Archive for 10月, 2009

Date: 10月 31st, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その43)

いつのころからか、信号系からトランスを排除する方向が主流となってきた。

良質のトランスは高価なことが多い。もちろん安価でも優れたトランスはあるし、
高価で、見た目も、立派なシールドケースに収められていても(むしろ、そのことがアダになってか)、
さほどトランスを信号系に挿入するメリットを感じさせてくれないものも、ある。

それにトランスは、伊藤先生の言葉を借りれば、
生き物だから、他のパーツ以上に、気難しい面ももっているように感じている。

もっとも安価なトランスでも、トランジスターやFETとくらべるとずっと高価だし、
いまではOPアンプで簡単に代用できるところも多いので、
そうなると、トランスの使用はそうとうなコスト高になっていく。

そういう価格的なデメリットと、性能的にも、指の爪ほどのサイズのOPアンプ(価格も安いものだと100円以下)が、
NFBのおかげで、トランスよりもずっとワイドレンジな周波数特性をもっている。

その他にもトランスが使われなくなってきた理由は、いくつか挙げられるが、
とにかくコントロールアンプで、最終段にトランスをしょっている市販アンプは、皆無に近い。

Date: 10月 31st, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その43)

いつのころからか、信号系からトランスを排除する方向が主流となってきた。
良質のトランスは高価なことが多い。もちろん安価でも優れたトランスはあるし、
高価で、見た目も、立派なシールドケースに収められていても(むしろ、そのことがアダになってか)、
さほどトランスを信号系に挿入するメリットを感じさせてくれないものも、ある。

それにトランスは、伊藤先生の言葉を借りれば、
生き物だから、他のパーツ以上に、気難しい面ももっているように感じている。

もっとも安価なトランスでも、トランジスターやFETとくらべるとずっと高価だし、
いまではOPアンプで簡単に代用できるとこも多いので、
そうなると、トランスの使用はそうとうなコスト高になっていく。

そういう価格的なデメリットと、性能的にも、指の爪ほどのサイズのOPアンプ(価格も安いものだと100円以下)が、
NFBのおかげで、トランスよりもずっとワイドレンジな周波数特性をもっている。

その他にもトランスが使われなくなってきた理由は、いくつか挙げられるが、
とにかくコントロールアンプで、最終段にトランスをしょっている市販アンプは、皆無に近い。

Date: 10月 30th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その42)

4343だと、アース線が最低でも13本になると書くと、なんと複雑なことだと思われる方もいるかもしれない。
アース線が1本のほうが、13本よりもシンプルであるわけではない。
アース線の役割から考えれば、きちんとこまかく分けた方が、実はシンプルであるということに気がついてほしい。

単純(シンプル)であるかどうかは、数によって判断されるものではない。そのものの動作で判断すべきことである。

Date: 10月 29th, 2009
Cate: 理由

「理由」(その4)

「五味オーディオ教室」こそ、はじめて手にしたオーディオの本であり、
オーディオへのきっかけであり、以前書いたように、私のオーディオの「核」となっている。

「核」になるまで、なんどもなんども短期間に集中して読んでいた。
学校にも持っていっていた。

私は、五味先生の「言葉」によって、オーディオの世界に足を踏みいれた。
どこかで素晴らしい音を聴いたわけでもないし、まわりにオーディオに関心をもっている人はいなかった。

それでもオーディオブームだったこともあり、
同級生でオーディオに少しばかり関心を持っているのが数人いたけれど、
オーディオの話をしたことはない。

オーディオの仲間も先輩も、師と呼べる人もいなかったことは、
ある人は「寂しいことだね」というかもしれないし、またある人は「不幸だね」とつぶやくかもしれないが、
「核」らしきものができるまで「五味オーディオ教室」のみを読みつづけていたことは、
これ以上の幸運はなかった、と確信している。

「五味オーディオ教室」を手にしてから、ステレオサウンドの存在に気がつくまでの数ヵ月のあいだ、
私が影響をうけていたのは五味先生の「言葉」だけだったのだから。

Date: 10月 28th, 2009
Cate: 理由

「理由」(その3)

初歩のラジオには、アマチュア無線の記事だけでなく、簡単な電子工作から自作アンプの記事も載っていた。
真空管アンプの製作、DCアンプの製作記事も読んだ記憶がある。

おぼろげながら、オーディオという趣味があることを知る。
それでもオーディオに強い関心を、それで持ったわけではなく、
こんな趣味もあるんだなぁ、という程度であったのが、
たまたま書店で手にした、五味先生の「五味オーディオ教室」が一変させた。

私が住んでいた田舎には、書店は3店舗あった。
「五味オーディオ教室」は、それらの店にはなく、
たまたま母から頼まれた買い物で、スーパーに行った際、
そのスーパーの一角に、わずかなスペースに設けられていた本のコーナーに置いて在ったのを、偶然見つけたわけだ。

五味康祐の名前は、恥ずかしながら、当時(中学二年)は知らなかった。
どんな人なのかも知らずに、手にして、数ページ立読みしたら、もう手放せなくなっていた。

そして、この日から、オーディオに真剣に向き合うことになっていく。

Date: 10月 27th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その5)

指揮者の渡辺氏が、ステレオサウンド 48号のブラインドフォールドテストで、
試聴されたプレーヤーシステムは7機種。

①テクニクス/SP10MK2+EPA100+SH10B3(¥280,000)
②EMT/930st(¥1,150,000)
③ヤマハ/PX1(¥480,000)
④デンオン/DP7700(¥198,000)
⑤パイオニア/XL-A800(¥79,800)
⑥ビクター/TT101+UA7045+CL-P1D(¥198,000)
⑦ソニー/PS-X9(¥380,000)

価格は何れも1978年当時のもので、EMTの930st以外はすべてダイレクトドライブ型である。

試聴レコードは、コリン・デイヴィス指揮ボストン交響楽団によるシベリウスの交響曲第1番(フィリップス)と、
ポリーニによるショパンの前奏曲集(グラモフォン)の2枚。

渡辺氏は、どちらのレコードでも、②と⑦、つまりEMTの930stとソニーのPS-X9を、
好ましい音として選ばれた上で、
群を抜いている感じが②、930stにはあると語られている。

Date: 10月 26th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その4)

私もそうだが、ブラインドテスト、と、つい言ったり書いたりしてしまう。
けれど、ステレオサウンド 48号の目次をみると、
「特集=ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」という題と同時に、
レギュラー筆者による試聴記事には、
「プレーヤーシステムの音の良しあしをブラインドフォールドテストで聴く」という副題がついている。

ブラインドテストとブラインドフォールドテスト──。
この号の試聴に参加されているのは、井上卓也、岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の4氏で、
テスト後記で、ブラインドフォールドテストと書かれているのは岡先生だけで、
他の方はブラインドテスト、となっている。

ブラインドフォールド(blindfold)とブラインド(blind)は、
前者は目隠しをする、目をおおう、後者は盲目の、という意味であるから、
テストの内容からいって、ブラインドフォールドテストというべきである。

Date: 10月 25th, 2009
Cate: 理由

「理由」(その2)

中学生の時、BCLが流行っていた。
なんとなく面白そうだと感じ、こづかいを貯め、BCLに使えるラジオを買う。
でも、熱はすぐに冷め、ベリカードを、ラジオを買う前は、何枚も集めるつもりでいたのに、
結局、一枚も手に入れることはなかった。

次に興味をもったのは、アマチュア無線だった。
こちらは免許が必要だから、無線機を買う前に、まず勉強。
電子回路に多少なりとも興味をもつようになったのは、このときからだ。

免許取得の勉強しながら、初歩のラジオを読みながら、これが欲しいな、とページをめくっていた時期がある。
試験を受けるつもりでいた。一発でとる自信もあった。
けれど、免許を取って、無線機を買って、見知らぬ人と声だけで会話をしていくことに、
ほんとうに興味が在るのか、と変に冷めているところもあった。

それでも試験は受けるつもりだった。
なのに試験の数ヵ月前に、興味は別のものへと移っていく。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その32)

数年前から、ごく親しい人との会話のなかで口にしていたのだが、
「オーディオ・ジャーナリズムが確立される前に、オーディオ・ブームが訪れたのが、オーディオ界の不幸」であり、
あと5年ほどブームが遅かったら、「いまの状況はずいぶん違っていたものになっていたはず」と思っている。

つまりオーディオ・ジャーナリズムは確立されていない、と考えている。

瀬川先生の思想メモを読むと、同じ想いだったように感じる。
だから、書かれたのだ。私はそう思う。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その3)

ステレオサウンド 43号が出たのは1977年6月。
この年の暮に出たステレオサウンド別冊の「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
瀬川先生はJBLの4343の組合せ2例のなかで、ひとつはEMTの930st、
もうひとつの、トータル価格を意識した組合せでは、ガラードの401を使われている。

記事の中で語られているのは、ダイレクトドライブ型では、
音楽の余韻を感じさせるニュアンスが薄らいでいる印象であること、
そして、少しダイレクトドライブ型不信みたいなところに陥っている、ことである。

こうやって、いくつか記事を読むにつれて、
少しずつ、ダイレクトドライブ型には、回転精度とは別の問題があるように思いはじめていた。

1978年9月発売の48号で、ステレオサウンドは、プレーヤーシステムのブラインドテストを行なっている。
オーディオ評論家によるブラインドテストだけでなく、
指揮者の渡辺暁雄氏によるブランドテストの記事も載っていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その2)

ガラード・401について、瀬川先生は、
「このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい」と書かれている。

さらにトーレンスのTD125MKIIBについては、こう書かれている。
「素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。
音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音はまだ聴けない」

まず、このふたつの文章を読み、物理特性では圧倒的に優れているダイレクトドライブ型よりも、
音のよい、旧式のターンテーブルがあるという事実、
プレーヤーといえど性能だけでは語れない、ということを、それが文字の上だけのことで、
実体験が伴っていないにしても、オーディオに関心をもちはじめて、ごく早い時期に知ることとなった。

だからといって、ダイレクトドライブ型を完全に否定していたわけではなく、
方式としては、多くのメリットを持つわけだから、製品の完成度が高くなれば、
旧式のプレーヤーでは聴くことがかなわない、
優れた物理特性に裏づけられた音のよさを実現してくれるものだとも信じていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その1)

なぜダイレクトドライブ型のターンテーブルを信頼していない、その理由のひとつは、
まずはステレオサウンドの影響である。

私より上の世代のオーディオ好きの方たちが最初に手にされたプレーヤーシステムは、
ベルトドライブかアイドラードライブ。
それらにくらべて、1970年代にはいり登場したダイレクトドライブ型は、
ワウ・フラッターがほとんどない正確な回転精度、
それにアイドラー型では問題になっていたゴロも発生しない静粛性などの優位性をほこり、
多くのマニアの方たちが、ダイレクトドライブ方に買い替えられた(飛びつかれた人も多かったときいている)。

ところが、実際に自宅で使ってみると、それまでのベルトドライブ、アイドラードライブといった、
旧式のプレーヤーシステムの方が、音がよかったのではないか、という声があがりはじめ、
オーディオ誌においても、メーカーにおいても、ダイレクトドライブ型の再検討が行われはじめていた時期と、
ちょうどオーディオに関心をもちはじめた時期とが重なっていたことが、
ステレオサウンドの影響を大きくしたといえるかもしれない。

ステレオサウンドを読みはじめて3冊目の43号(ベストバイの特集号)では、
ガラードの401が取り上げられている。

Date: 10月 22nd, 2009
Cate: 使いこなし
2 msgs

使いこなしのこと(その17)

かっこいいターンテーブルであれば、3012-R Specialとマッチするデザインであれば、
なんでもいいというわけではなかった。
当然、満足できる、つまり信頼できるモノでなければならない。

だから、ダイレクトドライブ型は最初から除外していた。

見た目だけで選ぶなら、ラックスのPD121のロングアーム版が出てくれていたら、
しかもそれでベルトドライブであったら、決めてしまっていただろう。

早く決めてしまいたい気持は、強くなる。
そこで思ったのは、SMEのアイクマンが使っているのと同じターンテーブルはどうだろう、ということだった。
調べてみると、テクニクスのSP10だった。

白木の大型のキャビネットに、2台のSP10が取り付けられていて、
その下にコントロールアンプが収められているいる写真が見て、すこしふっきれた。

ちなみにアイクマンの、このときのシステムは、
QUADのESLを4段スタックした上で、コーン型のサブウーファーを、センターに2発設置するという、
非常に大がかりな規模のもので、パワーアンプはラックスのM6000(と思われる)。

Date: 10月 22nd, 2009
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その16)

SMEの3012-R Specialと組み合わせるターンテーブル選びは、現行製品だけでなく、
ガラードの301やトーレンスのTD124まで範囲を広げてみた。

ちょうど、このころ、BBC仕様というガラードの301が中古市場に現れはじめていた。
塗装がシルバーのハンマートーン仕上げで、心がぐらっときたものの、
301とロングアームを組み合わせると、意外にプレーヤーキャビネットのサイズは大きくなりすぎて、
プロポーション的に、お世辞にもスマートとはいえなくなる。
それに、BBC仕様の301は、当初、相当に高価だった。

トーレンスのTD124に、ロングアーム用のアームベースがあることがわかった。
しかも程度のいいものが、あるところに一台あることもわかった。
譲ってもいい、ということだったけれど、TD124/IIではなく、オリジナルのほうで、
つまりターンテーブルの素材が鉄なのだ。

比較的マグネットが小さいMM型カートリッジであれば問題はないけれど、
内蔵マグネットが大きなMC型カートリッジでは、ターンテーブルに吸いつくため、針圧が増す問題があった。

カートリッジは、EMTのXSD15とオルトフォンのMC20IIが候補だったから、無視できない。

ただ実際にどの程度、針圧が増えるのかは、計測したわけではないのでなんともいえないが、
ただ鉄(磁性体)というのが、なんとなく精神衛生上、ひっかかる。

Date: 10月 21st, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その6)

スピーカーシステムの音を判断する項目、たとえば聴感上のSN比、レンジの広さ、
帯域バランスの良さ、歪感の少なさ、等々、思いつく限りこまかく挙げていき、
それぞれの項目をできるだけ良くする方向で音をまとめていく──。

そうやってつくられたスピーカーシステムは、もちろん優れたモノであるだろう。
けれど、そうやってつくられたスピーカーシステムは、なにかを失っているのかもしれない。

たとえば、ヴィルトゥオーゾと呼ばれた、往年の演奏家と、
現代の、優れたテクニックを有している演奏家との違いにも似ているような気がする。

オートグラフ、VC7に共通して、私が感じている良さは、「気品」であろう。