Archive for category 604-8G

Date: 4月 22nd, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その30)

1970年代の終りごろといえば、JBLの4343が爆発的に売れていたころである。
4343に憧れていた私にとって、それは素直にすごいことと受け止めていたけれど、
いまこうやって当時のことをふり返ると、
4343の人気が凄すぎて、その陰に隠れてしまった感のある、
いくつかの特徴的なスピーカーシステムを聴く機会が、
かわりに失われていた──、そういえるような気がしてならない。

当時、東京に住んでいれば、それほどでもなかったのかもしれないが、
田舎暮しの高校生にとっては、
聴きたいスピーカーがあるからといって、都会に出て行くこともできなかった。

ゆえに聴きたいスピーカーシステムはいくつもあっても、
すべてが聴けたわけではなく、聴けたスピーカーの方が少ない。

Concert Master VIは、どんな音がしたのだろうか。

聴けなかったスピーカーシステムがけっこうあると同時に、
ステレオサウンドで働いたおかげで、聴けたスピーカーシステムも多い。

セレッションのSystem 6000をじっくり聴けたことは、
いまふりかえってみても幸運だった、といえる。

しかも当時はSL600を鳴らしていたころでもあったのだから、
よけいに関心は強かったし、いろいろかんがえるところは多かった。

SL600はSL700へとなっていったが、
System 7000は残念なことに登場しなかった。

日本だけでなく、他の国でもSystem 6000はあまり売れなかったのだろうか。
それでもいい。

いまSystem 6000の可能性を捉え直してみると、
さほど大きくない平面バッフルにとりつけた604-8Gに合うサブウーファーは、
こういうところにヒントがあると思ってしまう。

Date: 4月 22nd, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その29)

ステレオサウンド 48号の特集はアナログプレーヤーだった。
しかもブラインドフォールドテストだった。

第二特集は、サブウーファーだった。
48号のころ(1978年ごろ)は、
サブウーファー新製品として各社から登場しはじめたころでもあった。

52号から連載が始まったスーパーマニア。
一回目は郡山の3Dクラブだった。

いまでこそ3Dといえば映像のほうなのだが、当時は違っていて、
いまでいうセンターウーファー方式を3Dといっていた。

この時代は、ハートレーのウーファーの他に、
エレクトロボイスの30Wも現行製品だったし、
フォステクスから80cm口径のウーファーが新製品として出てきた。

さらにダイヤトーンからは160cm口径の大型ウーファーのプロトタイプが出て、
ステレオサウンドでも取り上げている。

1970年代の終りごろはそういう時代でもあった。
そういう時代を見てきているから、
大口径ウーファーに対してのアレルギーみたいなものはない。

当時ハートレーの輸入元はシュリロ貿易だった。
シュリロから、224HSを搭載したサブウーファーも出てきた。

ハートレー・ブランドで売られていたが、
密閉型エンクロージュアはハートレー指定による国産だった。

このサブウーファー(型番はSub Woofer System)は密閉箱だったが、
当時のハートレーのスピーカーシステム、Concert Master VIは、
224HS搭載なのはサブウーファーと同じなのだが、
エンクロージュアは後面開放型である。

ダリのSkyline 2000は知人が気にいって購入していたから、
かなりの時間を聴く機会があった。

ハートレーは実機を見たことはあるが、音は聴いていない。

Date: 4月 19th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その28・余談)

(その28)へのコメントがfacebookであった。

そこには、妄想ではなく猛走とあった。
いわれてみて、たしかに猛走でもあるな、と思った。

妄想(猛走)アクセラレーターと、今後は書いていこう。

Date: 4月 19th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その28)

アルテックの604-8Gを中心としてワイドレンジ化をねらったシステム。
システムの規模をまったく考慮しないのであれば──、と考えたプランもある。

604-8Gは15インチ口径の同軸型ユニットだから、
その下にもってくるウーファーのサイズとなると、
同じ15インチのダブルではつり合わない。

私の感覚では18インチのダブルか、その上の24インチ口径となる。
ハートレーのウーファーがある。
224HSが24インチ口径で、ぴったりである。

224HSは、マーク・レヴィンソンがHQDシステムに採用していた。
西海岸のアルテック、東海岸のハートレー、
組合せとしてうまくいくのかどうかはやってみないことにはわからないのだが、
クラシックを聴きたい私にとっては、決して悪くない結果を生むだろう、という期待はある。

けれど、このシステムの規模は私には大きすぎる。
ならば、どんなシステムを構想できるのか。

604-8Gをさほど大きくない平面バッフルに取り付けて、ということであれば、
まず私の頭に浮んだのは、ダリのSkyline 2000である。

このころのダリは、いまのダリとはずいぶん違うスピーカーシステムをつくっていた。
スピーカーシステムの完成度としては、いまのダリの製品のほうが上だろうが、
スピーカーシステムの魅力は、Skyline 2000の方が私にとってはずっと上である。

こんなふうに書いていると、ダリは少しばかりB&Wに似ているのかもしれない。
B&Wはずっと以前は、いろんなタイプのスピーカーシステムを手がけていた。

あのころといまのB&Wとでは、完成度の高いシステムを実現しているのは、
いまのB&Wである。誰もがそういうはずだ。

でも完成度の高さばかりがスピーカーの魅力なわけではない。
このことに触れはじめると、大きく脱線していくのではこのへんにしておくが、
ダリのSkyline 2000後面開放型のエンクロージュアのスピーカーシステムだった。

Date: 3月 26th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ
1 msg

同軸型ユニットの選択(その27)

ステレオサウンド 50号のマイ・ハンディクラフト、
別冊「HIGH-TECHNIC SERIES 4」、
同じく別冊「SOUND SPACE 音のある住空間をめぐる52の提案」、
これらの記事を何度もくり返し読んできた私にとっては、
アルテックの604-8Gと平面バッフルとの組合せが鳴らす音と響きは、
私自身が心から求める世界とは違っていることはわかっていても、
思いっきり鳴らしてみたい世界でもある。

でるだけ大きな面積の平面バッフルこそが、
こういう音を求めるには最良の結果をもたらすことぐらいはわかっていも、
現実に5.5畳ほどのワンルームに、1.8m×0.9mの平面バッフルを無理矢理入れて、
シーメンスのコアキシャルを取り付けて聴いていた私は、
いかにも大きすぎることを感じていた。

私の感覚からすれば、自分の身長よりも高いスピーカーはあまり使いたくない。
それは広いリスニングルームがあったとしてもだ。

このへんのことは、人それぞれの感覚があってのことだから、
どんなに背の高いスピーカーであっても、音が良ければまったく気にならない、
そういう人もいれば、私のような人もいる。

さほど大きくない平面バッフルに604-8Gを取り付けて、
サブウーファーはエンクロージュアにおさめる。

こんな構想を考えながら思い出しているのは、
ダルクィストのスピーカーシステムDQ10のことだ。

いまではDQ10といっても、どんなスピーカー?
ダルクィスト? という人のほうが多数だろう。

あえてQUADのESLのアピアランスに似せたDQ10は、
私は聴く機会はなかったけれど、
ハイエンドスピーカーの流れに連なっていく音だったのではないだろうか。

DQ10はウーファーだけがエンクロージュアに収まっていた。
他のユニットは最小限のバッフルに取り付けられていた。

サランネットを外した姿、いわば裸のDQ10はバラックのようでもあった。

Date: 3月 25th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その26)

604-8Gのシステム構想をあれこれ練るのは楽しい。
どんなシステムにするのかは、どんなエンクロージュアにするのかに大きくかかっている。

まず浮ぶのは、
ステレオサウンド 51号のマイ・ハンディクラフトに登場した
ジェンセンのバス・ウルトラフレックス型である。

604-8Gだけを鳴らすのであれば、このエンクロージュアがいい、といまでも思っている。
けれど、ここで考えているのは、6041を超えるシステムであり、
ワイドレンジを狙ったものであるから、トゥイーターとウーファーを足すことが前提となる。

バス・ウルトラフレックス型エンクロージュアに604-8Gをおさめ、
サブウーファーは別エンクロージュアにする、
トゥイーターはバス・ウルトラフレックス型エンクロージュアの上にのっける。

かなりおおがかりになるけれど、失敗することはあまりない、ともいえる。
けれど、ここで大事なのは6041を超えるということであり、
一つのスピーカーシステムとしてまとめることである。

そうなるとエンクロージュアをどうするのかが、とても難しく重要となってくる。
6041のエンクロージュアは内部で二分割されていた。
サブウーファーと604-8Gのクロスオーバー周波数は350Hzである。

個人的には604-8Gはもう少し下の帯域まで使いたい(鳴らしたい)。
そのためには604-8Gのバックキャビティはどのくらいにするのか。

それよりも604-8Gをとにかく朗々と鳴らしたい、という欲求が頭を擡げてくる。
バス・ウルトラフレックス型エンクロージュアという選択も、
そのことがあってのものだ。

となると平面バッフルに604-8Gと取り付ける、という方法を考えることになる。

Date: 3月 20th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その25)

アルテックの6041は、アルテックが自発的に開発したシステムとは、
当時高校生だった私でも、素直にそうとは思えなかった。

JBLの4343をそうとうに意識したスピーカーシステムだったし、
日本の輸入元の意向がそうとうに取り入れられたような気もしていた。

実際にそうだった、ようだ。
ステレオサウンドで働くようになって、
編集部の先輩から、そう聞いている。
6041のトゥイーターが日本製だということも、その時聞いている。

だからといって、私にとっての6041の魅力が半減したわけではなかった。
急拵えだったのだろう、おそらくは。

それでも瀬川先生が、あれだけ評価されているのだから、
じっくりとアルテックが本腰をいれて改良モデルを発表していけば、
ロングセラーモデルになったのかもしれない。

当時、アルテックの輸入元とピラミッドの輸入元は同じだった。
だからこそ6041にピラミッドのT1を──、ということを考えてしまうわけだ。

T1はペアで40万円ほどする非常に高価なトゥイーターだった。
6041に搭載されるには、高価すぎるトゥイーターではあった。
それでもステレオサウンド別冊「HIGH-TECHNIC SERIES 3」を読みふけっていた私には、
6041+T1の音は、素晴らしく魅力的なのでは、と思い描かせるだけの力量があったはずだ。

「HIGH-TECHNIC SERIES 3」では、4343の2405のかわりに、
T1にした音について、井上卓也、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏が語られている。

T1の音は、JBLよりも明らかにアルテック寄りの音だったはずだ。
この高価なリボン型トゥイーターを聴く機会はなかった。

こんなおもいが、あの当時からある。
なので、いま604-8Gにトゥイーターを足すのであれば、
T1と同じリボン型のエラックの4PI PLUS.2が第一候補にくる。

Date: 3月 17th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その24)

その1)を書いたのは、2009年12月2日である。
この日に、私のところにアルテックの604-8Gが届いた。

その2)で、
《タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ》
とも書いている。

なのに、2020年夏にタンノイのコーネッタを手に入れたことで、
アルテックとタンノイ、両方所有することになった。
といってもアルテックの604-8Gは元箱に入ったまま。

コーネッタに搭載されているのはHPD295Aである。
マグネットは、ウーファーとトゥイーターで兼用されている。
アルテックの604は、いうまでもなく独立している。

タンノイもウーファーを足して3ウェイにしたモデル、
さらにトゥイーターも足して4ウェイにしたモデルでは、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。

このことからいえるのは、ウーファー、トゥイーターを足して、
ワイドレンジ化をねらうのなら、マグネットは独立していたほうがいいのかもしれない。

となると604-8Gではシステムでは、やはりワイドレンジをめざしたい。
6041への想いも、そこにはあるからだ。

アルテックのスピーカーシステム、6041は、別項で書いているように、
可能性としては面白くなりそうではあったものの、
結局、アルテックは完成度を高めていくことができなかった。

トゥイーターひとつとっても、6041搭載のトゥイーターがそれほど優れていたとは思えない。
瀬川先生はステレオサウンド53号で、
《♯6041用の新開発といわれるスーパートゥーイーターも、たとえばJBL♯2405などと比較すると、多少聴き劣りするように、私には思える。これのかわりに♯2405をつけてみたらどうなるか。これもひとつの興味である》
と書かれていた。

2405がついた6041の音は、どんなふうに変化しただろうか。
いい結果が得られたような気がするけれど、
実際の製品として、アルテックのスピーカーシステムにJBLのユニットが搭載されることは、
まずない、というよりも絶対にないことだ。

あの当時、6041のトゥイーターとしてベストだったのは、
ピラミッドのリボン型トゥイーターT1だっただろう。

Date: 12月 8th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その23)

この項の(その18)でふれているが、同軸型ユニットにおいて、
ウーファー用とトゥイーター用のマグネットが独立していた方がいいのか、
それともひとつで兼ねた方がいいのか、どちらが技術的には優れているのか、もうひとつはっきりしない。

タンノイのリビングストンは、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号で、
アルテックの604との比較、それにマグネットを兼用していることについて語っている(聞き手は瀬川先生)。
     *
これ(604のこと)に比べてタンノイのデュアル・コンセントリックは全く違います。まず、ホーンでの不連続性はみられません。第二にコーンの前に障害物が全くないということです。第三に、マグネティックシャントが二つの磁束の間にあるということです。結局、タンノイは一つのマグネットで二つのユニットをドライブしているわけですが、アルテックは二つのマグネットで二つのドライバーユニットを操作しているわけで、この差が大きなものになっています。
     *
第三の理由として語られていることについては、正直、もうすこし解説がほしい。
これだけではなんともいえないけれど、
少なくともタンノイとしては、リビングストンとしては、
マグネットを兼用していることをメリットとして考えていることは確実なことだ。

そのタンノイが、同軸型ユニットなのに、
ウーファーとトゥイーターのマグネットを独立させたものも作っている。

そのヒントとなるリビングストンの発言がある。
     *
スピーカーの基本設計の面で大事なことは、使われているエレメントが、それぞれ独立した思想で作られていたのでは、けっしていいスピーカーを作り上げることはできないと思うのです。サスペンションもコーンもマグネットも、すべて一体となって、それぞれがかかわり合って一つのシステムを作り上げるところに、スピーカーの本来の姿があるわけです。例えば、ボイスコイルを研究しているエンジニアが、それだけを取り上げてやっていると、トータルな相関関係が崩れてしまう。ボイスコイルだけの特性を高めても、コーンがそれに十分対応しなかったり、磁束密度の大きいマグネットにしても、それに対応するサスペンションがなかったりするわけで、そこでスピーカーの一体感というものが損なわれてしまう。やはりスピーカーを作る場合には各エレメントがそれぞれお互いに影響し合い、作用し合って一つのものを作り上げているんだ、ということを十分考えに入れながら作る必要があると思います。
     *
「一体」「一体感」「相関関係」──、
これらの言葉が、いうまでもなく重要である。

Date: 7月 7th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その22)

タンノイの創始者、ガイ・R・ファウンテンと、
チーフエンジニアのロナルド・H・ラッカムのふたりが音楽再生においてめざしたものは、調和だった気がする。
それも有機的な調和なのではなかろうか。

Date: 2月 21st, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その21)

キングダムのユニット構成は、同軸型ユニットを中心として、低域にサブウーファーを、
高域にスーパートゥイーターを追加した4ウェイである。

ここまで書けば、察しのいい方ならば気がつかれるだろうが、
タンノイのスピーカーづくりのありかたとして、同軸型ユニットだけでシステムを構築する場合には、
従来からのウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用させたものが、
そしてレンジ拡大のためにウーファーやトゥイーターが追加されるときには、
マグネットが独立したタイプが使われる。

このことから推測されるのは、重視する要素が、システム構成によって違いがあるということだ。

それぞれの同軸型ユニットが重視している要素は、調和か明晰か、ではなかろうか。
このことは、エンクロージュアの構造、つくりの違いにも顕れている。

Date: 2月 21st, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その20)

タンノイの同軸型ユニットは、必ずしもマグネットがひとつだけ、とは限らない。
1977年ごろ登場したバッキンガム、ウィンザー、このふたつのシステムに搭載されているユニット2508は、
フェライトマグネットを、高音域、低音域用とにわかれている。

バッキンガムも、ウィンザーも、ウーファーユニットを追加したモデルだ。
このときのタンノイの主力スピーカーシステムは、アーデン、バークレイなどの、いわゆるABCシリーズで、
使用ユニットはアルニコマグネットのHPDシリーズ。いうまでもなくマグネットはひとつだけ。
さらに同時期登場したメイフェアー、チェスター、ドーセット、アスコットには、2528DUALが使われている。
このユニットもフェライトマグネットだが、低音、高音で兼用している。

HPDシリーズはのちにフェライトマグネット使用のKシリーズに換っていくが、
Kシリーズも、マグネットひとつだけ、である。
2508のマグネットがふたつあるのはフェライトマグネットだからではないことが、このことからわかるだろう。

1996年、キングダムが登場する。
このキングダムに搭載されている同軸型ユニットも、またマグネットを2組持っている。

Date: 2月 19th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その19)

振動板の駆動源といえるマグネットが兼用されているため、
節倹の精神によってタンノイはつくられている、ともいえるし、
口の悪いひとならば、ケチくさいつくり、とか、しみったれたつくり、というかもしれない。

けれどオートグラフという、あれだけ意を尽くし贅を尽くしたスピーカーシステムをつくりあげたタンノイが、
その音源となるユニットに、節倹の精神だけで、ウーファーのコーン紙のカーブを、
トゥイーターのホーンの延長として利用したり、マグネットをひとつにしたとは、私は思っていない。

ボイスコイルがひとつだけの純粋のフルレンジユニットでは、ワイドレンジ再生は不可能。
かといって安易に2ウェイにしてしまうと、タンノイが追い求めていた、
家庭での音楽鑑賞にもっとも大切と思われるものが希薄になってしまう。
そのデメリットをおさえるために、できるかぎりの知恵を出し、
コーン型のウーファーとホーン型のトゥイーターを融合させてようとした結果が、
タンノイ独自のデュアルコンセントリックといっていいだろう。

これは、外観からも伺えないだろうか。
アルテックの604の外観が、同軸型2ウェイであることを顕示しているのに対し、
タンノイのデュアルコンセントリックは、何も知らずにみれば、大口径のフルレンジに見えないこともない。

Date: 2月 17th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その18)

アルテック、タンノイといった古典的な同軸型ユニットで、
ウーファー部の磁気回路とホーン型トゥイーター(もしくはスコーカー)の磁気回路が完全に独立しているのは、
長島先生が愛用されてきたジェンセンのG610シリーズがそうである。

完全独立、ときくと、マニアとしてはうれしいことではあるが、
ふたつ以上のマグネットが近距離にあれば干渉しあう。

干渉を防ぐには、距離を離すことが手っとり早い解決法だが、同軸型ユニットではそうもいかない。
ならばひとつのマグネットでウーファー用とトゥイーター用を兼ねよう、という発想が、
タンノイのデュアルコンセントリックの開発に当たっては、あったのかもしれない。

もっともマグネットは直流磁界で、ボイスコイルが発する交流磁界の変化によって、
磁束密度が影響を受ける、それに2次高調波歪がおこることは、
いくつかのスピーカーメーカーの解析によってはっきりとした事実であるから、
一つのマグネット(ひとつの直流磁界)に、二つの交流磁界が干渉するタンノイのデュアルコンセントリックでは、
音楽信号再生時に、どういう状態になっているのかは、専門家の話をうかがいたいと思っている。

Date: 2月 16th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その17)

Uni-Qをもってして、同軸型ユニットは完成した、とはいわないが、
Uni-Qからみると、ホーン型トゥイーターのアルテックやタンノイの同軸型は、あきらかに旧型といえるだろう。

ただ、オーディオマニア的、といおうか、モノマニア的には、
アルテックやタンノイのほうに、魅力を強く感じる面があることは否定できない。
Uni-Qの優秀性は素直に認めても、個人的に応援したくなるのは、アルテックだったり、タンノイだったりする。

空想してもしかたのないことではあるが、もしJBLがUni-Qを開発していたら、
モノとしての魅力は、マニア心をくすぐるモノとして仕上っていただろう。

Uni-Qは、あたりまえのことだけど、あくまでもイギリス的に仕上りすぎている。
もっといえば、いかにもKEFらしく仕上がっている。
そこが魅力でもあるのは重々承知した上で、やはりもの足りなさも感じる。

すこし話はそれるが、アルテックとタンノイの同軸型ユニットを比較するときに、磁気回路の話がある。
タンノイはウーファーとトゥイーターでひとつのマグネットを兼用している、
アルテックはそれぞれ独立している、と。

たしかに604や605などのアルテックの同軸型ユニットにおいて、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。
が、磁気回路が完全に独立しているかという、そうではない。

604の構造図をみればすぐにわかることだが、ウーファー磁気回路のバックプレートと、
トゥイーターのバックプレートは兼用していることに気がつくはずだ。