転は行えない。
MM型カートリッジはボディがアース側に接続されているからである。
MM型カートリッジは、一部の特殊なモデルを除き、
ヘッドアンプや昇圧トランスは必要としないから、この部分での反転も行えない。
アンプが正相アンプであるならば、そしてスピーカーシステムも正相であるならば、
システムの中に逆相のモノはひとつ(奇数)しか存在しないので、
システム全体の極性は逆相になってしまう。

アンプではどうかというと、意外にも反転アンプはいくつか存在してきている。
1980年代にアメリカから登場してきた真空管アンプの中には、
回路構成を極力単純化するために、真空管1段による増幅回路を採用したモデルがある。
有名なところではカウンターポイントのSA5、SA3、
それからミュージックリファレンスのRM5がそうなっている。

これらのフォノイコライザーは正相アンプなのだが、
ラインアンプが反転アンプなので、フォノ入力もライン入力も逆相となって出力される。

QUADの44も、実は反転アンプとなっている。

Date: 3月 15th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×八・JBL SA600)

たとえばEMTのカートリッジをEMTのプレーヤー内蔵のイコライザーアンプを通さずに、
単体のカートリッジとして使い、スピーカーがJBLであれば、
逆相と逆相がシステムの中にふたつあるため、結果としてトータルの極性は正相となる。

これだけだったらシステム全体の極性に神経質になることはない。
けれど実際には、MC型カートリッジに必要となる昇圧トランス、ヘッドアンプの中にも反転型、
つまり入力と出力の位相が反転(つまり逆相)となるモノが、少なくない。
そうなると逆相がシステム内に3つ(奇数)存在するとなると、トータルでは逆相となる。

この場合、MC型カートリッジなので、EMTのカートリッジのようにシェル一体型でなければ、
シェルリードの接続のところで極性を反転させればいい。

ただ逆相カートリッジと思われているモノでも、
ロットにより正相であったり逆相であったりすることもある。
EMTのコンシューマー版といえるトーレンスのMCHが、そうだった。
こうなると、正相なのか逆相なのかは製品知識で判断するのではなく、
耳で判断するしかない。

EMTもトーレンスのシェル一体型なのでシェルリードで極性を反転させることはかなり困難だが、
トーンアームの出力ケーブルのところで反転させることは可能だ。
ハンダ付けをやりなおす手間は必要となるけれども。

MC型カートリッジであれば、このように極性を反転させて正相とすることが可能だが、
MM型カートリッジとなると、そうはいかない。
逆相型のカートリッジはMC型だけではなく、MM型、MI型などにも存在する。

Date: 3月 14th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×七・JBL SA600)

JBLの、以前のスピーカーのように逆相仕様になっているスピーカーを鳴らす際に、
システム全体を正相として鳴らすには、どこかで位相反転を行うことになる。

よく、この正相・逆相の話をすると、
どうも左右チャンネルで位相が異っていることと勘違いされる方もまれにいる。

左右チャンネルのどちらか片チャンネルの極性を逆にする。
そうすれば左右チャンネルの極性は揃わなくなる。
仮に左チャンネルが正相だとすれば、右チャンネルが逆相になり、
こうなればまともなステレオ再生は無理である。

このことと、いまここで書いている正相・逆相とは話が違う。
あくまでもここでは、左右チャンネルの極性は揃っていて、
システム全体が正相なのか逆相なのか、ということである。

アナログディスク再生の場合、
針先が外周方向に振れたときにプラス側の信号がカートリッジで生じ、
そのときスピーカーの振動板が前に出れば、システム全体は正相ということになる。

JBLの以前のスピーカーでは、カートリッジの針先が外周に振れたとき、
つまり正面から見て針先が右方向に動いたとき、スピーカーの振動板は後にひっこむわけである。

JBLのスピーカーは逆相ということは広く知られていたけれど、
実はカートリッジの中にも、意外なほど逆相仕様のモノはある。
有名なところではEMTのカートリッジがそうである。

Date: 1月 28th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×六・JBL SA600)

1989年に登場したS9500以降、JBLのスピーカーの極性は、
いわゆる逆相から一般的な正相型へとなっていった。
それ以前のJBLのスピーカーユニットは逆相仕様になっていた。

ならばスピーカーシステムの入力端子(もしくはパワーアンプの出力端子)のところで、
スピーカーケーブルの+と−を反対に接げばそれですむことじゃないか、と考える人もいる。
けれど実際には、ここで極性の反転を行なってしまうと、極性の反転以外の要素も変化していて、
厳密には極性の正相・逆相だけの違いを聴いているわけではなくなってしまう。

パイオニアの一部のスピーカーシステムはネットワークのバランス化を1980年代からはじめていたが、
それ以外のスピーカーシステムに関してはアンバランス構成であるから、
スピーカー端子のところで極性を反転させることは、
パワーアンプもアンバランス出力であれば、
ネットワークのアースラインがパワーアンプのアースラインに接続されず、ホット側に接続されることになる。

もちろんこの状態でも音は鳴るし、パワーアンプやスピーカーシステムが故障してしまうわけでもない。
でもこれでは極性以外の変化が生じていて、これで求める音が得られればそれでいいともいえるのだが、
厳密には極性だけを反転させたわけではないことはわかっておくべきだ。

システム全体が正相なのか逆相なのかで、
どのように音が変化するのかをおおまかに掴みたいのであれば、
スピーカー端子のところで反転させるやり方を、こんなことを書いている私でもすすめる。

ただ、それでも……、といいたいわけである。

Date: 1月 27th, 2013
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続×五・JBL SA600)

1980年代後半のラジオ技術で、OPアンプの検証記事が載っていた。
いくつかのOPアンプを非反転アンプ、反転アンプの両方で測定していた。

手もとにその号のラジオ技術がないので、詳細について書くことは出来ないが、
全体的な傾向として反転アンプでの測定結果(歪率)が、非反転アンプでの結果よりも良かったことは憶えている。

どなたの記事だったのかもはっきりと憶えていない。
別府氏か山口氏だったような気がする。

その記事でも、なぜそういう結果がなるのかについては、
OPアンプの初段は差動回路になっているものが多い。
非反転アンプでは初段の+側入力のトランジスター(FET)はNFBループの外にあることになる。
これが反転アンプ動作時よりも歪が増加する理由と結論づけられていた(はず)。

まだ電子回路のことがほとんどわからないときに直感的に感じていた疑問は、
概ね正しかったことが、そのときのラジオ技術の記事でわかった。

もちろん反転アンプのほうが歪率が低いから非反転アンプで使用するよりも音がいい──、
となるかといえば、すべての場合において、そうなるとはいえない。

反転アンプと非反転アンプとではシステム全体の極性が、逆相と正相とになる。
このことは音場感の再現、音像の立ち方に関係してくる要素であり、
左右のチャンネルの極性が揃ってさえいれば、逆相・正相、どちらでもいい、という問題ではない。

しかもスピーカーシステム内のネットワークも、
パワーアンプもコントロールアンプも多くの製品はアンバランスであり、
極性の反転をどこかで行うにしても、ほかの条件はまったく同じで行うことはまず無理といえる。

Date: 8月 11th, 2012
Cate: トーラス, ユニバーサルウーファー

同軸型はトーラスなのか(空気砲のこと)

年に一度か二度、あてもなくインターネットであれこれ検索してみてはリンク先をクリックしてみる。
特になにか目的があっての行動ではなくて、
テレビのチャンネルを、おもしろい番組はやっていないのかとあれこれ変えていくのと似ている。

そうっていて今日見つけたのが、空気砲だった。
空気砲がどういうものかについては、米村でんじろう氏のサイトに載っている。
動画も検索すれば、すぐに見つかる。

ダンボール箱があれば誰でもすぐに実験できる。
原理は簡単なものであり、スピーカー(サブウーファー)への応用も可能だろう。

ダンボール箱の前面に開けられた丸い穴から空気の弾が飛び出す、とある。
しかも興味深いのは、その空気の弾の形状について、である。

空気の輪が回転しながら飛んでいく、とある。
つまり、この空気の輪はドーナツ状のはず。

空気砲はダンボール箱の側面を叩くことで内部の空気を穴から放出する。
この穴の空気の出入りはバスレフダクトとおそらく同じだろうから、
中心部の空気の流れと周辺部の空気の流れは逆方向のはず。
だからこそ空気の輪(トーラス)ができる、と考えられる。

空気砲はダンボール箱の側面を手で叩く──、
これをきちんとしたエンクロージュアにして両側面にスピーカーユニットをとりつける。
スピーカーユニットが手の代りになる。
スピーカーユニットの後部はなにかでふさぐ必要があるだろう。

はたしてサブウーファーとして、空気砲の原理がうまく動作するのかは試してみないことにはわからない。
でも、もしうまくいけば、おもしろい結果が得られそうな予感もある。

Date: 5月 15th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々続々・JBL SA600)

三角形の記号であらわすOPアンプは、
+側と−側のふたつの入力端子をもつためほとんどのOPアンプの初段は差動回路になっている。
2個のトランジスター(もしくはFET)のエミッター(ソース)をひとつにし、
それぞれのトランジスター(FET)のベース(ゲート)を+側、−側の入力端子としている。

半導体の動作の原理がはっきり理解できていなくても回路図を見ていくと疑問に感じることが見えてくる。
むしろ原理がまだ理解できていないからこそ、
回路図をグラフィックとして見ているから気づきやすいこともあると思う。

初段が差動回路で出力段がエミッターフォロアーになっている、とする。
入力は+側と−側のふたつあるのに対し、出力はひとつのみである。
出力が入力同様+側、−側のふたつあれば、それぞれから反対の極性の入力端子へとNFBを戻すことになる。
けれど大半のアンプはアンバランス出力だから出力はひとつ。
NFBも出力端子から−側の入力端子とへかけている。これは非反転アンプも反転アンプもいっしょである。

回路図をただ眺めていたとき、
非反転アンプの場合、初段の+側のトランジスター(FET)はNFBの範囲に入っていないように見えた。
反転アンプだと入力信号を受ける−側の初段のトランジスター(FET)はNFBの中に入る。

これは非反転アンプと反転アンプの大きな違いではないか、
とまだ詳しいことは何もわからずとも、直感的にそう思えてくる。

このことと前に書いたことをあわせて考えると、
NFBをかけたアンプであれば反転アンプの方が実は理に適っているのではないか、と、
これも30数年前に思ったことである。

Date: 5月 14th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々続・JBL SA600)

私がこんなことを考えていた時は、まだLPの時代でありCDは登場していなかった。
だからシンプル・イズ・ベストがほんとうに最上の方法であると仮定して、
その極端な例としてカートリッジに直接スピーカーを接ぐということを考えてみる。

MC型カートリッジの出力は小さい。MM型カートリッジでもMC型よりも大きいとはいえ数mVの値。
けれど、ステレオサウンド 43号に広告が載っているウイン・ラボラトリーのSDT10というカートリッジは、
0.5Vの出力をもつ(最大出力1V/RMSとある)。

しかもこのSDT10にはRIAAイコライザーを必要としない。
だからコントロールアンプのライン入力、もしくはボリュウム付きのパワーアンプであれば直接接続できる。

SDT10は実物を見ることもできなかった。
どういう音を聴かせてくれるのかはわからない。
けれど、カートリッジの発電方式によってはかなり高い電圧を得ることもできる。

そしてスピーカーの能率がそうとうに高いものがあれば、
カートリッジとスピーカーを、
音量調整さえ必要としなければ直接接続し鳴らすことも技術的には決して不可能ではない。

これは非常に極端な例をあえて考えているわけで、
オーディオを理解しようとしたとき、ときにはこういうふうに極端な例を考えたり、
極端な値を想定してみることも、私は必要だと思っている。

カートリッジとスピーカーの直接接続は極端すぎるから、
そこに音量調整もでき、音量もさらに得られるようにと考えたとき、
カートリッジとスピーカーの間に挿入するのは、非反転アンプなのか、反転アンプなのか。

アンプの動作の理屈はどうであれ、直感的には反転アンプのほうが、
カートリッジとスピーカーの直接接続に、より近い、と概略図を描いてみると、そうなる。

非反転アンプはNFBをかけようがかけまいが信号はアンプを通ることになる。
けれど反転アンプはNFBをかけたときとかけないときとでは、その信号経路が変ってくるようにも見える。
NFBをかけなれば反転アンプでも非反転アンプと同じにみえる。

だがNFBをかけた反転アンプであれば、
カートリッジとスピーカーを結ぶラインに直列にはいるのは、
昨日も述べたように入力抵抗と帰還抵抗であり、アンプは帰還抵抗に対して並列にはいるかたちとなる。

これはあくまでもOPアンプと抵抗だけの概略図を見た印象での話であることはわかっている。
それでも非反転アンプと反転アンプではNFBの作用が異るのではないか、と疑問をもったのが、
いまから30数年前のことである。

Date: 5月 13th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々・JBL SA600)

“straight wire with gain”(増幅度をもったワイアー)がアンプの理想像と、一時期よくいわれたもので、
ちょうどそんなころオーディオに関心をもちはじめた私は、
単純にも、どうしたらワイアーに増幅度を持たせることができるのだろうか、と考えたことがある。

いくつかばかげたことも考えた。
次に考えたのは増幅度をもったワイアーが無理だったら、増幅度をもった部品ということを考えた。
中学3年から高校1年にかけてのころの話だ。

抵抗を直列にいれれば、電流×抵抗値分の電圧降下が生じる。
これはロスなのだが、マイナスの増幅度といえなくもない、と考えた。
そんなことを考えながら、OPアンプの教科書的な本を読むと、
そこには反転アンプと非反転アンプの解説が載っている。

世の中の大半のアンプは非反転アンプであり、
そのOPアンプの本もどちらかといえば非反転アンプにページをより割いてあったように記憶している。

OPアンプは三角形の期号。これに入力が+側と−側のふたつあり、出力はひとつ。
非反転アンプはその名が表すように入力と出力の信号が同相である。
つまり信号は+側の入力端子に加えられる。
NFB用の抵抗は−側端子に接続する。

反転アンプは−側の入力端子を使う。
NFBの抵抗も−側の端子に接続する。もちろん入力信号と出力信号は180度、つまり位相が反転する。

非反転アンプも反転アンプの概略図は抵抗2本(ギザギザののこぎりの記号)とOPアンプ(三角形の記号)だけ。
これは自分で描いてみるのがてっとり早いのだが、
非反転アンプの場合、信号はOPを通って出力される。当り前のことである。

反転アンプはどうかといえば、概略図の描き方次第なのだが、通常の描き方では非反転アンプ同様、
信号はOPアンプ通って出力されるように見える。
けれど、入力抵抗とNFB用の帰還抵抗をまっすぐに直列に描いて、
帰還抵抗に並列になるようにOPアンプの三角形を描いてみると、
信号は抵抗2本だけを通って出力されるようにもみえる図になる。

その図は、”register with gain”(増幅度をもった抵抗器)といえなくもない。

Date: 4月 23rd, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(余談・続フィードバックについて)

再生側のオーディオにおいて楽器に相当するのは、いうまでもなくスピーカーシステムである。
(だからといってスピーカー・イコール・楽器論には賛成できない。)

そして楽器を弾く演奏者が、オーディオではアンプにあたる。

「楽器にはNFBなんてものは存在しない。だからNFBなんて不必要だ」という理屈は、
片方は楽器のみのことを語り、もう片方ではスピーカーシステムとアンプをいっしょに語っている、
という都合の良さがあり、不思議な理屈、といってしまいたくなる。

こういっても「人間にはNFBなんてものはない」と反論がきそうだが、ほんとうにそうだろうか。
人間の身体こそ、アンプよりもずっと高度なフィードバックが行われている。

たとえば楽器が弾けるようになるために練習を積重ねていく。
これは経験的なフィードバックであり、さらに演奏の腕を磨いていくための研鑽もフィードバックのはず。
そして演奏中も自分の手によって弾かれ、楽器から出てきた音を聴きながらのフィードバックもある。

ピアノを弾くとき、指先は鍵に力を加える箇所でもあり、そのときの力の具合を感知するセンサーでもあり、
そのセンサーが感知した情報は脳に還り(フィードバックされ)、緻密な表現を生んでいる、はず。
ただ野放図なだけの音を鳴らすだけならフィードバックはいらないが、音楽はそうではない。

すこしこじつけめいたたとえだが、
クラシックの演奏家の演奏のスタイルの変化は、NFB量の話と近いものを感じることもある。
ずっと以前のヴィルトゥオーゾと呼ばれていたピアニストの演奏と新しく登場してくるピアニストの演奏は、
ひじょうに大ざっぱではあるけれど、ヴィルトゥオーゾ時代はNFB量が少なく、
時代と共に少しずつNFB量が増えてきていっているだけでなく、フィードバックの使い方も高度になっている──、
そんな印象を持ってしまうことがないわけではない。

だからというわけではないが、
心情的には「楽器にはNFBなんてものは存在しない。だからNFBなんて不必要だ」
という不思議な理屈がいわんとするところはわからないわけではないし、
将来300Bのシングルアンプを自作することになったら、NFBはかけない。

それでも、やはり……、である。

Date: 4月 23rd, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(余談・フィードバックについて)

フィードバックについて書いてきたついでに、すこし話はテーマからそれていく。

現在市販されているアンプ、これまで市販されてきたアンプの大半はNFBがかけられている。
無帰還アンプを謳っているものでも部分的なNFBがかかっているものもある。
フィードバック技術をまったくつかっていないアンプは、ごくわずかである。

NFBをかければ、アンプの特性は良くなる。
周波数特性は広くなり、歪も減り、ノイズも減る。それに出力インピーダンスも低くなる、など、
技術的なメリットがいくつもある。
メリットがある、ということは必ずデメリットもあるのが世の常で、
歪が減る一方で、NFBに起因する別の歪が発生することもある。

そして、NFBをかけると、音が悪くなる、と強く主張する人がいる。

たしかに安易にNFBを大量にかけたアンプは、昔から音が死んでいる、といわれることがあった。
これはなにもNFB量が多いことだけが、その原因ではないけれど、
たとえばNFB量が変えられるアンプで試してみると、
NFB量を増やしていくと音が死ぬ、とまではいわないものの、やや抑制される方向になりがちだ。

このことに関することなのだが、
「楽器にはNFBなんてものは存在しない。だからNFBなんて不必要だ」という不思議な理屈をきくこともある。

電子楽器は別として、アクースティックな楽器にはたしかにNFBに相当するものは存在しない。
ここまでは同意する。
けれど、だからといってアンプにNFBが不必要ということにならない。

ピアノでもヴァイオリンでもいいが、
アクースティックな楽器をステージの上に置くだけでは音は何ひとつ鳴らない。
楽器が音楽を奏でるには、演奏者が必要であり、
上の不思議な理屈には、演奏者がいない。

Date: 8月 20th, 2011
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続・JBL SA600)

SE400S(SE408S)と組み合わされるコントロールアンプのSG520はどうなっているかというと、
結論を先に書けば、反転アンプである。

SA600のラインアンプ・トーンコントロールアンプ部とSG520のラインアンプ・トーンコントロールアンプ部は、
プリメインアンプとコントロールアンプという構成・規模の違いもあってなのか、多少違う点がある。
SA600ではラインアンプもトーンコントロールアンプも2石構成だったのに対し、
SG520ではどちらも3石構成になっている。
とはいうもののラインアンプは正相出力で、トーンコントロールアンプがSA600と同じで反転アンプとなっていて、
SG520のトータルの仕様としては反転アンプということだ。

だから、いうまでもないことだが、SE400S(SE408S)と組み合わせたときには、
反転アンプ+反転アンプで、正相出力になり、
JBLのスピーカーの逆相を正相に戻すような意図は、実はSA600にも、SG520+SE400Sにもないことになる。

1980年代過ぎから、システム・トータルの極性が正相なのか逆相なのかが、
音場感の再現性に影響することから注意がはらわれるようになってきたが、
それでもこの時期に登場したアンプのなかにも反転アンプはいくつかある。

ましてJBLのアンプが登場した時期、
システム・トータルの極性については、あまり注意が払われることはなかったのでないだろうか。
JBLのアンプの数年前に登場したマランツのModel 9には極性反転スイッチがたしかに設けられているが、
むしろModel 9のように極性に注意をはらった製品のほうが、むしろ珍しかったはずだ。

JBLのこれら一連のアンプを設計したのは、よく知られるようにバート・ロカンシーである。

Date: 8月 19th, 2011
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(JBL SA600)

この項で、NFBのかかった反転アンプをメビウスの環として捉えることもできるのでは、と書いた。
反転アンプだということをはっきりと謳ったアンプはほとんどないが、
実は反転アンプだった、というモノは、わりとあったりする。

NFBはかかっていないが、
カウンターポイントの管球式コントロールアンプのSA5とSA3はどちらもラインアンプは一段増幅の反転型。
すこし意外に思われるかもしれないが、QUADのコントロールアンプ44も、実は反転アンプである。
ほかにもいくつかあるが、反転アンプとしてもっともよく知られているのは、
JBLのプリメインアンプのSA600だろう。

このことは、JBLのスピーカーの極性が通常のスピーカーと反対に、プラス端子にプラス信号がくわわると、
一般的なスピーカーは振動板が前に出るのに対して、JBLでは後ろに引っ込む。
最近のJBLは正相仕様になっているが、往年のJBLのユニットは逆相仕様で、そのことをトータルで補正するために、
あえてパワーアンプ部を逆相(反転アンプ)にしている、といわれつづけている。

たしかにパワーアンプのSE400S、SE408Sは逆相(反転)アンプだ。
SA600のパワーアンプ部も逆相(反転)アンプだ。

だが、SE400S(SE408S)とSA600と見較べるとわかることだが、SA600はトータルの位相は正相になっている。
ということはパワーアンプの設計において反転アンプにしていることは、
実は極性を正相に戻すため、というよりも、別の意図があったとみるべきだろう。
もし極性を正相に戻すための反転アンプならば、SA600も、最終的に逆相出力になっていなければおかしい。

SA600は上にも書いたようにパワーアンプ部は反転アンプだ。
回路図をみればすぐにわかるように、
SA600のラインアンプはQ105、Q106、Q107、Q108の4個のトランジスターで構成されている。
(これは左チャンネルであって、右チャンネルはQ205、Q206、Q207、Q208。)

Q105、Q105の2段増幅のあとにQ107、Q108のトーンコントロールアンプになるわけだが、
実はこの部分が逆相(反転アンプ)になっている。
つまり2つの逆相(反転アンプ)を信号は通るわけだから、トータルでは正相になるわけだ。

では、なぜパワーアンプのみを反転アンプにしているのだろうか。