Archive for category ヘッドフォン

Date: 3月 4th, 2020
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(その7)

その6)には、すぐにAさんからfacebookにてコメントがあった。
「冴えを感じさせる音にもチューニングできる」、
そんなことが書いてあった。

そうだろうな、と思いながらも考えていたのは、
スピーカーとヘッドフォンの音の相違について、だった。

Aさんはヘッドフォンを、いまのところメインとされている。
Aさんのところでは何度か聴いている。

だからよけいにスピーカーとヘッドフォンの音の相違、
それによるチューニングの方向性などについて考えたわけだが、
同時に、もう一つふと思いついたことがある。

結局は、ここでも「音は人なり」なのか──、
そう思っている。

Aさんとはよく飲みに行く。
でも、私はAさんを少し誤解していたようだ。

Aさんの自宅で聴いた音、
Aさんが野上さんのところに持ち込んだパソコンによる音、
それらを聴いていると、Aさんは穏やかな人なんだ、ということにようやく気づいた。

Date: 12月 19th, 2019
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(その6)

ステレオサウンド 72号(1984年9月)の特集、
「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」で、
菅野先生がスタックスのSR-Λ Proのことを書かれている。
     *
私が人知れず、便利に使っている、とっておきの音を聴かせてくれるのが、このSRΛプロである。そして、ヘッドフォンとスピーカーの音の相違を通して、実に多くの音響的ファクターを類推することも面白くいろいろなことを学ぶことも可能である。
     *
SR-Λ Proが欲しかった、というより、
偶然にも野上さんが使われていたスタックスも、SR-Λ Proだった、ということだ。

火曜日の夜に、だから野上さんのところに行ってきた。
前回とは違いがあった。
音楽用のパソコンが、違っていた。

小型のパソコンで、音楽再生用にチューニングしてあるモノ、とのこと。
野上さんは、このパソコンが来て、音がまろやかになった、といわれた。

たしかに、第一印象はそのとのりだった。
まろやかになっていた。
ずいぶんまろやかになった、と思いつつも、
音の冴えのような要素が薄れてしまっているようにも感じていた。

何曲か聴いても、その印象は変化しない。
これはこれでいい、とは思うけれど、
私個人としては、まろやかさよりも音の冴えのほうを重視したい。

野上さんに「まろやかになっているけど……」と伝えると、
野上さんも同じように感じられていた。

どちらがいい音なのかは、聴く人によって判断が違ってこよう。
聴く音楽によっても違ってくる。

それでも私には、まろやかすぎるように感じる。
そんなことを話していたら、野上さんが「Aさんはヘッドフォンだから」といわれた。

小型のオーディオ専用パソコンを持ち込んだのは、Aさんである。

Date: 12月 19th, 2019
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(その5)

火曜日の夜から、ヘッドフォンで聴くように鳴った。
ここ数年、ヘッドフォン、イヤフォンといえば、
iPhoneに付属の白いイヤフォンだけだったが、
写真家の野上さんから、スタックスのコンデンサー型を格安で譲ってもらった。

最新型のスタックスではない。
1980年代のSR-Λ Pro + SRM-1/MK2 Proである。
SR-Λ Proの振動ユニットは一年ちょっと前に新品に交換されている。

火曜日の晩、帰宅後セットアップ。
といってもヘッドフォンアンプとヘッドフォンだから、楽である。

メリディアンの218の出力をSRM-1/MK2 Proに接ぐ。
SRM-1/MK2 Proに電源を入れた直後の音から聴きはじめる。

よくオーディオマニアのなかには、
電源を入れてすぐの音は、ウォームアップ以前の音だから、聴かないようにしている──、
そんなことをいう人がいる。

リスニングルームに、新しいオーディオ機器を導入したときも、
すぐには音を聴かずにウォームアップが進むまで、他のことをしているらしい。

でも、私は電源を入れた直後の音からしっかりと聴きたい。
自分で使うオーディオ機器のことである。
試聴室で聴くのであれば、時間的制約があるのであれば、そういう聴き方もいいが、
自分で使うのであれば、そのオーディオ機器のすべてを、
できるかぎり知っておきたい、と思うからだ。

電源を入れた直後の音から、
聴き続けることで、どのくらいの時間で、どのような変化をしていくのか。
筐体が冷えきった状態の音は、芳しくないことも多い。

そういう音をみない(きかない)ようにするのが、
オーディオへの愛情なのか──、と思う。
私は、そうではない、と思っている。

そういう人は、愛する人の寝起きの顔や、くたびれた表情はみない人なのだろう。

Date: 12月 16th, 2019
Cate: ヘッドフォン, 世代

世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン・その6)

昨晩のaudio sharingの忘年会には、
50代二人、60代二人、70代一人が集まって、あれこれ話していた。

話していて、そういえば、と思ったことをきいてみた。
昔、高校に合格したときに、親にステレオを買ってもらった、というのは、
われわれの世代では珍しいことではなかった。

中学入学の時には万年筆を買ってもらった。
高価な万年筆ではなかったけれど、それでも一つ大人へのステップをあがったように感じた。

それまでの筆記具、鉛筆、シャープペンシル、ボールペンなどとは明らかに違う。
手入れも必要となる、その筆記具は小学生が使うモノではない、とその時感じていた。

いまはそのへんどのなのだろう。
中学生になったら、万年筆なのだろうか。
そうでないような気もする。

高校に合格したら、オーディオ?
これこそ、どうなのだろうか。

昨晩、集まった人たちも、みな知らなかった。

高校に合格したら、スマートフォンなのか。
でも、いまでは中学生でも使ってそうだから、
スマートフォンを貰って喜ぶのだろうか。

それこそヘッドフォンとヘッドフォンアンプ、D/Aコンバーターなのか。

高校に合格した祝いに、という発想そのものが、
いまではなくなっているのか、古いのか。

Date: 12月 16th, 2019
Cate: ヘッドフォン, 世代

世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン・その5)

e☆イヤホンの活気ある店内から出て、
しばらく歩いていて、音元出版が秋葉原にあることを思い出していた。

音元出版は確か最初から秋葉原に会社があったはずだ。
いまも秋葉原にある。これから先もそうなのかもしれない。

ステレオサウンドは何度か引っ越ししている。
六本木周辺の時代が長かったが、今年、世田谷に移っている。

こんなことを書いているのは、オーディオの現場は? ということを考えるからだ。
十年前に「オーディオにおけるジャーナリズム(その33)」で、
オーディオの「現場」は、どこなのだろうか、と書いた。

十年経っても、はっきりと答を出せずにいるが、
秋葉原は、いまでも、オーディオの現場といえるのかもしれない──、
e☆イヤホンから出て、そう思っていた。

秋葉原はずいぶん変ってきた。
オーディオの街だったこともある。
ずいぶん昔のことではあるが、それでもオーディオの現場の一つなのだろう、と思う。

音元出版の人たちが、そんなことを考えているのかどうかはわからない。
けれどずっと秋葉原に音元出版はある。

オーディオの現場の一つといえる秋葉原に、音元出版があることは事実だ。

Date: 12月 14th, 2019
Cate: ヘッドフォン, 世代

世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン・その4)

今日、秋葉原に行っていた。
いくつかの用事をすませて、上のまで歩いていこうと思い立ち、
てくてく細い道を選んで歩いていた。

e☆イヤホンが入っているビルの前を通った。
たまに寄ってみよう、とエレベーターで上の階まで行く。

平日の昼間、一度だけe☆イヤホンに寄ったことはあるが、
土日は初めてだった。

こんなに人が溢れているのか。
そう思わずにいられなかった。

オーディオがブームだったころでさえ、
オーディオ店にこれだけの人は集まらなかったのではないか。

ヘッドフォン祭にはここ数年毎年行っているから、
人は多いだろうな、ぐらいは思っていたが、
ヘッドフォン祭以上の込み具合にも感じられた。

活気がある。
ヘッドフォン祭の会場よりも、こちらのほうがそう感じた。

あとで気づいたのが、秋葉原近くでポタフェスがやっている。
それもあってのことで、人が多かった可能性はあるのだろうが、
それでも人が多いだけでは、ああいう活気は出ないようにも感じる。

Date: 11月 6th, 2019
Cate: ヘッドフォン

優れたコントロールアンプは優れたヘッドフォンアンプなのか(その5)

その4)を書いたのは三年半前。
書くのを忘れていたわけではないが、
ここに来てまた書くようになったのは、
Brodmann Acousticsのヘッドフォン、
そのベースモデルのLB-AcosticsのMysphere 3が出たからである。

別項で書いているように、AKGのK1000の開発者による後継モデルだ。
Brodmann Acousticsのヘッドフォンを、ヘッドフォン祭で少しだけ聴いた。

聴いた印象を書かないのは、聴きなれていないソースだったこともあるけれど、
それ以上にアンプをかなり選びそうように思えたからだ。

構造上もあって、かなりボリュウムをあげることになる。
2時くらいの位置まで上げても、会場が静かではないこともあって、
中音量以下ぐらいにしか感じられなかった。

ヘッドフォンアンプをあれこれ試すことはできなかったし、
Brodmann Acousticsのヘッドフォンを鳴らしているヘッドフォンアンプの力量も、
私は知らない。

なので聴いてどうだったのかについては書かなかったわけだが、
K1000専用のアンプを、AKGはすぐに出していることからもわかるように、
この種のヘッドフォン(イヤースピーカー)は、
それまで使ってきたヘッドフ・ンアンプに接続して、
うまくいくかどうかはなんとも言えないような気がする。

まずしっかりしたパワーが欲しい、と思ったのは事実だ。
もっといい音で鳴るはず、というこちらの勝手な、一方的な期待を満たしてはくれなかった。

それでもBrodmann AcousticsにしてもMysphere 3にしても、とても期待している。
期待しているからこそ、ヘッドフォンアンプについてじっくり書いてみようという気になった。

Date: 11月 5th, 2019
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その13)

先週末のヘッドフォン祭には、かなり長い時間会場にいたけれど、
そのほとんどがroonのイベントのためだったため、会場はあまりみていなかった。

それでもBrodmann Acousticsのヘッドフォンだけは目に留ったのだが、
実はこのモデル、LB-AcosticsMysphere 3がベースになっていることを、後日知った。

輸入元のブライトーンのMysphere 3を見ると、
AKG K1000のコンセプト構築と開発を指揮した
Helmut RybackとHeinz Rennerは、
彼らの貴重な経験を究極のヘッドフォンである
MYSPHERE 3の開発に惜しみなく注ぎ込みました。
とある。

ブライトーンのブースは、13階にあったそうだ。
もう少しきちんとみてまわっていればと……、と少し後悔しているものの、
やっぱりK1000の正当な後継機なんだ、とうれしくなるばかりだ。

Date: 11月 2nd, 2019
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その12)

AKGのK1000は、私にとって理想に近いヘッドフォンである。
K1000が現行製品だったころ、ろくに仕事をしていなかったから、
あきらめるしかなかった。

いつかは買えるだろう、と思っていたら、製造中止になった。
しばらくは忘れていた。

でも、あるきっかけがあってK1000のことをおもいだしてしまうと、
どうしても欲しくなる。

といっても製造中止になってからでもずいぶんの月日が経っている。
中古をみかけないわけではない。

手を出しそうに何度かなった。
でも、あと何年使えるのか……、とどうしても思う。

AKGが修理に応じてくれれば、中古を買ってもいい。
確かめたわけではないが、K1000の修理を、現在のAKGがやってくれそうにはない。
私が勝手にそう思っているだけで、実際は違うのかもしれない。

AKGがK1000の後継機を出してくれないのか。
ヘッドフォンがこれだけブームになっているのだから──、
そんな期待もしているのだが、何年待っても、そんな気配はない。

もうあきらめかけていた。
今日、ヘッドフォン祭に行ってきた。

Roonのイベントが始まるまでのわずかなあいだ、
いくつかのブースを見ていた。

11階のフューレンコーディネイトのところに、
Brodmann Acousticsのヘッドフォンがあった。

プロトタイプとのことで、それ以上の情報は、いまのところない、との説明だった。
すでに会場に手にされた方は気づかれているだろうが、
K1000のBrodmann Acoustics版といえるヘッドフォンだ。

Date: 10月 27th, 2018
Cate: ヘッドフォン, 世代

世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン・その3)

今日から開催のヘッドフォン祭に行ってきたから、というわけではないし、
以前から書こうと思っていたことのひとつが、
いま別項で書いている再生における肉体の復活には関することである。

どんなにヘッドフォン(イヤフォン)に優れたモノをもってきても、
ヘッドフォンアンプ、D/Aコンバーターを良くしていっても、
プログラムソースを、どんどんハイレゾ化していったも、
そこでの音に、肉体の復活を、聴き手は錯覚することができない。

少なくとも私は、できない。
これから先、技術は進歩していくことだろう。
それでも、肉体の復活を、ヘッドフォンでの再生音に感じることはない、といえる。

だからヘッドフォンはスピーカーよりも劣る、といいたいのではなく、
ヘッドフォンでばかり音楽を聴いて育った聴き手は、
スピーカーからの再生音にも、肉体という夾雑物のない音を求めていくのか。

Date: 5月 7th, 2018
Cate: ヘッドフォン, 世代

世代とオーディオ(スピーカーとヘッドフォン・その2)

先日、ヘッドフォンで比較試聴する機会があった。
ヘッドフォンの比較試聴ではない。

いわゆるPCオーディオ(それにしても他にいい表現はないのか)での、
再生ソフトによる音の違いを、ヘッドフォンで比較試聴した。

差はある。
ここで書きたいのは、再生ソフトによる音の違いについてではなく、
ヘッドフォンでの比較試聴について、である。

ヘッドフォンゆえによくわかる違いもあるのだろうが、
ふだんヘッドフォンを聴かない私は、
ヘッドフォンゆえによくわからない違いがあることの方が気になってきた。

ヘッドフォンで聴きながら、ここはスピーカーで聴いたら、こんな感じになって、
もっと違いがはっきりでるんじゃないのか、とか、
ヘッドフォンで聴いているがゆえに、微妙なところで、もどかしさを感じたりもした。

このへんは慣れなのだろう、とは思うが、
それでもどこまでいってもスピーカーとヘッドフォンは、はっきりと違う。

スピーカーはステレオフォニックであり、ヘッドフォンはバイノーラルである。
この決定的な違いが、比較試聴に及ぼす影響は小さくはない。

いいヘッドフォン(イヤフォン)を求めて、
ヘッドフォン(イヤフォン)の比較試聴をするのに、もどかしさはまったく感じない。
だが、ヘッドフォン(イヤフォン)で、比較試聴をするとなると、
ヘッドフォン慣れしていない私は、少しばかりを時間を必要とすることになるだろう。

ということはこれまでずっとヘッドフォン(イヤフォン)で聴いてきている人が、
逆の立場におかれたら、どう感じるのだろうか。

つまりスピーカーでの比較試聴をやってもらったら、
違いがわかりにくい、ということになるのか。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その11)

話は少しそれるが、今日、ヘッドフォン祭に行ってきた。
行ってきたといっても16時40分ごろに着いて、ぐるっと一周して見てきただけ。

中野サンプラザの6偕、11階、13階、14階、15階を使って展示なだけに、
かなりの数のヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドフォンアンプなどが並んでいる。

しかも来場者もヘッドフォン、イヤフォンをしていたりするわけだから、
一周するだけで、どれだけの数のヘッドフォン、イヤフォンを見たのだろうか。

音は聴いていない。
見ただけであるからこそ、ひときわ印象にのこったヘッドフォンがあった。
AKGのK1000である。

AKGのブースにあったわけではない。
すでに製造中止になってかなり経っているのだから。

あるヘッドフォンアンプメーカーのブースに、K1000があった。
K1000が登場した1990年に見た時の印象よりも、
今回の印象のほうがずっと強い。

いまどきのヘッドフォンの中に、ぽつんといたK1000は1990年当時よりも美しく見えた。

Date: 9月 12th, 2016
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その10)

いかなる方式の、素材を使ったユニットであれ、
固有音から逃れることは完全にはできない。

同じ方式のユニットであっても、構造、素材が違えば、音は同じにはならない。
それでもある種の共通する音が、最後までわずかに残ることがある、ともいえる。

モノ(素材)・コト(方式)には、固有音がそれぞれあり、
その固有音同士の関係・組合せが最終的な音になっている、とも考えられる。

ハイルドライバー(Air Motion Transformer)も、完璧なトランスデューサーなわけではない。
そこにはなんらかの固有音が存在する。

私が気になっているのは、Air Motion Transformerという方式による固有音というよりも、
ダイアフラムに使う高分子フィルムをプリーツ状に加工して動作させることによって、
顕在化してきた固有音のようにも感じている。

細かな改良・工夫によって、固有音を抑えていくことはできる。
ダイアフラムの材質は同じであっても、
そこにプリントする導体によって、音は変化してくるはずだ。

一般的にはアルミ箔が多いようだが、
渡辺成治氏製作のATMユニットは銅箔だった。
アルミ箔と銅箔とでは、わずかに質量も変化するだろうが、アルミと銅の素材としての違いが、
音にあらわれていないとはいえない。

アルミ箔でもなく銅箔でもなく、金箔だったら……、とも想像している。

高分子フィルムといっても、さまざまな種類があるだろうから、
微妙に音は違うはずである。

ハイルドライバーはダイアフラムの、この種の違いを聴き分けるのに都合がいい。
磁気回路、フレームはそのままでダイアフラムだけを簡単に交換できるからである。

ダイアフラムがカートリッジ式になっていて、
上部から抜き差しするだけで交換できるのは、エッジやダンパーをもたない構造の特長である。

Date: 9月 12th, 2016
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その9)

平面スピーカーで知られるFAL(古山オーディオ)では、
ハイルドライバーのトゥイーターを扱っている。
そこにはスイス製のダイアフラム、とある。

FALオリジナルハイルドライバーとある。
ということはダイアフラムだけを輸入して、磁気回路、フレームをつくり、
ATMトゥイーターとして製品化しているのたろう。

どのメーカー製なのか、詳細はないが、もしかするとERGO製なのかもしれない。
ヘッドフォンに使われているダイアフラムを使っていたとしても、ふしぎではない。

ならば逆も可であるのだから──、と考える。
ハイルドライバー(Air Motion Transformer)のヘッドフォンではなく、
AKGのK1000のハイルドライバー版が実現できないのだろうか、と。

ステレオサウンド別冊「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」には、
ESSのヘッドフォンもMK1Sも登場している。
ハイルドライバーのヘッドフォンである。
     *
 スピーカーではすでにトゥイーターとして実用化されているハイルドライバーの応用という特殊型だ。中音域は広い音域にわたって全体に自然だが、高音域のごく上の方(おそらく10数kHz)にややピーク性の強調感があって、ヴォーカルの子音がややササクレ立つなど、固有の色が感じられる。が、そのことよりも、弦のトゥッティなどでことに、高音域で音の粒が不揃いになるように、あるいは滑らかであるべき高音域にどこかザラついた粒子の混じるように感じられ、ヨーロッパ系のヘッドフォンのあの爽やかな透明感でなく、むしろコスHV1Aに近い印象だ。低音がバランス上やや不足なので、トーンコントロール等で多少増強した方が自然に聴こえる。オープンタイプらしからぬ腰の強い音。かけ心地もかなり圧迫感があって、長時間の連続聴取では疲労が増す。直列抵抗を入れた専用アダプターがあるが、スピーカー端子に直接つないだ方が音が良いと感じた。
     *
ESSのラインナップにヘッドフォンはあるが、ハイルドライバーではない。
リエイゾン・オーディオからもATM方式のヘッドフォンは登場している。
こちらは全体域をATMでカバーしているわけではなく、2ウェイとなっている。

私が欲しいのは、くり返すがK1000のハイルドライバー版であり、
ハイルドライバーの同相ダイボール型という特性は、K1000と同じ構造にぴったりといえる。

と同時に、瀬川先生が「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」で指摘されていること。
この点は、ESSのヘッドフォン固有の問題とは捉えていない。

以前エラックのCL310を鳴らしていた。
そのとき、同じようなことを感じていたからだ。

Date: 9月 12th, 2016
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その8)

ステレオサウンド別冊「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」で、
イエクリン・フロート Model 1が取り上げられている。
瀬川先生の評価は高かった。
     *
 かける、というより頭に乗せる、という感じで、発音体は耳たぶからわずかだか離れている完全なオープンタイプだ。頭に乗せたところは、まるでヴァイキングの兜のようで、まわりの人たちがゲラゲラ笑い出す。しかしここから聴こえてくる音の良さにはすっかり参ってしまった。ことにクラシック全般に亙って、スピーカーからはおよそ聴くことのできない、コンサートをほうふつさせる音の自然さ、弦や木管の艶めいた倍音の妖しいまでの生々しさ。声帯の湿りを感じさせるような声のなめらかさ。そして、オーケストラのトゥッティで、ついこのあいだ聴いたカラヤン/ベルリン・フィルの演奏をありありと思い浮べさせるプレゼンスの見事なこと……。おもしろいことにこの基本的なバランスと音色は、ベイヤーDT440の延長線上にあるともいえる。ただ、パーカッションを多用するポップス系には、腰の弱さがやや不満。しかし欲しくなる音だ。
     *
この試聴の時点で、イエクリン・フロート Model 1の入手は、
オーディオ店に行けば、すぐ買えるというものではなかったようだ。

「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」の推薦機種のところで、
《残念ながら入手が不可能らしいイエクリン・フロート》と書かれている。

Jecklin Floatはスイスのブランドだった。
正確にはどう発音するのか。
イエクリン・フロートなのか、ジャクリン・フロート、それともエクリン・フロートなのか。
ここではイエクリン・フロートを使う。

「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」が出た時点で、
イエクリン・フロート Model 1の製造中止のように思われていたが、
海外ではあたりまえに入手できていた、ともきいている。

イエクリン・フロート Model 1は、聴きたかったヘッドフォンであり、
聴けなかったヘッドフォンである。
イエクリン・フロート Model 1はコンデンサー型で、
のちのAKGのK1000の原型と捉えることもできなくはない。
つまりヘッドフォンというよりは、イヤースピーカーと云った方が、より近い。

イエクリン・フロートはその後、いろいろあったようで、ERGO(エルゴ)というブランドに変り、
コンデンサー型からAMT(Air Motion Transformer)へと変っている。