Archive for 2月, 2010

Date: 2月 28th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その11)

iPadの登場の前に、川崎先生のデザインディレクションによる「COOL LEAF(クールリーフ)」が、
3月2日、発表される。

leaf ときいてまず思い浮かべるのは、「葉」。
辞書によると、書物の1葉、折り畳み式テーブルの自在板、折戸の1枚、という意味もある。
それに cool がついている。

COOL LEAF だけでは、どんなモノなのか、は想像しにくいが、もうひとつ重要なキーワードがある。

iPadが発表されたとき、川崎先生が、Twitterで「清潔感」ついて語られている。
もうひとつ「新素材」についても。

COOL LEAFと清潔感──、このふたつの言葉から、何を想像していくか。

これから書くことは、私の勝手な想像であり、予感でしかない。
2日後に発表される「COOL LEAF」とは、見当違いのものを想像している可能性が大きい。
それでも、「ノイズ」について考えていくとき、
「COOL LEAFと清潔感」から発想できるものが、確実にある。

Date: 2月 28th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その10)

春には、iPadが登場してくる。
iPhoneが3.5インチ、480×320ピクセルの表示に対し、iPadは9.7インチ、1024×768ピクセル。

一度に表示できる文字数も違ってくるし、大きさも重量も違うiPhoneとiPadだけに、
実際に手にして、なにがしかの文章を読んだときの印象が、どの程度同じで、
どの程度違ってくるのか、には興味がある。

iPadの登場で、ディスプレイで文字を読むことに、はっきりとした変化が顕れてくるはずだ、と思っている。

iPhoneもiPadも、タッチスクリーンだから、指先で画面に触れることで操作することも、
感触をともなう行為である、とともに、ディスプレイを汚していく行為でもある。

画面に残る手の脂や汚れも、またノイズであるが、これらは排除すべきノイズであるのはいうまでもない。

Date: 2月 28th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その9)

同じメールを、基本的に同じOSのもので読むとき、
Mac OS Xで動くiMacのディスプレイにおいて、と、iPhoneを手にとって読むのとでは、
そこに微妙なニュアンスがこめられているときなら、かなり感じ方は変ってきはしないだろうか。

用件のみの事務的なメールでも、iPhoneでならば、受け手の印象はすこし変わってくるかもしれない。

文字の打ちにくさを感じながらも、携帯電話のメールをついつい使ってしまうのは、
パソコンのメールよりも便利な面もあるのとは別に、手のひらに収めているもので、
読み書きができるという、その感触があってのことではないだろうか。

電車に乗っていて、iPhoneを手にしている人を見ていると、多くの人が、同じ持ち方をしている。
なかには例外的な人もいるが、多くの人が、握っている、というよりも、
手のひらにそっと乗せている、といった感じである。

手のひらにおさまるということでは、iPodが、ここまで普及したのも、
その理由のひとつがここにあるように感じている。

しかも指先で、曲を選択し、ボリュウムを変えていく──。つねに感触がある。

Date: 2月 27th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その8)

ディスプレイに表示される文字を読むとき、指がなににふれているか。

文字が表示されているディスプレイにふれながら、
もしくは持ち上げながら読んでいる人は、おそらくいない。

ここが本で文字を読む行為との、最大の違いだと、私は受けとめている。
つまり「キューレス」とは、感触の有無や、その違い、ノイズの多いか少ないかといった違いなどから、
派生してくるはず、と言いたくなる。

本で読むよりも、パソコンで、背景が白で、にじみの少ない文字をくっきりと表示させているのは、
S/N比的には、圧倒的に高い状態にあるといえる。
なのに、ちょっしたことで、致命的なすれ違いが起ることがある。

ノイズがあるため誤解が生れるのではなく、ノイズがないために誤解が生まれている。

パソコンがあるのに、電子ブックが登場してくるのは、持ち運べるメリットよりも、
じつは手にとって、その感触(ノイズ)にふれることができることを、
無意識のうちに感じとっているから、そして欲しているからかもしれない。

Date: 2月 27th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その7)

これも2002年ごろだったはずだが、電子メールは「キューレス」な性質があるため、
メールのやりとりをしていると、急に険悪なムードになることがある、という記事を読んだことがある。

「キュー」とは、相手に自分の感情を伝える要素のことで、
直接会って話をしたり、電話での会話の場合には、
相手の表情や仕草、声の感じなどから、なんとなくニュアンスが伝わることによって、
言葉を補ってくれているところがある。

ところがテキストだけのメールでは、そのキューがないため、
受け手の読解力、想像力に大きく委ねられ、それが悪い方向に作用したとき、
とげとげしいものになる可能性がある、というものだった。

ネットの掲示板でも、ある発言がきっかけで、一気に荒れることがあるのも、そのためかもしれない。

たしかに、納得するところもあるが、テキストだけのものは電子メールや掲示板だけではない。
本や手紙も、テキスト(文字情報)だけである。なのにキューレスだとは、人は認識していないはず。

この違いは、感触の有無だろう。

Date: 2月 27th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その6)

本を読むとき、手にとる。私の場合、机の上に置いて、本に触れずに読むことはまずない。つねにふれている。
ふれることで、本文が印刷されている紙の質感、それに表紙に使われている紙の質感、
本の重さなどを、指で感じている。
これらは、文字を読むうえで必要なことではない。そうなると、ノイズといえる。

さらにインクや紙の匂い。これも本を意識させている要素ではあっても、文字を読むのに必要なものではない。

視覚的なものでは、紙の色、文字の色やにじみといった要素も、ノイズといえる。
これらのノイズによって、われわれは「文字を読む」のではなく、「本を読む」と認識しているような気がする。

これらの「ノイズ」は、文字を読む上での騒音(die)となっているのだろうか。
邪魔なものだと感じている人は、おそらくいないだろうし、いたとしても、ごくごく少数のはずだ。

S/N比=無限大、という非現実的な例と、本という現実的で身近な例を対比させることで、
ノイズとはなんなのか、が見えはじめてくる。

Date: 2月 27th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その5)

ノイズが、音の感触を生んでいるのかもしれない、とTwitterにつぶやいたのが、2月4日。

こう考えるようになったのは、
その4)でリンクしている信号内耳とノイズの関係性についての記事を読んでからである。

まず考えたのは、S/N比=無限大、つまりまったくノイズが存在しない状態とは、
どういうものなのかを頭に描こうとした。

ただ音の世界よりも、視覚的なもののほうが、この極端な例を思い浮かべるには向いているような気もして、
そして、人に説明するうえでも、音よりも、こちらのほうが適切かもしれない、と思ったのは、
文字を読む行為におけるS/N比=無限大とは? ということだった。

ここでの信号(Signal)は、文字情報。文字だけを提示する方法として、
それ以外のものをいっさい表示しない、視覚に入らせないようにするということは、
無色透明の背景に、文字だけが、それも言葉として理解できる範囲で、
必要最低限の文字数のみを表示していくことかもしれない、と考えた。

そうなると、われわれがもっとも親しんでいる本を構成している要素のほとんどは、
ノイズとして捉えることができるはずだ、そう思えた。

Date: 2月 26th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その19)

スピーカーシステムのデヴァイディングネットワークは、
ローパス(ハイカット)、ハイパス(ローカット)、このふたつのフィルターによって構成されている。

スコーカーやミッドバスの帯域には、ローパスとハイパスを組み合わせたバンドパスフィルターが使われる。
2ウェイまでのシステムには存在しない、このバンドパスフィルターは、
ローパスとハイパスの、それぞれの周波数が近接しすぎると互いに影響し合う。

3ウェイでは、通常1つのバンドパスが、4ウェイでは2つのバンドパスフィルターが存在する。
しかも帯域分割数が増えるほど──4ウェイ、5ウェイとなるほどに個々のユニットの受持帯域は狭くなる。
つまりローパスとハイパスの周波数がより近接することになる。

この影響をふせぐために、4ウェイ(特別仕様で5ウェイもあった)のLo-DのHS10000は、
順次2分式型ネットワークを採用している。
4ウェイでバンドパスフィルターが使われるのは、ミッドバスとミッドハイ。
4350では、ミッドバスのハイパス(ローカット)は、バイアンプ仕様により、
エレクトロニック・デヴァイディングネットワークで処理する。
4350のミッドバスのネットワークにはローパス(ハイカット)のみ。

ミッドハイ(2440)は、前述したようにローパス(ハイカット)フィルターはない。
ハイパス(ローカット)のみだから、ここにもバンドパスフィルターは存在しないことになる。

4350は内蔵ネットワークに、バンドパスフィルターを持たない4ウェイシステムである。

Date: 2月 26th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その18・訂正)

2440の再生周波数帯域は、500〜12,000Hzで、
おそらく12kHzでスパッとなくなるわけではないだろう、と書いたが、
JBLの発表した周波数レスポンスのグラフを見ると、ほぼ10kHz以上は急激にレスポンスが低下している。

そのグラフは、水平90°、垂直40°のラジアルホーン2350に取りつけての測定である。
発表値としては、500〜9,500Hz(±3dB)。

4350においては、2392(2308+2311)と組み合わされている。
こちらは水平80°、垂直45°のスラントプレートホーンだから、
10kHz近辺の特性は多少は変化するだろうが、大きな変化ではない。

2440のダイアフラムのエッジを折紙型にした2441では、
10kHz以上も、ややダラ下がりながらも、きれいに伸びている。

Date: 2月 26th, 2010
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その61)

昨夜の(その60)を書きながら、タイトルは、
「Noise Control/Noise Designという手法」に変更しようかと迷った。

通常、ブログを書く時は、タイトルを書いて本文を書き始める。
新しいテーマのときは、その逆もあって、本文を書いている途中、書き終えたあとに、
タイトルを考え、つける。

続き物を書いているのに、途中でタイトルを変えることはないにもかかわらず、
昨夜は、どっちにしようかと迷ったし、
あえてほぼ同じ本文を2本書き、それぞれのタイトルをつけて、
最後の数行のみを変えるということも、ちらっと考えた。

モーツァルトのレクィエムにただよう、ある種の官能性を、オーディオ側でなくしてしまうのは、
やはり「ノイズ」とのかかわりのあることだと、書きながら思っていたからだ。

この項(その60)も、その意味では、境界が曖昧なところがある。

真空管アンプ(もちろんよくできたモノにかぎる)の良さ、
そのなかでも、ウェスターン・エレクトリックの真空管(もちろんすべてのモノではない)の独得の味わい、
これらは、ノイズと深く関わっている、と、ここ数年考えるようになってきた。

だから、高S/N比を実現するために、安易にノイズを打ち消すことは、避けるべきこと、と言い切ってしまおう。

長島先生が、ノイズの打消し手法について否定的だったのも、同じ理由からで、まちがいないはずだ。

Date: 2月 25th, 2010
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その60)

モーツァルトの最後の作品、K.626には、ある種の官能性が感じられる演奏に出逢うときがある。

そういう官能性が希薄な演奏も、また多い。
どちらが優れた演奏なのかは、ここでは語らないが、
私個人としては、官能性が希薄な演奏には惹かれない傾向がある。

官能性といっても、この曲の性格からして、みょうにべとついていては困る。
官能性のうちに、清潔感がなくてはならない、とも思う。

薄汚れてしまっている官能性も困るが、消毒しすぎてしまっては、おわりだ。
ただ、この官能性は、演奏だけの問題にとどまらず、アンプの性格によっても変ってくる。

アンプによっては、官能性をきれいさっぱり洗い流してしまうものがある。

Date: 2月 24th, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その4)

それまでは、ノイズは、オーディオにとっていわば「悪」であり、
徹底的に減らしていくべきものであり、
できることなら完全になくしてしまうべきものである、と考えていたことがある。

マークレビンソンのLNP2は、Low Noise Pre-amplifier の頭文字をとっているくらいだし、
S/N比を高くしていくことが、夾雑物を取り除き、音をクリアーにしてくれる。

けれど、現実は、そう短絡的にはできていない。
井上先生は、ある時期から、ノイズを完全に取り除くことは不可能だから、
うまくつきあうことが必要になってくる、と口にされるようになっていた。
オーディオをとりまく環境は、ノイズが増える一方である。
まず種類の増えているし、総量も増えている。
オーディオ機器の内部にもノイズ源となる箇所があるくらいだ。

それでも、基本は、物理的なS/N比を高め、聴感上のS/N比も良くしていく──、
このことは決して間違いではない。でも、それだけではないことを、
まず知らされたのは、2002年に読んだある記事だった。

記事のタイトルは「『雑音』を加えて人工内耳の性能アップ」。

Date: 2月 23rd, 2010
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その3)

ノイズは、音の記憶に関係しているかもしれない、とTwitterにつぶやいたのが、2月5日。
数時間後、私がフォローしている方が、由紀さおりの「夜明けのスキャット」のことを書かれていた。
そのなかに、「ゲルマニウム(ラジオ)でなければ復調できない類の記憶」とあった。

なぜゲルマニウムラジオでなければならないのかは、ゲルマニウムラジオのノイズが、
その方の記憶と結びついているからではないだろうか。

ノスタルジックな意味では、鉱石ラジオと表現したくなるし、
ずっと昔、キットで入手したAMラジオのキットはゲルマニウムトランジスターが使われていた。
なので個人的にはゲルマニウムラジオというより、鉱石ラジオといいたくなる。

電源を必要としない鉱石ラジオと電源を必要とする一般的なラジオとでは、
ノイズの質、出方、あり方は異るし、ゲルマニウムトランジスターとシリコントランジスターとでも違う。

生れてきた時代、育った環境によって、耳に馴染んでいるノイズは、人それぞれだろう。
同じ人でも、時の流れとともに、耳にするノイズは変化している。
心に流れているノイズも、変化しているはずだ。

ノイズが、音の記憶とどういうふうに関係しているのかは、正直のところ、わからない。
でも直感的にそう感じている。

それに私と同じように感じている方がおられたわけだ。
そのかたは、私の書いたものを読まれていないはずなので、まったくの偶然である。

だから、間違っていないと確信している、
「ノイズは音の記憶に関係している」と。

Date: 2月 22nd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その18)

2440のカタログ発表値での再生周波数帯域は、500〜12,000Hz。
2420の800〜20,000Hzとくらべると、上限の値は低いけれど、
12kHz以上がスパッとなくなるわけではなく、減衰しながらも、もうすこし上の帯域まで出しているはずだ。

となると、4350についている、ただひとつのレベルコントロール、
つまり2405のレベルコントロールを絞り切って、エレクトロニッククロスオーバーネットワークを通さずに、
つまり2231Aと2405を鳴らさずに、2202と2440だけを鳴らしてみると、
かなりの帯域を再生していることが聴き取れるはずだ。

2202にはローカットがないし、2440にはハイカットフィルターがないわけだから。

こうやってみていくと、4350は、2440と2202のペアで構成される広帯域で強力なスコーカー中心の、
疑似的な3ウェイ・システムととらえることもできる。

4350の改良版としてとらえられている4355の構成と比較してみると、4350の特徴は、よりはっきりとしてくる。

Date: 2月 22nd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その17)

4350を構成するスピーカーユニットの中で、もっとも強力で、能率が高いのは、
トゥイーターの2405ではなく、ミッドハイを受け持つ2440ドライバーである。

この2440とミッドバスの30cm口径ウーファーの2202のあいだには、
前述したように連続可変のレベルコントロールが存在しない。

このふたつのユニットが4350の中核をなしていると考えてもいいように思う。
つい4350をみると、2231Aのダブルウーファーに目が行ってしまいがちだが、
真に注目すべきは、真中のふたつのユニットのはずだ。

2440と2202のペアが受け持つ帯域は、カタログ発表値では250Hzから9kHz。5オクターブにわたっている。
じつは、4350のネットワーク3107の回路図をみれば、さらに広いことがわかる。

2202には、1.8mHのコイルが直列、20μFのコンデンサーが並列にはいっている。
12dBの遮断特性のハイカットフィルターだ。

2440には、8μFのコンデンサーが直列、1.8mHのコイルが並列、
そのあとにT型の固定アッテネーターが入っている。
これだけである。つまり12dBの遮断特性のローカットフィルターがあるだけで、
とうぜんあるべきはずのハイカットフィルターが、ない。