80年の隔たり(その9)
ここで取り上げている1929年録音のティボーとコルトーによるフランクのヴァイオリン・ソナタ、
この録音(演奏)を聴いたのは、ハタチのころだったから、1983年ごろである。
なので、その時点で、五十四年経っていることになる。
1929年には、まだテープレコーダーはなかった。
ディスク録音であるし、モノーラル録音でもあるし、器材はすべて真空管による。
初めてきいたとき、やはり古い録音と感じた。
それから四十年ちょっとが経ち、思うのは五十年前の録音の違いである。
いまから五十年前となると、1974年ごろである。
このころの録音は優れたものがあった。
先日のaudio wednesdayでもかけたコリン・デイヴィスの「春の祭典」も、
いまから五十年弱前の録音なのだが、
当時、優秀録音といわれただけあって、特に録音が古いな、と感じなかった。
もちろん最新録音とは違う点は多々ある。
それでも、1983年ごろに五十年ほど前の録音を聴くのと、
いまの時代、五十年ほど前の録音を聴くのとでは、かなりの違いがあることを、
そんなあたりまえなことを最近、たびたび感じている。
それだけ齢を重ねてきただけなのだが、それだけではないようにも感じているが、
そのことをはっきりと認識できているわけでもない。