同軸型はトーラスなのか(JBL SA600)
この項で、NFBのかかった反転アンプをメビウスの環として捉えることもできるのでは、と書いた。
反転アンプだということをはっきりと謳ったアンプはほとんどないが、
実は反転アンプだった、というモノは、わりとあったりする。
NFBはかかっていないが、
カウンターポイントの管球式コントロールアンプのSA5とSA3はどちらもラインアンプは一段増幅の反転型。
すこし意外に思われるかもしれないが、QUADのコントロールアンプ44も、実は反転アンプである。
ほかにもいくつかあるが、反転アンプとしてもっともよく知られているのは、
JBLのプリメインアンプのSA600だろう。
このことは、JBLのスピーカーの極性が通常のスピーカーと反対に、プラス端子にプラス信号がくわわると、
一般的なスピーカーは振動板が前に出るのに対して、JBLでは後ろに引っ込む。
最近のJBLは正相仕様になっているが、往年のJBLのユニットは逆相仕様で、そのことをトータルで補正するために、
あえてパワーアンプ部を逆相(反転アンプ)にしている、といわれつづけている。
たしかにパワーアンプのSE400S、SE408Sは逆相(反転)アンプだ。
SA600のパワーアンプ部も逆相(反転)アンプだ。
だが、SE400S(SE408S)とSA600と見較べるとわかることだが、SA600はトータルの位相は正相になっている。
ということはパワーアンプの設計において反転アンプにしていることは、
実は極性を正相に戻すため、というよりも、別の意図があったとみるべきだろう。
もし極性を正相に戻すための反転アンプならば、SA600も、最終的に逆相出力になっていなければおかしい。
SA600は上にも書いたようにパワーアンプ部は反転アンプだ。
回路図をみればすぐにわかるように、
SA600のラインアンプはQ105、Q106、Q107、Q108の4個のトランジスターで構成されている。
(これは左チャンネルであって、右チャンネルはQ205、Q206、Q207、Q208。)
Q105、Q105の2段増幅のあとにQ107、Q108のトーンコントロールアンプになるわけだが、
実はこの部分が逆相(反転アンプ)になっている。
つまり2つの逆相(反転アンプ)を信号は通るわけだから、トータルでは正相になるわけだ。
では、なぜパワーアンプのみを反転アンプにしているのだろうか。