Archive for category ヘッドフォン

Date: 10月 5th, 2026
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その16)

岡先生がAKGのK1000について書かれていることで、当時から、もし手に入れたらやってみたいと思っていたことは、次のことだ。
数回引用しているから、またか、と思われるだろうが、それでも読んでほしい。
     *
 このまったく新しいヘッドフォンを使用中にひとつ新しい発見があった。聴いている音楽を同時にスピーカーからも音を出してみる。それも音量感からいえば、ヘッドフォンを耳で聴いているレベルの数分の1から10分の1ぐらいでよいのだが、このスピーカーの音によって、音場感がひじょうに広くなりパースペクティヴも感じられる。レベル差がひじょうに大きいので定位感はヘッドフォンの音で決まってしまうので、スピーカーに対するリスニング・ポジションを気にすることも必要ではない。今までサテライト・スピーカーを使ったり、いろいろな音場再生を行なってみたことはあるが、ソースのクォリティを損なわず音場感を得られるということは実におもしろい経験でもあった。
     *
このことがあるからこその、ここでのテーマ「終のリスニングルーム」でもある。

全帯域をスピーカーから、音量を絞って鳴らすこともだが、サブウーファーで低音だけを鳴らすという手もある。

いまはまだK1000だけの音を楽しんでいるところだが、いずれやる。
そのスピーカーも何がいいのか。スピーカーをかえても、そう大きく変化しないのかするのか。それとピストニックモーションのスピーカーなのか、ベンディングウェーヴのスピーカーなのか。

K1000のユーザーで岡先生と同じことをやっている人はいよう。でも、ベンディングウェーヴでやっている人は、そうはいないだろう。

Date: 9月 27th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来た(その2)

AKG K1000は、一万数千台製造されたらしい。私のところにやって来たK1000のシリアルナンバーは、10000番台。

K1000の登場は1989年だったはずだから、初期のモデルは三十年以上となる。完動品といえる状態のK1000は、いったい何台くらいなのだろうか。

五割残っているのは思えない。もっと少ないように勝手に思っている。三割程度だとしたら、現在も音を奏でているK1000は、三千台から四千台くらいなのか。

もっと少ないのかもしれないし、かなり多いのかもしれないが、一万数千台のほとんどが完動品として存在していることはない。

世界に、おそらく数千人しかいないK1000の聴き手で、MQAで聴いている人は、どのくらいだろうか。かなり少ないように思われる。

だからこそ、一人でも多くの人にK1000とMQAの組合せの音を聴いてほしい、と思う。

Date: 9月 25th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来る(その5)

別項でも書いているように、2019年のヘッドフォン祭でBrodmann Acousticsのヘッドフォンが目に留まった。AKG K1000的モデルだ、と見ただけで思った。

後日、やはりそうだったことを知るとともに、このモデルはLB-AcosticsのMysphere 3がベースになっていることも知った。

輸入元のブライトーンのウェブサイトでMysphere 3について確認すると、AKG K1000のコンセプト構築と開発を指揮したHelmut RybackとHeinz Rennerは、
彼らの貴重な経験を究極のヘッドフォンであるMysphere 3の開発に惜しみなく注ぎ込みました──、とあった。

K1000は製造中止になったけれど、正統な後継モデルが登場した。このことは、K1000が欲しくても買えなかった私にとって、嬉しい存在となった。

ただしMysphere 3は、なかなかに高価だった。
いつかはK1000と思いながらも、コンディションのいいK1000と出合えなかったら、Mysphere 3か──、そんなふうに考えていた。

今回、K1000を手に入れたから、そういえばMysphere 3は、いまいくらするのでろうか、と気になった。
オーディオ機器が値上がりしている。特に海外製品は、いろんなことが関係して、値上げ幅が大きい。

Mysphere 3も100万円ほどになったかもしれないと、ブライトーンのウェブサイトを見ると、取扱いブランドにLB-Acosticsがない。

えっ? と思い、LB-Acosticsのウェブサイトを見ると、Mysphere 3はどこにもない。私が知らないうちに製造中止になったようだ。

今回、K1000を落札できて、ほんとうによかった、とだから思っている。

Date: 9月 24th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来た(その1)

落札したのが先週金曜日。翌日からのシルバーウィークのためか、発送連絡があったのが、昨日(9月23日)。
つい先ほどAKG K1000が、私のところにやって来た。

大きめのダンボール箱に入って届いた。緩衝材の中からK1000の元箱が見える。
この元箱、粘着テープで閉じられていたのではなく、ラップを十字に巻いてあった。一度開けられているとはいえ、それ以上、元箱の状態を悪くてしたくないというマニア心がわかっている出品者なのかもしれない。

それでもK1000を木箱から取り出すまでは、ヤフオク!にあったように、未使用に近いコンディションなのかは、わからない。

これまでヤフオク!で、いくつかのオーディオ機器を落札しているけど、ここまではドキドキしたのは初めて。
ヤフオク!での写真通りのK1000が出てきた。ほっとした。

今回、18万円を少し超えた金額での落札だった。落札したあと、この金額だったら、現行のヘッドフォンでもいいモノが購入できる。

ヘッドフォンもずいぶんと高くなっているから、20万円ほどでは最高級のモノには届かないが、それでもメーカーによっては、フラッグシップモデルも買える。

性能的には、現行製品だろう。そのことは頭ではわかっていても、どうしても手に入れたい、と思い続けてきたK1000とは、私の裡での重みが違う。

Date: 9月 20th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来る(その3)

落札する前から、絶対に落札すると決めていたから、K1000が届いてからのことを、あれこれ考えていた。

別冊 暮しの設計 No.20「オーディオ〜ヴィジュアルへの誘い」に岡先生が書かれている。
     *
 それ以上に優れているのは音のよいことである。今まで音のよいヘッドフォンといえば、ソニーのMDR−R10が抜群であり、スタックスのΛ(ラムダ)Σ(シグマ)シリーズの上級機も定評があったが、K1000はダイナミック型のもつ力強さとコンデンサー型の繊細さや透明度を持ち、歪み感のすくないことでも注目されるものであった。本機はパワーアンプの出力をそのまま入力すればよいようになっている。インピーダンスが120オームなので、ふつうのスピーカーを聴くときに上げるアンプのヴォリュームの位置と大差はないところで、ほどよい音量が得られる。
 K1000が発表されたのは1990年だが、1991年にこのヘッドフォンのための専用アンプ(K1000アンプリファイアー)が発売された。純粋A級アンプで、ヘッドフォン専用アンプとして作られただけに、このアンプを通したときの音がもっともよい。
 入出力ともXLR(キャノン端子)コネクター用によっており、入力は3端子のバランス専用、出力はLR共用の4端子が1対装備されているので、K1000を2本つなぐことができる。
 このアンプが現われたので、バランス出力のあるCDプレイヤーやDATあるいはカセットデッキなどを直接モニターすることができる。音量調整も出力端子のすぐそばにヴォリュームがあるので、容易に好みのレベルに設定できる。
 K1000はたしかにヘッドフォンにちがいないが、聴感覚的にはヘッドフォンを使っているという感じをまったく与えないのは、ヘッドバンドの構造とユニットの支持法が実によく考えられているのと、完全オープン・タイプであるために、長時間使用していても違和感や疲労感がまったく生じないためである。
 また、プレイヤーの出力をダイレクトに専用アンプを経由させるだけで、余計な回路を通っていないので、プログラムのクォリティ・チェックにもひじょうに有用である。
 筆者は、仕事の必要上新譜のテストを数日間聴きっぱなしということがある。スピーカーから出る音との音場感の差などを常時チェックしたりするけれど、大部分、K1000だけで試聴して何の不都合も感じない。ひじょうにありがたいのは夜遅く聴かなければならないときに、あまり大音量を出すことは考えものなので、机上の両サイドに置いている小型モニター・スピーカーで接近試聴という不便なことになってしまうが、K1000では、ドアを開けてレコードを大音量(?)で聴いても、隣りの部屋での睡眠の何の邪魔にもならず、昼間と同じ再生レベルで聴くことができる。
 このまったく新しいヘッドフォンを使用中にひとつ新しい発見があった。聴いている音楽を同時にスピーカーからも音を出してみる。それも音量感からいえば、ヘッドフォンを耳で聴いているレベルの数分の1から10分の1ぐらいでよいのだが、このスピーカーの音によって、音場感がひじょうに広くなりパースペクティヴも感じられる。レベル差がひじょうに大きいので定位感はヘッドフォンの音で決まってしまうので、スピーカーに対するリスニング・ポジションを気にすることも必要ではない。今までサテライト・スピーカーを使ったり、いろいろな音場再生を行なってみたことはあるが、ソースのクォリティを損なわず音場感を得られるということは実におもしろい経験でもあった。
 筆者にいわせれば、ミニ・ハイファイ・システムのひとつの極点が、こんなところにあるのではないかと思った次第である。ただし、K1000が17万5千円、専用アンプが22万5千円だから、合せて40万円になる。これを高いと思うか安いと思うかはその人次第だが、いまの高級コンポーネントが、100万から数百万までのがざらにあることを考えれば、筆者はこれは安いと思う。
     *
アンプを、どうするか。アキュフェーズのA20Vが私のところにはある。A級動作、出力 20W+20W。
K1000のインピーダンスは120Ωだから、A20Vの出力は1.3W+1.3Wに、計算上ではなる。

K1000専用アンプであるK1000 Amplifierの出力は、12V以上となっている。W表示ではない。
A20Vの8Ω負荷での20Wの出力は、単純計算で12V以上は確保されているから問題はないし、いい結果をもたらしてくれるのでは、と期待している。

それから試してみたいのは、フッターマンのOTL2である。

Date: 9月 19th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来る(その2)

ヤフオク!にも、AKG K1000が出品されていた。写真を見る限り、コンディションは良さそう。
これは落札するしかない、即断した。

eBayで出ていたのは箱の色から、前期型、ヤフオク!のは後期型。
前期型、後期型の比較試聴はしたことがない。私が聴いたK1000が、どちらだったのかも確認していない。それでも、どちらもK1000であることには変りない。

今回落札したK1000が、あとどのくらいいい状態で鳴ってくれるのかはわからない。短いかもしれないし、意外と長いのかもしれない。

これもどちらでもいい。とにかく自分のモノとして、K1000を聴けるようになるのだから。

以前、別項で、LS3/5Aの延長線上にあるのはメリディアン のM20だと書いた。さらにLS3/5A、M20の先にいるのがベーゼンドルファー(現Brodmann Acoustics)のVC7だとも書いている。

この三つのスピーカーシステムを結ぶ直線に、K1000もいるように感じている。

Date: 9月 18th, 2026
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その15)

(その14)を書いたのは2022年7月だから、もう四年前。
やっとAKGのK1000が、私のところにやって来る。

K1000は、私にとって「終のリスニングルーム」になるのか。

Date: 9月 18th, 2026
Cate: ヘッドフォン

AKG K1000がやって来る(その1)

AKGのK1000のことは、何度か書いてきている。
K1000が登場したころ、私は無職だった。欲しいと思いながらも、当時の価格は170,000円。
無理をしても出せない金額だった。

その後、二回価格改定があって、最終的には120,000円だったと記憶している。このころになると、家電量販店では90,000円ほどで売られているのを見かけたことがある。

それでも買えなかった時期が、私にはあった。

K1000、いいなぁ、もいつしか薄れていくものだと思っていたが、そうではなかった。
2017年のヘッドフォン祭だったか、どこかのブースが自社製品のデモ用ヘッドフォンとしてK1000を聴けるようにしていた。

K1000だ、聴きたい、と思ったから、あえて聴かなかった。ここで聴いてしまうと、欲しいという気持を抑えられなくなる気がしたからだ。

それからもK1000のことは気にかけていた。ヘッドフォンの中古を扱う店で、二回見たことがある。買ってしまおうか、と数日悩んだら、すでに誰かの手に渡っていた。

ヤフオク!にも、こまめにチェックしているわけではないが、時々出品されているのは、もちろん知っている。製造中止になってからでも、けっこうな月日が経っている。
程度が良くなさそうなK1000はパスしたい。

これまで、どうしても手に入れたいというK1000の出品は、私がチェックした範囲ではなかった。

二週間ほど前だったか、facebookに、ある録音風景の写真がアップされていた。数人ほどの演奏者は、みなK1000をかけていた。

この写真が、やっぱりK1000しかない、と思わせた。

ヤフオク!よりもeBayの方がK1000はよく出ている。K1000はあるかなぁ、と軽い気持で検索したら、やっぱりあった。

一つ、かなりコンディションがいいのがある。説明文を読むと、相当に良さそうではある。
イギリスからの出品で、本体1,500ポンド、これに送料と輸入手数料がかかり、トータルで約37万円になる。

買えない金額ではないが、もう少しポンド安にならないものか、と様子を見よう、それからヤフオク!も、またチェックしてみようと思った。

Date: 6月 11th, 2023
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(その11)

(その9)で、イエクリン・フロートのヘッドフォンの外観について書いた。

いまの時代、イエクリン・フロートのヘッドフォンを装着した写真も、
インターネットを検索すれば見つかる。
瀬川先生が試聴記に書かれているように
《頭に乗せたところは、まるでヴァイキングの兜のようで、まわりの人たちがゲラゲラ笑い出す》、
まさにそんな感じである。

いま私に、もっとも関心をよせているヘッドフォンは、
HEDDのHEDDphoneである。

イエクリン・フロートほどではないが、
HEDDphoneもけっこう大型で、装着している写真をみると、
ゲラゲラ笑い出すほどじゃないが、かなり大きいな、とは思ってしまうほどだ。

HEDDphoneは、AMTドライバー(いわゆるハイルドライバー)のヘッドフォンだ。
いまのところAMTだけのヘッドフォンとなると、HEDDphoneぐらいのはずだ。

音は聴いたことがない、というか、実物も見ていない。
それでもAMTのヘッドフォンということだけで、すごく気になる存在。

とはいえ聴かない方がいいかも──、とちょっと思っているのは、
けっこう高価なヘッドフォンだからだ。

気に入ってしまい、無理して買ってしまうと、
ヘッドフォンアンプも、このヘッドフォンに見合うモノにすぐさましたくなるだろうし、
そうなっていくと、歯止めがきかなくなるからだ。

買ったとしても、つまり音が気に入ってしまえば、
HEDDphoneの大きさ、デザインはさほど気にならないだろう。

というのも、ヘッドフォンで音楽を聴く行為は、ひとりで音楽を聴くということだからだ。
だから装着している姿を見られるわけではないし、
装着した自分の姿を鏡で見るわけでもない。

Date: 7月 9th, 2022
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その14)

先日公開した「所有と存在(その18)」。

好きな音楽をおさめたディスク(LP、CD)が増えていくとともに、
火事になったら……、地震が来たら……、
そんな心配を持つようになった、と書いた。

なにもディスクだけではない、
オーディオ機器に関しても、その心配は常につきまとう。

オーディオ機器となると、一人で持ち出せる大きさ、重さではなかったりするから、
まずはディスクを、と心配するわけだが、
火事がおこり、目の前でそれまで使ってきたオーディオ機器が消失してしまうのは、
現実におこってしまったら、たいへんな衝撃のはずだ。

25のときに、EMTの927Dstを手に入れた。
音も見事だが、自室におけば、その存在感は大きい。
けれど、927Dstを緊急時に持ち出せるかといえば、
火事場の馬鹿力があるとすれば可能かもしれないが、
持ち出せるモノとは思えなかった。

オーディオという趣味は、安全な空間を必要とする。
火事がこようが、地震がこようが、何があってもリスニングルームは無事。
そういう空間を持てるのであれば、私のような心配はしなくてもすむ。

けれど災害は人の想像力を超えた規模で起りうる。
絶対安全な空間など、ほぼない、といっていい。

そして、オーディオは部屋に縛られる趣味ともいえる。

そんなことに頭を悩ませていたころに、AKGからK1000が登場した。
そのころはK1000が欲しいな、だった。

K1000の登場から二十年以上。
K1000の後継機が三年前に登場した。
時を同じくして、私の音楽の聴き方に変化が訪れた。

MQAとTIDALである。
iPhoneとなんらかのD/Aコンバーター兼ヘッドフォンアンプがあれば、
そしてK1000もしくはK1000の後継機が揃えば、
部屋に縛られることから解放される。

スピーカーで音楽を聴こうとするから、
定住することが求められるのだが、上記のシステムならば、
もうそんなことはない。

終のリスニングルームとは、そういうことなのだろうか。

Date: 2月 28th, 2022
Cate: ヘッドフォン

Beveridge Audioのこと(その5)

この項のカテゴリーは、ヘッドフォンである。
ビバリッジのスピーカーについて書いているのに、
なぜヘッドフォンなのか、というと、ヘッドフォンでのみ音楽を聴いて、
スピーカーで音楽を聴くことにあまり関心ない人がいるからである。

身近にそういう人はいないから、想像するしかないのだが、
スピーカーからの音出しが、置かれている環境のせいで無理という人もいれば、
ヘッドフォンに慣れてしまっている、ヘッドフォンのほうがいい、
という人もきっといよう。

音楽を家庭で聴くということ・イコール・スピーカーで聴くこと。
私はそうだった。

けれどいまは必ずしもそうではなくなっている。
ヘッドフォンで聴くことがあたりまえの人たちにとって、
スピーカーの音は、どう感じるのか。
違和感をおぼえるのだろうか。

そうだとしたら、おもにどこに違和感をおぼえるのか。

ビバリッジのスピーカーシステムを聴く機会はなかった。
これから先もない、と思っている。

なのでしっかりしたことはいえないのだが、
ヘッドフォンで音楽を聴き始め、その世界に慣れ親しんだ人にとって、
ビバリッジの音は、意外にも違和感なく受け入れられるのかもしれない。

想像でしかない。
実際はどうなのか。

ビバリッジのスピーカーと同じコンセプトのスピーカーが、
他社から、これから出てくることはほぼ期待できないけれども、
ヘッドフォンに慣れ親しんだ世代の人が、もしスピーカーメーカーを興したら、
ビバリッジ的コンセプトに基づいたシステムをつくってくるのではないだろうか。

Date: 5月 7th, 2021
Cate: ヘッドフォン

Beveridge Audioのこと(その4)

ビバリッジのスピーカーのことを思い出すたびに、わいてくる疑問が一つある。
ステレオサウンドの試聴室のことだ。

50号の新製品紹介記事で、ビバリッジは登場している。
このころの試聴室と私が働いていたころの試聴室は同じである。

六本木にあったころの試聴室は、その後の試聴室とは違う。
木の壁が二面、ガラス窓のある壁が一面、レコード棚の壁が一面である。

ビバリッジのスピーカーシステムが要求する対向する壁への設置、
ステレオサウンドの試聴室では左右で条件が揃わなくなる。

長辺の壁二面に設置した場合、木の壁とガラス窓のある壁とになる。
短辺の壁二面だと、木の壁とレコード棚のある壁とになる。

どちらの壁に設置したのだろうか。
そのあたりのことは50号の記事にはなかった。
もしかすると、輸入元の試聴室で聴いたのかもしれない。

ビバリッジのスピーカーシステムの、日本での知名度は低い。
私はステレオサウンドを読んできていたので知っているが、
それでも実物をみたことはない。

当時の販売店の広告にも登場していたので、
一部の販売店では高く評価されていたのかもしれない。
けれど、だからといって売れたのかは、別の問題だろう。

対向する二面の壁を必要とするのは、導入においてけっこうやっかいなことでもある。
専用リスニングルームであれば問題はなかったりするだろうが、
そうでなければなかなか対向する二面の壁、
それも左右で条件を同じにしようとするのであれば、大変なことだろう。

理想をいえば、しっかりした壁で、設置する壁にはビバリッジのスピーカー以外は置きたくない。
ビバリッジのシリンドリカルウェーヴの考慮すれば、
出来るだけ広い壁、つまり大きい平面バッフルを用意するようなものだ。

ビバリッジが謳うように、シリンドリカルウェーヴがきれいに、
その波面がひろがっていくのであれば、
そういうふうにしたいとなるのがオーディオマニアの心情だろう。

Date: 5月 6th, 2021
Cate: ヘッドフォン

Beveridge Audioのこと(その3)

(その1)へのfacebookでのコメントに、こう書いてあった。

ソニーの盛田昭夫氏が、ビバリッジの開発者のHarold Beveridgeの自宅で、
その音を聴いて驚嘆し、販売製造権を買い取ろうとしたが、話はまとまらなかった──、と。

こんなことがあったとはまったく知らなかった。
ビバリッジは1974年創立である。
いつごろの話なのだろうか。

この話を読んで、1996年ごろにソニーがSS-R10を発表したことを思い出していた。
ペアで300万円するコンデンサー型スピーカーシステムである。

三年前の別項でも、唐突に登場してきた感がある、と書いた。
コンデンサー型マイクロフォンは長年手がけてきていても、
それまでのソニーのスピーカーの流れからすれば、SS-R10は唐突であった。

けれど盛田氏とビバリッジの、このエピソードを知っていれば、
それは唐突でもなんでもなかったことになる。

三年前の別項では、こんなことも書いている。

ステレオサウンド 5号、瀬川先生の「スピーカーシステムの選び方まとめ方」、
その中に、こう書いてあった。
     *
 コンデンサー型スピーカーについては、中〜高域の透明な美しさにくらべて、低音域の厚みが不足したり、力強さがないなどという意見がよく聞かれる。その当否は別として、QUADのスピーカーを中域から上で使うようにして、低域をふつうのコーン型のウーファーに分担させるという、ソニーの大賀氏のアイデアを実際に聴かせて頂いて仲々よい音質だったので、使いこなしのひとつのヒントとしてご紹介させて頂く。
     *
聴かせて頂いて、とあるから、大賀典雄氏のシステムだったのだろう。
つまり大賀氏は、この時期(1967年ごろ)、QUADのESLを鳴らされていたことになる。

三年前は、大賀氏とコンデンサー型スピーカーとが結びついたわけだが、
盛田氏もそうたったのか。

同じコンデンサー型スピーカーといっても、
QUADのESLとビバリッジのシステムとでは、構成も規模も使い方もずいぶん違う。
そして放射パターンが大きく違う。

そうであっても、共通するよさはあるわけで、
そこにビバリッジの場合は、独特の放射パターンによる再生音場が加わる。

もっと詳しいことを知りたいところだが、
盛田氏も大賀氏も、この世を去られている。

Date: 5月 5th, 2021
Cate: ヘッドフォン

Beveridge Audioのこと(その2)

ビバリッジは、私がステレオサウンドで働きはじめたころには、
輸入元のカタログには載っていたのだろうが、輸入されていなかったに近い。

だからステレオサウンドでも聴くことはなかった。
なのでとっくに解散してしまっている会社だと思い込んでいた。

ところが、“Beveridge Audio”で検索してみると、
すんなりウェブサイトが見つかる。
まだ活動しているし、スピーカーシステムを作っている。

それでもアメリカ、イギリス、スウェーデンだけでの販売のようだ。
facebookにも、Beveridge Audioのページがある。

最後の投稿が、いまのところ2015年4月なので、細々と活動しているのかもしれないが、
facebookには、System 2SW-1の内蔵アンプの回路図などが公開されている。

シリンドリカルウェーヴのスピーカーといえば、
マッキントッシュのXRTシリーズを思い浮べる人は多いだろう。

シリンドリカルウェーヴといえば、そういえるが、
ビバリッジと同じとはいえない。

ビバリッジはコンデンサー型のフルレンジユニット、
マッキントッシュのXRTシリーズは、ドーム型トゥイーターの多数使用による。
似て非なるものともいえる。

スピーカーシステムとしての優劣を語りたいのではなく、
ビバリッジならではの放射パターンと設置。
それらによってつくり出される再生音場は、
ヘッドフォンでのみ音楽を聴いている人たちに、どう響くのだろうか。

そこに興味があるし、私もビバリッジの再生音場を一度経験してみたい、と思っている。

Date: 5月 5th, 2021
Cate: ヘッドフォン

Beveridge Audioのこと(その1)

ビバリッジ(Beveridge)というアメリカのブランドが、
昔、輸入されていた。
R.F.エンタープライゼスが輸入元だった。

ステレオサウンド 50号の新製品紹介で取り上げられていた。
コンデンサー型のスピーカーシステム、System 2SW-1だった。
サブウーファー込みで、ペアで2,500,000円だった。

いまでこそペアでこのくらいの価格のスピーカーシステムは珍しくなくなった。
けれど当時は、かなり高価なスピーカーシステムだった。
ちなみに同時期のJBLのパラゴンは、1,600,000円である。

その後、ビバリッジは管球式コントロールアンプ、RM1+RM2を出す。
RM1+RM2は、山中先生が、特に高く評価されていた。

どちらも聴いてみたかったけれど、いまだ聴く機会はない。

RM1+RM2の設計者、ロジャー・モジェスキーは、
その後独立して、ミュージックリファレンスを興し、
RM4(管球式ヘッドアンプ)、RM5(管球式コントロールアンプ)を出している。

ビバリッジのスピーカーは、いまでも聴いてみたい。
ビバリッジのスピーカーは、聴き手の前面に設置するわけではない。
左右の壁に対向するように設置する。

コンデンサー型スピーカー・イコール・平面波と考えがちだが、
フルレンジのコンデンサー型ユニットの前面に紙にプラスチックを含浸させた素材で、
音響レンズの一種、というか、コンプレッションドライバーのイコライザーに相当するものを配置、
この音道をとおることで、コンデンサー型ユニットから発せられる平面波を球面波へとし、
水平方向180度の円筒状の波形(シリンドリカルウェーヴ)をつくりだしている。

こういう放射パターンをもつスピーカーだからこそ、の置き方でもあり、
こういう置き方を実現するための放射パターンともいえる。

ステレオサウンド 50号では、
井上先生が、音像自体が立体的に奥行きをもって浮び上ってくる、と言われている。
さらに、オペラを聴くと、歌手の動きが左右だけでなく、少し奥のほうに移動しながら、
右から左へと動いた感じまで再現し、その場で実際にオペラを観ている実在感につながる、と。

山中先生も、通常のスピーカーの、通常の置き方よりも、
楽器の距離感を驚くほどよく出し、協奏曲での、独奏楽器とオーケストラとの対比がよくわかる、
という評価だった。