Archive for category オーディオのプロフェッショナル

Date: 7月 14th, 2017
Cate: オーディオのプロフェッショナル

不遜な人たちがいる

類稀な技術者であれば、不遜というところから遠く隔たったところにいると思っている。

世の中にオーディオに関する技術者は大勢いる。
SNSをみていて、最近立て続けに感じているのは、
この人たち(技術者たち)は、なんと不遜なのだろうか……だ。

こんなことは感じたくないのに、そんな不遜な主張が目に入ってきて、
己の技術に自信をもつことと不遜になることは、まったく別ものなのに……、と思う。

しかも、そういう不遜な技術者には、不思議と信者といえる人がくっついている。

ある技術者がなにかを考えつく。
ある発見をしたりする。

技術者ならば、前例がないかどうかを調べる。
なのに不遜な人たちは,技術者として当り前のことすらしない。

そして、自分が最初だ、と何度も何度も主張する。
それに同意する信者といえる人たち。

オーディオの技術者ではない私だって知っていることを、
つい最近も、「最初に発見した」と主張する人がいた。
また、同種の製品と同時期に発売していたにもかかわらず、
私が開発した製品が、その種の製品で最初だった、とか。

すこし調べればわかることである。
そういう人たちは、指摘されると、知らなかった、はまずいう、必ずいう、といってもいい。
知らなかった、ではなく、調べなかった、というべきところをだ。

Date: 7月 12th, 2017
Cate: オーディオのプロフェッショナル

プロ用機器メーカーとしてのプロフェッショナル

ステレオサウンド 34号に「レコーディングにおける音楽創造を探る」という記事がある。

スイスのレーヴェル、クラーヴェス(Claves Records)が、
日本で録音を行った際の取材をもとに記事はつくられている。

クラーヴェスの録音エンジニア兼ディレクターのシュテンプㇷリ氏に、
どんな再生装置を使っていますか、という質問がなされている。
     *
シュテンプㇷリ 可能なかぎり録音に使ったものと同じ岸家で聴いています。具体的にいうとプレーヤーはEMTで、スピーカーはアルテック、そしてスピーカーにはクライン&フンメル社の特製アンプが組み込まれています。これはドイツで放送局用に特注されたもので、OZの型番で呼ばれており、この組み合わせは方々のスタジオで使われていますから、初めてのスタジオでもすぐに仕事にかかれることが多いのです。
     *
K+HのOZという型番のスピーカーシステム。
どんなスピーカーなのか。

日本での録音でのモニタースピーカーには604Eが入った612が使われていることが、
記事中の写真でも、記事の最後に録音器材のリストでも確認できる。

だからOZは604E搭載で、内蔵アンプがK+Hによるものだと当時は想像していた。
これ以上の情報はなかったのだから、そう思ってしまった。

K+H(KLEIN & HUMMEL)は、現在ノイマン傘下の会社になっているが、
いまもスタジオモニターを開発・製造している。

数年前に製造中止になってしまったのが残念だが、
O500Cという3ウェイのスタジオモニターの特性は驚くほどのレベルだった。
スピーカーの特性を、ここまで向上できるのか、と、
オーディオマニア的おもしろさはやや欠けるものの、
もうスピーカーシステムとは、
デジタル信号処理と内蔵アンプを含めて考えていくものだ、と思わせる。

でもK+Hは、昔もいまもどちらかといえばマイナーな存在といえよう。
ステレオサウンド 46号でOL10とO92が取り上げられていて、
私にとって、OL10はぜひとも聴いてみたいスピーカーのリストのトップになるほど、
興味津々のスピーカーだったが、これも聴く機会はなかった。

K+Hのことになると、どうも話がそれてしまう。
OZのことに話を戻せば、さらに以前のモニタースピーカーということぐらいしかわからなかった。

K+Hのウェブサイトには”Historical Products“という項目がある。
すでに製造中止になったモデルの詳細を、ここで知ることができる。

OZの資料もあたりまえのようにある。

想像していたモノとまるで違う。
604を搭載したシステムではなかった。
15インチ口径のダブルウーファーにホーン型のトゥイーターの2ウェイである。
けっこう大型のシステムだ。

このOZが当時のドイツの放送局のモニタースピーカーだったのか。
これにEMTのアナログプレーヤーの組合せで、
シュテンプㇷリ氏はアナログディスクを聴いていたのか。

K+HにはSSVというコントロールアンプも1974年ごろ、日本にも入ってきていた。
ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEで、
小さなモノクロ写真と簡単なスペックでしか知らなかった。

おそらくはパランス出力を持っているであろうと予想できても、
昔は確かめようがなかった。

このSSVについても、資料が公開されている。
やっぱりそうだったか、と確認できた。

メーカーにとって過去の製品、
それも製造中止になってそうとうな年月が経つモノに関して、
何の資料も公開しないままでも、誰もそのことに対し否定的なことはいわない。

それだけにK+Hが、こうやって公開してくれているのは、
この会社がプロフェッショナルを相手にしているプロ用機器メーカーだからのような気がする。

Date: 1月 23rd, 2017
Cate: オーディオのプロフェッショナル

オーディオのプロフェッショナルの条件(その1)

オーディオのプロフェッショナルの条件として挙げられるのは、
資本主義の日本だから、オーディオで稼いでいる、ということがいえる。

オーディオ業界で仕事をしている人ならば、オーディオのプロフェッショナルといえる。
メーカーに勤務している人、輸入商社に勤めている人、
オーディオ店の店員、オーディオ雑誌の編集者、
それにオーディオ雑誌に書いている人たちは、オーディオのプロフェッショナルということになる。

個人でブログを公開していて、
アフィリエイトで何らかの収入を得ている人も、オーディオのプロフェッショナルといえるだろう。
ジャズ喫茶、名曲喫茶の店主も、その意味ではオーディオのプロフェッショナルということになる。

こう考えると、日本だけでも、けっこうな数のオーディオのプロフェッショナルがいるということになる。
少なからぬオーディオのプロフェッショナルがいるわけだが、
これがオーディオのプロフェッショナルの条件とは、まったく思っていない。

オーディオ店のスタッフで、売上げをどんなにあげていようと、
それはモノを売ることに長けているのであって、
オーディオのプロフェッショナルであるかというのと、別の話である。

オーディオ業界にいて、収入を得ている。
それはオーディオで稼いでいるわけだが、
オーディオのプロフェッショナルとして稼いでいるとは限らない。

売ることに長けているのと同じように、別のことが得意であれば、
オーディオで稼ぐことはできる。

Date: 6月 26th, 2016
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その9)

メーカーとしての機能について書くためにあれこれ考えていたところに、
イギリスのEUからの離脱のニュース。

今後どういうふうになっていくのか私にはわからないことが多過ぎる。
そのことについて付焼刃の知識で書いていこうとは思っていない。
でもイギリスのオーディオメーカーに与える影響については、ちょっとだけ書ける。

オーディオメーカーとはいえ、すべてを内製しているわけではない。
たとえばスピーカーユニットは自社工場で生産していても、
エンクロージュアは木工技術が優れている他社にまかせているところもある。

その他社がイギリスにあるならばまだいいだろうが(間接的影響はあるはずだ)、
EU圏内の他国にあったとしたら、少なからぬ影響(直接的影響)が出てくるはずだ。

EUに加盟していれば、他国にあっても同じEU圏内であったため、
いわゆる国内生産と大きく違う面はなかったはずだ。
物理的な距離が遠いくらいだろうか。

けれどEUを離脱すれば、イギリスにとっては他国は他国である。
そのままの生産体制を維持すれば、価格に跳ね返ってくるだろうし、
生産体制をかえて、イギリス国内に代るメーカーを見つけたとしても、
まったく同じクォリティのモノがつくれるのかということ、
国が違えば人件費などのコストも違ってくるだろうから、
必ずしも同程度のコストで製造できるとは限らないはずだ。

ローコストのモノではなく、
ハイエンドオーディオと呼ばれるクラスのモノをつくっているメーカーの中には、
生産体制の見直しが迫られることになるところが確実にある。

生産体制を変えたとする。
すると、これはEU離脱前に製造されたモノだから、離脱後製造のモノよりも優れているとか、
反対に離脱後製造だから、こちらのほうが優れているとか、
そんなことが流布されていくのかもしれない。

イギリスのEU離脱が、メーカーとしての機能、
それだけでなくメーカーとしての性能にもどう影響を与えていくのか。
何かをもたらすのだろうか。
うっかりすれば見逃すような変化が、これからは起ってくるような気がする。

Date: 4月 12th, 2016
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(続ステレオサウンド 47号より)

システムコンポーネントを略してシスコン。
私がオーディオに興味をもちはじめたころ、シスコンという言葉はよく使われていた。

システムコンポーネントはいうまでもなくメーカーによるシステム一式のことだ。
価格的、グレード的に見合ったアナログプレーヤー、プリメインアンプ、チューナー、スピーカーシステム、
いわゆるメーカー推奨の組合せ(システム)である。

これに対してユーザーが自由に選んでコンポーネントシステムをつくる。
そうやってつくられた組合せをバラコン(パラゴンではない)という呼称があった。

バラバラのコンポーネントを組み合わせるから、バラコンである。
ひどい言葉である。

バラコンという言葉を、幸いにしてというべきか、私のまわりにいる人は使っていない。
耳にしたこともなかった。

私がバラコンを耳にしたのは一度だけである。
瀬川先生が使われたときだけである。

瀬川先生は、バラコンという言葉を毛嫌いされていた。

いまバラコンという言葉が使われている。
言葉をざんぞい扱っている。こんな言葉は使いたくないし使うべきではない。

そういった趣旨のことを話された。
このとき、バラコンという言葉があるのを、使われているのを知った。

だからいっさい使っていない。

もう一度引用しておくが、瀬川先生はステレオサウンド 47号にこう書かれている。
     *
 だが、何もここで文章論を展開しようというのではないから話を本すじに戻すが、今しがたも書いたように、言葉の不用意な扱いは、単に表現上の問題にとどまらない。それがひいては物を作る態度にも、いつのまにか反映している。
     *
バラコンは、まさに《不用意な言葉の扱い》であり、
バラコンを使っているメーカーの《物を作る態度にも、いつのまにか反映している》はずだし、
同じことはオーディオマニアが組合せ(コンポーネント)をつくる態度にも、いつのまにか反映しているはずた。

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(ステレオサウンド 47号より)

ステレオサウンド 47号の特集の巻頭は、瀬川先生が書かれている。
「オーディオ・コンポーネントにおけるベストバイの意味あいをさぐる」というタイトルがついている。

そこで、こんなことを書かれている。
     *
 だが、何もここで文章論を展開しようというのではないから話を本すじに戻すが、今しがたも書いたように、言葉の不用意な扱いは、単に表現上の問題にとどまらない。それがひいては物を作る態度にも、いつのまにか反映している。
     *
47号は1978年夏号だから、こんなにも以前に、これを書かれていたのか、と改めておもっている。
「物を作る態度」、
オーディオ機器だけに話はとどまらない。

物の中には、いろいろ含まれている。
オーディオ雑誌もそのひとつのはずだ。

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その8)

メーカーとしての機能。
このことについて考えていくには、
メーカーとしての性能、メーカーとしての効能。

これらのことも同時に考えていく必要がある。

Date: 2月 14th, 2016
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その7)

ステレオサウンド別冊「魅力のオーディオブランド101」に、
日本マランツの商品企画部部長の株本辰夫氏の発言が載っている。
     *
株本 ついこのあいだ、マランツさんに会ったんですよ。私にとっては2度目なんですが……。
 相当なお年なんですが、矍鑠として、自分のあたらしい会社で、自分の気に入った製品をつくっておられます。
「実はおれのところにCDがほしいんだ。おまえのところにはCDのいい技術があると聞いているんだが、売ってくれないか?」というお話があったわけです。
 いま、とても小規模にやっておられるのですが、一番教えられたのは、メーカーとしての機能をギブアップされないのですね。
 私どもからCDの供給を受けるといっても、完成品を買うのではなくて、最後の仕上げは自分のところでやりたいようです。
 自分のところにメーカーとしての機能を残しておかなければ、満足するようなものは作れない、というのが、マランツさんの考えかたです。
     *
「魅力のオーディオブランド101」は1986年だから、
このころのマランツの新しい会社というのは、ジョン・カールが参画していた会社のことかもしれない。

そのへんの詳細ははっきりしないが、この株本氏の発言に出てくる「メーカーとしての機能」、
このことについて考えてしまう。

メーカーとしての機能とは、いったいどういうことなのか。
残念ながら、「魅力のオーディオブランド101」には、その説明は出てこない。

Date: 1月 13th, 2016
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その6)

オーディオ機器に使われるすべての部品を内製することができるメーカーは限られる。
日本の家電メーカーとオランダのフィリップスなど、そう多くはない。

内製できるからといって、すべての部品を自社もしくは関連企業で製造しているとは限らない。
ある部品は、より優れたモノを作っている会社から購入して採用することも、ごくあたりまえにある。

アンプ一台をとってみても、
半導体から抵抗、コンデンサーだけでなく、電源トランスまで自社生産するとなると、
かなり大変なことである。

それにすべての部品を内製できるメーカーが、
優れたアンプ、優れたスピーカーシステムを開発できるとも限らない。

そんなふうに考えていけば、
アンプメーカーが、コンデンサー、抵抗、半導体などの部品を購入してアンプを組み立てるように、
スピーカーにおいても、スピーカーユニットを自社開発・製造せずに、
他社製のスピーカーユニットを購入してきて、
アッセンブルして自社製品として発売することも同じ、といえる。

それでも1970年代までくらいは、
スピーカーメーカーはスピーカーユニットまで内製するメーカーと多くの人が思っていた。
私もそう思っていたし、
ステレオサウンド 46号の新製品紹介のページでの井上先生と山中先生のやりとりも、
まさにそうである。

つまりスピーカーメーカーにとっても、抵抗やコンデンサーは、
スピーカーユニットの振動板やマグネットに相当していた、といえよう。

つまりスピーカーユニットを開発できないメーカーは、
スピーカーユニットを開発しているメーカーよりも、下に見られていた。

とはいえ、BBCモニター系列のスピーカーシステムを製造していたメーカーでは、
ウーファーは自社製でも、トゥイーターは他社製という組合せが一般的であった。

それがいつのころからか、スピーカーユニットはすべて他社から購入して、
ネットワークの部品も当然他社製。
エンクロージュアを作るだけのメーカーが現れてきはじめ、
その数が増えていった。

活字にはなることはあまりなかったが、それらのメーカーをアッセンブルメーカーと呼ぶこともあった。

Date: 2月 14th, 2015
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その5)

オーディオがベンチャービジネスであったころのアメリカにおいて、
アンプメーカーは雨後の竹の子のように多くのメーカーが生れていったが、
スピーカーメーカーとなると、そう数は多くない。

ステレオサウンド 46号の新製品紹介のページで、
井上先生と山中先生が、このことについて語られている。
     *
井上 こうした新メーカーが次々とあらわれてくる背景には、一つはアンプ自体が他のジャンルにくらべてシャーシなどの板金加工プラスL(コイル)、C(コンデンサー)、R(抵抗)、半導体と回路技術の知識があればすぐつくれる、つまり個人レベルでの製作が可能でなおかついいものをつくり出せる可能性を多分にもっている点があげられると思います。
山中 本当に、プリント基板を自分で書いて、ハンダゴテをもって組み立てるだけで試作機がすぐにできあがるわけです。試作機という言葉を意識的に使ったのは、アマチュアが偶然非常にセンスのいいアンプをつくったとしても起業として成り立つだけの製品になり得る可能性を他のオーディオ機器にくらべ多分にもっているからです。
 これが、スピーカーやプレーヤー、テープデッキでは、そうした個人の頭の中にできあがったものだけでいい製品ができるかといえば、その可能性は非常に少ないといえます。起業レベル、つまり資本力と設計、製作上のキャリアの蓄積がものをいう世界です。
井上 たとえば、スピーカーユニット一つを例にとっても、コーン紙はどうやってつくればいいか、フレームは、マグネットは、機械加工は……と考えると、やっぱり個人ではつくれませんね。開発費自体も物量を投入するだけに大きなものになります。また、コーン紙その他のパーツができたとしても、それを単純に組み合わせていい音がするかといったらそうはいかない。内部構造がシンプルでメカニカルな部分が多いですから、その点でキャリアが必要であり、データーではおし計ることのてきない試行錯誤のくりかえしから得たノウハウなどの占める割合が大きくなるといえます。
     *
1978年に46号は出ているから、これを読んだとき私は15歳。
なるほど、と素直に読んでいた。

けれど時代は変る。
それにつれてスピーカーの開発も変っていく。
新興スピーカーメーカーがいくつも登場してくるようになった。
それらのメーカーすべてがスピーカーユニットを自社開発・製造していたわけではなくなっていった。

Date: 2月 14th, 2015
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その4)

こういう人のことを、ひそかにマーク・レヴィンソン症候群と呼んでいる。

アメリカではマーク・レヴィンソンの成功に刺戟され、
第二、第三のマーク・レヴィンソンを目指すエンジニアがいた。
あのころ、オーディオはベンチャービジネスであった。

アメリカだけではない、日本にもそういう人たちはいた。
会社を興し成功した人もいれば失敗した人もいる。
いまも続いている会社があれば、あっという間に消えてしまった会社もいくつもある。

私は会社を興した経験はないけれど、あまり慎重になりすぎても起業することは無理であろう。
いくばくかの無謀ともいえる勢いがなければ起業はできないのかもしれない。

とはいえ、知人のようにスピーカーを自作する。
それが彼の好む音で鳴ってくれた。
そこには開発費も生じていない。
そのことで、彼自身が自分のことをすごいと思い込む。
それが勢いとなり、スピーカーメーカーを興せるのじゃないか、となる。

だが多くの人は、ここで周囲の人に聴いてもらうのではないだろうか。
少なくとも信頼できる人に聴いてもらい、その評価を受けとめる。
それでも評判がよければ、本気でオーディオメーカーを興そうとなるかもしれない。

そうやって誕生したメーカーは少なくない。

Date: 2月 14th, 2015
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その3)

なんでも原価計算をしてしまう人が少なからずいる。
オーディオだけでなく、いろんなジャンルにそんな人がいる。

彼の多くに共通するのは、計算した結果を提示して、これらの製品は高すぎる、という。
中にはぼったくりだろう、といいたくなる価格の製品もないわけではないが、
多くの製品の場合、まずそんなことはない。

原価だけでモノがつくれるわけではないことは、多くの人が知っていることであり、
知っているから、あえて、そんな指摘は多くの人がやらない。

ほかのメーカーが開発したモノをそっくりコピーした製品をつくるにしても、
原価だけでは成り立たない。

原価計算がとにかく好きな人は、
なぜ原価のことしか考慮しないのだろうか。
この原価計算が好きな人と同じことを、(その2)で書いた知人は口にしていた、といえる。

塗装もしていない、ただつくりっぱなしの箱のスピーカーである。
スピーカーシステムとはとうていいえないレベルでとまっている。

内蔵ネットワークもないのだから、すべての調整はユーザーにまかせることになる。
そんなものと、メーカーがきちんと調整して仕上げも行って送り出す製品とを、
同列に並べて比較していることの愚かさになぜ気づかないのかと不思議になる。

知人がすごいのは、スピーカーメーカーを興せると思い込んでしまっていたところにある。
安くていい音のスピーカーを送り出せる自信に満ちていた。

Date: 1月 20th, 2015
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その2)

「スピーカーづくりなんて、簡単!」という人がいた。

彼はスピーカーユニットを買ってきて、
木材のカットは専門業者にまかせて、自分でスピーカーをつくっていた。
既製品のスピーカーシステムもいくつも使ってきていた。

彼は「こんなに安くて、これだけの音がすぐに出せる」ともいっていた。
そしてメーカーがやっていることを小馬鹿にしていた。

こんなアホなことをいっているのが若い人であれば何かをいう。
けれど私よりも年上でオーディオのキャリアも長く、
私よりもオーディオに使ってきた金額の多い人には、もう黙ってしまうしかない。
何をいっても無駄なのだから。

彼がやっているのは、あくまでも自分の部屋において、自分の好みの音が簡単に出せたから、でしかなかった。
それ以上ではなかった。
でも彼は気付いていなかった。
だからメーカーがやっていることを否定していた。

彼は測定器の類はなにも持っていなかった。
そんなものは必要とない、とまでいっていた。

私はもう黙ってしまっていたから、
彼がそのとき何を考えていたのか確かめはしなかった。

彼はネットワークを作らずマルチアンプ駆動で鳴らしていた。
ディヴァイディングネットワークでクロスオーバー周波数を調整してレベル調整、
それぞれのユニットにパワーアンプは直結され、グラフィックイコライザーも併用していた。

これならば、限られた環境において自分の好みの音は出しやすい。
でも、そんなスピーカーは製品にはなりえない。
けれど、彼はわかっていなかった。

Date: 1月 20th, 2015
Cate: オーディオのプロフェッショナル

モノづくりとオーディオのプロフェッショナル(その1)

はじめて真空管アンプをつくろうとしている人がいる。
彼は何を用意すべきか。

アンプを作るためには工具が必要だ。
ハンダゴテは絶対に必要である。ドライバーもいる。
シャーシー加工すべてどこかに受註するのであればいいが、
穴開け加工を自分でやるのであれば、ドリル、ヤスリもいる。
この他にもさまざまな工具がいる。

工具の用意とともに、パーツを集めなければならない。
いまではインターネット通販があるから、
昔のように秋葉原まで何度も電車で通っては、
時には重たい部品を持って帰るということもやらなくてすむようになっている。

アンプの回路は、はじめて作るのであるから、定評のある回路と配線をそのまま採用する。

部品点数が少なくて、シャーシー加工にそれほど手間どらなければ、
それほど時間を必要とせずに真空管アンプは組み上る。

ここで必要となるのが、測定器である。

自分で創意工夫をした回路ではなく、昔からある回路で、
昔ながらのレイアウトで、NFBもかけない、もしくはごくわずかだけであれば、
配線の間違いがないことをしっかりと確認すれば、
テスターだけで各部の電圧をチェックするだけでもかまわない。

テスターも測定器であり、ここて必要となる測定器はテスターだけで足りる。

けれど、最初の真空管アンプ作りがうまくいったから、気を良くして、
今度は回路も自分で考えた凝ったものにして、NFBもそこそこかけて、
レイアウトも奇抜なものにしよう……、そんなことをやると測定器はテスターだけではもう無理である。

少なくとも発振していないかどうかを確かめるための測定器は必要となる。

Date: 11月 16th, 2014
Cate: オーディオのプロフェッショナル

こんなスピーカーもあった(その5)

ソニーのCDプレーヤー、CDP777ESDを使っていたことがある。
このCDプレーヤーの電源トランスは、デジタルとアナログで独立していて、リアパネルに取り付けある。
電源トランスが外部に露出するような形で取り付けてある。
もちろん剥き出しの電源トランスではなくシールドケースに収められた状態ではある。

この取り付け方も、ソニーのエンジニアがある問題を解決しようとしての結果であるわけだが、
使いこなす側からみれば、別の問題があることをわからせてくれる。

ステレオサウンドの試聴室で、CDP777ESDを使っていた時に、井上先生がある指示を出された。
そのとおりやってみると、驚くほど音が変化する。

ここでこういうことをやると、これだけ音が変化するのか。
自分で使っているCDP777ESDでもさっそく試してみた。
試してるうちに、こういうふうにしたら、もっといい結果が得られるのではないか、とあることを考えた。
CDP777ESDのリアパネルを加工する必要があったため実験することはなかった。

それから半年ぐらい経ったころ、パイオニアからPD3000というCDプレーヤーが登場した。
PD3000もCDP777ESDと同じように電源トランスがリアパネルに、外部に露出するような形で取り付けてある。

けれどPD3000にはCDP777ESDにはなかった工夫があった。
PD3000の方法は、私が考えていたのと、ほとんど同じだった。

外部に露出している電源トランスに専用の脚を用意する。
さらにリアパネルとはなんらかの緩衝材を介することでフローティングする。
PD3000も同じことを考えていたわけである。

PD3000を見て、同じことを考える人は常にいることを知った。
おそらくパイオニアのエンジニア、私以外にも、同じことを考えていた人はいるだろう。

同時代に同じアイディアを思いつく人は三人はいる、らしい。
そうだと思う。
さらに時代を遡れば、三人程度ではなく、もっと多くの、同じ発想をしていた人たちがいると思ったほうがいい。

この項の(その2)で書いているように、
松ぼっくりをスピーカーシステムのエンクロージュア内に入れてみたら……、と思いついた人がいる。
このアイディアはずっと以前に製品になっている。
その3)でのテクニクスのNFBのアイディアも、過去にいくつもの例があった。

それゆえに、「だからこそ」が大事なのにと思う。
それを怠る者が、プロフェッショナルを騙っている。